Photo:太田監督のサインに笑顔で応える後藤左翼手
文・写真/岩瀬孝文(立正大学スポーツ広報)
www.ris.ac.jp 立正大学
www.shonangakuen-h.ed.jp 立正大学淞南高等学校
文・写真/岩瀬孝文(立正大学スポーツ広報)
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さすがに疲労の色がでてきた崎田投手。
「どんなに打たれようとも、最後まで、エースとして投げたかったんです」
長打にならないように丁寧に低めに集めていた球も、いつしか、高めに浮き出していた。
そこを痛打され得点を重ねられていく。
「8回裏は、自分のわがままでストレートしか投げませんでした。キャッチャー成田の変化球のサインに一回、首を振ったら、もう、わかってくれました、好きにしていいよと。だから直球で押し通しました」
これぞエースの意地、プライドか。
「ホームランを打って、甲子園でダイヤモンドを一周できるなんて、本当に夢みたいでした」
そこで崎田はとっても優しい目をした。心底、嬉しそうだ。
「林田がいなくなって、まとまりがなくなりました。どうしていいのかわからず不安で、個々でばらばらに、そんな状態でした」
極限の状況で、ピンチに内野手がマウンドに集まり、顔を見合わせる。なんだかそれぞれがホッとしていた。
「でも、また国体で、みんなで野球できます」
悔しさはあるのだろうが、クレバーなまでに頭を切り替えつつ、国体でまたみんなで一緒に円陣を組み、野球できるシーンを思い浮かべるエース崎田投手。そのときにはブルペンでは控え投手もきちんと投げている。対戦相手が気にしていた驚異の集中力、それらをすべて打ち出せる。
さて、秋の新潟国体、立正大淞南高はフルメンバーで登場。
もちろんあの地元新潟県代表とのリベンジマッチを望む。
ミラクル立正大淞南、ナショナルパスタイム(国民的娯楽)だ。
いつもながらに野球を楽しんでいこう。
Photo:快心のホームランで逆転した主砲4番の崎田
文・写真/岩瀬孝文(立正大学スポーツ広報)
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「どんなに打たれようとも、最後まで、エースとして投げたかったんです」
長打にならないように丁寧に低めに集めていた球も、いつしか、高めに浮き出していた。
そこを痛打され得点を重ねられていく。
「8回裏は、自分のわがままでストレートしか投げませんでした。キャッチャー成田の変化球のサインに一回、首を振ったら、もう、わかってくれました、好きにしていいよと。だから直球で押し通しました」
これぞエースの意地、プライドか。
「ホームランを打って、甲子園でダイヤモンドを一周できるなんて、本当に夢みたいでした」
そこで崎田はとっても優しい目をした。心底、嬉しそうだ。
「林田がいなくなって、まとまりがなくなりました。どうしていいのかわからず不安で、個々でばらばらに、そんな状態でした」
極限の状況で、ピンチに内野手がマウンドに集まり、顔を見合わせる。なんだかそれぞれがホッとしていた。
「でも、また国体で、みんなで野球できます」
悔しさはあるのだろうが、クレバーなまでに頭を切り替えつつ、国体でまたみんなで一緒に円陣を組み、野球できるシーンを思い浮かべるエース崎田投手。そのときにはブルペンでは控え投手もきちんと投げている。対戦相手が気にしていた驚異の集中力、それらをすべて打ち出せる。
さて、秋の新潟国体、立正大淞南高はフルメンバーで登場。
もちろんあの地元新潟県代表とのリベンジマッチを望む。
ミラクル立正大淞南、ナショナルパスタイム(国民的娯楽)だ。
いつもながらに野球を楽しんでいこう。
Photo:快心のホームランで逆転した主砲4番の崎田
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「力尽きました。満足です、これが限界です」
開口一番、太田監督はやや甲高い声で言った。
「子供たちには、もう余力がありませんでした。完全燃焼です」
そして、さばさばとそう続けた。
あまり表現してはならないだろうが、練習グラウンドから宿舎の往復、甲子園への往復などは、発症が見られあたり前のこと全員がマスクを着用し、人との接触を極力避ける。それで精神的に参ってしまう選手もいたはずだ。
「勝っても、今日までだと正直、覚悟しました」
控え投手がいない。準決勝はこれ以上のパフォーマンスはできない、最後は9人になっても闘うという気持ちはあるが、それには限界がある。
「全国のベスト8、初出場で4000校の残り8校に残ったのはとても素晴らしいことでした。頑張ればどうにかなる、その大切さを選手達が教えてくれました」
力を出し切っての準々決勝敗退。それで負けたらしょうがない、潔くありたい。
「最高の夏でした。でも、この悔しさを新潟国体で晴らします(笑)。リベンジです」
9月後半、今度はベンチ18人全員が揃い“本来の楽しい試合”が待っている。
また、グラウンドで、みんなの笑顔が見られるのである。
阪神甲子園球場。夏の甲子園。
「初出場でベスト8です。頑張れば優勝に手が届きます、そんな夢が目標になりました」
若き太田監督、ひとつため息をつき、すぐに、次、秋の大会に思いを馳せる。
そこに悲壮感はない。選手全員がサインに大きくうなずき、太田監督とアイコンタクトをして意思疎通は抜群。しかもフィールドでは笑顔でいつも楽しそうに野球している。
誰もが引き込まれてしまう立正大淞南野球、それは新しい時代の高校野球だ。
Photo:力投する崎田投手
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開口一番、太田監督はやや甲高い声で言った。
「子供たちには、もう余力がありませんでした。完全燃焼です」
そして、さばさばとそう続けた。
