#掌篇 新着一覧
無花果
秋の夕暮れ、イチ子さんが、庭の硬い無花果の実を小籠に収穫していた。 例年、油断をしていると、鳥に収穫の先を越され残念な気持ちになるのだが、運良く今年は野鳥に先んじた。司馬遷の史記にある...
インスタ映え
『上等な掛け軸』ではないが、床の間に掛けると何故か映えるモノがある、と谷崎が『陰翳礼讃』に書いている。これは、『インスタ映え』ならぬ『床の間映え』と言うそうだ。
何も見えていなかった
大切なものが何も見えていなかったことに、実は今、やっと気が付いた。【Noel Gallagher an...
水口イチ子の納得のいく説
欧米の古今東西、大作家の蔵書数を調べると、たった五百冊から七百冊くらいの人が散見されて意外だと水口イチ子が言う。 蔵書の多寡で計れるのは、その人の財力であって
明日から夏休み
休暇中の計画は、言わずもがなの日々 —— 考えること、すること全部きみと一緒。 【The Yardbi...
遙々旅して来たのだったが...
椰子林の先に広がる、カルタゴから吹く夏の風に曝される海を、リゾートホテルの高い窓から...
カーディガン
今朝、起きると急に季節が進んでいて、思わずカーディガンを重ね着した。それでも暑いよりは寒い方が好きだ。...
そろそろ閉めようと思っていた
バーは、もう他に客のいない時間になっていた。 午前二時をまわってこの店に来たのは今夜が初めてかも知れない。「何時閉店だっけ?」 そろそろ閉めようと思っていたと
『パリの馬肉屋』の話
イチ子さんより少し遅く起きて、まだ薄暗い階段を上がり、キッチンへのドアを押すと、彼女...
欧州の秋、焼き栗の季節
取材旅行に行く水口イチ子を成田まで車で送り、別れたのが昨日の夜。 十八時間後の今、遅い夕飯を済ませると彼女からメールが来ていた。「ローマ着。これからホテルにチ
ショートカットと黄色い靴
イチ子さんと新宿へ出かけた。 目的の場所へは大通りを行くより百貨店の中を横切った方が...