TELIPINU【296】
「地図では湿地帯を西に進むと大きな川と観てそっちに進んだら
川はテーラ国かウファ領主がやったのかしらんが、向こう岸に
人がいたとしてそれが誰か判る程だが運河に工事されていて」
「それが何?」
「そう。それが何?だよ、ハウヴィルがヘンだと言う」
「ヘン...?」
その川は山間や隆起の激しい荒野に添って曲がりながらここから少し西のサリア城までの間でリュディアに流れて北上する。
リュディアの国境で川の外国船運搬禁止告知されるから、船乗ってリュディア内には外国人は人も荷も入れない。
北上したいならリュディアの船に荷を積み直す必要がある。当然リュディア内だからパド兵を同乗させるも義務。
そこでは入国管理費以外に色々関門で商人が払う税以上が掛る。つまり、リュディア内の川路は陸路よりシキルがかかる。
だから、川幅を広げて荷を流す運河を工事したところで利益は
上がらない。英雄宗教では利益のないことに力入れたりしない。
だから、ヘンだ という話。
「てことはウファ領主はここで財を築く得策持ったと言うこと
ウファ領内に財が築けるとは何だろう?あああ峠か、でした」
「峠?峠でどうやって儲ける」
昔はタチ川を挟んでこっち東側がテーラ国ウファ領で川向う西側はリュディアにも隣国であるハシド国だった。
戦あって結果とんとんだったが、テーラ国は川向うのカッセン3連山まで手に入れた。今はカッセン3連山の西向こう麓が国境。
峠に行こうと思ってタチ運河の船着場の酒場に寄ったとき、また聞こえて来た。俺たち物の怪の話じゃなく峠はやばいってヤツ。
何がやばいか見に行くんだ出掛けようって席を立ったとき、見掛けない顔だ、何処に行く?と声掛けられて、山賊の話を聴いた。
山賊ね?大方その程度だろうと思ったが、そこに居た連中が必死で行くなと止めるから話を聴くことにした。
賊出るカッセン3連山の峠はこの30年 商人が品奪われるどころか全員惨殺されるから誰も使ってない。
南北も東西も平地回るより近道だしタチ運河は船代船頭代、船着場利用料色々取られるから仕方なく皆迂回ルートを歩くという。
ウファ領主は商人の不満を聴いて何度も山賊討伐に向かうも毎度惨殺されたそうで領主は終に、峠は元ハシド国だったからハシド民が山賊になったもの、戦終わっているのでハシドに文句つけるわけにはいかない。自国で解決すべきだが、毎度命が失われる。よって峠に寄らないなら済む話。と言って峠問題はナシにした。
「で、カッセン峠は閉ざされた?」
「閉ざされてはいないが、峠利用料ってのをヘロルが作っていた
山賊に襲われたら荷代と命代の保証してくれる保険も作ってた
が、これが笑えるほど膨大な保険料だ、商人はそんな財叩いて
まで峠に入る博打はしない。から誰も近寄らない」
「峠に入るのに峠利用料だ?バカげてると思ってやめたのだ」
「あはは...成程。峠がそういう事情になったので川を工事か」
「ここ以南の物資がウファ領に集まる。以北はリュディアが幅を
効かせてトウセンボしてるから?ウファ領主とヘロルが組んで
物資を集めて東西に一気に流して儲ける。リュディア様様。で
クムーリ頼りにしていた商人連中も7日の販売仕入よりウファ
を頼れば、高く買ってくれる。となってクムーリを離れ出した
というリュディアにはステキな朗報だった」
「そんな様子は目に見えなかったが...そうだったのか」
「今のクムーリは老舗同士の付き合いの場に変わりつつある」
「クムーリを縮小出来そうか?」
「ああ、俺としてはウファのヘロルに力貸す気持ち満々」
「ははっクムーリ縮まってルリエフが拡大される理想が今?」
「そうなのだ」
「しかし峠がそうなったのは30年前の話なのに何でそう今頃
誰もがしょっちゅう口々に 峠やばい なんて言うんだ?」
「それが、やばいというのは山賊ではなく、峠料金払って峠越え
する商人たちの方で、峠を越えようとすればそいつらと同じと
見做されて、峠利用料払った後に峠に入る前にウファの兵士に
捕まって拷問の上に獄死となるそうだ」
「何だそれ...行かなかった理由はそっちか」
「そっちも だ」
「真相はわからんが、まあリュディアに福ありの話。テーラと
ハシドが何考えてるのか、英雄宗教のことだから放棄したよ」
「放棄はいいが、真相もどうでもいいとして何がどうやばい?」
「峠に入って山賊やっつけた商人の英雄がいたんだが、山賊が
いなくなったところで峠は皆が安心して通れるようになった
が、今度は峠を利用する商人たちが、や、実は商人に扮した
破落戸なんだろう?山間にある村々に強盗や強かんやりたい
放題。山賊が村を守っていたとなって峠の賊やっつけた英雄
は今度は非難轟々...全く英雄宗教そのもので笑える話」
「つまるところ、山賊だの山間の村だの誰が誰と裏で組んでる
のかな?なんて思わないではないが、英雄宗教のそんなこと
どうでもいいやってことだ」
「そんなこんなでここら辺りで利益あるは迂回ルートのタチ川を
渡る船持つサーシル・クイみたいな豪商とウファ領の商人ボス
ヘロルだけだ?だいたい峠を商人が通らないなら山賊は飢えて
いたはず。何で人の通らない峠に山賊が生きれるのだ?ってね
山賊に生活援助する黒幕がいたってことで、それってその豪商
連中だと判る。そういうのお約束だろ。山賊の討伐も豪族から
賄賂貰って討伐のフリした だ。きっと」
「うわああ...サーシル・クイって...カンナって... 」
「ははっ、スティヴ、凄えやばいとこに婿入
寸でだったな?よく逃げ帰った。よしよし」
「ギーガ、てめえっお前がイケイケ言って俺は、」
「もう終わったんだ、ガタガタ言うな」
TELIPINU【297】につづく。 |
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