あまり表現してはならないだろうが、練習グラウンドから宿舎の往復、甲子園への往復などは、発症が見られあたり前のこと全員がマスクを着用し、人との接触を極力避ける。それで精神的に参ってしまう選手もいたはずだ。
「勝っても、今日までだと正直、覚悟しました」
控え投手がいない。準決勝はこれ以上のパフォーマンスはできない、最後は9人になっても闘うという気持ちはあるが、それには限界がある。
「全国のベスト8、初出場で4000校の残り8校に残ったのはとても素晴らしいことでした。頑張ればどうにかなる、その大切さを選手達が教えてくれました」
力を出し切っての準々決勝敗退。それで負けたらしょうがない、潔くありたい。
「最高の夏でした。でも、この悔しさを新潟国体で晴らします(笑)。リベンジです」
9月後半、今度はベンチ18人全員が揃い“本来の楽しい試合”が待っている。
また、グラウンドで、みんなの笑顔が見られるのである。
阪神甲子園球場。夏の甲子園。
「初出場でベスト8です。頑張れば優勝に手が届きます、そんな夢が目標になりました」
若き太田監督、ひとつため息をつき、すぐに、次、秋の大会に思いを馳せる。
そこに悲壮感はない。選手全員がサインに大きくうなずき、太田監督とアイコンタクトをして意思疎通は抜群。しかもフィールドでは笑顔でいつも楽しそうに野球している。
誰もが引き込まれてしまう立正大淞南野球、それは新しい時代の高校野球だ。
Photo:力投する崎田投手
文・写真/岩瀬孝文(立正大学スポーツ広報)
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せめてベンチに18人全員が入り、ベンチワークも充分に試合にあたらせたかった。
そんな普通の状態であれば乱打戦にならずとも、後半のミラクル大逆転、その9回の熱気がこもる攻防が見られるに違いなかった。いや、そう信じたい。
6回表に主砲4番でエースの崎田がレフトスタンドへ本塁打を放って3-2と逆転。そこまでがまともな試合だった、と言えば語弊があるだろうか。
相手打線は打率が高い強力打線だった。しかし、1点差でリードしてから、ボールが浮き出した崎田に、リリーフの飯島や中尾、塚田を送り込みたい場面だったが、いかんせん三塁側ブルペンには、ひとりの投手も投げていない。
もはや屈伸運動すらきつくなった崎田のボールは、打ちごろの高さになり、相手各打者のバットから外野へと連続で、綺麗にはじき返されていった。
6回裏にパスボールなどで逆転され、マウンドで崎田はこみあげてくるものがあった。
キャッチングに定評ある成田捕手もなんやら動きが鈍そうだ。そして崎田は8回裏に大量得点をあげられ、ベンチに帰るときには涙があふれてきた。悔しくて、情けなくて、そのままベンチの奥で泣いた。
しかし、それは、誰も責められることではなかった。
明るく笑顔でチームをリードし続けたサード林田主将が、この日の朝の発熱で、ついに離脱。
ベンチ前での円陣は、笑顔があるものの、いつもの元気がみられない。
もはや手負いの立正大淞南。ショートの山脇は戻ってきたが、ふたりが離れてベンチ入り13人。選手補充は登録上、利かないというルール。いまの時代それでいいのだろうか、との見識ある高校野球ファンの声も多く聞こえてきた。
美談としてくくるには、しのびない。インフルエンザ騒動、それは、ただひとりの風邪?それが始まりだったのかもしれない。なにかの巡り合わせにしては、選手、監督やコーチなどに対する制約が生じ、ストレスのボルテージは上がってくる。
それでも選手はよく耐え、終始、笑顔を忘れずにいた。
が、最終13人のベンチでは、このベスト8入りが限界であった。
Photo:エース崎田を優しくかばう太田監督
文・写真/岩瀬孝文(立正大学スポーツ広報)
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そんな普通の状態であれば乱打戦にならずとも、後半のミラクル大逆転、その9回の熱気がこもる攻防が見られるに違いなかった。いや、そう信じたい。
6回表に主砲4番でエースの崎田がレフトスタンドへ本塁打を放って3-2と逆転。そこまでがまともな試合だった、と言えば語弊があるだろうか。
相手打線は打率が高い強力打線だった。しかし、1点差でリードしてから、ボールが浮き出した崎田に、リリーフの飯島や中尾、塚田を送り込みたい場面だったが、いかんせん三塁側ブルペンには、ひとりの投手も投げていない。
もはや屈伸運動すらきつくなった崎田のボールは、打ちごろの高さになり、相手各打者のバットから外野へと連続で、綺麗にはじき返されていった。
6回裏にパスボールなどで逆転され、マウンドで崎田はこみあげてくるものがあった。
キャッチングに定評ある成田捕手もなんやら動きが鈍そうだ。そして崎田は8回裏に大量得点をあげられ、ベンチに帰るときには涙があふれてきた。悔しくて、情けなくて、そのままベンチの奥で泣いた。
しかし、それは、誰も責められることではなかった。
明るく笑顔でチームをリードし続けたサード林田主将が、この日の朝の発熱で、ついに離脱。
ベンチ前での円陣は、笑顔があるものの、いつもの元気がみられない。
もはや手負いの立正大淞南。ショートの山脇は戻ってきたが、ふたりが離れてベンチ入り13人。選手補充は登録上、利かないというルール。いまの時代それでいいのだろうか、との見識ある高校野球ファンの声も多く聞こえてきた。
美談としてくくるには、しのびない。インフルエンザ騒動、それは、ただひとりの風邪?それが始まりだったのかもしれない。なにかの巡り合わせにしては、選手、監督やコーチなどに対する制約が生じ、ストレスのボルテージは上がってくる。
それでも選手はよく耐え、終始、笑顔を忘れずにいた。
が、最終13人のベンチでは、このベスト8入りが限界であった。
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