正義だけが、道なのか。
偽ることが、愛なのか。運命さえも、敵なのか。
――スパイダーマン2(2004)
特にスパイダーマン3部作の中で、私は2が一番好きなんです。
なんでかっていうのは、後で存分に語らせていただくとして(笑)。
あらすじは言わずもがなですが、少しだけ。
さえないモテない化学オタクの主人公、ピーター・パーカー。
ある日大学の研究室を見学しに行き、そこで特殊なクモに噛まれる。
クモとしての特殊能力を得た彼は、その力で小遣い稼ぎをしようとするが、
いざ試合に勝ってみると、試合の主催者は賞金を出し渋った。
憮然として帰る道、主催者のところに強盗が押し入った。
ピーターはその強盗を逃がす。
外に出た彼は、強盗が車を奪うため、彼の伯父を撃ったことを知る。
伯父の死に立ち会った彼は、これ以後スパイダーマンとして悪を見逃すまいと誓う――。
…スパイダーマン1を見たのは、高校の時でした。
高校の休み時間、生徒会主催の映画上映会で見たんです。
衝撃でした。ベン伯父さんの死の場面で、友達が隣にいるのにもかかわらず号泣。
「大いなる力には、大いなる責任が伴う」。
スパイダーマンシリーズをつらぬく核に、しっかり囚われてしまいました。
時は流れて、大学のとき。
スパイダーマン2をまずレンタルで見て、返却時に即購入。
「続編は期待はずれ」というのが通説ですが、2は1を余裕で超えてました。
1はやはり1作目なので、映画1本まるまる使った「壮大なる予告編」という印象でしたが、
2は最初の「スパイダーマンになる経緯」がない分話がすっきりして面白い。
ピーターが思い続けるヒロイン・MJも、1より2の方がキレイです。
1のラストで、「スパイダーマン=ピーター?」と直感したMJ。
ピーターのことを思いながらも、別の恋人との仲が進みます。
一方ピーターは元からMJひとすじ。
でもスパイダーマンとして戦うために、MJに気持ちを打ち明けられない。
MJとの約束が果たせず、ピーターが彼女に詫びるため電話するシーン。
留守電のメッセージが入金不足で切れた後、誰も聞いてない電話に向かって、
心の内を吐露する場面が切ない…。
スパイダーマンでいるために、MJへの思いとともに、仕事、学業、親友ハリーとの友情など、
多くのものを犠牲にしてきたピーター。
しかしそんな思いをしてまで守り続けたヒーロー像は、人々の誤解によってあっけなく崩され得る儚いもの。
それだけでは生きていけない。
報われない。
かつて伯父の死に誓ったようには、ヒーローでいることの意義が揺らいでしまう。
自問自答。死んだ伯父の姿をとる彼の良心に背を向け、ピーターはスパイダーマンの衣装を捨てるのです。
「スパイダーマンとしての自分」を捨てたピーターは、実に順調。
仕事も学業も、いい調子。友情の方は微妙だし、MJは結婚に進んでいるけれど、
彼は今まで犠牲にしてきた「ピーターとしての自分」を取り戻そうとする。
同時にピーターでは救えない、己の限界、無力さも知ることに。
そんなとき叔母が彼に語りかけます。
人々には、他の何を犠牲にしても人を救おうとするような、ヒーローが必要なのだと。
ここも好きです。
ピーターが夫の死にどう関わっていたか知って、甥との関係が少しぎくしゃくした叔母が、
強盗を見逃してしまった過去のピーターを、
そしてそのことを隠さずに告白した現在のピーターを、両方受け入れて許す潔さに甥への愛を感じます。
メイ伯母さんの言葉がよりピーターの心に滲み入って、
再びスパイダーマンになる決意を強くさせたと思うんです。
迷い迷ってピーターについに心動かされたMJが、時間差で彼に向き合っても、
もうピーターは彼女の気持ちを受け入れることができない。
近しい人、親しい人は敵に狙われる。弱さになる。
だから遠いところで幸せを見守っている。
報われない、割に合わない、孤独な戦いに身を投じようとするピーター。
それを象徴するのが、終盤で敵からMJを救い出し、婚約者の元へ返す場面。
…スパイダーマンの正体は自分だとMJに知られてしまい、
空中にクモの糸を張った「愛の巣」の上で、「だから一緒にいられない」と告げる。
そっとMJを地上に下ろし、彼女が婚約者と抱き合うのを見届けると、
マスクをかぶり、その場を立ち去るピーター。
婚約者に抱かれながら、ピーターを見送った後、自分を本当に思ってくれている人を
想って婚約者にしがみつくMJ。
そして、MJの結婚式当日。
結婚式を飛び出したMJは、ピーターのもとへ。
