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すもも’s FAVORITES

沢山の好きな事を気ままにマイペースに書いてます。
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ネタバレには御注意を!

「春の雪」

2005-11-07 18:05:00 | シネマ。
ようやく「春の雪」感想が書けます。前置きは飛ばして、ささっと行きましょう。
なお、数日前に書いた「豊饒の海」前置き(?)記事はこちら。
※ネタバレなんてものは配慮しませんので、御注意!!


結構原作に忠実だったし(所々どうして変えるの~?ってとこもあったが)、映像は予想通り大変美しい、日本の古風な美を感じさせる画が多く、「和」はいいなぁとシンミリ。
ただ最初から最後までとてもおとなしい映画なので、こういう情緒に訴えるような作品に慣れていない若い視聴者の人には、つまらないんじゃないかな、飽きるんじゃないかな~と思ったり。
無声のシーンも多いし、盛り上がりがそれほど無いんでね。

まずは三島由紀夫の「豊饒の海」愛読者の私からちょっと気になった点を。
見終わってからモヤモヤした原因の一つ!
これは一体・・・どういう意味なのでしょう?
最後出家した聡子を追い、肺病をおして清顕が月修寺を訪れ例のゲホゲホ喀血する場面、なぜあそこで紅葉が・・・!(ガーン)
あれは2/26~28くらいの話じゃなかったでしたっけ?!三島は2.26事件をも含んでこうしたはず。
そりゃ奈良の寺に紅葉は画的に美しいのはよくわかる!けどさ、これじゃ「春の雪」にはならないではないか!!
これなら「秋の雪」にでも題名変更してくださいっ!!(かすかに怒っている私)
春に降る雪だからいくら降っても積もることはなく即座に消えるんですよ。だから儚くて二人のこの世では結ばれない悲恋にふさわしいんでしょーが。
でもあんな秋だか冬だかに降ったら積もっちまいますがな。わかってないな~。。。
最後のエピローグで2人の転生のイメージなのか夢物語から飛び出した二頭の蝶々が滝の下で会いましたが、ここを桜が咲き誇る中でにしたことでごまかしたつもりか?!
ここのエピローグ、はっきり言って意味わからない!!
その前で清様をちゃんと死んだことにしてない(未読でもわかる人もいるだろうけど)のが、よくない。
列車座席で清様が目を閉じて暗転・・・で終わったけど、ここで原作通り「─帰京して二日のちに、松枝清顕は二十歳で死んだ─」と字幕テロップを入れたほうが余韻的にも良かったと思う。なんで省いたんだろう?
でも清様が秋に死んだらこのエピローグに繋がるのはすんなり頭の中で繋がらないしな~、春に雪が降り桜にすぐ姿を変えるなら納得できるけど、あんな紅葉時に雪降られての桜はおかしいでしょう。(考えすぎ?)

それよりも、エピローグの妻夫木君の台詞(ナレ)が全く釈然としないのです。
「雪が溶けて春が来たら、僕たちの距離は思っていたよりももっと近いことに気がついた。あの時僕たちに降った雪は、今、桜の花びらに変わる。次の冬が来る前に、今度は振り注ぐ桜の祝福を受けよう。僕たちはきっと、幸福を手に入れる。」

はあ??意味がわからず首をかしげたぞ。一体何が言いたいわけ??
あまりに抽象的すぎてわかんないよ。文の構造も?だし、転生後のことを指してるんだかそれすらわからない・・・(頭悪い私に誰か教えてください!)
「あの時」ってのは初キスの馬車デートの雪のことを言ってるんですかね?
変に文を作らないで原作から然るべき文章を持ってくるか、もしくは先に書いた通り「清顕は死んだ」のテロップでバンと終わったほうが刹那的で良かったと思うんだけど~。
ロマンチックな恋愛映画で終わりたかった製作側の意図はわからないではないが、三島の原作に合っていない文章だと思う。
これがすっと頭に入ってこないのでモヤモヤして終わったのだろう。

