GALE【357】
突然の春の雨―
隔週火曜日の『カフェ・ヴィノア』店休日。
パールは今日の店休日は『Golden wheat』に行かない。
朝早くから庭と森の手入れ業者と共に森に入っていた。
が、突然の雨、それも長引きそうなので中止。
パールは急いで森の中から店裏の勝手口にずぶ濡れで入った。
走ったために土に雨の跳ね返りで足元は泥塗れでシャツにも髪にも泥がついている。
ひい。と言いながらクリア機をアジした。とき、あ。と人の声。
やべ。と思って手の中に現したクリア機を消した。
誰かと思えば、マチルダ。
「な、んで?今日は店はない」
「アブねえ。俺じゃなかったらどうすんだよ、見えたよ今。店なく
とも今日は週2のシフトだから ご丁寧に何か店休日じゃなきゃ
出来ないこと手伝おうと思ってさあ~ 」
マチルダはパールにクリア機を掛けてやった。
「ありがたいが、それは邪魔とも言うのを知らんのか」
「邪魔なもんか、上ではクリスティーナが陣取ってる。上に
行ってもグレースは空かないよ。よかったろ?俺がいてさ」
「何で?」
「気になるなら上に行って参加すれば?ふたりの妻 の中に」
「ははふふはは...よす」
「フフフ。パールは豪く複雑な環境だよね。で、何しよ?」
「店休日のシゴトはこの大雨で取り止めだ。俺もヒマになった
こんな掃除用具の部屋に長居するか?店行こ。珈琲 淹れろ」
「お前、ジェイソン様様だな?男前になってきた」
カウンターの中で珈琲を淹れるマチルダに、カウンターを挟んで座ったパールが言った。
マチルダはむすっとして、可愛いと言って欲しい。と言う。
「まだそんなこと言ってやがる。まさかジェイソンが恋愛対象」
「そんなんじゃねえ。それは違う、本根 歌だけだ
それで、まだレッスン漬けだけどいい感じだよ?」
「そか。はは...お前 やっぱ変わった。よかった乳離れして」
「ちち...グレースっておっぱ 」
言いかけたマチルダをカウンター越しにパールが殴ろうとした。
その瞬間にマチルダが消えた。
「!」
消えた?と思ったらカウンターの下から、見つけたっ!教えなさいよっ!釜野郎!と叫ぶエヴァの声。
エヴァがサジして現れ、マチルダにアタックして倒した。ようで―エヴァはマチルダを下に組敷いて跨り、首を絞めていた。
パールは面白そうだと思ってカウンターの上方から眺める。
グレースが慌てて降りて来て店に入って来た。
それをパールが見止めて―こっちに。とグレースを横に座らせた。
「珈琲の匂いがするといって下に降りて...クリスティーナは?」
「フランシスをクリスティーナが問い詰めてる。この中で」
え?とグレースがカウンターの中を覗き込むと、エヴァが上でマチルダが下の、まるで抱き合っている模様。
何も会話してないのでグレースは不思議そうな顔をした。
「はは、睨み合ってるんだ?持久戦かな。雨で暇になったのに
君をクリスティーナに取られてた。放された。どっか行く?」
「ふふ、レピース...放って行くの?」
「何だよっまた失恋なっ!?知ってるよっ自分の同情!」
マチルダが突然喚いた―カウンターの下で。
「ゲイルは関係ねえ。そこだよっ、カナンに映んないのに何でお前
には見える?そこ俺の方が知りたいよっ知らんものは知らんっ!
そ―ゆ―の王しか知らんのっでもジークだって船長ほど知らんて
だからな、責める相手間違ってる。船長んとこ行けっ!」
エヴァがすっくと立ち上がった。
パールとグレースがそこにいたこと にドキリとしたが、冷静を装ってパールに向いた。
「ボス、こいつを火炙り服の刑にしましょうか」
パールが飲んでいた珈琲を少し噴出して―大笑いする。
「ここでそれ言うなっ...フランシスから何を聞き出したい?」
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