【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

かんろあめひびきわたるうたげ 長編涅槃活劇[100禁]

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2023/05/30~

 第5幕 聖戦 LICALD/第2章 CECIL 連載中  

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サイドバーの  は 完結の章
2024年01月01日

【甘露雨響宴】以外のNOVEL

Celebration Rain 獣人NOVEL

晴天天子 絵本NOVEL





 執筆予定表
第5幕 聖戦 LICALD/第2章 CECILANA
終 幕 NIRVANA



TELIPINU【307】拾う人は拾う を叡智る

2009-04-14 | 1-2 TELIPINU




 TELIPINU【307】 


「9尾の狐はリュディアと交流してる...13次元とこの世の3次元
 その間の次元も自由に行来出来る唯一の存在。それワタクシ」

「うんうん」

「9次元から3次元の間には9尾の狐の仲間がいるけど、13次元
 が住所の狐は9尾の狐だけで...だから狐のボスだけど13次元の
 生命体だからその意識は上下関係じゃなく...仲間をそれぞれの
 次元に派遣してる?みたいな...それで、9尾の狐は人の魂全て
 を13次元まで引き上げるためのボスに在る...でいいのかな?」

「わかるよ言いたいこと。リュディア=13次元の9尾の狐 だ」

「うんそう。で、人に身近に神様として知られている御狐様は狐
 派遣の一番下、彼らは悪戯好きで揚豆腐が好きで振動数は英雄
 宗教の人と同じだから欲の強い人ほど接触出来る。でも四次元
 グールのような爬虫類みたいな血や涙ない冷徹無感情じゃない
 から根は温かいからグールより次元が上だから人に見えない」

「うん」

「彼らは欲深い人間の願い事を利いてくれる。お礼は揚豆腐ね?
 それは9尾の狐の指令なの。5つの毒を持ったことがない人は
 5毒を持つ経験をして、その後、ああこんなものいらなかった
 んだ?って気付いて、そしてあっさり捨てて、さて次は?って
 魂の次のステージに進む」

「うん」

「宇宙全ての生命体がそうなるその期限は決まっているから皆が
 早く、5毒を手に入れて捨てるという順の経験の応援隊として
 御狐様が人の間近に居るの。その御狐様も会うことも出来ない
 のが総ボスの9尾の狐」

「ホントにラオウは自分がリュディア后だと知ってたんだね」

「レッディ...うん...今考えると夢の中だった?ふふ」

「この世に生まれる前にこの世で何するか決めて生まれるだろ?
 それは脳には記録は残ってるけど生まれたときに忘れてしまう
 ラオウは忘れなかった」

「レッディ...そうなのね」

「人は3次元うろうろしたまま生を終るか、13次元まで突破して
 生を終わるか、どちらかだ。後者を促すのがリュディアの存在
 ...9尾の狐。そうかあ、自分で理解したんだね?5年の間に」

「 ...うん。あ、見て?レッディからの贈物よ?」

言ってラオウは寝室の衣装部屋に歩いていく。

「贈物って今髪につけてくれてるじゃないか、」

「これよ、銀狐の尻尾!ふふ、腰飾出来上がったの!」

ラオウはふかふかの銀狐の尻尾をレッディに持って来て見せた。

「そうか、ラオウの分身だ。彼(銀狐)から色々教わるんだね」

「そう!レッディ、ありがとう!」

「うん。俺はラオウの存在が嬉しい。そして頼もしい」

本当に―ラオウらしい姿に変容したなと感じる。

もっと経験して―深みのある女性になっていく。






ハシドとアジモルの戦のとき、インリ国から要請あって背後威嚇だけならと金目武隊は加勢に出掛けた。

そんな風に―リュディアが見える国、リュディアが見える人には今の時代は嬉しく力になる。

それはテジとキスグィンとレイリィオンが仕掛けた。

やがて一旦は跡形もなく消えてしまうことは解っている。

しかし、世界にリュディアを敷いておく行為は必須―
それを思い出し掘り起こし 拾う人は拾う を叡智る。

戦でなくとも英雄宗教では 離間 美人 苦肉 何でも直ぐ効く―そんなことの全く効かない人の世になるために。

その後―リュディアは紀元前5000まで続いた。

その頃―英雄宗教の人にはリュディアが見えなくなった。

英雄宗教の本格的到来が来た。

レッディはリュディアを離れるときナーロンの全てを手放した。

そのときはじめてひとり不老不死になって―長い旅が始まった。

紀元前1000年 宇宙船【真夜中の騎士】と出合うまで。

リュディア界隈をひとり―ギーガの名で生き続ける。



TELIPINU【完】






TELIPINUもくじ SAMSARA【1】につづく。




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TELIPINU【306】レッディ70

2009-04-14 | 1-2 TELIPINU




 TELIPINU【306】 


金目武隊は―あれから5年丁度にリュオル城に戻った。

皆で最初にガルーラに入った。

城は何も変わりませんが王も皆も変わりなく。とロルク。

「たった5年だ。城に戻りたくとも、あれだ、ユマが喧しいから
 サジ円あるのに?と思うけど我慢した。5年城開けたがそれは
 自由阻まれるなと感じたよ。辛かった。しかし ラオウが20に
 なったからそれはもうないだろうが」

「ははは、しかし不死の剣を考えれば もう5年。王はどういう
 つもりですか?希望者を募れば10年毎に金目が8人ずつ増えて
 ドラー何号だったかのあれ...不死部隊、本当に出来てしまう」

「それな、俺もそれ考えた。折角の奇異の国リュディアだから
 いっそ本物の1000人超え不死部隊作ってやろうかと...思った」

「本気?10年毎に血肉切り落とすも」

「う― 」

「はは、いいじゃないか10年の間が空く。そのうち
 金目はリュディアの遺伝ということにしてしまえ」

「そうだな、金目が増えるとは、逆に未来は英雄宗教に蔓延る
 グール連中と接触しなくなるだろ。見えない抑止力と思える」

「だな。グール流入警邏に力入れるより接触しないこと何より」

「では希望解禁で」

「ああ.......ふふふ。そして皆でヒマに忙殺されるのだ」

「結局は王の道連れだよね?ひとりは寂しいから」

「わかってくれるならお前も希望出せ。イザク」

「あ―考えとく」






ラオウは20歳―とても綺麗な大人の女性になっていた。

ユマと同じ衣服を纏って―昔と打って変わって神々しくもある。

中身が充実とした言うことなんだな?やはりラオウは后だ。と言って笑ったレッディにラオウは、うふ。と照れて笑い返した。

ラオウの笑顔に―本当に綺麗になったな。と感心してレッディは思わずラオウを抱き寄せた。

身長近くないラオウはレッディの胸にすっぽり収まって、ドキリとして身を引いた。

「え、何?どした?」

想像しなかった反応にレッディが驚いて—少し屈んでラオウの顔を覗き込んだ。

「あっ私...レッディが私を好きって知ってるのに胸がきゅうって
 痛くなったのよ?何これ...息が出来...しにくい、つまるうっ!
 不安になったの?何なの?」

「あ―俺が好きとか関係なくて、まだ20だから未来が見えなくて
 戸惑ったんだろ?はは、何だよう、5年留守したら俺は遠い人
 になっていたのか?年を取ったら何が起こっても何をするでも
 先が見えてしまうから胸が痛いなんてなくなる。それは残念な
 ことだ。俺だって若いときはそうだった、それ大切にして」

「そう...なの?...びっくりしたあ...でもまだ痛い... 」

「病気じゃないよ、未来は未知でいるときが素敵だ」

「レッディ...皆そうなのね?私だけじゃなくユマもテリピヌも
 ソーマも...若いときはこういうことあったってことなのね?
 レッディと一緒にいてよ?」

「それ俺に訊くの?ああ、でもユマもテリピヌもうんと言うよ
 でも突然胸が締め付けられるようなときめいたりすることは
 俺にだけじゃないよ、ラオウが愛してる皆にそうなる」

「あ...ユマに会って嬉しかったとき...同じだった!」

「そう、そういう感情。愛してるとき だ。相手は関係ない」

「あ―あ―わかった... 」

「ホッとしたか、よかったね?神様でも初めてはある。フフ」

「ヤダもうなにそれっいつの話よっそれ凄く過去だからっ」

「え、神様やめたの?」

「ぷぅ...狐はね、狐は判ってるのよ、未だ昇進中!」

「あはは、そうか。ところでそれ教えて。ラオウから聞こうと
 思って誰にも聞いてない。神官にも聞いてないままだ。話せ」






TELIPINUもくじ TELIPINU【307】につづく。




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TELIPINU【305】テジに会う!

