【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

かんろあめひびきわたるうたげ 長編涅槃活劇[100禁]

ZEN【200】お前が指示

2009-11-10 | 3-4 ZEN




 ZEN【200】


日実子だった―警察病院で看護師?!

日実子は菊之丞の顔を覚えていないので―何か?と怪訝な顔。

「あ、いや...タオルを濡らして頂けますか?床に血糊が広がって
 そっちまで歩いてしまったら余計汚してしまう。すみません」

「タオルは体の血を拭くためにお持ちしました。掃除は私が」

「あ、はは、言い方が悪かったか、持って来て頂いたタオルを
 濡らしてから俺に下さい。着替えるまでは動きたくないので」

「えっ、あ、すみません!」

途端真っ赤になって日実子はタオルを濡らしに水場に寄った。

「俺より若い気がするけどもう看護師ですか?」

縁があるんだな。と思って菊之丞は腹括って話し掛けた。

日実子は、そんな話を患者から話し掛けられることがなかった
のでドキリとして―え?と思いながらタオルを菊之丞に渡した。

「昼に看護学校で夜仕事です。病院が学費を出してくれて...あの
 仮装パーティーですか?そのとき殺傷事件、あ、すみません」

「仮装...はは、はい。そうです。騒動はよく判りません
 騒ぎの中、助っ人頼まれて気が付いたら俺も血だらけ」

話を聞きながら日実子が雑巾で床を拭き出し―菊之丞が止めた。

「白い服に血が付きます。俺がします!貸して?」

自分でアジしたTシャツとジーンズに着替た菊之丞は日実子から
雑巾を奪って自分が移動することで床についた血を拭き出した。

そこに、菊之丞、まだか?と言ってテラが扉を開けた。

目前にいた白衣の女の子に驚いて―え、菊之丞は?と
言い掛けて、下方に動く物体が菊之丞だ と見止めた。

「ああ、お前が一番血を浴びたか」

「変なこと言うな、テラはいつ着替たんだ」

テラは着替えていない―クリア機を掛けた。

菊之丞は直ぐに日実子が入ってきたので―その暇がなかった。

「リズは命に別状なし。殺人犯ってことでもう用無し。理解?」

「そう願うよ、ベリーAの社員なんて」

「はは。だよな。兎ちゃん待ってるぞ。眠いってさ」

「誰のせいだ」






「俺...思い直したんだけど」

ホテルの部屋に戻って―菊之丞は寝室に入る前、リビングの
ソファでまったりして珈琲を飲んでいたテラに話し掛けた。

マリンとジュリは部屋に入って直ぐは、凄い凄いきゃあきゃあ
と一頻り騒いでいたが、珊瑚の部屋で、コテっと寝てしまった。

「思い直した?タキシードは綺麗にしたか?血の一滴でもつい」

「タキシードでもアンバーのことでもなく、あのふたりのこと」

話しながら菊之丞はパジャマ姿で―テラの向かいに座った。

「匿うはいいけど、巧くやって解除って殺屋に戻すってことだ?
 それより降格の『ライオネル』紫穂になった方がよくない?」

「ほう。そう来たか。お前が決めろ。お前に縁あったから、先ずは
 匿うかどうかだった。そこで..NOと言わなかったから本人たちの
 降格は望んでいないを優先かと...捕獲したお前が決めていい」

「突き出す?...失敗したから虐待されるとかなし?」

「それもお前が指示を出す」

「そうか。じゃあ俺の特権で殺屋廃業させる」

「まあな。それがいい。ただ、言っとくがあいつらは父親母親に
 教育受けた。殺屋の。親が死んだから『クワロフス』が拾って
 きた。既に薬中のように抜け出せない になっていたら」

「そのときは権利放棄するよ。彼女たちの選択だ」

「了解。やれることやれるだけ手は貸したいよな。己が辛苦悶々
 でセラピストになったやつなんかのセラピーなど意味ねえし」

「そこだよ...難しいよ」

「そう思うんならこんな時代になっても自分の強欲にしか興味ない
 ナールがこの世から消えてなくなるため行動 次に行動!何した
 ってそれ以外の方法は無駄。この世の苛立ちの解消は。ナ」

「うん... 」

「では、ふたりが寝てる間に『クワロフス』にアジすっか」

「どこ?ディノウヴォウの『クワロフス』?」

「韓国の『クワロフス』あっちにも『ライオネル』はある」

「あの子たちだけアジ?」

「阿呆。お前が指示するんだ?デイビッドも呼んで引き渡し
 行くぞ。あ、着替ろ。寝るのはその後。朝になりそうだナ」

「まじで... 」






ZENもくじ ZEN【201】につづく。





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