6月3日2

2007年06月03日 | Weblog
骨太の方針 参院選向けのアメなのか? (毎日新聞)
 08年度の予算編成と経済政策運営の骨格を示す「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2007」(骨太の方針07)の策定作業が最終段階に入った。

 これまで、主要国首脳会議(サミット)に先立って決定されることが多かった。構造改革を進め、内需主導型経済への努力を、国際的にアピールしていく意図からであった。今年はハイリゲンダム・サミットが早いこともあり、サミット後になる。

 今年の場合、7月の参院選を強く意識していることも指摘しなければならない。これまでの議論や素案からもそのことはうかがうことができる。与党の票集めのアメという性格が濃厚といってもいいだろう。

 小泉純一郎前首相時代にも、政権の構造改革にかける決意を国民に印象付ける政治的道具として使われたことは事実だ。同時に、「改革には痛みが伴う」と言った手前、歳出削減や社会保障給付の見直しにも言及せざるを得なかった。

 安倍晋三政権はどうだろうか。骨太の方針に盛り込まれそうなのは、地域活性化や地方への財源移譲などである。地域経済や地域社会を元気にすることは正しい。そのために適切な施策を講じていくこともその通りだ。

 ところが、いま、議論されているのは、とても骨太と言えるものではない。総務省が研究会で実現に向けて動き出したふるさと納税も都市から地方に財源を移転するひとつの方法ではあるが、本筋にはなり得ない。現状においては、国にしろ地方にしろ、基幹税は所得税、法人税、消費税、住民税、各種資産税である。

 地方分権と税源移譲を一体で考えるのならば、国に偏している税目を地方に移譲する、あるいは、地方6団体が提案しているような地方共通税を創設し、水平調整を進めるのが筋だ。

 ところが、そうした議論は進んでいない。財務省は税源移譲に強く抵抗している。

 骨太の方針には税制改革の基本哲学も盛り込むことになっている。税源移譲のあり方や消費税の位置付けなど根本に立ち入らずして、税制改正の方向の提示はできない。なぜ消費税率上げには触れないのか。「地域活性化に資する税制にします」というだけでは、本当の地方分権は実現しない。

 実現への検討が始まった地域力再生機構は、産業再生機構の成果を教訓とし、地域企業の再生に必要な人材の派遣や紹介を主要業務とするという。しかし、いまさら、官主導でやることなのか。地域企業や地域経済再生のノウハウの積極的提供は必要であるにしろ、それは自治体や地域金融機関、そして住民の手でやるべきだ。

 また、安倍首相は歳出・歳入一体改革では歳出の最大限の削減を指示している。しかし、自民党内には公共事業費の削減に終止符を打とうという動きがある。選挙対策だ。財政改革が本物であるというのであれば、こうした動きを封じなければならない。さもなければ、骨太の方針はいらない。


外国人研修 人権侵害なくす制度に改めよ (毎日新聞)
 朝から深夜まで1日13時間もミシンやアイロン台に向かう。時給は300円程度。逃走を防ぐためにパスポートや預金通帳が強制的に保管されるケースもある。外国人研修・技能実習制度で中国、ベトナムなどから来日した外国人が低賃金で過酷な労働を強いられる例が後を絶たない。

 開発途上国の若者らが日本で技能を習得し、帰国後にその技能を発揮することで国際貢献につながる。これが制度の「建前」である。ところが、日本の受け入れ側の「本音」は中小企業などの人手不足を補う安価な労働力としての期待だ。そこで人権侵害や不当な扱いがあっては、国際貢献とは正反対のマイナス効果をもたらす。制度を抜本的に見直すことが急務だ。

 来日から1年目は企業などで研修を受け、一定の技能レベルを身につけた者はさらに2年間の技能実習を積む。93年の制度スタートから研修・実習生の数は年々増え、06年に入国した研修生は約9万3000人、実習生に移行したのは約4万1000人に上る。

 受け入れには、大手企業が現地法人の従業員らを直接招く方法と、中小企業でつくる事業協同組合などの団体が受け入れ、傘下企業で研修・実習を行う方法の2種類がある。中小企業のニーズの高まりから団体受け入れが急増し、全体の9割を超えている。

 この団体受け入れ方式で問題が顕在化している。法務省の調査で不正行為が認定された団体・企業は06年に過去最多の218を数えた。それに加え、研修・実習生を日本に送り出す窓口機関が多額の保証金を出国前に徴収し、その借金返済で無理に稼ごうとする研修・実習生も多い。昨年8月には、保証金約100万円を納めた中国人研修生が千葉県の研修先で残業を増やすよう求め、日本人を殺害する事件も起きた。送り出し機関と受け入れ団体の間でうごめくブローカーの存在も指摘される。

 日本の技術を自国の産業に役立てている成功例もあるが、団体受け入れ方式の多くで制度本来の趣旨は破たんしていると言わざるを得ない。廃止も含め、政府は制度のあり方を真剣に検討すべきだ。

 関係の省が相次いで見直し案をまとめた。厚生労働省の研究会は研修をやめて実習に一本化する提言をした。現行は労働者と扱われない研修生も労働法規で守られる利点はあるが、問題の根本解決となるかは不透明だ。経済産業省の研究会は現行制度を維持し、受け入れ先の規制強化に力点を置く案だ。さらに経済界の要望に応え、一時帰国後の再入国でさらに2年の実習を認めるというが、それでは問題を一層拡大しかねない。