2009-04-14 | 1-2 TELIPINU




 TELIPINU【305】 


ある日、ギーガが、今日はスティヴと組む。と言った。

理由を知るテリピヌは無関心でヴァプラとお喋り―
察しのついたレイリィオンは、くすっと失笑した。

ハウヴィルもだいたいのことは分かる。

「何がしたいのか判ってる。数日戻らないの
 だろう?テリピヌとヴァプラも連れていけ」

「思うに、ギーガとテリピヌだけが先に戻って
 スティヴとヴァプラが遅れて帰って来るな?」

ツキンが言って―ヒウサスとバーモンが、今頃?と言う。

「何だそれ?」

「お前が何しようとしてるか知らないとでも?馬鹿か
 だから今頃やっと行動開始かよ?って思ったんだよ」

不満気に唸るギーガを鬱陶しそうに、早く消えろ。とヒウサスが追い払って―テリピヌとヴァプラが、私たちも?!と驚くも無視して4人一気にサリア城から追い立てた。






ギーガたち4人がいなくなってレイリィオンが、色々憶測飛び交ってるな?と言った。

「何だ?違うのか?そろそろあれから3ヶ月だ。サーシル商会の
 お嬢様が妊娠してようとしてなかろうとスティヴを気に入って
 るから取っ捕まらないよう配慮して連れ出したのかと」

「お―ツキン、それもあるか。俺はそれ忘れてた。ははっ」

レイリィオンが笑って言って、テジだ。と加えた。

「あ...サジ円あるから距離考えなくていいのか」

「レッディは自分が会いたいのを父親が死ぬ前に息子として会え
 云々言い包めて、テジの居場所突き止める気だ。すると帰りは
 スティヴ残してくるだろうから、ひとりよりはと双方に女性を
 つけた。ヴァプラは国境以外の初外国、嬉しいだろう」

「ハウヴィル...なる」

「で、テジは何処にいるんだ?レイリィオンもいた場所だ?」

「黒海の北だ」

「んな凄え遠い...だから春になるのを待って?」

「そういうことだろう」

「あ―お嬢様は無事懐妊したそうだ」

「えっハウヴィル、言えよ其れっ」

「はは、すまん。もう会うこともないと思ったら忘れていた」

「もう会うこともないか...そうだな」






―3年後。

ハシドは南西隣国アジモルと戦を始めた。

南北に縦長いシハドの南の戦だから戦の余波すら聞こえてこないが、厄介...ハシドが隣国だけに難民回避のシゴト増える。

また、南の商人たちは北と東からの流通物資と人脈を欲しがっていたが、そんなことよりテーラ国で大儲けできる歓喜だろ?と思っていた。

そしてドラゴン騒動に安心してナホリー国境は等閑にしていた。

ら、そこに外国人流入の穴が開いていた。

南の商人たちはテーラ国のウファ領に宿と商品を安全に纏めて、クムーリまでナホリー国境から北上という楽なルートを確保し出し―クムーリは賑わい増す結果となった。

思ってたのと違う。すっかり油断していた。

がまあいい。賊ではない品行方正の商人だ。

クムーリは以前よりも溢れんばかりの人となったが、外国人には
相変わらず処刑ありの髑髏の国のままリュディア人には安寧国。






TELIPINUもくじ TELIPINU【306】につづく。




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TELIPINU【304】サリア城滞在

2009-04-14 | 1-2 TELIPINU




 TELIPINU【304】 


金目武隊は振動数のまるで違うリュディアに寄せたくないグールと出遭うことがない。と明確に判って―セギから騎馬で警邏しつつサリア城に向かうを変更してサジ円で即サリア城に入った。

春にサリア城の予定だったが、まだ冬の中。

貴婦人の小城だったサリア城は現在は堅牢の要塞城。

ジルフォ隊が常在して隊長が城主を務め、数多くのルーン隊が暮らし、外国出入するネハクもミゲル隊も常に誰かが寄っている。

戦中か?と思える兵数だが、城に居ても皆ヒマ。

その毎日は近くの町や村の商いや畑の手伝いに出払っている。

賊討伐や処刑沙汰はパド兵士を作ってから殆どないからだ。

実際常在は城に立ち寄ったネハクとミゲル隊、城主と側近、衛兵にラーマ隊が少し—彼らはヒマに殺されそうなほどの腑抜け顔。

金目武隊到着に彼らは歓喜したが、何が嬉しいのか―知らない顔と知り合えることは嬉しいが、24時間365日 緊張も血も汗もない平和な世界に戦士は必要ない。

不死など更に無用の長物。

生きてスルコトないサリア城に住む彼らは芸術をしていた。

書道華道・武道・絵画・音楽(442Hzではない)・彫刻・建築・家具・衣服に装飾・舞台・舞踊・詩編・朗読・様々な観察観測。

そんな実際を観てギーガたちは―ここはナーロンか?と感激。

口でヒマと言いつつ皆で愉しみみつけて活気に満ちているのだ。

他の要塞城もサジ円で回ってみるとどこもサリア城と同じ。

多忙に追われるシゴト場所は関門と外国人の通る国道のみ。

そこで―金目武隊も3つに分かれてサリア城の兵と同じように国内の(警邏は必要ないので)町や村に手伝いに行くことにした。

今はもう何かあれば直ぐにラギとサジ円で駆け付けられる。

外国余波ない限り―これから100年以上リュディアを愉しむ。






サリア城滞在中―ギーガとテリピヌはいつもふたりでいた。

「今なら判るか?...妃位置は何か」

夜―ふたりひとつの寝室でギーガがテリピヌに声を掛けた。

「レッディ...はい。ユマ后の意に...本当に嬉しく」

「そうだ。俺が何処に行こうと一緒に居ることだ」

「言わずわかっていることです」

テリピヌは嬉しい感情を表情にして言う。

「この年まで来て...どう表現すれば理解貰えるか
 わからなかった。伝わったようで...よかった。」

いつまでも相手の気持ちに不安して一喜一憂に酔い痴れる恋しかしない少女ではない。

リュディアに居てギーガに愛されてリュディアの皆に愛されて―愛を叡智った。

相手の気持ちに理解及ぶ。

テリピヌの短い言葉が—そう言った。それがギーガに伝わる。

しかしそれは―テリピヌに甘えていることとも言える。

ギーガが外国人女性を相手に出来る―にはまだ遠い。

しかし、テリピヌに自分の幅広がるは求めていなかった。

テリピヌにはテリピヌとしてただ純粋に溺れ惚れていた。

テリピヌにギーガのそれは今も判り難いがユマは知っていた。

あなたがいてわたしがいる。わたしがいてあなたがいる。

わたしたちはささえあう。そして、皆で輪になっていく。

温かい女性の抱擁をいつまでも覚えている。だから生が楽しい。






TELIPINUもくじ TELIPINU【305】につづく。




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TELIPINU【303】英雄宗教は私を怖がる

2009-04-14 | 1-2 TELIPINU




 TELIPINU【303】 


「外国人には俺たちはグール(悪鬼)に見える...確かにそうだな
 俺たちが英雄宗教に入って英雄宗教脱出促せばダキニ天が焦る
 餌としてとらえた人間たちを逃すわけにはいかないからな」

「はは...それ宗教ドラーが逆手に取って使いそうなセリフ」

「俺たちが見えないつまり亡霊として見えることが凄いこと
 なのか、フツウに人間として見えることが凄いことなのか」

「今思い出したんだけど、俺たちって英雄宗教の人間に会うけど
 強烈にエゴ強い人間と会ってなくない?例えば王侯貴族連中は
 こんな場に居ないから会うことないのは当然として、極悪強盗
 とか貪欲ヘロルとか...サーシル・クイのカンナとも縁ないまま
 時間経って風化の域だ」

「会ってるかもしれないが、双方で気付いてない?」

「じゃ俺たちホントに亡霊?」

「はっ。だったらサーシル・クイの使用人に会った俺とギーガ
 はどうなんだよ?...や、あの使用人は強欲ではないってこと
 になる...つまりそういうことか?」

「あっはははっ!俺たちがどれだけ英雄宗教の外国を徘徊しても
 恐怖心や猜疑心、不安にまみれた人間とは掠ることすらないと
 いうことだ。俺たちを奇異の目で観ない人にはフツウに接触が
 起こって平穏交流、奇異の目で観る強欲輩には観られることが
 ないから物の怪噂が立たないのかっ?そういうことか?!」

