「よぉーしっ、出発でやんす!」
「もぉ~っ、うるさい。お前だけテンションが高いんだよ。」
「いや~っ、それにしても兄貴は優しいですねぇ。盗人(ぬすっと)な上に悪魔のあっしを仲間にするんだからぁー。」
「お前があんなにお供(とも)させて下さいって言うからだよ。」
三人はてくてくと商店街を歩いていた。
「うひょ~っ、たこ焼きにアイスクリーム、それにあっしの大好きな漫画屋さんまでっ!」
リゲルは目をキラキラさせてはしゃぐ。
「それもいいけど、今は一刻も早く世界を元に戻さないと。遊んでる場合じゃないよ。」
「もぉ~っ、兄貴ったら堅いですねぇ。ね?一回、一回だけでいいから!」
そう言ってリゲルはゲームセンターの中へと入って行った。
「あー、行っちゃった。シチ、疲れてないか?」
シチは相変わらずあどけない表情できょとんとしていた。
「あのぉ、兄貴ぃ・・。」
どうやらゲームセンターからリゲルが出てきたようだ。
「遊ぼうと思ったんですがお金が無くて遊べないんです・・。」
「お金ぇ!?お金なんて僕持ってないよ。ささ、ゲームはあきらめてしゅっぱつしんこー!」
「ちぇっ・・。」
一人は少し不機嫌気味な顔をしていたが、達也達はゲームセンターを後にした。
「おいおい、まだゲームの事を根に持ってるのか?」
「ふんっ、兄貴にはあっしの気持ちはわかりませんよ。ゲームはあっしの生きがいなのに・・。」
「はは、おおげさだなぁ。あ、そうだ、あそこのそば屋さんで休憩しようよ。」
達也達ははのれんをくぐって、がらがらっと戸を開けて入って行く。
時刻もちょうどお昼であった。
「・・したんですよぉ、がはははは!w」
「もー、口からそば出てるって。」
達也達はだれもいない店内でにぎやかに談話(だんわ)していた。
「それにしてもこのそばおいしいっすね。おまけにとろろとか、ねぎいくらかけても無料(タダ)ですし。」
「開き直り早いなぁ、おまえ。」
なんか気楽なやつっていいよな。はぁ・・、僕なんか喧嘩の傷ひとつつくった事ないのに、悪魔と戦うなんてさ・・。
「あれ?兄貴には合いませんかね、コレ。」
ずるずるずるぅ~っ。
のんきにそばをすするリゲル。
「ばかいえ、僕なんか20杯はいけるぞ!」
「なにをーっ!あっしは30!」
「じゃぁ僕は・・・・。」
2人のコントのような会話は一時間くらい続いた。そして・・。
「じゃエネルギー満タンってことで、出発だな。」
「へいっ!」
がらがらがらぁ。
「あー、食った食った。また来ような、リゲ・・。」
リゲルは動かずに、ある方向だけを見つめている。
「お、おい。どうしたリゲル。」
「な、何かが、こっちに来てるぅ、あれは多分・・。」
達也も同じ方向を見ると、そこには不気味な化け物達が、うじゃうじゃとこちらに向かっていた。
空を飛ぶ者もいれば、道を歩いて来る者もいる。
なっ、なんだ!?あいつら、見る限りではやばそうな臭いがプンプンするぞ。
ともかく今は・・。
「リゲル、シチ、はやくこっちにこい!」
達也は小声でそういうと、2人を引っ張ってそば屋の壁に隠れた。
シュタッ。
「よぉし、やっと着いたな。」
うわー、あいつやたらとがたいがいいなぁ・・。
「うふ、暑いわぁん。早くキンキンに冷えたビールでも飲みたい。」
何百人もの群れは町に着くと、それぞれがあちらこちらへと散らばって行く。
「なあリゲル、さっきの多分って何なんだ?」
達也達3人は壁から目をちょこっと覗かせている。
「た、多分悪魔です。」
「えぇーっ!・・っ。」
達也は慌てて口を抑えた。
「あ、あいつらは・・。」
リゲルの顔が普段と違い、ひきつっている。
「ねぇ、なんか人間の匂いがしない?わかい・・・、若い男の匂いがするわ。」
や、やばいっ・・!結構離れているのに、何故・・!?
