EMA【54】
感心感激と謎が頭を占めつつエレベータの前まで3人で来て警備員にお礼を言って別れてオットーはエマに、ひとつ階段を降りよう。ここじゃ拙い。と言って階段に誘った。
「あの、警備室では?警備員さんは、」
「いや、違うんです。貴女を呼び出すために嘘を言いました
あ、早退ということにしましたが、バイト代は出ますので」
さっさと歩いて行くオットーに走って付いてエマは、そうではなくてどこに?と訊いた。
「あ、えっ...社長室。あの場所でしたので、挨拶が後になって
しまいましたが私は社長執務オットー。宜しくお願いします」
振り返って直立不動になり、深々とお辞儀をして挨拶するオットーにエマはびっくりして、どうして?!何ですか?と訊いた。
オットーは、話は後。と重役用エレベータにエマを載せた。
エレベータの扉が閉まって―ホッとした。
難関突破―しかし、何だか笑えてくる。
社内で身分隠すは初めて―それが何だか妙に面白かった。
「あの、どうして?社長室?」
「社長のサプライズじゃないですか」
にこにこして言うオットーを観てエマは益々分からなくなる。
「済みません。口止めされてるんです。『lu・lu・HANA』でも
社長が呼んでいると言えば、話は早かったのですが、社長が
貴女を思ってそれはダメだと仰いましたので...苦労しました」
「私を...思って...?」
身に覚えのないことにエマは困惑頻りとなっていった。
エレベータの扉が開いて―夢のような美しい光景が広がった。
真っ白な大理石の床の広がるフロア、ずっと向こうは天井高く全面ガラスの壁―夕方の夏の空が広がっている。
大きな観葉植物やシンプルなソファやテーブルが疎らにあるだけの―まるで空の中にいるような錯覚を覚える。
見蕩れているエマに、そんな光景は今更毛ほども感動しないオットーの、こっちです。の誘導。
慌ててエマはオットーに続いた。
廊下右側は扉が幾つかある、それらを通り越し、左側は先程のガラス壁の続くまま、空中庭園たるやの中庭があって緑一面、その先の室内は全て中が見える―秘書室。
さっき居た秘書には、今直ぐ帰ったら明日すてきな話を教えよう。と言ったら、喜んでとっとと帰社してくれたのでもう誰もいない。
安心してエマを案内してきた。が、PC画面の隙間にひとつ、頭が見えた。
誰だ...どうしよう...。と思ったが、今更引き返すも出来ず。
オットーはエマを連れて堂々秘書室に入った。
顔を上げてこちらを観たのはエミリ。
エミリ...居たんだったら助けて貰ったのに!と少し悔しい。
オットー、いらしたんですか?お疲れ様です。と言いながらエミリはオットーの連れている女性に気づいて?????の顔をした。
エマはエミリに挨拶をしようとしたが、オットーがふたりの間に割って入って、後で話すから何も訊かない。と言った。
一瞬ポカンとしたエミリが、はい。と言ってPCに戻った。
エマもまた今度も―何が何だかわからない。
オットーが秘書フロアを通る広い通路をエマを伴って歩いて突き当たりにある大きな観音開きの扉のノブに手を描けたとき、扉が自動的に開いた。
そこにイーギンが居て、オットーが、あ?社長、と言うも聞こえず―イーギンはエマを真っ直ぐ捉えて、エマ。と発した。
カナンで観ていたイーギンはエマが到着するまでかなり時間要して更に秘書室でもたついているので居ても立ってもいられなくなって自分から扉を開けてしまった。
エマは記憶が薄らいでいたのか、眼鏡を掛けて且つスーツに髪型の違うイーギンにイメージが合わず、それが誰だかわからない。
が、よく凝視して―びっくりして少し後退した。
「え...イーギン?!」
「あ、すまん、容姿も違ったか、早く入って!」
イーギンには最早オットーもエミリも視界に入ってない。
かなり緩んだ顔をして―獲物を捕えて巣に吸い込む蟻地獄のようにエマの肩を抱いてすっと扉の向こうに消えていった。
途端、エミリが、はああああああっ!?と奇声をあげた。
「ちょ、今の何っ?!あれ誰っ?社長の今の顔、見た?!
イーギンて...名前で呼んだっなのに驚いてた...何でっ?」
「 ...実は結婚してるらしくて...でもまだ恋人だとか...そこよく
わからないんですが、自分の恋人が社長と知らずにバイトに
来てて、社長も彼女がバイトに入っていること知らずで、」
エミリは話半分でひとりで狂喜乱舞であわあわ叫んでいた。
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