「はあまじか...徒労か?金目武隊目的換えて出直しじゃね」

「ホントだ。そうなるな?」






月夜と出会ったことは天啓と思えた—納得した。

そして思うに―今の時代は未だ皆リュディアという国が現実の世に見えていて接触もあるが、そのうち時代が流れて世界中が英雄宗教に覆われる時代にはリュディアはここにあるのにリュディアを知らない人だけになるのだろう。

そのとき、その時代—英雄宗教に生きる人の中で俺たちが見えるのは極僅かな...魂清い純化を叡智る人だけとなる。

だから実のところ、今は英雄宗教に完全洗脳されている人の方
が少ないのだ—リュディアを知りリュディアが見えるのだから。

月夜は俺たちを怖がった—月夜から見た俺たちは恐怖の大魔王。

英雄宗教はリュディアを怖がる。

忌もの、くだらないもの、と睥睨言葉を並べて自己防御する。

自分が正しいと思ってきたことの全てが引っ繰り返るからだ。

それは彼彼女たちに最悪なのだ。

しかし、リュディアは人の魂の真実だから何万年経とうと永遠にここに存る。

四次元のグール(悪鬼・妖怪・宇宙人・幽霊)の餌となるための競争を止めない英雄宗教は虚だが、洗脳された人たちの思念虚構が永遠継続されるなら—それは地球の人の現実として永遠続く。

グールは決して逃さないよう何重にもダキニ天という網を張る。

英雄宗教を愛し已まないまま生を終える人の魂は死して生まれる度に彼らの餌となるための人生を歩む闇に閉じ込められている。

この世はおかしい?と助けを求めて英雄宗教の人の作った精神
世界や哲学、宗教に嵌れば—それもまたグールの仕掛けた罠だ。

罠抜けはリュディアにある—自分が神と気づくこと。

自分―神は愛しか知らない。競争や恐怖を知らない。

『自分だけが』楽しい嬉しいを知らないこと—が愛。

愛ある人は『自分だけが』楽しい嬉しいを望まない。

もし『自分だけが』楽しい嬉しいを望んでいるならそれはグールの罠の中、英雄宗教の汚染の中に居て自ら闇に居みたがる希望。

己のことは天に任せて己は他者のことに100%動く(夫から愛される母は子にそうするそのように)―そこに解凍が起こっている。

それが愛を叡智る人であり、英雄宗教の脱出成功者だ。

それは正直と素直と純と清の勇気ある人しか出来ない。

その3を持つことが、地球人の全員、人生の到着点だ。

5毒を持つこと―英雄宗教の人の言う人の成功はグールの罠。

だが、人々は自分の素直な感情を忘れてこういう時はこういう風に感じるものと植え付けられた〝自分ではない他人軸〟の感情で生き、思慮失って知識量を重視し、簡易で便利を求める陰鬱堕落罠に落ちる人の方が多い。

これからの時代、そのような人が増えるのだろう。

リュディアのスルコトは増えたそれらの減ることに力注ぐ。
万年後 地球人口8%が英雄宗教から脱出あるよう力注ぐ。






TELIPINUもくじ TELIPINU【304】につづく。




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TELIPINU【302】清濁融合は福量と成り

2009-04-14 | 1-2 TELIPINU




 TELIPINU【302】 


『てことは俺たちの話は聞こえないのかな?』

ギーガが小声で言ってレイリィオンが、黙ってろ。面白そうだ。月夜という者、英雄宗教の中の英雄じゃないか。と言った。

『そうだな。確かに我々は一度死んでいる』

『待てよ、俺もか?!』

『ギーガが初めて死んだのは18の手前だった』

『 ...死んだのか。ははっそうか。だな』

『しかし、不老になったのは戴冠式の30だが』

『そんなこと言い出したらお前らの肉体若返った説明は?』

『だから静かにしろっ。月夜の話が聞こえんっ』

レイリィオンに怒られて—ギーガたちは黙った。

月夜は必至でスティヴたちに 除霊してやる と言っている。

「かなり強い...恐ろしい悪鬼だ。あの6つが世に蔓延れば
 人の世は崩壊してしまう。早く滅さなければ人が狂う!
 なにゆえ其方たちは亡霊に気付かない?不調あるはずだ」

「待て待て。月夜、お前の言いたいことは解る。しかしこっちの
 話も聞け。ここはインリではないリュディア。隣国なんだから
 リュディアのことは知っるだろ?亡霊だか何だか知らんがそれ
 が何だ?俺たちは奇怪でも不思議でも禁忌でもない。何であれ
 それでよい国だ。自国の常識を俺たちに押し付けるな」

「 .......6つ亡霊を...知っていたのか?」

「知ってるも何も友だちだ」

「なっ...亡霊を友にしてはいかん!食い殺される」

「のな、友と思ったら友が自分を食っても許すよ俺たちは」

「 ...何をそんな、」

「なあ、そうやって自ら敵を作るな?自分の知らない者が目前に
 現れたからって怖がらずいい。先ず受容から始める方が生きて
 ラクではないか?俺たちの背後に亡霊がいたとしても、それは
 リュディアの亡霊だ。外国の亡霊ではない。だから友だ」

「違うっ国境にぐるりと並ぶ髑髏たちの怨念だ!」

「ああ確かにね?彼彼女らの怨念は存在してる、しかしそいつら
 はリュディアに入れない。そいつらの恨みは国外を向いている
 何故ならリュディアの中の方がそいつらの私恨よりずっと怖い
 崇高精霊で満ち溢れているからね?怖くて外向いてる」

「な...リュディアは...ジョウ姫はそのような国に」

「それは仕方ない。お前らが贈ったのだ。煮て食われるか焼いて
 食われるか彼女もまた我国に従順なければ辛苦味わうだろうよ
 月夜、お前は怖いのだろう?では今のうちに立ち去れ」

「しかし」

「お前は除霊だか何か知らんが、この世とは違う次元の生命体を
 見る能力あるのだろうが、逆にその能力あってインリ人だから
 敵う相手ではない。寧ろ今のお前では、お前自身が憤死する」

「インリ人だから?」

「お前は今まで生きて来た人生は正しいとするを曲げないだろ?
 だからリュディアに入れば狂い死ぬ。しかしインリ国では偉大
 な巫女であり続けられる。そっちが嬉しい好きだと顔に描いて
 ある。だから自分が幸せと感じる方の国で生きろと言ってる」

「そんなことより私は姫に添うために」

「だからね?もう死んでるかもよ?リュディア王はそんな王だ?
 何度も言わせるな。お前はリュディア国内で生きる能力がない
 インリで生きよ」

「姫が死んだなど、」

「ホントに外国人って都合の悪い話は聞こえないね?王の許に
 届いた女たちがその後生きてるか死んだかどうか皆わからん」

「スティヴ...それに彼女たち...なんと不幸な」

「ありがとう。月夜の視得る世界がどういうものか理解出来たよ
 月夜の見た話を聞かせて貰えたことは、本当にありがたいこと
 だった。だから、俺も月夜のために話をした。インリに戻って
 この話を国王にするといい。災のときは約束通り駆け付ける」

そこで衛兵が数人、前に出て来て月夜に、もうわかっただろう?幾らインリ国王の親書持っていると言ってもお前はリュディアに入国ならん。と言って追い払った。

月夜という巫女は—素直に引き下がって関門を離れて行った。

やれやれ。とホッとしたスティヴに、素晴らしいわ。ただ追い払えばいいのに誠意ある対応。とヴァプラが声を掛けた。

「お前に褒められるとリュディア人として益々勇気沸くよ」

「ええ。純潔ですから?」

「何だそれ、俺は不純物かよ。や、清濁融合は福量と成り、」

「ははっ。ギーガに食い下がる勢いは未だ絶えずだ?」

ハウヴィルがスティヴに寄って声を掛けた。

ギーガたちもスティヴの健闘に、お疲れ。と言ってくる。






TELIPINUもくじ TELIPINU【303】につづく。




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TELIPINU【301】6つの亡霊

2009-04-14 | 1-2 TELIPINU




 TELIPINU【301】 


夜、リュディアの南南西のセギ国境の関門に金目武隊は集合。

皆の話を纏めて—ハウヴィルがウニはジョウであることを確実と言い、ヒウサスの虚言は現実となり、イートラのシゴトは完了、そして、ハシドとアジモルに戦の近いことを話した。

「ハシドは南西の隣国アジモルに侵攻する気でいる。東に隣国の
 テーラ国は国財に余念なく、戦をするなら自国に余波なきなら
 領土争いなど今は興味ないとハシドに告げているので心配ない
 またハシドは今更 内陸のテーラ国には興味がない。がハシド
 北西隣接するインリ国もアジモル国の次に侵攻したい国であり
 且つアジモルと戦中にインリに攻撃されては戦力分散するので
 インリと同盟を結んでおいて後に裏切る算段。それ当然インリ
 は察知し、そこで リュディアに援護力を借りようと突然朝貢
 美女献上の思いつき だったようだ」