危険なことがあっても、ピーターと一緒に乗り越えたい、
人々を救うスパイダーマンも、救われなくてはいけないのだと告げられ、
ピーターはようやくMJの手を取ることができた。
喜びもつかの間、警察の無線から(傍受は正義なのか?笑)事件発生を知るピーター。
スパイダーマンを送り出し、憂いのある表情で彼の背を見つめるMJ…。
(私的に「2」はハッピーエンドではないのです。)
その他も2は名シーンが多いんですよ。
電車のシーンもよかった。報われないヒーローが、報われる貴重な場面。
敵が暴走させた電車を止めるため、乗客に不安がられながらも(笑)
あれこれ頑張るスパイダーマンがお茶目でかわいい。
あとスパイダーマンの衣装をコインランドリーで洗濯して、しかも他の洗濯物に色が移っちゃったり、
エレベーターで他の乗客とはち合わせた時の気まずいスパイダーマンだったり、
ヒーロー映画であまりこういう場面描かないよな普通、と思うと
脚本すげえ、としみじみ思うのです。(しかも、ダメなピーターらしいし)
3も好きだけどね。
3部作最後ということで、敵も3人いるし自分もある意味敵だし、
一番派手でもいいはずなんですが、割と地味で静かな話という感じがしました。
だからこそハリーとの友情とか、MJとのその後の恋愛部分が光るんです。
尊敬していた父をスパイダーマンに殺された、と思っているハリー。
2では「スパイダーマン=ピーター」だと知り、父の復讐のためにピーターと敵対する道を選ぶ。
生前の父にも一目置かれ、今MJとも付き合っている、ピーター自身に対しても
複雑な感情はあるんだけど、やっぱりハリーはピーターが親友なんだよね。
ハリーはかっこいいし金持ちだし、なんでピーターなんかと(笑)友達なんだろうって
1から思ってたけど、
ピーターは家のこととか関係なく自分と接してくれるし、出自のせいか意外に自立してるし、
ハリーにはそんなところが羨ましくて尊敬してたんだろうな。
…原作は読んでませんが、映画から勝手に解釈すると。
だからMJよりもピーターが好きなんだよ。…ていうと語弊があるけど(笑)、
「親友」のためなら命も惜しまない、友情にあつい男のカッコいい最期でした。
しかし殺す寸前まで戦った親友に「助けてくれ」と言うピーター、
そんなむちゃくちゃな要求を結局呑んでやるハリー…おいおいと思ったけど、
足りない部分は勝手な解釈で補い、ハリーの最期をピーターとMJが見届けるシーンの
朝焼けのニューヨークが最高に綺麗だったので私は満足です。
MJとの恋も、スパイダーマンとしての自分がやっと報われはじめ、心躍るピーターと、
夢だった舞台女優の役を下ろされ、落ち込むMJとの対比がよかった。
今までずっと不運で不幸だったのはピーターの方だし、
今までずっとピーターの方がMJを思い続けていたのに、
3になって構図が逆転しているのがいいんです。
ピーターに思いを寄せる恋敵・グウェンに嫉妬したり、
彼にだけは舞台を下ろされたことを知らせることができなかったり、
MJがピーターを想っているところが随所に感じられるというか。
(ハリーにグラッとしかけたとこは目を瞑ります。笑)
紆余曲折あってのラストで、ピーターのプロポーズを受け入れるMJ。
どちらかの思いが一方通行なのではなく、3になってようやく「対等」になって、
静かだけど満ち足りたラストを迎えた、3部作それぞれの流れが素晴らしい。
1で盛り上げ、2を最高潮として、3で静かに終着する…シリーズのバランスに脱帽です。
そしてピーター、MJ、ハリーが皆それぞれ進む道を自分で選んで、生きて、成長している。
クモに噛まれて力を得たとか、非現実的な世界の中で、その成長がとてもリアルに感じられる。
登場人物の誰も完璧じゃないから、愛しくて、だからこそ共感できるんです。
映画の中で一番好きなシリーズですが、私の愛をうまくまとめられる自信がなく、
今日まで感想を書かないで残してきました。
スパイダーマン4は、見ようかどうしようか考え中…。
…スパイダーマンは、「報われないヒーロー」。
報われるためにやっているヒーローは不誠実じゃないかとも言えるけど、
スパイダーマン=ピーター自身が、「報われたい」と思ってる。
主人公は普通の人だったんだよね。
普通よりもむしろ不器用で頼りない。
ヒーローが超人だったら、敵も超人で、そんな超人同士の戦いにはあんまり共感できない。
当時の超人ばかりの「スーパーヒーロー」に一石を投じたという、原作者には本当感銘を受けました。
でなかったら、こんないい映画もなかった。
