マグロとカツオの刺身をつつきつつ、酒を呑む。特別な夜だ、このくらいの贅沢は許されるだろう。
あと少し呑みたいくらいの酔いすぎないくらいのところで酒を切り上げ、ぼくは家を出た。
「こんな時間にどちらへ?」
「ええ、ちょっと敵討ちに」
「敵討ち……って、誰の?」
「自分自身のです」
雪が降りはじめる。
敵討ちの夜に雪か…おあつらえ向きじゃないか。俄然雰囲気が出てくる。
どうやら天はぼくに . . . 本文を読む
大洗港から4人の愚者が船出した。 風はなく、海はとても静かで、聞こえるのは4人の荒い息遣いと、心臓の鼓動ばかり。 と、 1人が空腹を訴える。 海では、陸よりも胃腸の働きが活発になり、すぐに腹が空くのだと、彼はうそぶく。 そう云えばと、他の3人も空腹を感じはじめ、まずはコンビニに寄ることにした。
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たんなる既視感です。
…そう、このざまなんです。 腕はしびれ、足は重く、頭は回らない……。 酒が手放せず、眠ることも叶わず、涙は止まらない……。 この程度で、こんな風になってしまって……まったくみじめですね。
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今日はやけに冷えるな、と思っていたら、雪が降りはじめる。 ベーグルを食べていると、雪がやんだので、外に出る。降っている時間は短かったけど、もうこんなに積もっている。 たしかこの辺に……。 昨日、気に入らないやつを埋めたあたりを、念のため見てみる。 すると、土の中から、ぶつぶつとつぶやく声が聞こえる。相変わらず、意味のないことを面白いと思って相手が笑うまでしつこく . . . 本文を読む
「こんにちは」 相手もいないのに、挨拶してみる。 やっぱり返事はない。 挨拶する相手に事欠かないやつがいる。そして、大概そういうやつは人当たり良く人と接していながら、実は心の底で相手をせせら嗤っている。 けれど、それに気づいていない善良な人々は、彼と仲良くなろうとする。 彼の交友関係はどんどん広がり、彼は自分に群がってきた人間を見下しながらも、おれはみんなに好かれているんだ、世の中を上 . . . 本文を読む