それで—ヒウサスはリドウの言ってた話に納得が行った。

「何とまあ都合のいい話だ。これまで友達じゃなかったのに
 突然俺たち友だちだよね?って、はは。それこそ英雄宗教」

「しかしリュディア王はインリから美女献上を受け取ったことに
 したのだろ?てことはインリにハシドから侵攻あった場合には
 駆けつけるのか?美女以外の朝貢は?」

「大型商船3隻と漁業都市の市場の主権」

「紅海はまた地中海と産物の種が違うから欲しいだろ?てか」

「アフリカ大陸に太く繋がるインリ国、その朝貢は大マーケット
 それをリュディアに分けるなんて...それだけ本気なんだろよ」

「戦やる気満々のハシドの勢力に怖れ成す...か」

「戦...どうなったら終わり?」

ギーガが訊いて—皆で、さあ?と言った。

「わからんが、ハシドが海に面した領地得ればOK じゃね?」

「海ねえ...まあいいよ。あのコ逃すためにそんなことになった
 のもリュディアの流れということでインリが援軍か背景威嚇
 欲しがるならそのとき応えてやるよ。勿論援軍は俺たちだけ」

「わかった。ロルクに伝えておく」






数日後―今夜までセギ国境、明日から西。と言いながら金目武隊衣装を纏って9人揃ってどやどやと関門兵舎から出て関門に向かうと門兵と若い女性が言い合いをしている光景があった。

またか、何だ?とレッディが近くにいた衛兵に声を掛けた。

「レッディ、ここにいたのか、よかった!例の件の厄介だ。あの
 女、インリ国から献上されたジョウ姫付巫女と言う。共に添う
 つもりが先に姫が入国したから遅れて参ったと。それはならん
 姫以外は入国ならんと何度も言ったが、姫に添わなければ災が
 どうのと言い続けて埒が明かなくて」

ツキンが、はは、見張りたいんだな?ジョウが裏切らないよう。しかしあれから何日経ってる?インリ国王も色々と抜けてるな?と言って笑う。

「そういうわけにはいかねえだろ... 」

言ってギーガはハウヴィルを縋り観る。

観られたハウヴィルはスティヴを見遣る。

スティヴが、え゛っまた俺?!と言って観念した。

「金目じゃないお前がこういう役だと何度言わせる」

「了解してますうう」

言いながらスティヴが門番と巫女に近寄ろうとしたとき、巫女がスティヴを観てとても驚いた顔をして急いで近寄って来た。

「貴方っ!」

「なっ、なにぃ」

次に巫女はスティヴ以外の8人の中にいたテリピヌとヴァプラを見て、そちらの女性ふたりもきなさい!早くっ!と言った。

意味が解らずハウヴィルに押し出されて、テリピヌとヴァプラがスティヴと並ぶと巫女は、あなた方、大丈夫ですか?!と言う。

はあ?何だ?とスティヴたち3人が顔を見合わせる。

そこから少し離れて後ろに居たままギーガたち6人も周りにいた関門の衛兵たちも、何だ?と様子を見続け—巫女に注目する。

スティヴが、インリ国の巫女と聴いたが、名を名乗れ。俺はスティヴ。彼女たちも俺もリュディア兵だ。何を怯えた顔して。と話すが、話し終わらないうち巫女は、私は月夜と言う。何ともないか?其方らは6つの亡霊に取り憑かれている!と言った。

スティヴら3人は唖然、レッディら6人はクスクス笑い出した。






TELIPINUもくじ TELIPINU【302】につづく。




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TELIPINU【300】景色のいい女

2009-04-14 | 1-2 TELIPINU




 TELIPINU【300】 


ヒウサスとツキンは焚火と3人が視界に入る程度の距離に現れて―まだいたな?と言い、とろとろ並足で近づいていく。

「美女か...リュディアが外国人女を受け取らないのは...あれから
 50年も経ってないが、時間が経ってもうそろそろ欲しがるだろ
 と思ったとかそんなリュディアを知る文官がいなくなったとか
 かな?誘拐までして...何か特別お願いでもあるんかな」

「お願い?...インリは小さく平和に暮らしている国だろうに」

「んで、クスハ領城からは誘拐ではなくあのコが脱走だよな」

「男装とか...そういうのどこで手に入れるんだ?」

「俺たちの方がそういう方法しらんな?人生長いのに」

「あっはは」

前方のアラミスとリドウが立ち上がってこちら手を振った。

「あ―気付かれたようだ」

「そらそだ。もう目前だ」

天幕近くに寄って馬を降りて―美味かったか?とツキンが言い、火に当たったまま俯いている男装の女の子を指して小声でリドウに、ジョウ?と訊いた。

『ううん、名はウニと偽ってる。男の子の』

小声で話し始めたリドウの口を塞いで ちょっこっちに来い。とツキンは天幕の裏まで引っ張って行った。

『聞こえるじゃねえか。どうなってる?天幕片付けに来た
 のに未だいたってことは梃子摺ってるってことだよな?』

『ウニを起こして、俺たちはリュディア人だが力になる。俺んち
 行くかと誘ってそれでヒスイに連れてこうとしたがリュディア
 は嫌だ外国人は貴族だろうと直ぐ殺す国だとか言われて何処に
 行きたいと訊いたらインリもハシドもリュディアもアジモルも
 嫌だ戦のない国に行きたい。静かな村で農民したいといって』

『俺んちで断られた時点でスティヴの計画は失敗だな、しかし
 何でリュディアが戦の国になってるんだ?ジョウの情報薄か』

『わからない。それ以上は何も話してくれなくて話ずらして
 あ、出身はハシドというからハシド国の話を聴いていたが
 親の話になったら突然黙り込んでしまって丁度そこに』

『俺たち登場か、よかったな。よしでは詰めて遣ろう。来い』

天幕の裏からツキンとリドウが焚火に戻るとヒウサスとアラミスが、それはわざとなのか、下ネタの話をして盛り上がっていた。

当然、男装の女の子は参加していなかった。

ぷぷ...妙な空気だ。

ツキンがヒウサスに目で合図して―突然ヒウサスが目前に座って俯いていた男装の女の子を引っ立てた。

なっ?!と怯えて驚く女の子の感情無視してヒウサスが、お前はインリ国のクスハ領城から脱走したジョウだな?と言った。

途端彼女は、違う、何の誤解だっ?!アラミス?リドウ?何故だ?何の真似だ?!と正体晒す言葉さえ出さない。

顔もスタイルも美女だが根性も立派だなあ?と感心する。

ヒウサスに(女の子だけに羽交い絞めに出来ず)抱き絞められたままの女の子の正面にツキンが来た。

「ヒウサス、そのまま放すな?ジョウ、お前がウニであり男子だ
 と言い張るならそれでもいいから話を聴け。ジョウという女子
 はクスハ領城からリュディア王に献上される予定だったソレは
 なし になった。よってお前は...ジョウだかウニだか知らんが
 実家に帰れる。親元まで送り届けてやる。このふたりは剣術に
 長ける。連れて行ってもらえ」

突然のソレに女の子は当然ながらアラミスとリドウ、ヒウサスも驚いた―が、男3人は、知ってた の顔をする。

「アラミス、馬は俺たちのを使え。今直ぐ出ろ」

いいのかよ?父さんがそう言ったのか?とアラミスが小声で訊いて—ツキンは、任せろ。これでいい。と返した。

女の子は何か言いたそうにあわあわ言っていたが誰も何も聞いていない—リドウに抱かれて馬に載せられてその後ろにリドウが跨り、もう一頭の馬にアラミスが乗って直ぐに駆け出した。

ツキンとヒウサスは、さいなら—!と手を振った。

「ヒウサス、抱いた感触は女だったか?」

「ああ。」

「16だからなあ。容姿が女でも男だってこともある...よかった」

「何だよ、イートラに連絡したのか?」

「さっきハウヴィルと連絡取った。どうせギーガは外国女は受け
 取らん。クスハ領主が誘拐した女の子ならクスハ領主もその後
 どうかなんて舅面してリュディアに機嫌伺なんかしない。から
 ジョウがリュディアに入国してたからその身柄はヒスイが仲に
 入ってリュディア王に献上しておいてやる心配すんなとクスハ
 領主に言う。はい終わり だ」

