銀色のフィレンツェ -メディチ家殺人事件- 塩野 七生 (著)
ヴェネツィアの貴族マルコ・ダンドロは花の都フィレンツェを訪れる。
かつての共和国と栄えたフィレンツェは今や大国スペインを後楯にする公爵の独裁下にあった。
その専制君主をめぐるメディチ家の陰謀に巻き込まれるマルコたち。
16世紀前半、翳りゆくイタリア・ルネサンス期を描く絢爛たるルネサンス歴史絵巻第二部。
『緋色のヴェネツィア』『銀色のフィレンツェ』『黄金のローマ』の三部作、第二弾である。
タイトルにある銀色とはフィレンツェを流れるアルノ河からきているらしい。
冒頭、主人公マルコはフィレンツェをも目前にしながらもすぐには入らず、
フィレンツェ郊外のフィエゾレ、聖ミケーレ修道院に入る。
フィエゾレという街、現在ももちろん存在する。
今はフィレンツェの駅からバスで簡単に訪れるのできる街である。
マルコ自身もフィレンツェの街を一望しているが、今もある聖ミケーレ修道院、入り口近くの絶壁からフィレンツェの街を望むことができる。
フィレンツェの街はやはり美しい...。
さて、フィレンツェと言えばメディチ家。
フィレンツェの街を散策すれといたるところにメディチ家の紋章に巡りあう。
物語はあのロレンツィオ・イル・マニーフィコ(偉大なるロレンツィオ)と呼ばれた彼の死後数十年。
メディチ家のフィレンツェ支配も形を変えつつあったころのものである。
後にフィレンツェ大公として名を残したコシモ・ディ・メディチの若き時代。
彼が私邸として使ったピッティ宮は今はラファエロの美術館として観光客であふれている。
そのピッティ宮、実はコシモの肖像画が数多く飾られていたりなどする。
(大好きなこの美術館、フィレンツェを訪れた際には必ず寄ってます。)
表紙の絵は
ボッティチェッリの「春」から。
この絵はもちろん、ウフィッツィ美術館に。
フィレンツェ、ルネサンスの最盛期を表すこの絵。
このお話はこのフィレンツェの春がようやく冬の時代を超えようとしているそんな時代を表しているのかもしれない。