2019/05/26更新 左面図を追加
明けましておめでとうございます。まともな時期に時候に則した挨拶が出来たことに我が事ながら戦慄しているポックリさんです。今年もよろしくお願い致します。
記事副題でつい興奮してしまいましたが自信作が出来たので投稿いたします。
今作は、企画初期にも既存作のカスタムをご依頼いただいた「さんぼ」様によるフルオーダー品です。
副題に書いた「架空の次元が違う」というのは紛れもない事実で、なんと「宇宙世紀0079のジオン軍が装備しているライフル」という設定でお請けしました。まさか世界観ベースまで架空のものを作るとは思いませんでしたが、すごく面白そうだったのですぐ乗っかっちゃいました。
その後トントン拍子に話が進み、さんぼ様とも協議(協議:雑談の割合 1:9)を重ねた結果、以下が最終的な設定・要求仕様となりました。
- ジオンの地球方面軍が野戦部隊に支給している自動小銃である。
主要な支給先は航空隊に所属する機械化歩兵部隊。敵地で孤立する可能性が高く、局地戦等も想定されるため、確実性を重視したメカニズムと耐久力を確保すること。
- 寸法はカービンクラス、かつ比較的軽量であること。
空挺降下のためストックは折りたたみ式であることが望ましい。
- 使用弾薬は6.5~6.8mm(薬莢長などの細かい指定はなし)
- 特別な加工無しに、軽機関銃、狙撃銃、突撃銃に切り替えられること。ただし専門の銃に比肩するほどの性能は不要。
いずれの形態でも交戦距離は比較的近距離を想定している。
- アクセサリーの交換で拡張性を担保してほしい。
基本のレイルは上下2面程度で、両側面は着脱式、あとはハンドガードの付け替えによる延長などで対応すること。
- 外観は既存のジオン製式小銃と明らかに異なる仕様は避けること。とはいえ、ほどほどに似ていれば構わない。
-
アイアンサイトはレイル固定式で非折りたたみ式。
オプティカルサイトは多機能スコープを採用。
この要求仕様を踏まえ、独自解釈をしたり資料を漁ったりしつつ、ある時はひたすらこだわり抜き、ある時は「まあこんな感じでええやろ……」となあなあで済ませたりしながら完成したのがこちらです。
型式番号:
ZeG-77 FJ/FJK/IAG/DSG
商品名:
ズィーガー・ライフル
使用弾薬:
6.5x42mm/7.7x33mmサブソニック弾
装弾数:
20/30/70
全長(ストック展開/折曲時):
・FJK 784.7mm/565.8mm
・FJ 850.3mm/631.4mm
・IAG 919.2mm/700.3mm
・DSG 971.7mm/752.8mm
銃身長(各サイズをクリックすると単体の画像にジャンプします):
・FJK 11.5"/パーツ装着例
・FJ 14.5"/パーツ装着例
・IAG 17.5"/パーツ装着例
・DSG 19.3"/パーツ装着例
空虚重量:
・FJK 3,220g
・FJ 3.540g
・IAG 4,130g
・DSG 4,500g
連射速度:
650-700発/分
動作機構:
ロングストローク・ガスピストン式
閉鎖機構:
ロータリーボルト式
※各部詳細(クリックで別ウィンドウが開きます)※
■プラモの組立説明書に載ってそうなノリの概要解説~妄想ヒストリーを添えて~
(PC閲覧時のみ、リンク部にマウスカーソルを合わせると注釈が表示されます)
※以下の文章は公式設定とは一切関係ない我々の妄想です。
ZeG-77はコロニーや宇宙艦船を含む、重力下戦闘用に設計されたアサルトライフルである。商品名および兵士からの通称は「ズィーガー(Sieger:勝者)」だが、制式名称は「Zeon Gewehr typ.0077 (宇宙世紀77年式ジオン軍用小銃)」である。
U.C.0074頃、後の地球方面軍ヨーロッパ方面軍団航空隊となる一派が計画を主導し「降下装甲擲弾兵連隊 (※1)」を主要な支給先として想定・開発された。