「なんと...ラギあるとシゴト早っ...問題は何故インリ国が
 そんなに国交もない同盟もないリュディアに美女献上か」

「その情報はハウヴィルが持ち帰る。な?アジモルって何処?」

「アジモル...ああ、ハシドの南東の隣国だ。海の国」

「ふうん」

「何だよ?」

「インリの美女献上と何か繋がんのかなと思っただけだ」

「しかしあのコ、ウニだっけ?あ、ジョウだ。城から脱走って
 凄いな?クスハ領城も小城程度じゃない要塞城だろ?そこを
 ひとりで脱走...その上、俺たちの天幕に辿り着いて」

「身を明かさないいい根性してるしな?彼女の運勢は極上
 自分の望み通り真っ直ぐ生きるな...外国人に珍しい質だ」

「久しぶりに景色のいい女と出会ったなあ」






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TELIPINU【299】勇気ある選択

2009-04-14 | 1-2 TELIPINU




 TELIPINU【299】 


アラミスら3人を残して馬で少し走って天幕を離れて―このまま警邏ならぬ散策か?と思いきやハウヴィルがリュディアの関門に入っていくので、皆は後に続いた。

「何で?!」

ハシド国境の関門に入って―馬を降りてギーガが訊く。

皆も関門の衛兵に馬を預けて―ハウヴィルに寄って来た。

「ここはハシドの国境、次の西はたった3キロほどしか接触して
 ないが、インリ国境。アラミスの話でハシドとインリが今出た
 しかも、美女献上とか言ってた。何かあるよな?我々がここら
 辺りで国外に居て誰かと関われば、それに類する者とも限らん
 そう言うことを避けたいのは王ではないか?」

ギーガが、おおう。と苦笑して発した。

「では、今暫く...金目武隊はインリの美女献上だのそういう事象
 が終わるまでハシドとインリから姿消すか?リュディアの中を
 走ってインリの西の関門まで行くか?」

「その前に俺はイートラにあって事情を訊いてくる。ヒウサスと
 ツキンは戻ってアラミスとリドウの援助してやれ。序に天幕も
 片づけて話も訊いて来い。他は解散。今夜8時夕食時にインリ
 の西の国セギの関門に集合だ」

言ってハウヴィルはサジ円を取り出して空に向かって円を描き―馬と共に消えた。ヒウサスとツキンも馬に戻って同様に消えた。

「え...空に円を描くと騎馬のまままるごと移動するのか」

知らなかった...。と皆で暫し感動した。

「あ、海とか川の中や水面に向けて円を描くと円内の水も数十L
 一緒に移動するから魚に貝に効率的だと...あ、で、クレグレも
 水の幸はガルーラやナーロンに移動するな!と言われてた...ん
 だった。ふっ突然部屋の中大洪水だかんな?今になった済まん
 だからネハクが送って来る海の幸はそういうズルしてだな」

バーモンが言って—皆で、早く言え!と言った。

「それって...いやまあこの辺りの川は全てタチ川続きだから」

「そうそう。つまらんこと考えんな。テーラとハシドとインリ
 3国は触るなってなったじゃないか。さて、ヒマになったな
 どうするよ?スティヴはソーマだよな?」

「ギく....何でソレ知ってる?ギーガ」

「隠すことか。ははっ俺はテリピヌと蒸ける」

「俺とヴァプラとバーモンは平民服でインリを走って来る」

レイリィオンが言って—ふたりを連れて関門の兵舎に入った。

スティヴは、行ってきます!と言ってサジ円を使って消えた。

「ギーガ、今日はどこに?」

テリピヌが訊いて—レッディは笑う。

「どこ行こ?今日はこれ突然だもんな」

9人揃わないときは解散。

いつもは予定に組まれていて、その度にギーガはテリピヌと国内警邏だったり散策だったり近くの要塞城に入ったりしていた。

「この辺りの国内を回ろうか」

何だか物憂げなギーガにテリピヌは笑い掛けた。

「気掛りですか...彼女は...どうなるのでしょう」

「テリピヌ...俺たちは助け合いたいのだ。それが英雄宗教の者で
 あっても...だが今は未だボーダーをしっかり引き心身引締める
 時代...ひとり救うより全体象の掌握の位置にいる自分...をね」

「 ...ギーガ」

「外国の民は皆、支配者のコマで生きてる、あの時ニカルは奴隷
 から自由に進む勇気を持ったが、ジルは奴隷から外れることを
 怖がって自由を断った。英雄宗教の外国の民は皆ジルの選択だ
 そして民の中に豪商が成ってその支配下にまた同じ模様... 」

「 ...本当に」

「幸福と感じるとはなんだろうね。欲を考えるばかりして己
 自身を感じるを忘れたら幸福と自分は永遠に溶け合わない」

「 ...はい」

「人は皆、お互いの幸福に添いたいと感じ思って嬉しく添う...
 彼女はそれがわかったから男装してでも何としてもと逃げたん
 だろう。ニカルだね?人の魂に清く正直ないい選択したと思う
 とても勇気要ることだ。ハウヴィルたちが上手くやると思う」

「それを解って何故そのような珍しく浮かない顔」

「私と一緒に居るのに何故?と?」

「うふふ」

「あ―世界の人皆がニカルの選択をするまで死ねないのかあ
 ふとね。テリピヌがいることが当前すぎてそっちを感じた」

「はい。ありがとうございますう」

「テリピヌ、お前なあ...はは、だからお前が好きだ」

「はい。」






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TELIPINU【298】わざわざ野でてんぷら

2009-04-14 | 1-2 TELIPINU




 TELIPINU【298】 


「凄く前だけどテーラ国にカッセン3連山取られた腹いせも?」

「それもあってそんな弱い国じゃいかんってなったのかもな」

「わあ、向かう方向そっちか...それしか発想出来ないか」

「まあそうだな」

リュディア国境から少しハシドの内陸の荒野の中。

金目武隊 皆で火を3つ起こして―わざわざ野でてんぷら。

キプロスのネハクからぷりぷりの大海老を沢山、サジ円で送って貰って卵とライ麦粉と膨張粉で衣を作りココナツオイルたっぷりの鍋で揚げて、米を炊いて海老天丼を作る。

生野菜のサラダを女性が作って、男たちは他にも根菜煮。

サジ円とラギを手にしてからと言うもの世界に散るネハクに所望して警邏の間、野でごはんして楽しい警邏 になっていた。

サジ円とラギの本来の使い方ではないような気もするが
それは平和だ幸せだと言うことなので誰も突っ込まない。

メニューはナーロンが教えてくれるし作ったりしてくれる―サジ円とラギを手に入れてからリュディアは食が真っ先に変わった。

勿論こんな食も門外不出。

今は冬なのに―わざわざ外で炭火に当たって食べたがる。

明日は何?湯豆腐。雪が降るとかナーロンが言ってた。雪の中で鍋突く。など言い合っていたとき、うあっ!と青年の声がした。

誰?と皆で顔を見合わせたが、誰もそんな声は上げていない。

円形になっていたのでそれぞれソトガワに振り返るとギーガの後方、少し離れた場所にアラミスとリドウがこちらを見て驚いた顔をして転がっていた。

「何驚いてる、こっちが驚くだろ。イートラの遣いか」

流石ハウヴィルは何でも知ってる。と皆で感心しているとき―ギーガはこっそりテリピヌの後ろに隠れた。

それに気づいてレイリィオンがくすっと笑った。

ハウヴィルは次にアラミスに、そのツレは誰だ?と訊いた。

「リドウ。ラーマ兵経て昨日からヒスイ。クコ村出身で俺の相棒
 父さんが誘拐された姫を連れ戻して来いってサジ円やられて...
 何でここだよ?姫ってその子か?」

アラミスがヴァプラを指し―皆が、おいおい。と言って笑った。

同時にクコ村と聴いてそれとなくギーガに視線向けるとギーガがテリピヌに隠れつつソッポ向いていたので皆で理解した。

感情は知らんがラオウ絡みで接触したくない青年のようだ?