「んぁ、そうかぁ?悪いが俺には分からん。」
女の姿をした化け物は花をクンクンさせ始めた。
「もう少し、もう少しで分かるわぁ・・。」
「リ、リゲル!シチ!ここはいったん逃げるんだ!」
「いた・・。」
女はにたりと笑って追い始める。
「走って!これは間違いなく人間だわ!」
「あ、兄貴ぃ!バレちまいましたよぉ~!?」
「いいから走れ!」
確かこの道の先に海があったはず!そこのボートに乗れば・・・!
「いいか?お前が漫画を盗んで逃げた時みたいに全速力で走るんだ、いやそれ以上だ!」
「へ、へぃっ。」
シュドドドドド!
「全員で3匹ね。んふ、まだ生き残りがいたなんてねぇ・・。」
「にしてもあいつら、結構なスピードだぜ・・。」
化け物達もさらに速度を上げた。
くそぉ、このままじゃこっちのスタミナが切れてしまう。
達也達は、わざわざ店と店の間の細い道をうねうねと曲がってみせた。
「へっへーん、見失えさせればこっちのもんだーい。」
「あぁっ、この道を抜けりゃぁ海ですぜ!」
よし、もう少しだ!
ガシャンッ!
「ん?」
音がした方向に、達也が振り向くと、なんとシチが倒れていたのだった。横たわったゴミ箱と共に。
「シチ、大丈夫か!」
達也は慌ててダッシュする。
だが、もうすでに2人組の化け物達が、女の方を先頭に、角を曲がって道に入ってきた所であった。
「おほほ、やっと捕まえれるわぁ~っん!」
そして、勢いよく飛びかかる。
「そうはいくかー!!」
あと少しの所で、達也はシチの前にすべり込む。
あぁ、どうしよう。僕は今何をすればっ・・・。
達也は、一瞬の間に打開策を頭の中で展開した。
そして目の前のごみ箱からこぼれ出ている、なべのふたを手に取った。
「もうやけだーーっ!」
ガァンッ!
「う、うぅ。よくもこの私の顔を・・・。」
前に突き出したふたは運良く女の顔面へとヒットした。
達也はもう半ば諦めかけつつ目を開く。
・・・お、おお!やったぁ!
「おぉ、おい。早くどけよ!」
「うるさいわね、あんたこそはやく追いなさいよ!」
尻もちをついた女にぶつかって、後ろにいた男もこけた。
「よし、シチ!今のうちだよ!」
達也はシチの手をぎゅっと掴んで、走り出す。
ボートにはリゲルがもう乗っている。
「あんにゃろー、兄貴の足引っ張りやがってぇ。」
一方2人組の方は、ようやく立ち始めて走り出したようだ。
「逃がすもんですかぁー!」
よし、あとちょっとで船に乗れるっ!
「兄貴ぃー、速くー!」
シュドドドォォ!
後方からかつて無いスピードで迫ってきていた。
「そりゃぁっ!」
女は再び達也めがけて飛びかかる。
ええぇぇ!?や、やばいっ!そんなにジャンプされるとはぁっ・・!
