GALE【330】
そして今―ラウルはエヴァとギーガが交した約束を知らない。
ギーガはラウルに追い払わせたラプチアナ隊員がリータスとは知らない上、ラウルに追い遣られたリータスの状況も知らなかった。
『Golden wheat』にいたエヴァはパイから、リータスが現れた!とラギ受けて―留守中のパールのPCを開けてリータスを見詰める。
心の中で狂喜乱舞のエヴァ―顔が緩んでしかたない。
リータスが本当に私を...ああ、どうしよう...この船に行くべき?
いえ、私は【真夜中の騎士】から出られない囚われの...様子見。
そうよ。リータス、もう貴方に私はいらないわ。
何て素晴らしい男になったの!
よかった...嬉しくて仕方ないっ!
そして、何て言う?とギーガを責める屁理屈を楽しく考えていた。
リータスは今日のこのときまで軍人になってラキスを掌握するも、エヴァだけが心の支えであり、自分を安全に逃がしてくれたエヴァとの約束のために―必死で生きて来た。
しかし、冷たい鉄板の床の上で意識を戻して・・・。
エヴァと連絡も出来なければ、自分の安否を知らせることも不可能な事実を知ると一度に全てを失った気がして、自分が風に舞って漂いやがて凋んで行く風船のように思えた。
ラウルは、川の流れに逆らうな。と言った。
風に舞って身を委ねる風船と同じだ...。
そうであっていいと言うことか...いや、それはわかっている。
抵抗なく流れれば、着くはずのところに届けてくれる。
それは知っている。
あ...そうか.......この船にはギーガが乗っている...。
難なく目的が果たされそうなその寸前に居る。
クリスティーナはこれを知ってるだろうか?
くそぅ........持ち駒はここに居る人々と...ルイ。
リータスはルイと体を寄り添わせて与えられた毛布に包まり、ふと真横に居るルイを見遣った。
ルイは可愛い寝顔をして眠っていた。
ルイは幸せそうだ...。
リータスの頬に思わず笑が浮かんで―気も緩んだ。
リータスとルイの様子を観ていたエヴァにリータスの想いが伝わったわけではないが、その顔に優しく笑が零れた。
そこに、おい。と男の声がした。
エヴァはどきりとして咄嗟モニターを消した。
が、ゼルダが既にエヴァの横に椅子を持ってきて座っていてエヴァの顔を覗き込んでいた。
「な、何よ?」
「どうすんだ?あれから数年...何も訊かなかったが」
エヴァは体のすっぽり入ってしまうとても大きいその椅子にはみ出んばかりに頑張って両手を肘掛に広げて踏ん反り返って足を組んでオホホホ!と笑った。
ゼルダはちっさいエヴァの 背伸び が可笑しくて、何を無理してるンだ?と言って笑った。
エヴァは椅子をくるくる回転させて顔だけゼルダに向ける。
「船長は間抜けと言うか...お前を信頼してるからな...裏切るの?」
「裏切るですって?人聞きの悪い」
「お、お前、処女だったよな?リータスに処女を?」
エヴァはゼルダの突き出していた右膝を狙って自分の足を精一杯伸ばして思いっきり蹴り上げた。が、エヴァの短い足はゼルダの膝を掠っただけだった。
ゼルダは椅子の上で転げて笑う。
むっとしてエヴァは立ち上がってゼルダの後頭部を殴った。
「! ...ぃいっ、」
「ぶぁっかじゃないのっ!?あんたみたいな下半身野郎
それしか脳なし?!誰が今更処女よ、失うのよっ!!」
「何だよ、アリオンに操立てて処女するって宣言したじゃ
ないか。あれから何百年生きてて処女だ?カビ生えてる」
「何で話がそっちに行くのよ?質問が違う」
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