「誘拐された姫?ヒスイのことだから俺たちはよくわからんが
 何処の何て言う姫?サジ円の送先の表示を間違ってないか?」

「父さんが間違うかよ、あ、金目武隊が知っているって意味か?
 ややこしいんだけど...ハシド国の西隣インリクスハ城の
 姫で名はジョウ。でも、ホントはクスハ領主がハシドの村から
 誘拐した16歳の女の子。リュディアに献上予定の美女でって話
 で、その子が城からいなくなっていてそれバレるとクスハ領主
 は困るので必死で探して仕方なくヒスイに頼んで、てかっ美味
 そうな匂いだな?なにそれ」

「姫が先だ、解決したら食わしてやる」

「また本当にややこしい話だな?」

「てかリュディアに美女献上って久しだりに聴く話」

「んで何でインリ国がリュディアに贈物だ?」

「そんな話は後だ...サジ円が間違ってないなら」

「あっ!」

北風除けに張った天幕の中からスティヴの声が聞こえた。

かと思うと直ぐに出て来て皆に、しいっ。と合図をした。

「何だ?」

「男の子が寝てた。でも女の子だ、男装だ...こいつじゃ?」

「それが姫だな。だからこいつら現れた...間違ってないな」

「しかし、しっ。て何だよ?スティヴ」

「男装してるなんて、こいつも必死だ?強引に連行したってまた
 逃げ出すか、乱暴に扱われてこのコが可哀相とかこのコに抵抗
 されて...アラミスとリドウが苦労するだけだ。だから今の話は
 知らないフリしてこのコから事情を訊くんだ。きっと話は食い
 違う。力になるを装ったら大人しくお前らに付いていく」

「おう、スティヴ、外国人女に慣れたものだ。だとよアラミス!
 俺たちはここから離れてやるから、ふたりで頑張れ。海老天は
 余ってるから食っていいぞ。彼女にも食わせてやれ」

じゃあな。と言って9人はさあっとその場から去って行った。

焚火3つの場にサラダと煮物と海老天が3人分用意されていた。

「わあ...あれが金目武隊かあ...でかいおっさんばかりだ」

リドウが騎士9人の小さくなるのを感激して見送っていた。

「あれに選ばれるのは80過ぎてからだって父さんが言ってた」

「えっじゃあの美しい女の人もばあさんだった?」

「じゃねえの?なあ、どうする?彼女を起こすか食うか」

「どっちも!てことは起こしてくる!」






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TELIPINU【297】楽しい散歩

2009-04-14 | 1-2 TELIPINU




 TELIPINU【297】 


テーラ国のタチ運河のお陰で物資流通による人の流入減るだろうことは判ったが、流民の侵入妨害には役に立たない。

ウファ領主とヘロルに手を貸すではないが、序に、リュディアに物資流通に入国するのも面倒だな?と思って貰いたい。

隣国ナホリーのドラゴン騒ぎをここまで引っ張って来るには地理的に遠すぎて無理があるので―金目武隊の活躍はここからサリア城まで必須だな。となった。

そんな中、スティヴが、それは決定か?と言った。

「何だよ、カンナともし再会したらとか不安か?いらん心配
 この辺りをうろうろしていて再会しても俺らがいるだろが」

「う―ここは物の怪は用無しと言うかと期待した」

「お前は不死じゃないんだ。俺たちから離れるなが規則だ」

「お前がそんなに気にすると向こうは忘れてたのに思い出して
 気にし出す。生霊ってのもグール(悪鬼)と同じだってこと
 言っただろ?呼ばれて 呼んだ?って真横に現れるんだ」

「えっ... 」

「とっとと忘れろ。さて、今日からゆっくり西に進む
 サリア城に届いたらUターン、それを延々繰り返す」

「サリア城に着く頃は春か...サリア城を起点にしてここまで片道
 3ヶ月。往復半年...現れる季節が限定されそうだからサリア城
 に届いたら金目武隊の塒をサリア城にサジ円で場所ランダムに
 現れる物の怪をするのはど?」

ギーガが言って―皆納得した。

「未だ慣れずか、はは。峠だってサジ円で行けたじゃないか」

「もういいって。強欲渦巻場所なんてサジ円あっても行かねえ」

「ははっそうだな」






テーラ国ウファ領の商売繁盛を祝って―西に移動する。

ハシド国に入って暫くうろついて―記憶にも残らない些細な事象
取るに足らない破落戸の言掛りや盗賊に出遭ったり旅人に食べ物を請われたり道を訊ねられたり(邪気で寄る人間以外は金目ではないスティヴか女性ふたりが対応)あるだけのここら辺りも平和な国境と観得る。

「食うに困らない場所は犯罪減るというしな」

「それは 平民が という冠がつく。まあ平民でも食うに困らん
 も行き過ぎた場合は犯罪多発。足りるを知る潤い知るの場所は
 犯罪ナシ がその意に会う言葉だ」

「なる。英雄宗教...何でもややこしい」

「ははっ」

「食うに困らないの行き過ぎた虚飾虚栄の街ってのは貴族が作る
 貴族は民を自分らの生活必需の財、奴隷としか思ってない、で
 民でも豪商は私腹のために同じ民を奴隷のように扱う、その陰
 に必ずカンコが出来る。貴族と豪商が潤う場所は犯罪多発」

「あ―ウファ街もそうなんかなあ」

「そういう街の北は死体捨場と相場が決まってら」

「ハシドはどうなんだ?...ハウヴィルの情報は?」

「最新は何も聞いてないが南北に縦長でこっちより南が栄てる
 はずだ。王都も第2都市もあるし。銀持つ国だよ塩と果実で」

「ではこの辺りはハシドの中では田舎の扱いなんだな
 少し南西に進んだら小城あるあれは?離宮?要塞?」

「あれはハシドの北を守る要塞城ワホウ...戦好きだからな」

え。と皆一斉にハウヴィルを見た。

「ハウヴィル、今何て?誰がっ?ハシド国は長年平和だぞ?」

「我が王よ?5年程前にハシドの宰相がタカ派に替わったと
 ガルーラで出た話だ。忘れたか?記憶ないか、無縁過ぎて」

ギーガは、しらんしらん。と偉そうに言った。

「5年前から富国強兵始まってる。機会あれば即名分
 捜して直ぐに隣接国のどこかに侵食する気でいるよ」

「富んだ国なのに?欲画いて地中海から紅海まで欲しい?」

「ああ。で、そう簡単ではない、海路持つ国ってのは小さく
 とも交易先国とは必ず同盟国となっている。美味しい同盟」

「あ―海向こうの仲良し国が怖い国に替わったらたまらんな」

「ぷ」

「何だよ?」

「ずっと以前、お前がクコ村に行く前だ、南東がきな臭いな?と
 言ってたあれはドラゴンのことではなく南西のこのことだった
 のではないかと思ってね」

「え―そんな話、今でも聞こえないじゃないか
 侵食計画は解るが...え、それってきな臭い?」

「ネハクに訊くか?言ってこないから何もないぞ多分」

「え、いいよ、この楽しい散歩が終了してしまいそうだ」






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TELIPINU【296】リュディアに吉報

2009-04-14 | 1-2 TELIPINU




 TELIPINU【296】 


「地図では湿地帯を西に進むと大きな川と観てそっちに進んだら
 川はテーラ国かウファ領主がやったのかしらんが、向こう岸に
 人がいたとしてそれが誰か判る程だが運河に工事されていて」

「それが何?」

「そう。それが何?だよ、ハウヴィルがヘンだと言う」

「ヘン...?」

その川は山間や隆起の激しい荒野に添って曲がりながらここから少し西のサリア城までの間でリュディアに流れて北上する。

リュディアの国境で川の外国船運搬禁止告知されるから、船乗ってリュディア内には外国人は人も荷も入れない。

北上したいならリュディアの船に荷を積み直す必要がある。当然リュディア内だからパド兵を同乗させるも義務。

そこでは入国管理費以外に色々関門で商人が払う税以上が掛る。つまり、リュディア内の川路は陸路よりシキルがかかる。

だから、川幅を広げて荷を流す運河を工事したところで利益は
上がらない。英雄宗教では利益のないことに力入れたりしない。

だから、ヘンだ という話。

「てことはウファ領主はここで財を築く得策持ったと言うこと
 ウファ領内に財が築けるとは何だろう?あああ峠か、でした」

「峠?峠でどうやって儲ける」

昔はタチ川を挟んでこっち東側がテーラ国ウファ領で川向う西側はリュディアにも隣国であるハシド国だった。

戦あって結果とんとんだったが、テーラ国は川向うのカッセン3連山まで手に入れた。今はカッセン3連山の西向こう麓が国境。

峠に行こうと思ってタチ運河の船着場の酒場に寄ったとき、また聞こえて来た。俺たち物の怪の話じゃなく峠はやばいってヤツ。

何がやばいか見に行くんだ出掛けようって席を立ったとき、見掛けない顔だ、何処に行く?と声掛けられて、山賊の話を聴いた。

山賊ね?大方その程度だろうと思ったが、そこに居た連中が必死で行くなと止めるから話を聴くことにした。

賊出るカッセン3連山の峠はこの30年 商人が品奪われるどころか全員惨殺されるから誰も使ってない。

南北も東西も平地回るより近道だしタチ運河は船代船頭代、船着場利用料色々取られるから仕方なく皆迂回ルートを歩くという。

ウファ領主は商人の不満を聴いて何度も山賊討伐に向かうも毎度惨殺されたそうで領主は終に、峠は元ハシド国だったからハシド民が山賊になったもの、戦終わっているのでハシドに文句つけるわけにはいかない。自国で解決すべきだが、毎度命が失われる。よって峠に寄らないなら済む話。と言って峠問題はナシにした。