「うぉぉおおおっ・・!」
達也は目一杯にボートめがけてダイブした。
女の細長い手が、あとほんの何ミリかで達也の足に触れようとしている。
バンッ。
「・・はぁ、はぁ、・・危なかった。」
達也とシチは船に転げ込んだ時には、すでにボートのエンジンがかかっていた。
「危なかったげすねぇー。もう少しで捕まってましたよ。」
達也達は安堵(あんど)を感じながら、陸の方を眺めていた。
「あぁん、もうっ、逃しちゃったじゃない!」
こうして3人は化け物達から逃(のが)れる事が出来た。
ラッキーアイテムのなべのふたが達也達を救ったのだ。
「もぉ~っ、うるさい。お前だけテンションが高いんだよ。」
「いや~っ、それにしても兄貴は優しいですねぇ。盗人(ぬすっと)な上に悪魔のあっしを仲間にするんだからぁー。」
「お前があんなにお供(とも)させて下さいって言うからだよ。」
三人はてくてくと商店街を歩いていた。
「うひょ~っ、たこ焼きにアイスクリーム、それにあっしの大好きな漫画屋さんまでっ!」
リゲルは目をキラキラさせてはしゃぐ。
「それもいいけど、今は一刻も早く世界を元に戻さないと。遊んでる場合じゃないよ。」
「もぉ~っ、兄貴ったら堅いですねぇ。ね?一回、一回だけでいいから!」
そう言ってリゲルはゲームセンターの中へと入って行った。
「あー、行っちゃった。シチ、疲れてないか?」
シチは相変わらずあどけない表情できょとんとしていた。
「あのぉ、兄貴ぃ・・。」
どうやらゲームセンターからリゲルが出てきたようだ。
「遊ぼうと思ったんですがお金が無くて遊べないんです・・。」
「お金ぇ!?お金なんて僕持ってないよ。ささ、ゲームはあきらめてしゅっぱつしんこー!」
「ちぇっ・・。」
一人は少し不機嫌気味な顔をしていたが、達也達はゲームセンターを後にした。
「おいおい、まだゲームの事を根に持ってるのか?」
「ふんっ、兄貴にはあっしの気持ちはわかりませんよ。ゲームはあっしの生きがいなのに・・。」
「はは、おおげさだなぁ。あ、そうだ、あそこのそば屋さんで休憩しようよ。」
達也達ははのれんをくぐって、がらがらっと戸を開けて入って行く。
時刻もちょうどお昼であった。
「・・したんですよぉ、がはははは!w」
「もー、口からそば出てるって。」
達也達はだれもいない店内でにぎやかに談話(だんわ)していた。
「それにしてもこのそばおいしいっすね。おまけにとろろとか、ねぎいくらかけても無料(タダ)ですし。」
「開き直り早いなぁ、おまえ。」
なんか気楽なやつっていいよな。はぁ・・、僕なんか喧嘩の傷ひとつつくった事ないのに、悪魔と戦うなんてさ・・。
「あれ?兄貴には合いませんかね、コレ。」
ずるずるずるぅ~っ。
のんきにそばをすするリゲル。
「ばかいえ、僕なんか20杯はいけるぞ!」
「なにをーっ!あっしは30!」
「じゃぁ僕は・・・・。」
2人のコントのような会話は一時間くらい続いた。そして・・。
「じゃエネルギー満タンってことで、出発だな。」
「へいっ!」
がらがらがらぁ。
「あー、食った食った。また来ような、リゲ・・。」
リゲルは動かずに、ある方向だけを見つめている。
「お、おい。どうしたリゲル。」
「な、何かが、こっちに来てるぅ、あれは多分・・。」
達也も同じ方向を見ると、そこには不気味な化け物達が、うじゃうじゃとこちらに向かっていた。
空を飛ぶ者もいれば、道を歩いて来る者もいる。
なっ、なんだ!?あいつら、見る限りではやばそうな臭いがプンプンするぞ。
ともかく今は・・。
「リゲル、シチ、はやくこっちにこい!」
達也は小声でそういうと、2人を引っ張ってそば屋の壁に隠れた。
シュタッ。
「よぉし、やっと着いたな。」
うわー、あいつやたらとがたいがいいなぁ・・。
「うふ、暑いわぁん。早くキンキンに冷えたビールでも飲みたい。」
何百人もの群れは町に着くと、それぞれがあちらこちらへと散らばって行く。
「なあリゲル、さっきの多分って何なんだ?」
達也達3人は壁から目をちょこっと覗かせている。
「た、多分悪魔です。」
「えぇーっ!・・っ。」
達也は慌てて口を抑えた。
「あ、あいつらは・・。」
リゲルの顔が普段と違い、ひきつっている。
「ねぇ、なんか人間の匂いがしない?わかい・・・、若い男の匂いがするわ。」
や、やばいっ・・!結構離れているのに、何故・・!?
