裏有明
あの鹿はもう形は残ってないだろう
思いながら歩くみち
でも
網にぶら下がったそのままの姿で
その鹿はいた
日に照らされ
雨に打たれ
風に吹かれ
夜に冷やされながら
その鹿はまだ形を留めていた…
傍らを歩きながら
何だか犯罪現場に帰って来た気がした
ヒトの居ない山頂で草を喰む
二頭の子鹿
ヒトの力が介在しない自然の世界
生きるために草を食べる
生きるために命を食べる
どちらが畜か?
人が死したのち辿り着くその先は
業火で魂魄さえ焼き尽くされる無間地獄
そう…
そうでなければ平等じゃない