「で、カッセン峠は閉ざされた?」

「閉ざされてはいないが、峠利用料ってのをヘロルが作っていた
 山賊に襲われたら荷代と命代の保証してくれる保険も作ってた
 が、これが笑えるほど膨大な保険料だ、商人はそんな財叩いて
 まで峠に入る博打はしない。から誰も近寄らない」

「峠に入るのに峠利用料だ?バカげてると思ってやめたのだ」

「あはは...成程。峠がそういう事情になったので川を工事か」

「ここ以南の物資がウファ領に集まる。以北はリュディアが幅を
 効かせてトウセンボしてるから?ウファ領主とヘロルが組んで
 物資を集めて東西に一気に流して儲ける。リュディア様様。で
 クムーリ頼りにしていた商人連中も7日の販売仕入よりウファ
 を頼れば、高く買ってくれる。となってクムーリを離れ出した
 というリュディアにはステキな朗報だった」

「そんな様子は目に見えなかったが...そうだったのか」

「今のクムーリは老舗同士の付き合いの場に変わりつつある」

「クムーリを縮小出来そうか?」

「ああ、俺としてはウファのヘロルに力貸す気持ち満々」

「ははっクムーリ縮まってルリエフが拡大される理想が今?」

「そうなのだ」

「しかし峠がそうなったのは30年前の話なのに何でそう今頃
 誰もがしょっちゅう口々に 峠やばい なんて言うんだ?」

「それが、やばいというのは山賊ではなく、峠料金払って峠越え
 する商人たちの方で、峠を越えようとすればそいつらと同じと
 見做されて、峠利用料払った後に峠に入る前にウファの兵士に
 捕まって拷問の上に獄死となるそうだ」

「何だそれ...行かなかった理由はそっちか」

「そっちも だ」

「真相はわからんが、まあリュディアに福ありの話。テーラと
 ハシドが何考えてるのか、英雄宗教のことだから放棄したよ」

「放棄はいいが、真相もどうでもいいとして何がどうやばい?」

「峠に入って山賊やっつけた商人の英雄がいたんだが、山賊が
 いなくなったところで峠は皆が安心して通れるようになった
 が、今度は峠を利用する商人たちが、や、実は商人に扮した
 破落戸なんだろう?山間にある村々に強盗や強かんやりたい
 放題。山賊が村を守っていたとなって峠の賊やっつけた英雄
 は今度は非難轟々...全く英雄宗教そのもので笑える話」

「つまるところ、山賊だの山間の村だの誰が誰と裏で組んでる
 のかな?なんて思わないではないが、英雄宗教のそんなこと
 どうでもいいやってことだ」

「そんなこんなでここら辺りで利益あるは迂回ルートのタチ川を
 渡る船持つサーシル・クイみたいな豪商とウファ領の商人ボス
 ヘロルだけだ?だいたい峠を商人が通らないなら山賊は飢えて
 いたはず。何で人の通らない峠に山賊が生きれるのだ?ってね
 山賊に生活援助する黒幕がいたってことで、それってその豪商
 連中だと判る。そういうのお約束だろ。山賊の討伐も豪族から
 賄賂貰って討伐のフリした だ。きっと」

「うわああ...サーシル・クイって...カンナって... 」

「ははっ、スティヴ、凄えやばいとこに婿入
 寸でだったな?よく逃げ帰った。よしよし」

「ギーガ、てめえっお前がイケイケ言って俺は、」

「もう終わったんだ、ガタガタ言うな」






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TELIPINU【295】レンタル花婿任務終了

2009-04-14 | 1-2 TELIPINU




 TELIPINU【295】 


花婿の衣装の着付けが終わって、お嬢様はこちらにおいでです。と言われてお披露目広間の控間に入ると昨日より数段美しい花嫁姿のカンナが目前にいた。

カンナはスティヴに昨日の初対面と同じ反応―少し紅潮した。

それが何のせいかスティヴは気付いているが、気付かないフリ―そっちの世界に引っ張られないよう結界を敷く。

そして、話す話題などないので出された朝食を黙々と頂いた。

「スティヴは奥さんを愛しているの?」

えっ...何だ突然...何その強い態度...どした?

「偽装でも俺とあんたの結婚式、別の女の話は」

「え...あ、わかりました」

なっ何だよう...調子狂う。なんでそんなにしおらしい?

こんなでかいクイ・サーシルの主だろ?勝気で根性強い。

う、違う、夕べギーガとツキンと3人で使用人のリーカと会って以降、俺の人生シナリオにない展開が猛スピードだわ頼れるはずのヴァプラがイメージ違う人になってるわで混乱してヴァプラと話してるのかカンナと話してるのか切り替えられなくなって...。

くそう、自分のペース取り戻せっ。

あ―今までは欲しいもののために食い下がる はしてきたが
今ここ には欲しいものない中...己が何したいのか、困惑か。

「その、武術は得意?」

「シゴトです。しかし武術は見世物ではないので要求されても
 披露はしません。もしヘロルがつまらないこと申し入れたり
 しても巧いこと拒否してください」

「はい... 」

「 ...。」

「ですが、」

「あ、リーカが来ました、出番ですね、行きましょう」

「 ...はい」

"レッディ命" でリュディアにきてやっと仲間に入れて只今
"任務" に一生懸命のスティヴはカンナの感情は観ていない。

英雄宗教の 自分だけが欲しがる という感情を観ない。

その様子を遠くからヴァプラが観て―笑っていた。

外国人女の好みに付き合ってられないんだ理解しろ?
しかしね、あんたが自分の全てを捨てることが出来て
こっちにくるならスティヴは手に入るよ?どうする?

外国人同士の結婚なら障害あっても歩み寄り程度で済むだろう。

しかし、外国人とリュディア人の結婚は、水中生物と陸上生物が結婚するようなもの。

英雄宗教の人間は地位と名誉と財と美貌と色香は手に入れられても愛は手に入らない。

リュディアに来るならその反対。どっちが好き?が問題よ。






翌日の朝―金目武隊の皆のいた関門兵舎のリビングにスティヴとヴァプラが入ってきた。

お、レンタル花婿、早いお帰りだ!ヴァプラも御苦労だったな。と囃されてふたりは皆の中に入る。

どうだった?と訊かれてスティヴは、俺の前に峠はよ?と訊いて―峠の前にお前。と返された。

ヴァプラが、上々よね?とスティヴに言って―自分のシゴトは済んだと常に戻ってテリピヌの横に行った。

「約束はちゃんと果たした。ヴァプラの助言通り気に入られない
 よう嫌われるよう振舞ったが...なのに別れ際に本気で結婚する
 気はないかと言われて驚いた。がまあ、リュディア人が外国人
 と結婚なんかするかっと言ったから...追手などないと思う」

「何故追手を想像する?」

「なんつか...カンナって言うんだけど、気が強くて、私は欲しい
 と思ったものは全て手に入れて来たと言うから怖えと思って」

「カンナっ?!」

ギーガが異常に反応して—皆はそっちに驚いた。

注目浴びてギーガは、名が気が強そうだなと思った。と言った。

強烈印象深いその名―『テス』の奴隷時代を思い出して寒気して笑が起こる。

ハウヴィルたち元近衛もそれに気付いて隠れてクと笑った。

「そうなんだ?...お嬢様が主ってくらいだから両親はいない?」

「行商で事故で死んだとかじゃね?向こうも話
 しないから聞いてないけど、もう関係ねえ?」

「若いうちからひとりであんな大所帯切り盛りなんて凄い。でも
 まあ英雄宗教の場合、欲望満々の人ほど頑張れるそれって実の
 ところ人に嬉しいこと凄いことじゃねえけどな」

「はは。英雄宗教では凄いこと だから自己愛も凄いわけで
 あ―それ以上なしなし。もう俺は無関係、峠の話聞かせろ」

「あの峠な、行こうと思ってたけど行ってない」

「何で?」






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TELIPINU【294】サーシル商会のお嬢様

2009-04-14 | 1-2 TELIPINU




 TELIPINU【294】 


サーシル・クイはウファ街一等地と言える繁華街の中央に巨大な門構で聳え立っていた―まるでそこそこ地位持つ貴族の御屋敷。

スティヴとヴァプラは豪華接客の間に通されて―待たされた。

『街の商会程度でこれだけの巨像...この辺りの
 シキルが全てここに集まるって感じまんまね』

つぶやいたヴァプラの言葉にスティヴが笑う。

『お前の辛辣な表現は嫌いじゃないよ、フフ』

『辛辣?事実を言葉にしただけよ?』

『でも誰もいないのに小声で口にした。弁えてるじゃないか』

『外国人の商人よ?傍耳あると思って間違いない
 もうう...貴方に話したかっただけよ、観想をね』

『言わず判ることをわざわざ口にしてくれたのはなんちゃって?
 俺だって外国で育ったが親はリュディア人だ、幼少の時期から
 ちゃんと叩き込まれいるよ』

『そう...よかった』

お待たせしました。と言って入って来た女性の声は若く品よく―20代前半の飛び切りの美女。

これがここの主のお嬢様?!