同部隊は連邦の戦闘艦艇や施設、或いはコロニー内など閉鎖空間への強行突入が主任務となる。したがって想定される平均交戦距離も短いため、ZeG-77もまたCQBを主眼においた設計がなされていた。
一方でガスユニットを交換することで長銃身に対応し、市街戦向けの簡易狙撃銃(DSG型)/機関銃(IAG型)としても機能する。
弾薬は6.5x42mm弾のほか、7.7x33mmサブソニック弾が使用可能。6.5x42mm弾と7.7x33mm弾は薬莢直径と弾薬全長が同一であり、銃身のみの交換で運用が可能である。
サブソニック弾とは重い弾丸を用いることで音速未満まで銃口初速を低下させた弾薬のことで、減音器と併用することで発射音を120dB前後(※2)にまで抑制できる。
これにより射手の聴覚保護や、狙撃時における発射位置特定を困難にするなどの効果が見込まれる。
当初は地球環境下での使用を考慮されていなかったが、重力戦線の拡大により過酷な環境への対応が急遽求められた経緯を持つ。
もとよりガスピストンは旧世紀のカラシニコフ小銃などを参考に単純・堅牢なロングストローク式を採用していたが、初期モデルでは露出していたコッキングハンドル通過面にダストカバーを設けるなど、機関部への異物侵入対策が各所に施された。
MS-06を思わせるカラーリングも金属部の腐食を防ぐためのもので、多少コンクリート片に擦り付けた程度では剥離しない塗膜強度を持つ。
ジオン製の汎用小銃としては珍しく、光学照準器が標準で支給されているのも特徴で、バーディコン(Birdicon)社の光学照準器「P-COC(Polyfunctional Compensated Optical Combatsight:多機能補正戦闘用光学照準器)」がビルトインされている。
この照準器は通常モデルで4倍・等倍サイトの切り替えと簡素な明度補正機能を備え、狙撃モデルに至っては4・6・10倍の可変倍率に半自動調整式の暗視モード、さらには距離・気温・風速を計測し、HUD表示まで可能という贅沢な造りであった。
ZeG-77の生産配備数は正確ではないながらも少数であったが、地球方面軍を中心に配備され、堅牢かつ高精度な小銃として占領作戦行動に貢献したとされる。
しかし後期生産分では戦況の悪化に伴う国力低下の煽りを受け、塗装処理やバレルのフルート加工など工程が簡略化され、現場で通常生産部品の奪い合いが起きるほど根本的な精度も低下していたとも言われている。
※1 空挺作戦能力を有する機械化歩兵部隊。空挺降下のみならずあらゆる車両・舟艇を用いて強行突入作戦を行う。
※2 例として5.56x45mm弾の発射音が約165dB、小銃の機関部動作音が110dB程度。
■そのほか細かい仕様part1 注文達成率編
いい加減真面目ぶった文体に疲れたのでここからはいつもの砕けた調子に戻ります。
前述の要求仕様1~4と7については前項の説明と諸元、あと画像を見れば分かるだろうということで残りの5、6に関してを。
5.アクセサリーの交換で拡張性を担保してほしい。基本のレイルは上下2面程度で、両側面は着脱式、あとはハンドガードの付け替えによる延長などで対応すること。
まあこれも見れば分かるだろうという範疇に含まれるのですが、両側面のレイルはシンプルなボルトロック式で着けたり外したり出来ます。なんかアクセサリプラットフォームを捏造しようという気持ちはあったのですが実装には至りませんでした。最近の作品だと宇宙世紀でも20mmレイル使ってますし、なんならMS用武器にもレイルついてますから。あんな巨大兵器でやるなよといつも思います。
ついでと言ってはなんですがハンドガード下面レイルも外れます。
6.外観は既存のジオン製式小銃と明らかに異なる仕様は避けること。とはいえ、ほどほどに似ていれば構わない。
実を言うと、ジオン製のライフルって旧世紀の第三帝国含むドイツ製小火器っぽい何かを中心としながらも混沌としていたので、そのへんに似せれば何とかなるだろうという考えで作りました。詳しくは制作後記や参考にした銃器をご参照下さい。
