【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

かんろあめひびきわたるうたげ 長編涅槃活劇[100禁]

KEITH【101】ルナルーの意地

2009-12-06 | 4-0 KEITH




 KEITH【101】 


そしてアランは、ユリウスはよくこの方法で自殺する。と言うか、処刑される。と小声で言ってきた。

処刑!?自殺?!

そんなことに驚いてみても...実のところよくわからん...。

俺はアランの提案に同意して―兵隊はすぐさま動き出した。

「さて、密告者がいるんだが」

アランが言ってにこっと笑った。

「密告なんてして頂かなくても『Golden wheat』だから?と思って
 貰えず、随分小さく見られたもんだと思ったが...そいつは報奨を
 待っている風...どうする?ボス」

「はは、また新手の難題だなあ...アランの意見を請うよ」

「そう来たか...少しは考えろよ?」

「考える必要有る人物か?アランなら檻に入れてしまうだろ」

「あはは、いいねえ?解ってそう言ったか。しかし、俺も少し悩む
 ウエディング・パーティーの招待客にしてジャーメイン家の親戚
 亡くなった母方兄の息子、ルナルーと従兄弟。3番目の山の裏手
 に住んでいて収穫時期だけうちの手伝いに来ていた」

「今回の騒動中に紛れて死んだってことでいいんじゃないか」

「では檻には入れられないな。闇に葬るか」

「いや待て...遣えるかもしれない...ルナルーとは親密か?」

「そのようだ。パーティー中は仲良く接していた。しかし密告は
 害虫の案内人して裏切ってだが...そんなのを『Golden wheat』に
 入れるのか?」

「逆に問題起こしてくれる方がよくないか?俺が激怒出来る。それ
 にその家族健在なんだろ?恐らくそいつの家族も全て知っていて
 そいつが功労賞でもって特別待遇を持ち帰ってくると思っている
 それが死体帰還なら、所謂小物の悪評蔓延...そっちの方が、収集
 つかなくなるから内々解決出来る方を選ぶ」

「そうだが...お前が大丈夫かよって心配」

「もうそこまで触れやしないよ。何が起こっても」

「ならいいが...では報奨というか、処遇をどうする?」

「野菜農園の方の総監督に就けるか?今の総監督は『クワロフス』
 だから、そいつには事情を話して副監督に居て貰って見張り兼任
 まさか、山裏からここには通えないから農園内、農夫たちの家の
 並びにそいつの家族も住めるよう家を建ててやれば十分だろうか
 それで喜んで貰えたら、それはそれで複雑だね...ジャーメイン家
 もそんな風にあっさり引っ越してくれたらいいものを...と思う」

「はは...確かに」

だが、流石にジャーメイン家の親戚なのか、そういうわけではないだろうが、そうはいかなかった。

密告者の彼…独身で40のターノは兄弟は既に薬物で亡くしていて、年老いた父母を家に残しひとりで遣ってきた。

背も高く横も太い筋骨隆々の健康体に見えるターノの、その逞しい容貌に多少...混物大麻愛用を感じたが、そこは判って目を伏せた。

働いてくれればいい、問題起こそうものならそれはそれ。

そんなことに手間取って、屋敷に戻って朝食 は昼近くになった。






家に入って直ぐフィナがキッチンから、旦那様!と叫んで走って来て―その勢いでキッチンに向かっていたのに応接室に入れられた。

一緒にいたアランも引っ張られて―がチャリ と鍵を掛けられた。

「鍵?!...何だよ...怖いな」

「別に襲いませんよ、でもちょっとわざと、奥様の前でべったり
 してみたのはありますけど...キッチンに行かれる前にと思って」

「え?いるの?イオがリズに誘ったのでは、」

そんな期待は敢え無く崩れ去った。

元々偽装結婚と心して俺の元に来たせいか―ルナルーは強かった。

「奥様はイオより早く起きてジーンズに着替てひとりでキッチンの
 床掃除から始めて...イオがそんなことはメイドがしますそれより
 今日はリズに誘ったんですが、屋敷のものを買うの?と訊かれて
 ボス夫人になられたかららしい服装が必要ですと言うと、そんな
 ものは要らないと仰って今も屋敷中掃除されて...まるで私たちが
 扱き使ってるって感じです!ちょっとむかつく」

あはは...。

天晴れだな。とアランが言って笑った。

「じゃあもう喧嘩してしまえば?私たちの仕事を奪うのかとか
 今言った、まるで私たちが意地悪してるみたいだとか言って」

「ああ、それはいいかも」

「えええ...無理ですよう...幾ら何でも言えません...ごめんなさい」






KEITHもくじ KEITH【102】につづく。





コメント    この記事についてブログを書く
« KEITH【100】翌日は害虫大量 | トップ | KEITH【102】それから3ヶ月 »

コメントを投稿