スティヴはテリピヌに心揺れたときと同じくらいドキリとした。が、それは童貞ならではのソレ。

しかし、お嬢様はスティヴを観て一瞬で一目惚れしたのか突然真っ赤になった。

え?有り得ね。とスティヴとヴァプラ、同時に感じ取った。

「初めまして。私はカンナと申します。この度は本当に無理な
 お願いを利いて頂いてありがとうございます。その...どうぞ
 宜しくお願いします。奥様のない方をと使用人に言っていた
 のですが、期限も明日なので...その、奥様には、」

言い難そうにするカンナにヴァプラは笑って、リュディアの貴人はそのようなことに拘りません。お受けした以上人助けしか頭にありませんからお気になさらず。と言った。

「貴人?...私たちの国で言うところの貴族様ですか?」

「国の禄を頂いてのシゴトという意味ではそうですね」

「あの、宜しいのですか?貴人様にこのようなこと、」

「お約束した以上、修正はしても撤回はしません」

「そうですか...よろしくお願いします。あの、今夜のお部屋は
 ご夫婦ですからご一緒ですよね?部屋は沢山あるのですが」

「あ、子の出来る日は今夜か明日。ですから今夜からスティヴ
 とカンナ様は共に寝る方が確率高まる。私は別室を下さい」

ヴァプラに圧され気味になったままカンナは、はい。と応えた。

その後でスティヴのこの妻に少々イラつく。

誰もが自分にひれ伏すのに。

私は貴族でも媚び諂うサーシルの主よ?それに私より年下よね?

リーカ(使用人)が連れて来たスティヴはこんなに男前で嬉しいのに、既婚者でしかも妻までついてくるなんて感激半減したわ?

いえ、いいえっ!そんなことより遣り遂げなくっちゃ!

スティヴもヴァプラが少し怖かった―びっくりした。

いつもは勇ましくも穏やかなのに...威嚇のためとか言ってた
けれど、何だか微妙にファイティングポーズ入ってたような。

結婚だ子作りだという実は感情豊かで神聖なものだろ?と思える中、話は即物的無感情無機質に進んで豪華な夕飯を頂いてその後
スティヴとヴァプラは別室となって就寝した。






翌朝―サーシル・クイは早くから大賑わい。

スティヴは騒がしくて目が覚めた。

クイの御殿の中で結婚式やんのか・・・主だしな?

寝室の窓から結婚式の飾りつけや料理を運んだり接待している使用人や商人仲間が忙しく動く様子を外を覗いてスティヴが思う。

さすが街一番の商会ってかんじ招待客も多そうだ...。

てか顔バレする俺は今後テーラ国出禁したいほどじゃ?

しょうもない男だな。と言われる程度で済むのかよ...。

そう言えば枕を共にしていたはずのカンナがいない。

まあ主だし?と思ったとき、起きた?とヴァプラの声。

「わ、勝手に入るかっここは神聖な新郎新婦のっ」

「何言ってんのよ、それでうまくやったの?」

「仰せのままに3秒で終了っ!」

「ぷっ。偉いわ?あんた。見直した」

「え、」

「褒められることよっ外国人にはそれでいいのっ下手に惚れ
 られたら後が厄介。あなたがギーガに憑いたみたいにね?」

「う...イマハソレヲリカイシテイマス」

「さっさと服着て?花婿の服着せてくれる人呼んで来る」

うわあ...ヴァプラって違う意味でテリピヌより怖い...。

じいさんばかりの中で猫被ってたんだな...ははっ






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TELIPINU【293】スティヴとヴァプラ

2009-04-14 | 1-2 TELIPINU




 TELIPINU【293】 


ヴァプラとスティヴが同時に相手の名を口にした。

使用人がびっくりして振り返り、何ですかっ。と言った。

スティヴが、俺の妻です。と救援登場に嬉しそうに言って驚いた使用人女性にヴァプラが畳みかける。

「私はヴァプラと言う。私の夫を偽装結婚と種付に貸出するが
 返却日の言葉を聞かなかったと仲間が言ったから妻として夫
 の明後日の朝のシゴト終了まで見張りに来た。夫の貸出条件
 は謝礼シキルではない。妻である私の同行だ」

それに驚いたのはスティヴで、種付?!とふがふが言う。

「まっ初夜と仰ってください!何て粗野な...そんな?既に結婚
 してらした、それを言わずなんて...他の方にお願いすれば」

「そのような無茶な用事の外国人に貸出出来る者は皆既婚者だ
 偽装とは言え独身者では本当に結婚させられる可能性がある
 話をややこしくして行き、本人が帰ると言っても帰ることが
 出来なくなるような事件や方法は幾らでも作り出せるからな」

「そんなっお疑いになるんですか?私たちはそのような」

「最悪を想定したまでだ。サーシルがそうだとは言ってない
 さあ理解したか?では参ろう。私がいるのだ迂回せずよい」

言ってヴァプラはガラス質の地を突っ切ってウファ街に向かおうとして―使用人が驚いて、そっちはなりません!と引き留める。

「案ずることはない。其方たちには呪いの地かもしれんが
 魔法の使えるリュディア人と一緒なら呪いなど弾かれる」

早く来い。と急かされてスティヴはいそいそとヴァプラに追い付き、使用人は仕方なくふたりの後に続いた。

『お前、さっきから何を笑っている、助けに来てやったのに』

小声で言ってきたヴァプラにスティヴは未だ笑う。

『だってヴァプラ...言葉遣いがおかしいよ、肩に力入ってる?
 外国人とサシで話すの初めてだから?頭の中混乱してる?』

『え...違う、威嚇態度の方がいいと思ってわざとよ』

『え...成程失敬した!それで頼む!しかし種付聞いてないっ』

『跡継の話=種付 でしょ?あんた頭弱い?』

『え゛それまじ?俺、その、経験なく、』

『!』

『驚かんでいいから...助けて』

『いえ...その方がいいんじゃない?よりリアルよ。それに
 逆にすごうくヘタクソだったら嫌われて早く退散できる』

『なる...いや愚弄だよなそれ?...まあいや得策だ、そうしよ』

『あは、あの使用人は目利きあるわね?チェリー選択って!』

『 ...そうだな。でも俺はこんなことで童貞失うのか?』

『そんなこと拘る?』

『はいすみません』

そこに、あの。奥様。と使用人の声が来た。

何だ?とキリとした表情でヴァプラが振り返る。

「スティヴ様は婚礼翌朝までしか御貸し頂けないのでしょうか」

「それ以上滞在の必要はない。2ヶ月経って子が出来てなかった
 場合は再度貸出する。安心してよい。スティヴもシゴトがある
 子が出来て2度とスティヴがいないことは、ヘロルには戦死か
 事故死、初夜翌日からいないのは買い付け等と言えば済む」

「そうですか。ありがとうございます。そうお伝えします」

「ところで、当然、明日の夜はお嬢様の吉日なのだろうな?」

「それは勿論、テーラ国1の易者に吉日を観て貰い」

「そうではない、排卵日かどうかだ」

「はい?」

「 ...困ったな、そうか知らぬのか」

ヴァプラは今度はスティヴを置き去りにして女性と小声で話し―突然、そうかよかった、本当に子の出来る日だ!と発した。

「な、何でそのようなことが易者でもない奥様が?」

「リュディア人なら皆それくらい判る。聞かず良い」

ヴァプラは、貸出1回で済むわね?とスティヴに声を掛けた―
スティヴは意味が分からないままヴァプラと歓喜して笑った。






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