【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

かんろあめひびきわたるうたげ 長編涅槃活劇[100禁]

ZEN【101】循環に触れる

2009-11-06 | 3-4 ZEN




 ZEN【101】


その夜―。

菊之丞が風呂に入るために2階の自室から下りて
来たとき、リビングから誰かの話し声が聞こえた。

こんな遅くに...あの声は...パール?!

こんばんわ。と言いながらリビングに入るとやはりパール―
身長190超えるパールはソファに座っていても巨人に見える。

そしていつものド派手な光沢スーツ―今日は玉虫色。

玄関にはネオンピンクのエナメル靴があるのだろう。

パールの正面にはエマが座り、横にアースがいた。

「よお、菊之丞。まだ起きてたのか。勉強か?女か?」

「 ...またくだらないことを...何してるの?珍しいね?パール
 羊飼いが忙しくなってもう来ないってこの前お父さまに言っ」

「そうだが、そうだから緊急で来たのだ」

そうだ、菊之丞、お前が選べ。とアースが言った。

「は?」

「お前は今日、テラからマリンとジュリンの話、聞いたんだろう?
 だったら話が早いっ。あいつらパールの女地位の『フラゼッタ』
 のボスを殺ったんだ、予定はそいつの裏切が発覚したから捕えて
 パールの拷問の上の処刑。それを兎ちゃん、気を利かせたつもり
 か執行。だから緊急。今、エマに次のボスを選んでくれと依頼中
 だった。内情しらなくてもエマが選ぶと間違いないからな」

「そうなの...?」

菊之丞に寄られてエマは相変わらず、ふふ。と笑うだけ。

お母さまこそ様々なこと沢山知ってて何も口で教えてくれない。

パールとエマの間のテーブルには女の人の顔が沢山並んだシート
10枚―『Golden wheat』を背後に持つ女性社長がこんなに沢山。

「そうだな、エマは『フラゼッタ』に出入あるから人柄を知るコ
 いたりそうでなかったり、私情入るからお前が選ぶがいいかモ
 お母さまは決めかねているんだ、息子が助けろ」

パールが菊之丞の体を抱込むように捕えて自分の横に座らせた。

「助けろって『Golden wheat』の中の問題」

「それはイーギンの問題でもある!」

「あ、お父さまは?」

「あいつは今夜はパーティーだ。何のパーティーか知らんが」

「それでレイラもいないのか。いたらレイラが仕切ってる?」

「あいつは『Golden wheat』とは無関係だ」

「ふうん」

「そうやって引き延ばすな、瞬間でコレ でいいから決めろ」

「でも...要は...次のボスになったコは真っ先に殺される?」

「お前はそういうことは考えなくていい」

「やだ、そんな責任」

「俺が責任負いたくないからだっ」

アースがソファから落ちて笑った。

それを脇に菊之丞が、だったら詳しく話を。と言った。

パールが、詳しくって何を?と訊く。

「高校生だから知ってもいいとテラが言ってくれた『クワロフス』
 や『Golden wheat』の意味は、リュディアの書を読み始めた.から
 そこは訊かない。質問なく受容する。禅寺のそれと同じだろうと
 解るから。しかし殺った殺られたとか抗争とか 一体誰が誰と?
 どうして?何の理由で?そういったことをちゃんと知っていたい
 話が出来るひとりの人間として扱われたい」

「菊之丞.....解った。だが、エマはそこには一切触れず了承する」

「え...そうなの?」

エマは、ふふ。とひとつ笑った。

「エマの姿勢はカッコイイと思わないか?」

「う、お母さまはレイラみたいな闘争に関わらない女性だ
 だから血汗関わる厄介事情を知らせて心配させたくない」

「イーギンはお前にもそう思ってる」

「完全にそう思ってるならパールやアースがうちに出入しない」

「あはは、イーギンが嫌がったのを無理矢理入り込んだのだ」

「え...や、だったら、だ。だったら俺に教えたい、だろ?」

「あっはは。こいつ」

「パール」

「そこだけは...お前に教えるかどうかはイーギンの許可がいる
 今はまだ学業一本で。と言いたいが、兎ちゃん事に関わった」

言いながらパールはSPを取り出して、ちょっと待ってろ。
イーギンに聞いてくる。と言ってリビングを出て行った。

何でここで話さない?と思ったが―他の話もするのか。と思う。






ZENもくじ ZEN【102】につづく。





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