
パッケージも、ジャケットも何も見ず…
ストーリーや内容に関する予備知識も何も無く…
そのタイトルのイメージだけを頼りにプレイを始めた「監禁」と言う名のゲーム。
一体どんなゲームなのだろうか?
僕の予想では…
①サスペンス
②アダルトなゲーム
の2点に絞られていた。
程なく冒頭のタイトル画面と同時にストーリーが始まる。
~ストーリー~
2197年神戸シティ。乙部左琴(おとべさごと)は国際空港に程近いホテルの前に車を停めた。
国際警察・麻薬捜査次官である天草流門(あまくさるもん)に呼び出されるのは今回が2度目だった。
麻薬捜査官である左琴はこの打ち合わせの後、北海道へ飛ぶ事になっていた。
日本が外貨を獲得する為に打ち出した改造計画によって北海道にもたらされたものは巨大都市という形だけではなかった。
札幌は金・性・権力を求める人間で溢れかえっていた。
本土から入り込む人々の他に、大陸からの密入国者が年間数万人のレベルにも達していた。
また、ギャンブルの解禁によって犯罪が激増し、治安は悪化の一途を辿った。
そして、巨大な犯罪組織が法律さえも蝕み、警察の手に負えなくなりつつあるのが現状だった。
なんとハードボイルドな…これは正に僕の大好きな近未来モノ。
僕の予想の①を遙かに越える(嬉しい方向に)展開に胸が躍った。
だが…間もなくそれが崩れ去る…。
ストーリーは左琴が北海道へ渡り本格的に始まる。
まずは、先に北海道に潜入していた捜査主任「ヘインズ」と合流するのだが、そこに待っていたのは、マフィアから届けられた1本のビデオテープ。
その中身は…
ヘインズと共に北海道入りしていた女性麻薬捜査官2人が、マフィアの男達に次々と陵辱を受ける内容だった。
……②かよっ!と思わず叫びそうになったがここは我慢。
金・性・権力が絡むハードボイルドに多少の濡れ場は欠かせない。
ここは次なる展開を見てからだ!と淡い希望を胸にストーリーを進める。
すると…シーンが変わり、今度は左琴とヘインズの濡れ場…
同僚の女性麻薬捜査官が陵辱を受けるシーンを見て、左琴は耐え切れなくなり、誰でも良いから、自分も抱かれたいと思ったんだそうな…
ここから先はもう救いようの無い展開。
次から次へと濡れ場のオンパレード。
マフィアの男どもはやり放題。こっちの麻薬捜査官どもはやられ放題。
結局、国際警察の麻薬捜査次官である天草がマフィアと通じ、潜入捜査中のヘインズの妻を犯し心身共に従わせ、情報を聞き出し、潜入捜査官達の行動は筒抜けだったのだが…(まあ、ヘインズも北海道でずいぶんお楽しみのご様子なので、同情の余地は無し)
ここでポイントなるのは、乙部左琴ともう1人の主人公とも言える、麻薬捜査次官・沙雲剛史(さぐもつよし)だ。
この男こそが、このゲーム、いや、人類にとっての希望の光とも言える。
沙雲は、自分の妻をマフィアのボス尼流部(にるべ)に陵辱され殺された過去を持つ男。
左琴やヘインズ達とは別行動で北海道に潜入し捜査を行っていたのだ。
物語はこの2組の行動が交互に描かれるのだが…
■左琴・ヘインズペア…は、前述の通りEROそのもの。
■沙雲…こいつこそが正にハードボイルド!
物語は中盤にさしかかり、左琴・ヘインズペアが女性麻薬捜査官が囚われている山荘に突入するが、天草からマフィアに渡った情報により待ち伏せされ、ヘインズは銃で撃たれ重症。左琴はついにマフィアに囚われてしまう。
その頃、マフィアのボス尼流部の懐刀と呼ばれる東(あずま)がホテルで女性とお楽しみ中に踏み込んだ沙雲は真相を知る。
ハードボイルドに東を撃ち殺した沙雲は急ぎ山荘に向かうが、そこには倒れるヘインズの姿しか無かった。
まずは麻薬捜査次官・天草を逮捕し、特殊部隊の長官である佐々木(ささき)の協力を得、次々と囚われの捜査官を救出し、マフィアを追い詰めていく沙雲。
やがて尼流部が潜む最後のアジトを見つけ出す。
その頃…囚われた左琴は毎日、尼流部に陵辱されていた。
(ていうか、かなり喜んでいらっしゃるご様子。「私はただのメスです!」や「私は尼流部さまのドレイです!」等連発。この快楽が永遠に続けば良いとさえ思った…なんてモノローグまで加えられ、もう好きにして状態)
そこへ特殊部隊と共に踏み込む沙雲!
そしてついに左琴を救出。尼流部を逮捕し、過去のカリを返したのだ。
今までの展開から言って、結局この後は沙雲と左琴の濡れ場が有るんじゃね~の!?なんて邪推していた僕だったが…
救出した左琴に無言でタオルをかけ立ち去る沙雲…
特殊部隊の隊員が敬礼で沙雲を迎え、振り返る事無く特殊部隊の車輌に乗り込む。
左手で軽く挨拶を残して……。
しぶい!しぶすぎる!(疑ってごめんなさい!)
物語を通じて、数々の濡れ場に遭遇した沙雲だが、決して1度も女性に手を出す事無く、卑猥なセリフの一言も発さず…これは賞賛に値する。
例えば、食べ物も飲み物も無い無人島で1週間過ごしたとしよう。
その間、何も口にしなかったが、これは我慢ではない。
そこに物が存在しないのだから、その状況を受け入れるしかないだけだ。
目の前にいくらでも物が有るのに断食する事とは質が違う。
だからこそ僧が悟りを開く為に、俗世間の欲望を絶つという行動にも意味が有るのだ。
つまり、濡れ場の1つも無い真面目なゲームにおけるハードボイルドな主人公と、濡れ場だらけのアダルトゲームにおいてただの一度も女に手を出さなかった沙雲では精神力が桁外れなのだ。
だからこそ断言する。
沙雲剛史と言う男は、この世に現存する数少ない硬派だ。
漫画家・車田正美の描く「硬派像」を地で行く男なのだ。
もはや言葉は必要無いだろう。
彼の後姿が…全てを語っているのだから…。

文/アドル・DO・クリスティン