New York研修で人生変わった弁理士の日記

NYの巨大法律事務所で研修生活を送った日本国弁理士の日々の記録。[真面目な弁理士のNY研修生活]から改題。

米国特許法(ルール)の改正

2007年08月23日 | 日本特許事情


米国時間2007年8月21日、米国特許法(ルール)の改正が発表されました。

具体的内容をまとめると以下の通りです。

<第1の変更:クレーム数の制限>
2007年11月1日以降にFirst Actionが発行される全ての出願について、
独立クレーム5個、トータル25個にクレームの数が制限されます(five/twenty-five claim thresholdと呼ぶようです)。これを越える場合、examination support document(ESD,審査補助文書)を提出しなければなりません。


ここで米国特許庁のFinal ruleには、「特許的に区別できないクレームを有する如何なる他の同時継続出願における全てのクレームをカウントした場合に」とあります(counting all of the claims in any other copending application having a patentably indistinct claim)。
この記載の意味は、「同じ発明について複数の出願に分けることで5/25の制限を免れる」という抜け道を塞ぐ趣旨です。一方、同じ発明について複数の出願を既にしていて、その一つが既に特許になっている場合には、特許になった出願のクレーム数は加えないということです。

なお、2つ以上の発明を含むために5/25制限を超えてしまった出願については、suggested restriction requirement(SRR)を提出して、5/25制限を満たす発明のみを選択することもできます。

ESD,SRRが提出されておらず、かつ、5/25制限を満たさない出願については、USPTOからnoticeが発行されます。このとき、ESDを提出するか、クレームを減らすかの対応を迫られます。

<第2の変更:審査回数の制限>
無条件にできるcontinuation/continuation-in-partの回数が2回に、RCEの回数が1回に制限されます。2回continuation application をfileすると、計3つの出願を審査させることになるので、その3つのいずれかについて1回RCEができるとのことです。つまり、特別な条件無く、1つの発明について、(お金さえ払えば)審査機会は、4回与えられます。Final Office Actionを4回もらえると言うことです。non elected inventionを分割すれば、新たなファミリーとなるため(別発明とみなされて)、別個に4回の審査機会を得ることができます。

また、USPTOがrestriction requirementを発行した場合に、non-elected inventionを分割することができます。いわゆる自発的な分割を行うことはできません(CAとしては可能)。

CIPを行なう場合、どのクレームが親出願の出願日に遡及するのか、特定しなければなりません。

(経過処置)2007年8月21日時点ですでにCAを2回以上行っている出願に対して、もう1回だけは(例外的に)継続出願(RCEではなくCA)を認めます。2007年8月21日時点でCAを0回乃至1回行っているものについては最大で2回までしかCAを行うことができません。

<第3の変更:関連出願の特定+ダブルパテント>
出願人は、優先日の間隔が2月以内で、発明者の少なくとも1人を共通にする複数の出願又は特許であって、自らが所有するものがある場合には、その特定をしなければなりません。庁は、この出願人による特定を用いて、クレーム数の制限を複数出願全体について求めるか否か判断すると思われます。

加えて、出願人は、その複数の出願が、同じ優先日を有し、実質的にオーバーラップした開示を含む場合、ターミナルディスクレーマーを提出するか、それらの出願(又は特許)が特許的に区別できるクレームのみを含むことを説明するか、何れかを行なわなければなりません。

特許的に区別のできないクレームを含む複数の同時継続出願が存在するよい理由(good reason)が無い限り、USPTOは、出願人に対し、特許的に区別できないクレームの全てを1つの出願に含めることをリクエストする可能性があります。

簡単にまとめると、以下の4つのポイントに絞られます。

(1)2007年11月1日以降にFirst Actionが出た出願について、クレーム数が独立5個、トータル25個に制限されます。CAすれば、再度、独立5個、トータル25個のクレームを作ることができます。つまり、2回のCAが認められているので、1発明につき、独立15個、トータル75個のクレームを審査させることが可能となります。

(2)CAは2回、RCEは1回のみ。既にRCEしていれば、CAするしかありません。それで駄目なら2度目のCAをする流れになります。8月21日時点でCAを2回以上行っている出願のみ、例外的にもう1回だけCAを認めます。

(3)自発的な分割(voluntary divisional application)は認められません。分割は、requirement for restrictionが出た出願について、non-elected claimについてのみ認められます。

(4)優先日の違いが2ヶ月以内で、発明者を一部共通にする出願が複数存在すると、その出願同士の内容の違いを説明しなければなりません。重要件でなく、発明が似ていれば、1つの米国出願にまとめた方がよいと思われます。逆に言えば、重要件であって、クレーム数やCA回数の制限を拡大したい件については、基礎出願が1件でも、発明者毎に分けて、別々に米国出願した方がいいのかもしれません。