■そのほか細かい仕様part2 細かいメカニズムや形状に関したこと編
この項目では、要求仕様と関係ないところ、または私が独断で勝手に張り切っちゃった点を解説します。見やすいように、そして私が解説しやすいように銃口付近から順にバシバシ解説していきます。
初めにフラッシュハイダーですが、直接サプレッサーの類が着けられるようにネジが切ってあります。そもそもサブソニック弾に関しては事前承認一切なしで勝手にぶち込んだ設定でした。
ガスシステムは複数のパーツに別れて一見ややこしいように見えますが、ガスピストンヘッドがガスブロック、および銃身のガスポートに直接干渉しないため、銃身の負荷を軽減する構造になっています。つまりガスシステムの半分は優しさで出来ていると言い張れるわけです。
ボルトハンドルもシンプルな形状に見えて、やや下方向に傾斜がついており、照準器の操作を妨げにくくなっています。
ボルトリリースはAR-15ユーザーなら戸惑う位置にあるなーと思ったんですが「西暦のアサルトライフルじゃない感」を表現するために敢えてそうしてあります。いつもの尤もらしい言い訳じゃないぞ!
マガジンに関してはこちらからPromagの.223仕様の外見をそっくりそのままお借りしました。連邦だってSTANAGマガジンっぽいのガッツリ使ってるからいいんだよ!(いつもの開き直り)
この見出しで最も語りたかったくらい拘ったのがセレクターに関してでして、形状は勿論、切り替え角度にも拘ってます。
(クリックで別ウインドウにて拡大表示)
上記のGIFアニメーション通り可動角度は120度で、40度で単射、120度で連射の3ポジションです。すぐにセミに動かせて、フルに至るまでは少し遊びをもたせた設計という、SG550などを参考にした可動範囲になっています。
ストックも折りたたんだ際に接触しないようセレクター周辺は高さが押し下げており、またボルトハンドルとも干渉しない配置と長さになっているので、そのまま射撃できます。これだけでなく、CQBレンジでの戦闘が中心というのは再三伺っていたので、ストックを握って遮蔽物から銃のみ露出して射撃するといった用法も考慮した形状になっています。
2019/05/26更新分にて左面図に追加されたチャージングハンドルですが、これはボルトと連動していない給弾専用のハンドルです。つまりボルトハンドルと違って撃っても動きません。
右利き射手が素早く操作する用ということならアンビタイプのボルトハンドルでも良かったのですが、露出・突出してる可動部を少なくしつつ左右から給弾操作ができるよう、あえて左右非対称設計としました。トラブルが発生した場合にボルトハンドルを操作するなら、右利き射手でもグリップから手を離したほうがいいだろうという意図もあります。
なお、構造的にはAKの社外パーツである「Ratchet Charging System」という製品を大いに参考にしました。
■制作後記
ジオン軍の小銃はイグルーやオリジンを含む外伝作品までIMFDBに幾つか画像付きで掲載されていますが、実はこのサイトの存在を知っていたにも関わらず製作中はそのことを完全に忘却しており、一部資料を収集したのみでもっぱら'70年後半~'90年代に生産された小銃の資料を漁りながら制作しました。ぶっちゃけて言うと「ドイツ第三帝国やソ連の銃をベースにマイナーなヨーロッパの銃混ぜたらそれっぽくなるやろ」と思ってました。結果から言うといい感じに掠っていたわけで、製作完了後にIMFDBのページを見ながら「オリジンのスタッフが考えてることも一緒やんグヘヘ」と気持ち悪い顔でニヤニヤしてました。
久々のご依頼品、それもフルオーダーということで「先方のご期待の1.2倍以上を目指してやろう」という気合がいい方向に働いた出来ではないかと自画自賛しております。
なにより、制作にあたってオーダーのみならず、記事の設定監修まで行っていただいたさんぼ様のお力添えもあっての完成度と思いますので、改めて謝辞を述べさせていただきます。本当にありがとうございました!
