09年秋冬の新作発表が紳士服から始まった。伊・フィレンツェで開かれた展示会「ピッティ・イマージネ・ウオモ」とミラノ・メンズコレクションでは、不透明な時代の空気を反映してか、新しい実験や冒険よりも、伝統への回帰や定番の洗練を目指した服が目立った。その分、素材はより上質に、仕立てや加工はより手が込んだものになっている。(菅野俊秀)
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1月17日からのミラノメンズでは4日間に約40のブランドがショーを開催。昨年6月の09年春夏よりも五つほど少なくなった。
多くのブランドがスーツやジャケットをきちんと着るスタイルを提案した中で、ひときわ迫力を見せたのは英国の伝統スタイルにボクシングなどの要素を加えたアレキサンダー・マックイーン。街灯が霧ににじむ演出の中、現れたのは黒い毛皮にステッキ姿の男。ニットキャップの上にソフト帽をかぶり、指が出た赤い手袋はボクサーのバンテージのようだ。ヒールが高いモンクストラップで足早に向かう先はどこなのか。
プラダが見せたグレーのダブルスーツは微妙なバランスが計算されていた。肩幅はやや広め。ノーネクタイで、パンツのすそを長く折り返し、びょうを打ち込んだ靴を合わせ、引き締まった雰囲気を漂わせた。
トマソ・アキラーノとロベルト・リモンディがメンズでもクリエーティブディレクターに就任したジャンフランコ・フェレは、このブランドならではの構築的な服。肩を作ったひざ丈の白いコートにボリュームのあるニットマフラーを合わせたフォルムが光った。
ほかに、意外性のある古典主義を掲げてコーデュロイをきれいに使ったフランキー・モレロや、住まいブランドの原点でもあるシチリアをテーマにリボンを縦横に編んだ生地でジャケットを作ったドルチェ&ガッバーナなど、2人組デザイナーの秀作が目についた。
グッチは80年代のニューウエーブから着想。スーツもカジュアルも差し色を利かせてきれいにまとめた。
ミラノに先立って、フィレンツェで開かれた世界有数の紳士服展示会ピッティ・ウオモには、イタリアを中心に約850ブランドが出展、4日間で各国のバイヤーやジャーナリストら計約3万5千人が来場した。
極上のテーラーメードスーツから若者向けのデニムまで、いつも通り出展内容は多彩だが、新しい大きなうねりは見て取れない。Maker blog素材の上質化や品ぞろえのトータル化を図り、英国調の要素やアイテムを取り入れるブランドが多かった。
そんな中、安定感を示したのはコルネリアーニ。スーツやジャケットはより柔らかく軽い生地で仕立て、グレーやベージュなど次のトレンド色を先取りして上品にまとめた。カジュアルも、防水加工したカシミヤとレザーのリバーシブルダウンジャケットなど、上質素材に一手間加えた。「伝統的なアイテムをイタリア流のエレガンスでモダンに仕立てた」と輸出部門マネジャーのマテオ・フランチェスキニさん。
カシミヤの高級ニットで知られるブルネロ・クチネリは「コンテンポラリーダンディー」をテーマに、カシミヤのスーツにダウンジャケットや英国調の靴を合わせるなどのスタイリングを提案。連日、出会い多くの来場者を集めていた。
30年来、ピッティに通うファッションディレクターの赤峰幸生さんは、ここ数年の英国的スタイルが見直されている傾向は続いているといい、「ポロ競技など英国のクラススポーツのスタイルを根底に、家具温暖化を背景に求められる軽さなど、イタリアの技で時代に合わせて表現する傾向が広がっている」と分析する。
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1月17日からのミラノメンズでは4日間に約40のブランドがショーを開催。昨年6月の09年春夏よりも五つほど少なくなった。
多くのブランドがスーツやジャケットをきちんと着るスタイルを提案した中で、ひときわ迫力を見せたのは英国の伝統スタイルにボクシングなどの要素を加えたアレキサンダー・マックイーン。街灯が霧ににじむ演出の中、現れたのは黒い毛皮にステッキ姿の男。ニットキャップの上にソフト帽をかぶり、指が出た赤い手袋はボクサーのバンテージのようだ。ヒールが高いモンクストラップで足早に向かう先はどこなのか。
プラダが見せたグレーのダブルスーツは微妙なバランスが計算されていた。肩幅はやや広め。ノーネクタイで、パンツのすそを長く折り返し、びょうを打ち込んだ靴を合わせ、引き締まった雰囲気を漂わせた。
トマソ・アキラーノとロベルト・リモンディがメンズでもクリエーティブディレクターに就任したジャンフランコ・フェレは、このブランドならではの構築的な服。肩を作ったひざ丈の白いコートにボリュームのあるニットマフラーを合わせたフォルムが光った。
ほかに、意外性のある古典主義を掲げてコーデュロイをきれいに使ったフランキー・モレロや、住まいブランドの原点でもあるシチリアをテーマにリボンを縦横に編んだ生地でジャケットを作ったドルチェ&ガッバーナなど、2人組デザイナーの秀作が目についた。
グッチは80年代のニューウエーブから着想。スーツもカジュアルも差し色を利かせてきれいにまとめた。
ミラノに先立って、フィレンツェで開かれた世界有数の紳士服展示会ピッティ・ウオモには、イタリアを中心に約850ブランドが出展、4日間で各国のバイヤーやジャーナリストら計約3万5千人が来場した。
極上のテーラーメードスーツから若者向けのデニムまで、いつも通り出展内容は多彩だが、新しい大きなうねりは見て取れない。Maker blog素材の上質化や品ぞろえのトータル化を図り、英国調の要素やアイテムを取り入れるブランドが多かった。
そんな中、安定感を示したのはコルネリアーニ。スーツやジャケットはより柔らかく軽い生地で仕立て、グレーやベージュなど次のトレンド色を先取りして上品にまとめた。カジュアルも、防水加工したカシミヤとレザーのリバーシブルダウンジャケットなど、上質素材に一手間加えた。「伝統的なアイテムをイタリア流のエレガンスでモダンに仕立てた」と輸出部門マネジャーのマテオ・フランチェスキニさん。
カシミヤの高級ニットで知られるブルネロ・クチネリは「コンテンポラリーダンディー」をテーマに、カシミヤのスーツにダウンジャケットや英国調の靴を合わせるなどのスタイリングを提案。連日、出会い多くの来場者を集めていた。
30年来、ピッティに通うファッションディレクターの赤峰幸生さんは、ここ数年の英国的スタイルが見直されている傾向は続いているといい、「ポロ競技など英国のクラススポーツのスタイルを根底に、家具温暖化を背景に求められる軽さなど、イタリアの技で時代に合わせて表現する傾向が広がっている」と分析する。