偽ることが、愛なのか。運命さえも、敵なのか。
――スパイダーマン2(2004)
特にスパイダーマン3部作の中で、私は2が一番好きなんです。
なんでかっていうのは、後で存分に語らせていただくとして(笑)。
あらすじは言わずもがなですが、少しだけ。
さえないモテない化学オタクの主人公、ピーター・パーカー。
ある日大学の研究室を見学しに行き、そこで特殊なクモに噛まれる。
クモとしての特殊能力を得た彼は、その力で小遣い稼ぎをしようとするが、
いざ試合に勝ってみると、試合の主催者は賞金を出し渋った。
憮然として帰る道、主催者のところに強盗が押し入った。
ピーターはその強盗を逃がす。
外に出た彼は、強盗が車を奪うため、彼の伯父を撃ったことを知る。
伯父の死に立ち会った彼は、これ以後スパイダーマンとして悪を見逃すまいと誓う――。
…スパイダーマン1を見たのは、高校の時でした。
高校の休み時間、生徒会主催の映画上映会で見たんです。
衝撃でした。ベン伯父さんの死の場面で、友達が隣にいるのにもかかわらず号泣。
「大いなる力には、大いなる責任が伴う」。
スパイダーマンシリーズをつらぬく核に、しっかり囚われてしまいました。
時は流れて、大学のとき。
スパイダーマン2をまずレンタルで見て、返却時に即購入。
「続編は期待はずれ」というのが通説ですが、2は1を余裕で超えてました。
1はやはり1作目なので、映画1本まるまる使った「壮大なる予告編」という印象でしたが、
2は最初の「スパイダーマンになる経緯」がない分話がすっきりして面白い。
ピーターが思い続けるヒロイン・MJも、1より2の方がキレイです。
1のラストで、「スパイダーマン=ピーター?」と直感したMJ。
ピーターのことを思いながらも、別の恋人との仲が進みます。
一方ピーターは元からMJひとすじ。
でもスパイダーマンとして戦うために、MJに気持ちを打ち明けられない。
MJとの約束が果たせず、ピーターが彼女に詫びるため電話するシーン。
留守電のメッセージが入金不足で切れた後、誰も聞いてない電話に向かって、
心の内を吐露する場面が切ない…。
スパイダーマンでいるために、MJへの思いとともに、仕事、学業、親友ハリーとの友情など、
多くのものを犠牲にしてきたピーター。
しかしそんな思いをしてまで守り続けたヒーロー像は、人々の誤解によってあっけなく崩され得る儚いもの。
それだけでは生きていけない。
報われない。
かつて伯父の死に誓ったようには、ヒーローでいることの意義が揺らいでしまう。
自問自答。死んだ伯父の姿をとる彼の良心に背を向け、ピーターはスパイダーマンの衣装を捨てるのです。
「スパイダーマンとしての自分」を捨てたピーターは、実に順調。
仕事も学業も、いい調子。友情の方は微妙だし、MJは結婚に進んでいるけれど、
彼は今まで犠牲にしてきた「ピーターとしての自分」を取り戻そうとする。
同時にピーターでは救えない、己の限界、無力さも知ることに。
そんなとき叔母が彼に語りかけます。
人々には、他の何を犠牲にしても人を救おうとするような、ヒーローが必要なのだと。
ここも好きです。
ピーターが夫の死にどう関わっていたか知って、甥との関係が少しぎくしゃくした叔母が、
強盗を見逃してしまった過去のピーターを、
そしてそのことを隠さずに告白した現在のピーターを、両方受け入れて許す潔さに甥への愛を感じます。
メイ伯母さんの言葉がよりピーターの心に滲み入って、
再びスパイダーマンになる決意を強くさせたと思うんです。
迷い迷ってピーターについに心動かされたMJが、時間差で彼に向き合っても、
もうピーターは彼女の気持ちを受け入れることができない。
近しい人、親しい人は敵に狙われる。弱さになる。
だから遠いところで幸せを見守っている。
報われない、割に合わない、孤独な戦いに身を投じようとするピーター。
それを象徴するのが、終盤で敵からMJを救い出し、婚約者の元へ返す場面。
…スパイダーマンの正体は自分だとMJに知られてしまい、
空中にクモの糸を張った「愛の巣」の上で、「だから一緒にいられない」と告げる。
そっとMJを地上に下ろし、彼女が婚約者と抱き合うのを見届けると、
マスクをかぶり、その場を立ち去るピーター。
婚約者に抱かれながら、ピーターを見送った後、自分を本当に思ってくれている人を
想って婚約者にしがみつくMJ。
そして、MJの結婚式当日。
結婚式を飛び出したMJは、ピーターのもとへ。
危険なことがあっても、ピーターと一緒に乗り越えたい、