細かいところで突っ込むと、今思いだせるかぎりでは(もっと沢山あったと思う)
・馬車の雪の降りしきる寒々としたシーンで、聡子と清様が白い息をしてないことはどう考えても合成バレバレ。
・初めの滝の下に犬の死体があることを皆の前ではっきり名言するのは清顕でなく聡子のはず!ここで清様は周りをはばかって言えないのを聡子がはっきり言ったものだから、プライドが傷つくのに。
・カットされた飯沼の相手である「みね」をわざわざ(清様の妄想らしいが)夜の手ほどきに夜這い(?)にやってくる下女(やたら美人)に使わなくても・・・みたいな。最後クレジットで「みね」とあったから初めて、あれがみねだったんだ~と気づいた。
・清様の出した嘘の手紙を本当は読まれていたと気づくのが、原作と順番違ってましたね?
・清様と聡子のラブシーンはあまりエロくないくせに、時間的には長すぎなのでは?何度もの逢瀬を立て続けに表現したかったのだろうが、竹内さんは胸は出せないかもしれないが、肩や背中はだけすら見せないし・・・。
・聡子が妊娠したせいで会ってもらえなくなってから憔悴した清様が本多に言う台詞が、「聡子はもう僕と寝てくれそうにないんだ」から「聡子はもう僕と会ってくれそうにないんだ」に変えられていた・・・。原作通りにしたほうが清様の子供っぽいとこがアリアリ出てていいのにな~。
こういう細かいとこが原作と違うのが気に障ってしまう。

やっぱ原作好きだと色々とダメダシしてしまいますな~。
かと言って期待ハズレだったとかといえば、そんなことはなかった。
結構良かったのではないかな。あの小説をここまで作れればね。(輪廻転生まで盛り込んでたし)
中盤から後半、泣きましたよ、ちゃんと。聡子の悲しみや思いに共感しました。
途中まで泣けないでいて「うわっこれは泣けないかも」なんて思っていたのですが、鎌倉の浜辺の船での情事後、「シャムの王子達が転生の話をしてくれたんだ」に続いての聡子の「罪を犯している私たちにはいい来世は訪れないでしょう。けれど、どんなものに生まれ変わっても、私は必ずあなたを見つけ出します・・・きっと」から涙で目がうるみだしましたよ。
竹内さんの声がいいんだな、しっとりとしていて。ここはバックの音楽も良い。
聡子が中絶のため大阪へ向かう列車での、思い出の百人一首を手渡す清顕との今生の別れシーン(初見後に書いた記事あり) ここで涙がドワーッと。
そのあとの聡子が月修寺で自ら髪をジョキジョキ切る決意のシーン「お母さん、他に仕様はございませんでした」ここは竹内さんの空虚な目の表情が良かった!
悲壮な覚悟の元ですからね、髪を下ろすのは。この世との決別ですよ。
「後悔は致しません。この世ではもうあの人とは二度と会いません。」
この辺の聡子の芯の強さと潔さも好きです。有言実行しますし、年上の大人の女ですから。清様の子供っぽさとは対照的なもんです。
でも聡子はそんな子供な清様が愛しいんでしょうね~、幼いころから母性本能くすぐられてきたんでしょうかね~。(この映画ではどうしてお互いそこまで好きなのかが今一だった)
竹内さんは初登場の「わたくしがもし急にいなくなってしまったとしたら、清様、どうなさる?」で清様の心に不安を呉れ波を立てる大切なシーンからして「おっ!いいじゃん!」と思って見てました。
この初登場の蝶の柄の水色の艶やかな振袖がすごくキレイ!
観劇の日の淡いピンクのドレスも大正ロマンてかんじで美しかった。
結構聡子役、はまっていたのでは? 長い睫毛が非常に印象に残りました。
伯爵家の令嬢で美しく雅で大人で芯の強い日本的な女性って、演じられる人少ないでしょうけどね~、和服も似合わなきゃいけないし。馬鹿っぽくては駄目だし。ほかに思い浮かぶとしたら松たか子くらいかな~。
まあこの辺の妊娠発覚から最後の聡子の自身の決着をつけるあたりは、グズグズと泣きながら見てました。
そして友情に熱い、清様を好きな(おかしな意味ではない)本多君が誠実そうだし演技も声も◎でかんじが良かったので(高岡君の本多気に入りました!)、最後まで話を知っていながらも普通に感動させられましたよ。

