肋骨大学附属病院の解剖室の前の廊下に、司法解剖待ちの死体が列をつくっている。
そのなかに、住宅街にある公園の死体と、県境にある事務所の死体の姿がある。
公園の死体が列の自分の前後を見て、
「ああ、こんなに並んでますよ、みんな死んでるんですよね。いやー、ほんとみんな大変だな」
などと、なにもかもわかったような口をたたく。心の込もっていない声と口調で。
それをまったく聞いていなかった事務所の死体が、
「そうなんですか?」
と、適当に返す。妙に口ごもった、甘ったれたような声と口調で。
そんな、第三者が聞いたら面白くもなんともない空っぽな会話がしばらくつづいたあと、ふいに事務所の死体が、
「腹減ったね」
公園の死体が応えて、
「ああ、まあ……」
「じゃあ、ちょっとなんか食べいかない?」
「ああ、そうですね」
「よし、じゃ、行こうか」
そうしてふたりは、病院を出てゆく。
おそらく、事務所の死体は公園の死体と仕事の話をしたかったのだろう。
ふたつの変死体が姿を消したことに気づいた解剖医が、呆れたように云う。
「ほんとにいい加減な死体もいるもんだ。こういうやつは、きっと生きてるときから、いい加減だったんだろうな!」
そのなかに、住宅街にある公園の死体と、県境にある事務所の死体の姿がある。
公園の死体が列の自分の前後を見て、
「ああ、こんなに並んでますよ、みんな死んでるんですよね。いやー、ほんとみんな大変だな」
などと、なにもかもわかったような口をたたく。心の込もっていない声と口調で。
それをまったく聞いていなかった事務所の死体が、
「そうなんですか?」
と、適当に返す。妙に口ごもった、甘ったれたような声と口調で。
そんな、第三者が聞いたら面白くもなんともない空っぽな会話がしばらくつづいたあと、ふいに事務所の死体が、
「腹減ったね」
公園の死体が応えて、
「ああ、まあ……」
「じゃあ、ちょっとなんか食べいかない?」
「ああ、そうですね」
「よし、じゃ、行こうか」
そうしてふたりは、病院を出てゆく。
おそらく、事務所の死体は公園の死体と仕事の話をしたかったのだろう。
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ふたつの変死体が姿を消したことに気づいた解剖医が、呆れたように云う。
「ほんとにいい加減な死体もいるもんだ。こういうやつは、きっと生きてるときから、いい加減だったんだろうな!」
つづく
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