KEITH【6】
「 ...それがどう繋がる?」
「船には...1番目を凹としよう、2番目の下に付きたがるのを凸と
する。3番目はどっちつかずだから今はどうでもいい。凹と凸は
引合う関係。合致するからな?ナール圏では凹は凸を求め、凸は
凹を求める。恋人と言おうが愛ではなく自利のため。慈善や善行
と言おうが慈愛ではなく自利のため。にな。依存と共依存、双方
合意双方利得。引力で求める相手がいないと自分が成り立たない
恋人結婚、組織や企業の上下、医者と患者、買売...何にしてもな
凹同士凸同士では合体出来なくて上手く行かない」
「そうだな」
「この船は凹しか乗せない。凸がいると凹の手間取られる。商売で
言ったら売り手だけ病院で言ったら医者だけ。船の中は凸の世話
はしない。だから船に乗れたお前は凹だろ」
「それで80000所帯が上手く回る?それでは上手く行かない
だろう?船長が凹でシータたちクルーが凸じゃないのか?」
「解りやすく譬えただけだ。その前に俺たちはナールじゃない
って海賊だから捕まったら地上ミ・ロアかって言うと、違う」
「 ...え」
「っと喋りすぎだ。俺たちのことは訊くな。自分だけ考えナ」
「待てよ、じゃあ、何だ?」
「今のお前に話したって意味通じない
お前の知っているどれでもないから」
「どれでも...ない?」
「話が通じる は双方で同知識同脳共有、ではじめて通じる」
「 ...ああ」
「俺がお前の全く知らない話をしたとしよう、お前は途端に自分の
知る範囲内の〔どれか〕を探りはじめる。そこに なかった と
しても〔どれか〕の中の〔どこか〕に無理矢理に当嵌めて納得し
ようとする。余裕あったら自分の知ってるものとの違いでも発見
しようとするかな?で、俺の話は全くその〔どれか〕のどれにも
当て嵌まらない。なのにお前たちは自分の知る中の〔どれか〕に
無理矢理収めようとする。それを愚考愚行と言う。それでは誤解
するだけだし、大いなる間違いの吸収 にしかならない」
「 ...新しいものの吸収とは違うのか?」
「新しいものではない。理解には経験という年月時間が要る。尤も
俺たちはミ・ロアのお前たちにその話をしようとは思ってない」
「何故?」
「お前たちには必要ないからだ」
「 ...そうか」
シータの言うその話自体が、膨大で大袈裟な気もする。
が、首を突っ込んでは足元も見失いそうだと気づいた。
...不服あったが、納得した。
シータは表情を和らげて笑い、ノブに手を掛けた。
「だからこの船には世話好きが80000と船長がひとり。その80001は
ナールで言うなら凹、と言うだけだ。んで、他の5人のミ・ロア
も凹。あいつらはここに長いから、そうそう遣り合わないと思う
が、お前ら気性の根は同じ...気をつけろ。遣り合って殺されても
殺しても...まで至っても俺たちはミ・ロアには関与しない。死人
が出たら宇宙に葬るだけだ」
「 ...わかった」
リアルな現実の話の方は理解した。
そして、その扉はシータによって開けられた。
シータが扉を開けて部屋に入ったとき、ふわっといい香。
それに気づいて扉周辺を見上げると、シータが笑った。
「さすが、あの組織のエリートだなあ、微かな匂いなのに」
「 ...これは何だ?それに、」
それに何かシャワーの後のようなさっぱりとした清清しさ...。
「フツウは気づかないよ、この程度では」
「 ...何かしたのか?俺に。扉にシカケが?」
「扉の上から汚れや疲労をリセットする光線が出ている
光じゃないが、説明面倒臭いからクリアと言っている」
「クリア...?」
「兎角、この扉を入るも出るも抜けただけで風呂入りましたの状態
汗も汚れもクリア。トイレも不要。わざわざ水浴びしたきゃ部屋
にあるシャワー使え。病気になるウィルスに感染してたらそれも
リセット。しかし、その人が病気でいる必要あるときはクリアは
機能してくれない、病気でいろってことだ」
「何で?それ... 」
「知らん、船長も知らん。この船はそういうことになってる。優雅
に風呂入る時間もない。病気なんて贅沢だ?ってこと。要は健康
酷使しろってことだよ、あはは」
「 ...そんなことが...船のどの扉も?」
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