「んぁ、そうかぁ?悪いが俺には分からん。」
女の姿をした化け物は花をクンクンさせ始めた。
「もう少し、もう少しで分かるわぁ・・。」
「リ、リゲル!シチ!ここはいったん逃げるんだ!」
「いた・・。」
女はにたりと笑って追い始める。
「走って!これは間違いなく人間だわ!」
「あ、兄貴ぃ!バレちまいましたよぉ~!?」
「いいから走れ!」
確かこの道の先に海があったはず!そこのボートに乗れば・・・!
「いいか?お前が漫画を盗んで逃げた時みたいに全速力で走るんだ、いやそれ以上だ!」
「へ、へぃっ。」
シュドドドドド!
「全員で3匹ね。んふ、まだ生き残りがいたなんてねぇ・・。」
「にしてもあいつら、結構なスピードだぜ・・。」
化け物達もさらに速度を上げた。
くそぉ、このままじゃこっちのスタミナが切れてしまう。
達也達は、わざわざ店と店の間の細い道をうねうねと曲がってみせた。
「へっへーん、見失えさせればこっちのもんだーい。」
「あぁっ、この道を抜けりゃぁ海ですぜ!」
よし、もう少しだ!
ガシャンッ!
「ん?」
音がした方向に、達也が振り向くと、なんとシチが倒れていたのだった。横たわったゴミ箱と共に。
「シチ、大丈夫か!」
達也は慌ててダッシュする。
だが、もうすでに2人組の化け物達が、女の方を先頭に、角を曲がって道に入ってきた所であった。
「おほほ、やっと捕まえれるわぁ~っん!」
そして、勢いよく飛びかかる。
「そうはいくかー!!」
あと少しの所で、達也はシチの前にすべり込む。
あぁ、どうしよう。僕は今何をすればっ・・・。
達也は、一瞬の間に打開策を頭の中で展開した。
そして目の前のごみ箱からこぼれ出ている、なべのふたを手に取った。
「もうやけだーーっ!」
ガァンッ!
「う、うぅ。よくもこの私の顔を・・・。」
前に突き出したふたは運良く女の顔面へとヒットした。
達也はもう半ば諦めかけつつ目を開く。
・・・お、おお!やったぁ!
「おぉ、おい。早くどけよ!」
「うるさいわね、あんたこそはやく追いなさいよ!」
尻もちをついた女にぶつかって、後ろにいた男もこけた。
「よし、シチ!今のうちだよ!」
達也はシチの手をぎゅっと掴んで、走り出す。
ボートにはリゲルがもう乗っている。
「あんにゃろー、兄貴の足引っ張りやがってぇ。」
一方2人組の方は、ようやく立ち始めて走り出したようだ。
「逃がすもんですかぁー!」
よし、あとちょっとで船に乗れるっ!
「兄貴ぃー、速くー!」
シュドドドォォ!
後方からかつて無いスピードで迫ってきていた。
「そりゃぁっ!」
女は再び達也めがけて飛びかかる。
ええぇぇ!?や、やばいっ!そんなにジャンプされるとはぁっ・・!
「うぉぉおおおっ・・!」
達也は目一杯にボートめがけてダイブした。
女の細長い手が、あとほんの何ミリかで達也の足に触れようとしている。
バンッ。
「・・はぁ、はぁ、・・危なかった。」
達也とシチは船に転げ込んだ時には、すでにボートのエンジンがかかっていた。
「危なかったげすねぇー。もう少しで捕まってましたよ。」
達也達は安堵(あんど)を感じながら、陸の方を眺めていた。
「あぁん、もうっ、逃しちゃったじゃない!」
こうして3人は化け物達から逃(のが)れる事が出来た。
ラッキーアイテムのなべのふたが達也達を救ったのだ。