ぼくはいつの間にか〝焼きそばの隠れ里〟に迷い込んでしまったらしい。
ここは憎しみや怒り、悲しみといったマイナスの感情は存在せず、誰もなにも傷つくことのない、優しさと笑顔に満ちた理想郷だった。
そこに暮らす焼きそばの精は云う。
「たまにはうどんも食べるよ」
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〝焼き鳥丼の発案者〟を自称する男が、ある島へ渡るために、チャーターした漁船に乗り込もうとしている。
その島の住民は皆、島内の移動に最新型の軽トラックを使い、雨の夜にはピアノを弾き、寝る前に必ずホットココアを飲む。そしてスキレットの所有率は100パーセントらしい。
いよいよ出発のとき……。男は、たかぶる気持ちをおさえるように、大根を千六本に刻んでいた。
◯
……というのは4年前の話で、
彼はいま . . . 本文を読む
探偵が、犯人を追って路地を進んで行くと、男の子に出くわす。
男の子は云う。ぼくは学級委員長なんだ、と。
そして、歌いだす…
タラバガニがやってくる
袖ヶ浦から牛車に乗って
2ヶ月かけてやってくる
そして昨日帰ったよ
在来線で帰ったよ
また来月くるってさ
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喫茶〔ギラファノコギリ〕。
外観、内装ともに昔ながらのレトロな雰囲気で、マスターの〝18世紀につくられた石像〟が淹れるコーヒーは絶品だ。
ふとん店の2階にあり、手づくりモンブランが人気で、なによりわずらわしいポイントカードの類いがないのが良い。
↑マスター近影。趣味はアンティークの安楽椅子に座って、リコーダーを吹くことと、一級河川の源流を見にゆくことだと云う。
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午前10時半過ぎ…。
バターチキンカレーの下ごしらえを終え、家を出る。
ぼくは今日、散髪屋に行かなくてはいけない。予約は11時、歩いて10分とかからない。
アパートを出ると、ガスコンロの火がついたままかもしれないと、不安になり、部屋に戻るが、火は消えている。
角を曲がり、次の角を曲がる。
10時55分、散髪屋に着く。なかに入ると店はF-1ドライバーでいっぱいだった。
皆、予約の客だと店員 . . . 本文を読む
地球人と仲良くなりたくて、宇宙一友好的な宇宙人が地球にやってくる。
長旅の疲れのせいか、かれは地球に着くなり眠ってしまう。
1ヶ月後……。
かれはようやく目をさます。
そして、自分が1ヶ月も眠っていたことに気づき、呆然とする。
「ほんの2、3時間の昼寝のつもりだったのに…
あ、そうか、ちょっと風邪気味だったもんね!」
◯
その頃、
大洗港のとある廃倉庫で、〈アンチ半チャーハン同盟〉なる組織 . . . 本文を読む
30年前、自分の可能性というものが知りたくてアメリカに渡ったてるてる坊主が、帰国する。
かれはまっすぐ地元へ向かう。
駅を出ると、かれは駅前商店街の靴屋に入りサンダルとスニーカーを5足ずつ、つぎに洋品店で手袋を買う。
それから、大学の図書館へゆき、そこに保管されているなかで、いちばん古い古文書を解読する。
◯
陽が暮れかかり、ようやくてるてる坊主は実家に向かう。
駅前のバスターミナルでコミ . . . 本文を読む