GALE【319】
「怪我しているのに放っておけないわ?私は構わない
どうせひとり旅。道中、話し相手が出来て嬉しいわ」
「でも、ハルースとかみんなと一緒に居ただろ?」
「そんなにひとりになりたいの?」
「え...いや...ありがとう」
リータスはルイが自分の横に居ることを許して―薄暗くて果ての隅までよくは見えないこの空間を一周見渡した。
薄暗い照明だけの冷たい鉄板の床のフロア。
ただ広いだけのこの部屋に何人いる?
あの人の塊は100は居るように見える。
天井はさほど高くない...船底...船底........海賊船?
ひとつところに塊になっていた人たちがざわざわと動き出した。
遠目で見ていると一方方角に向かって並ぶ形態を取って行く。
ルイが、配給よ。行きましょ?ソムンに会わなきゃ。と言った。
「行って来るよ」
「ついて行くわ」
「え...あ、ありがとう」
リータスは部屋の扉の開いた隙を突いて脱出し、ブリッジに行こうと思ったが、何故かルイの申し出を振り切れなかった。
このままホンモノの不遇な旅客をするか...。
リータスはルイを横に人の並ぶ脇を抜けて列一番前の扉に行った。
他にも扉はあるが、どれも硬く封鎖されている―牢並の。
夕食の運ばれる開かれた扉では数人の労働者身形の男たちが丁寧な口調で並んでいる人々に食事を配っている。
その様子を一瞥してリータスは困っている表情をして食事を配る男のひとりに声を掛けようとした。
そのとき、扉の向こうの廊下を涼しい顔をして歩いているラウルが目に入った。
ラウルは他の男たちと同じ粗末な労働者の服装だが、あのとき凝視したあの顔と端正なルックスを忘れはしない。
なんだ...?!ふざけた変装しやがってっ!
リータスは食事を配っている男たちの前を抜けて扉を抜け、ラウルを捕まえようと俊敏にラウル目掛けて飛び掛った。
ラウルは呆気なくリータスに囚われて体勢を崩し―リータスを抱え込んでその場に倒れ込んだ。
「お前!どういうことだっ!俺に何させたい?教えろっ!」
ラウルはリータスに襟首を掴まれて苦しい顔をする。
咄嗟のことに周りにいた人たちが少しざわついたが、配給の男たちが制して―配給を続けた。
ルイも制されて―心配そうに部屋側から黙って見ていた。
「騒ぐな。目立てば不法入星にしてソラに放り出すぞ」
ラウルは自分を捕まえたリータスの手首を解きながら笑って、パスか?と言ってリータス用のバスを渡して―また笑う。
「! ...どういう?」
「お前のことだから脱出しようって?訊ねてくると思ってた
しかし、暫く動けないようにしてたのに...もう元気だな?」
「訊ねるって...はあ?気を失っている間に殴って足まで捻ったか」
「そう怒るな。なあ、黙って戻りナよ?」
「黙れるか!教えろ!このままここでどうなる?」
「知ったことか。殺さなかったんだ。生きろよ?」
「何故、お前がここに居る?」
「ふふ、ここが海賊船とは?誰かに訊いたか?」
「これは【真夜中の騎士】か?」
「ぐはは―っ!バカな!こんな黴臭え船なわけねえ
乗っ取ったんだよ。だから俺たちがここに居るの」
「乗っ取った?...たち?なら、ギーガも?」
「うん、居るかも」
「救済か?ここの人たちを、」
「あのな、助けて欲しいと思ってない人を誰が助ける?」
「略奪か...?」
「横取ダナ。誰も助けには来ないのダよ
そういうわけでお前も運命を共にしろ」
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