■おまけ:参考にした銃やパーツ
・SIG SG550シリーズ
・ボフォース Ak5
色合いやら動作機構やら全体の雰囲気など、かなりの割合で参考にしています。
塗装の元ネタはほぼAk5。
・ソ連&イズマッシュ AKシリーズ
・カラシニコフUSA AK ALFA
プロトモデルの時点から骨格はこの銃です。この記事読んでる人にはわかったと思いますし、元ネタのリンクも不要なくらい有名な銃ですね。
AK ALFAはハンドガードの肉抜きの参考に。
・H&K MP5/G3シリーズ
・セトメ モデロL
サイトシステムはほぼそのまま、それ以外にもストック周りをかなり参考にしています。
ストックやセレクター、それに塗装の雰囲気はセトメの影響が大きいかも。
・H&K HK433
ハンドガードの装着方式や配置の参考と言うか元ネタ。
・ベレッタ AR70
セレクターの形状や切り替え角度のお手本に。
・豊和工業 89式5.56mm小銃
テイクダウンラッチの配置をパクりました。
・ホロウェイ HAC-7
ガスブロック・ガスピストンの緩衝機構をパクりました。
なにせ30年以上前にたった1年で市場から消えたライフルだったので、日本語資料がほぼ皆無ゆえにパクろうにもなかなかキツかったです。
・エルカン スペクター
・トリジコン ACOG
P-COCスコープはだいたいこの2つのニコイチです。
特に後者は社名含めてまるごとパクりました。 「トリ」ジコンを「バード」に変えてそれっぽいスペルにしただけ。
いいんだよ公式だって連邦の小銃に「CALT M72」とか付けてるんだから!
・ヴォルター CASV
ハンドガードの原型。でもあまり原型は残っていない。よっしゃオリジナルやな!(パクリです)
最初はどこまで行くのか全くの未知数でしたが、予想以上にカッチリしてたので嬉しくなってしまいました。
既存の公式デザイン丸ごとコピーでは面白く無いし、それも妙に未来を意識しすぎているのか、ワザとらしいと思ったので、今回の出来には非常に満足です。
特に非常によく纏まっていて操作性が良さそうなので、これなら元ネタとトイガンが発売されて居たらサバイバルゲーマーにも普通に使って頂けるんじゃないかと思って楽しませて頂いてます。
色々協議しながらの作業で大変な事も多々あった事と思いますが、大変楽しませて頂けて感謝しております。ありがとうございました。そしてお疲れ様でした!
実は当初、イメージをつかむためにラフスケッチとか書いてはみたんですけど、自分でもまさかこんな感じになるとは思っていませんでした。ラフを踏襲してる点といえば、折りたたみストックに穴が開いてるくらいです。
既存のデザイン(StG44みたいなやつ)を踏襲した試作モデルをボツにしてもらわなければ産まれなかったので、あれはさんぼ様の英断でした。
「あとは任せた」ではこのデザインには至りませんでしたから、少なからずさんぼ様のお力あってこそだと思います。
ゲーム用オリジナルモデルとして台湾メーカーあたりがデザイン買ってくれねえかなあ、とも思ったり(わりとマジな目)。向こうの言葉なんて「飯食った?(直訳)」くらいしかわかりませんけど。
オーダーとは言うもののコチラから提案したりもして、かなり好き放題やらせてもらったので作る側としても楽しかったですよ!
今までなんとなくですませてた銃の構造的知識も増やせたので、だいぶ勉強にもなりました。
今年もやったりやらなかったりはっきりしないペースのブログになるかと思いますが、どうぞ宜しくお願いします!