肝心の主役、清様について触れていないですね・・・。感動シーンにも含まれてないですけど~どうしたもんでしょ。
私、聡子には共感できたり気持ちわかりましたけど、清様はよくわからないというか、もうちょっと大人へ変わっていく変化だとか(最後で本当は「清顕は初めて自分の美しさを忘れた」になるんですよ!恋に心がいっぱいで!この変化が見たかった~)気持ちを繊細に演じて欲しかったな~と思っちゃった。
聡子のほうが印象強いなんてダメじゃない?映画では演技力の差なのか知りませんが、聡子が主人公みたいに思えた時間帯もかなりありました。原作ではほとんど清様の独壇場みたいな話なのですけどね・・・。
うーん、妻夫木君では初めからイメージが違いすぎたため、彼に清様を演じさせるには無理があったのだと思うのですよ。
でもかなり頑張って演技されてたとは思いますよ! 初めてかな?こんなに「演技してる」かんじの妻夫木君を見たのは。いつもかなり素でやってるな~と現代ドラマでは思いますんで。
初めのうちの潔癖で傲慢なかんじは出てたし、まあ、よかったんでは?(しかし神経質そうには見えないところが難点)
でもね~なんせ、顔がただふてくされてる感じに見えちゃうのが辛かったけど・・・。
もっと清様の複雑にひねくれた性格を内面から見せてほしかったけど、これを求めるのは演技相当巧い人にじゃないと酷でしょうね・・・。
妻夫木君はなんせ原作読んでないで演じたらしいですから・・・(これはどうかと思う。直感頼りってやつ?) 原作読み込まないと清様なんてやれないと思いますよ。
原作読んでから行った友人が開口一番「なんか清様が普通の人になっちゃってた」と。
たしかに。。。フツーかも。(だって妻夫木君は普通な人役がはまる俳優だからね)
清様はフツーであってはいけないと思うんだが・・・まあしょうがないか。
あとはもうちょっと美男子にお願いしたかった。
「美」に囚われ自身も絶世の美男子で「自分の美しさを片時も忘れない」人だからね。
おまけに「君はそんなに完璧なのに、これ以上何を求めるんだ?」と本多に言われてたけど、なんか妻夫木君だとしっくりいかないのよね。(ゴニョゴニョ)
最後の病気の演技もあまり期待よりうまくない。顔を白く不健康メークしすぎだろ。
元が健康的な現代の若者っぽいからだろうね。喀血されても死にそうに見えないのだ。
まあいいや。それほど初めから彼に全然期待は賭けていなかったので、ここまで妻夫木君がやってくれたことには、◎をあげましょう。(偉そうな批評家だな~・笑)
ちなみにツマブキ@清様で私が一番気に入ったのは、自分が裏で仕組んだ観劇で聡子と一緒になったことに対し、「なんたる偶然!」と白々しく言うところ。黒いよ~清様(笑)。小悪魔っぽくてここの妻夫木君の言い方は可愛かった。
高くを望めばキリがなく注文はでるけど、まあこんなもんでしょ。
初めのうちあまりにプライドだけ高くガキで素直でない清様にずっとイライラしながら「清様のバカバカ~!」とプンスカしながら見ることができた(私が、ですよ)時点でまあ成功したのかな。
まあ、見てるうちに性格の演技面でどんどんもっと求めたい欲求は出てきましたけどね。
でも結局は、もうちょっと線が細くて儚いかんじのひねた所のある美俳優を使ったほうがイメージに合ったな~。

あーそういえば2回も見たくせに、裸の清様(つまぶき)の左脇腹に転生の印である「3つのホクロ」がちゃんと並んでいるらしいのを見逃した私・・・。
友達(原作既読)から言われて知ったよ。そこまで見てなかったよ、不覚だ。
私は清様の白いふんどし一丁の姿や、裸にサスペンダーが気になってそっちばっか注目してたもんで!(笑)
まあ、終わるころもう一回くらい千円で見に行ってもいいかな。
三島関連では、小池真理子の「欲望」という小説が映画化されるらしいのでそっちも見に行きたい。




2 コメント

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こんにちは♪ (ミチ)
2005-11-07 23:10:30
TBありがとうございました。

たしか、原作を読んだときにもTBさせていただきましたよね~。

あの時はどうなることかと不安だらけだった映画化でしたが、見てみると・・・予想よりは良かったです(笑)

すももさんはさすがに熱く語っておられますね~~!!

(清顕の黒子はものすごくわざとらしく出てきましたよー!マジックで書いたんかいってなぐらいに)



原作を読んでいない人は清さまの子供っぽさが酷すぎるとか、あそこで素直になればこんなに複雑にはならなかったとか言っていらっしゃいますね。

でも、はじめに原作ありきですし。

あの時代、あの階級だからこその清顕の複雑な性格ということを念頭に置かなければいけませんよね~。

登場人物を結構はしょっているし、輪廻転生も薄められているので、続編ナシでしょう(ホッ)
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私も予想よりは! (すもも)
2005-11-09 20:33:47
>ミチさん、こんばんは。

映画化ニュース聞いた時には、どんなものになるかかなり不安でしたものね、まあ制作頑張りましたね(偉そうに言うと!)

黒子わざとらしかったですか~。見逃しました・・・大切なところなのに。

でもきっと続編はないでしょうね?というかツマブキ君ではやめてほしい・・・。

清様は頑張ってましたけど!
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