人々を救うスパイダーマンも、救われなくてはいけないのだと告げられ、
ピーターはようやくMJの手を取ることができた。
喜びもつかの間、警察の無線から(傍受は正義なのか?笑)事件発生を知るピーター。
スパイダーマンを送り出し、憂いのある表情で彼の背を見つめるMJ…。
(私的に「2」はハッピーエンドではないのです。)
その他も2は名シーンが多いんですよ。
電車のシーンもよかった。報われないヒーローが、報われる貴重な場面。
敵が暴走させた電車を止めるため、乗客に不安がられながらも(笑)
あれこれ頑張るスパイダーマンがお茶目でかわいい。
あとスパイダーマンの衣装をコインランドリーで洗濯して、しかも他の洗濯物に色が移っちゃったり、
エレベーターで他の乗客とはち合わせた時の気まずいスパイダーマンだったり、
ヒーロー映画であまりこういう場面描かないよな普通、と思うと
脚本すげえ、としみじみ思うのです。(しかも、ダメなピーターらしいし)
3も好きだけどね。
3部作最後ということで、敵も3人いるし自分もある意味敵だし、
一番派手でもいいはずなんですが、割と地味で静かな話という感じがしました。
だからこそハリーとの友情とか、MJとのその後の恋愛部分が光るんです。
尊敬していた父をスパイダーマンに殺された、と思っているハリー。
2では「スパイダーマン=ピーター」だと知り、父の復讐のためにピーターと敵対する道を選ぶ。
生前の父にも一目置かれ、今MJとも付き合っている、ピーター自身に対しても
複雑な感情はあるんだけど、やっぱりハリーはピーターが親友なんだよね。
ハリーはかっこいいし金持ちだし、なんでピーターなんかと(笑)友達なんだろうって
1から思ってたけど、
ピーターは家のこととか関係なく自分と接してくれるし、出自のせいか意外に自立してるし、
ハリーにはそんなところが羨ましくて尊敬してたんだろうな。
…原作は読んでませんが、映画から勝手に解釈すると。
だからMJよりもピーターが好きなんだよ。…ていうと語弊があるけど(笑)、
「親友」のためなら命も惜しまない、友情にあつい男のカッコいい最期でした。
しかし殺す寸前まで戦った親友に「助けてくれ」と言うピーター、
そんなむちゃくちゃな要求を結局呑んでやるハリー…おいおいと思ったけど、
足りない部分は勝手な解釈で補い、ハリーの最期をピーターとMJが見届けるシーンの
朝焼けのニューヨークが最高に綺麗だったので私は満足です。
MJとの恋も、スパイダーマンとしての自分がやっと報われはじめ、心躍るピーターと、
夢だった舞台女優の役を下ろされ、落ち込むMJとの対比がよかった。
今までずっと不運で不幸だったのはピーターの方だし、
今までずっとピーターの方がMJを思い続けていたのに、
3になって構図が逆転しているのがいいんです。
ピーターに思いを寄せる恋敵・グウェンに嫉妬したり、
彼にだけは舞台を下ろされたことを知らせることができなかったり、
MJがピーターを想っているところが随所に感じられるというか。
(ハリーにグラッとしかけたとこは目を瞑ります。笑)
紆余曲折あってのラストで、ピーターのプロポーズを受け入れるMJ。
どちらかの思いが一方通行なのではなく、3になってようやく「対等」になって、
静かだけど満ち足りたラストを迎えた、3部作それぞれの流れが素晴らしい。
1で盛り上げ、2を最高潮として、3で静かに終着する…シリーズのバランスに脱帽です。
そしてピーター、MJ、ハリーが皆それぞれ進む道を自分で選んで、生きて、成長している。
クモに噛まれて力を得たとか、非現実的な世界の中で、その成長がとてもリアルに感じられる。
登場人物の誰も完璧じゃないから、愛しくて、だからこそ共感できるんです。
映画の中で一番好きなシリーズですが、私の愛をうまくまとめられる自信がなく、
今日まで感想を書かないで残してきました。
スパイダーマン4は、見ようかどうしようか考え中…。
…スパイダーマンは、「報われないヒーロー」。
報われるためにやっているヒーローは不誠実じゃないかとも言えるけど、
スパイダーマン=ピーター自身が、「報われたい」と思ってる。
主人公は普通の人だったんだよね。
普通よりもむしろ不器用で頼りない。
ヒーローが超人だったら、敵も超人で、そんな超人同士の戦いにはあんまり共感できない。
当時の超人ばかりの「スーパーヒーロー」に一石を投じたという、原作者には本当感銘を受けました。
でなかったら、こんないい映画もなかった。