【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

かんろあめひびきわたるうたげ 長編涅槃活劇[100禁]

EMA【405】待って

2009-09-18 | 3-2 EMA



 EMA【405】 


「気に病んでたか?俺は力になる。災は終った
 獄中反省みたいな期間だったか?あの牢生活」

「あ...そうです。反省しました。でも、反省しても
 意味ないとも思えたしあのまま死んでしまうかと」

「何でも切望していれば、ある日突然だ」

イーギンはそう言ってエマを見て笑う。

エマは咄嗟ドキリとして頬が紅潮した。

イーギンは、ゆっくり寝て。と言ってエマを伴って部屋から出た。






部屋を出て―イーギンはエマを自分に引き寄せた。

エマの顔の位置に自分の顔を下ろして―エマを覗き込む。

「浮気してた」

エマはイーギンに見詰められて噴き出した。

中庭に面したガラス壁の廊下、布張の長椅子にエマを座らせて横に自分も座った。

「起こしてよ、びっくりした。いないし」

「夕べ遅かったから。カメリアにそう聞いて、」

「エマを巻き込むつもりはなかったからだからレギティアは
 や、会うなということじゃなくてエマは知らなくていいと」

「助け出して来られたのでしょう?そのために行かれた」

「そうだけど」

エマはくすと笑ってイーギンは少し拗ねる。

「ふふっ、朝起きるときに眠いと思うのは...兄の受け売りですけど
 眠い欲の消滅は眠いに勝るものでしか消滅ないそれは起きたい欲
 起きたい欲は活動したい欲から発生 ですよね?それで眠い欲は
 消滅します。朝イーギンの顔が見たかったし、イーギンのために
 動きたかったし 何よりイーギンが先です、でもイーギンが私を
 いらないと仰るまででよかった」

イーギンがドキリと胸の詰まる顔をして―エマは微笑みかけた。

「活動して受容して尽くして注いで...イーギンは
 それが私のシタイコトということをご存知です」

エマ...また胸が痛い...そんなの...。

「イーギンがどんな方でも好きです...あ、私から求めないから?」

「え...うん...それ...ずっと望んでる...俺」

「今までずっと...だったんですか?」

「え?!...何?」

エマは少し照れたようにして立ち上がって、朝食の用意をします。とイーギンの横を抜けて歩き出した。

イーギンは慌ててエマを追う。

「待って!エマ!」






船のブリッジでにこやかにその始終を見ていたクルーたちが寄って、中でもラピスが椅子から転げ落ちて狂ったように笑った。

「待って って今まで一回でも言ったことあるかよ!!」

話には聞いていたが、本当にあいつお縄なんだなあ。とギルが感心して言えば、エドが、本当だ。と、言って笑った。

「なんちゃって違う!本気か。絶対人を追わないヤツなのに」
「ここまで踏み外して酔う?見事なサンサーラ埋没だナ」
「くそぅあいつに待ってって言わせたい!どんだけ嬉しい!」

クルーたちが騒ぐ中に偶然ブリッジに居合わせたギーガもそれを見て一緒になって笑い―しかし、顔の奥では真剣苦虫でディスプレイに映るイーギンを冷やかに睨んでいた。

自分の芯の叡智、地の底も掠っていないでわざわざそこに居るのか...本気か...どこまでサンサーラに滑る?

目が覚めてこれかもういいのか―そろそろ決着の時期だが。






エマは気が上っていた。

「ちょっと待って、言う!エマ!」

さっきの場所から部屋に向かう玄関奥の中庭に面した広い方の
フロアでエマはあっさりとイーギンに捕まって抱き止められた。

エマはイーギンの両腕を掴んで胸に顔を埋めた。

イーギンは怒ったのかどうか顔を確かめたくてエマの顔を自分から剥いで見ようとする。

「いや、やめて」

イーギンにそれは心臓に太い杭―蒼くなって怯んだ。






EMAもくじ EMA【406】につづく。





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