 一方、長勢甚遠法相は制度を改め、人口減少社会での労働力確保のために3年間の外国人就労を認める私案を公表した。これまで政府が認めてこなかった外国人の単純労働に道を開くことになるが、外国人の定住化にもつながる問題だ。将来の「国のかたち」にかかわり、国民のコンセンサスが大前提となる。この問題提起も併せて、論議を深める必要がある。


技術流出 企業の感度が鈍くないか (産経新聞)
 企業の技術流出が深刻だ。政府の「ものづくり白書」最新版は、技術流出防止が日本の製造業の国際競争力維持・強化にとって重要課題であると訴えている。

 白書は、経済産業省が昨年12月にまとめた製造業に対する調査結果を紹介している。それによると、「技術流出があった」とした企業は35・8%に達した。流出先と考えられるのはトップが中国63・5%、次いで韓国だ。

 外国企業による合併・買収で重要技術が流出するとの危機感は強い。三角合併解禁のさい、外資規制を求める声が経済界で高まった。安全保障の観点から、外資が投資する場合に法律で事前届け出が義務付けられる業種、技術が拡大されることにもなっている。

 留意すべきは、合併・買収などによる流出より、元社員や外国人社員による技術持ち出しが多いことだ。

 企業機密漏洩(ろうえい)では不正競争防止法の罰則が強化され、最高刑は懲役10年と米国並みになった。政府内には、機密情報を第三者に示したことが確認されなくても、入手しただけで処罰できるよう同法を再改正する動きもある。

 法律面の整備もさることながら、企業の情報保持に対する意識を向上させることも重要だ。

 機密情報は通常の情報と区別され、アクセス制限や厳格な手続きが求められるべきだ。にもかかわらず、両者の区別があいまいな例が多い。先の調査では、社員に秘密保持契約を課している企業は7割を超えるが、「保持すべき秘密」を特定しているのは約4割である。これでは実効性が問われる。

 企業の感度の鈍さは、後を絶たぬ軍事転用可能な技術・製品の中国、北朝鮮への不正輸出にあらわれている。

 今春、自動車部品大手デンソーの中国人技術者が、機密情報を含む大量の製品データを持ち出したとして横領容疑で逮捕された。中国への技術流出は確認できず、起訴は見送られたが、同社のデータ管理の甘さは責められよう。日本企業の技術者が週末、中国や韓国に出かけてアルバイトしているうちに技術が流出したケースも多い。

 まずもって、企業や従業員自らが、技術流出防止への感度を上げることである。それなくしては、せっかくの法整備も生かされまい。


がん対策 禁煙こそ重要な予防手段 (産経新聞)
 4月に施行したがん対策基本法に基づき、国の具体的施策を定めた「がん対策推進基本計画」がまとまった。6月中に閣議決定される。

 年間30万人以上の日本人が、がんで亡くなっている。がんが死因のトップになって久しい。がん撲滅を目指す初の国家戦略が動き出したことを評価したい。

 基本計画は、75歳未満のがん死亡率の2割削減と、患者や家族の苦痛軽減を目標とし、その達成に向けて、(1)放射線治療と化学療法の推進(2)痛みに対する緩和ケアの充実(3)患者の状況を把握するがん登録の推進-を取り組むべき課題としてあげている。

 しかし、がん予防に効果が大きく、厚生労働省のがん対策推進協議会の会合でも一度は合意されていた「喫煙率半減」という数値目標の設定は、今回の基本計画では見送られた。

 日本たばこ産業(JT)から「個人の嗜好(しこう)への国家権力の介入だ」と強い反発があったことや、たばこ販売で年間約2兆2000億円の税収を得ている財務省への配慮もあったようだ。

 国民の健康維持を考えると、非常に残念である。

 禁煙を推し進める厚労省に対し、財務省は消極的であるなど政府部内でも立場は異なっている。ここに国の政策の大きな矛盾が存在する。

 がん撲滅を国家戦略とする以上、強い因果関係があるとされる喫煙の問題については、より真剣に議論される必要がある。

 国立がんセンターによれば、男性44%、女性12%の喫煙率がそれぞれ半減すれば、10年後のがん死亡率は男女合わせて1・6%減少するという。

 喫煙率の低減は、がんの死亡率を引き下げるために欠かせないひとつの要素であろう。

 厚労省は、5月31日の「世界禁煙デー」にあわせ、6月6日までの1週間を「禁煙週間」と定めている。

 一昨年2月には「たばこ規制枠組み条約」が発効し、受動喫煙の防止やたばこのパッケージへの警告が義務づけられ、昨年4月からは禁煙治療に健康保険が適用された。路上喫煙禁止条例の制定、タクシーを全面禁煙とする動きも全国に広がっている。

 禁煙環境が整ってきた。たばこと縁を切るには絶好のチャンスだろう。
 
 


1 コメント

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こんにちは (memaido)
2007-06-03 18:13:02
はじめまして、楽しく拝見させていただきました。
またちょくちょく拝見させていただきます。
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