海 山 街

 紀伊半島の南端から、季節の移り変わりを写真を添えて発信したいと思います。

大きな命と小さな命

2009-05-31 20:29:39 | Weblog
 田辺市内之浦の狭い湾の中に、巨大なマッコウクジラが迷い込み、出られなくなっているニュースは読者の皆さんもご存じかと思う。
 今日、田辺に行ったついでにそのクジラを撮ってきた。ごらんのとおりの巨体で、案外元気そうに見えたが、すぐそこにある湾の出口に向かう気配はなく、同じ場所をぐるぐる旋回するばかり。湾に入り込んだのが5月14日だからもう17日が経過している。湾内にこの巨体を満足させるほどの餌があるとも思えず、気がかりである。田辺市にも、「なんとか逃がしてやれないのか」という声が多数寄せられているという。(画像をクリックすると大きくなります)






 クジラを見る前、県立図書館紀南分館で、広河隆一さんの編集する写真雑誌、DAYS JAPANのバックナンバーを見ていて、衝撃を受けた記事があった。動物愛護センターで殺処分される犬たちを取材した記事だった。同様の記事は新聞や雑誌で何度か見たことがあるが、処分される前のさびしげな犬、猫の写真と、年間30万頭も捨てられた犬・猫が処分されていることを批判する記事というものが多かったように思う。だがその記事は違った。
 1~2ページは、檻の中の不安そうな、ラブラドールレトリーバーの写真と、動物を処分する部屋に彼らを追い込む機械を操作する職員の手のアップの写真。まあ、ここまでは従来の報道と変わらないだろう。
 ページをめくって衝撃を受けた。まず目に飛び込んできたのは、処分され、床に折り重なる犬たちの死体の写真。彼らは何も知らないまま処置室に追い込まれ、炭酸ガスを噴霧されて死んでゆく。苦悶の表情を浮かべてはいないが、ぐっと歯を食いしばった死に顔が生々しい。紀州犬らしい白い犬、レトリーバー系の雑種か、耳が半分垂れた犬、そして我が家の老犬によく似た黒い背中・・・彼らはそのまま焼却されて灰になる。
 反対側のページの写真にも驚いた。写っているのはその犬たちを処分した、動物愛護センターの職員の方々である。それぞれ手にしたボードに自筆のメッセージを書き、掲げている。「一生飼育を」「私たちは灰になるために生まれてきたのではない」
 仕事とはいえ、罪なき犬、猫たちを処分する職員の方々の思いを報道した記事は初めて見た。大きな命と小さな命。命の尊さに差別はない。
 

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