松ひとり言

谷藤松で御座います。
末永くお付き合いの程よろしくお願い致します。

半村良の【八十八夜物語】に感動・・・さすが直木賞作家!

2015年03月15日 21時01分02秒 | 日記

  

《酒をこよなく愛し、夜が大好きだった、半村良と云えば【戦国自衛隊】、そして直木賞作品【雨やどり】もう亡くなって13年

《私が【八十八夜物語】に出会ったのは3年ほど前、場所はもちろん≪BOOK・OFF≫です、そして1ヶ月前にを見っけ》

金額に注目です一冊目は ”105円” でしたけど、二冊目は ”200円” でした・・・でも安いですね

本当は、続編があるとは知らなかったのですところが宮本輝の【三千枚の金貨】を見つけた時

この本を見つけたのでした、前回から3年も経っているので・・・たしか以前に買ったけどぐらいの記憶

しかも ”続” とある、・・・まあエエか200円のこっちゃ清水の舞台から飛び降りる・・・・・(大層なこっちゃ

これが思わぬ大ヒットでした、さて前回の前編てまだあるやろかナ・ナント捨てずに残っていました・・・軌跡や

さて肝心の内容ですが半村良の最も得意とする≪夜の蝶≫の世界を描いた作品

主人公は加納妙子と言う全くの素人からクラブのママに変貌していく在り来りのストーリー

でも、この世界を知り尽くしていないと書けない内容が頻繁に出てくる、根底は人情話である

台詞回しが、歯切れが良くて痛快であるのが魅力的で、特に続編が素晴らしい

中々、この良さをストレートに伝えられないので・・・少し抜粋することに・・・・・

前半では、夜の世界に入るところから始まり、やがてチーママにと・・・・・

私生活では諸岡と言う恋人ができ、一度っきりの男女の仲にこの事を続編に絡ませる

続編は妙子が経営する≪クラブ 88 ≫が舞台になる、そこで最初に起こるのがこの事件

≪クラブ 88 ≫には政財界のトップクラスが出入りする、その情報を探りに

井原と言うゴロ記者が、ところが見破られて出入りが出来なくなる・・と・・・

それを恨んで、元恋人の諸岡の結婚式の会場に騙して妙子を行かす

何も知らない妙子は、井原の罠とも知らないで指定されたホテルに・・・・・

それを知った妙子は泣きながらホテルを飛び出す、妙子には ”ロミ” と言う相棒が

ここからが素晴らしいのですよ、ロミは妙子を連れて箱根へと向かいます

~「気分転換。ね、いいでしょ。このロミちゃんの言う通りにしてくれない・・・・」

 「いいわ。なんでも仰せの通りよ」

 「サンキュー。これから箱根へ行こう。女二人でさ。顔がきくホテルがあるの」

そして次のロミのセリフがあります・・・あとで感動になって再び・・・

 「運が良ければ凄く綺麗なものが見れるわよ。一度見たことあるの、あたし。

 死のうとしたときよ。でも、その時見たのがあんまり綺麗だったから、死ぬのやめちゃった」

 「なんなの、それ」

 「富士山」

 「なんだ」

 「それがただの富士山じゃないの」

 「どういう富士山なの」

 「夜の富士山。月の光を浴びた富士よ。月あかりでくっきり見えるのよ。

 青白く、光ってるの。世界中にあんな美しい眺めはどこにもないと思うわ。

 タエはここんとこよく働いたから、あたしがボーナスにそれ見せてあげる」

そしてこのホテルのラウンジに場所を移して、ロミがピアノを弾く

弾き終わったロミが妙子のいるテーブルに戻ってくると妙子が・・・

 「ロミさんて、どういう人なの」

 妙子は待ちかねたように尋ねた

 「オスカー・ピーターソンばりじゃない」

この辺から私は妙子より、ロミのフアンになっていく

そして、そして、極めつけの場所が用意されているのだから、二・ク・イ

 そのとき、ダイニングルームにいた背の高い黒服の男が近寄ってきて

 ロミのうしろにまわり、何かささやいて立ち去った。

 「タエ」 ロミは急に立ち上がった。

 「そろそろ引きあげようか」

ラウンジの入り口でミンクのコートを渡された二人はエレベーターで「421号室」へ

 鍵をさし込み左へまわす

 「タエ深呼吸しなさい」

 「いやだ。お部屋に何かあるの・・・・」

 「ある。あけるわよ」

部屋は何の変哲も無いように、妙子には思えたのだが・・・・・ロミが云った

 「あんた、ラッキーよ。あたしが見せてあげたかったものが、ちゃんと用意されているわ」

 妙子はロミのそばへ行った。するとロミが引き閉じられていたレースのカーテンを、

 さっと、一気にひきあけた。

 その窓はやや西を向いていた。目前に夜の湖がひろがり、

 その彼方に銀色の重々しいものが置かれていた  富士山である

 ロミが妙子の肩を抱いた。そうしていなければ、青く光る巨大なものに

 圧倒され、悲鳴を上げて逃げ出したくなるところだった。

 「八十八夜に咲いた花は、きっとあそこへ行き着くのよ」

 「恋がなんだい。男がなんだい。あれが命の涯てにある魂のすみかよ」

 「よく見るのよ。終点はあそこ。終点があれほど美しいなら、途中だって・・・・」

 「判ったわ。もっと咲きましょう、ロミ」

 「あたしね、あれを見て死ぬのやめたの」

 我に返ってロミを見ると、ロミの頬がぬれていた。

 「ロミ、泣いてる」

 するとロミはハンカチを取って来て、妙子の目尻を押さえた

 「自分が泣いているの、気が付かないの・・・・・」

 ロミは笑い、そのあとで自分の涙をぬぐった。

少し長かったかな~実際のこの本を読まないと実感が沸いてこないかも

因みにこの本は1984年5月20日の発行ですが2008年の12月に再販

  

この様に衣装換えして・・・定価も2160円になっております・・・もちろん出版社も変わってます

お付き合いを頂きまして・・・有難う御座いました

半村良さんは13年前の2002年の3月4日に肺炎で亡くなっています

享年68歳でした・・・・・心よりご冥福をお祈り致します

 

 

 

  

 

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