香川大学教育学部 大久保智生研究室

大久保智生研究室の連絡、宣伝用です。

社会心理学会のワークショップ

2008-07-23 11:40:49 | Weblog
今年の社会心理学会のワークショップの要旨です。

動機づけ研究の問題点について、「やさしい発達心理学」で書いた内容の発展系を語ります。

お時間のある人はぜひ。



「パーソナリティ心理学と社会心理学:協働から統合・融合へ」


企画司会:黒沢 香(東洋大学)
話題提供:堀毛一也(岩手大学) 「相互作用論の主張とその問題点」
     大久保智生(香川大学)「社会的状況と動機づけの問題点」
     黒沢 香(東洋大学) 「全人的な統合:人間の科学へ」
指定討論:杉山憲司(東洋大学)


<企画の趣旨> 1960年代から1980年代にかけ、アメリカのパーソナリティ心理学は「沈滞の時代」であった。それを乗り越え、現在では、広い範囲で非常に活発に興味深い研究がたくさん行われるようになっている。それはなぜだろうか。
 かつてのパーソナリティ心理学沈滞の背景にあったもののひとつは、行動主義的な社会心理学であった。パーソナリティ研究の沈滞ムードは、一時期、社会心理学にも影響を与えた。その後の「認知革命」により、社会心理学もパーソナリティ心理学も大きく変わりつつある。パーソナリティ心理学が活発になっただけでなく、その変化が社会心理学にも好ましい影響を与えているように思われる。パーソナリティ心理学は、すでに個人差や性格特性の心理学の域を脱している。動機づけ、情動、認知といった広範な個人内プロセスを包括的に扱い、状況要因と関連づけ、進化や遺伝、それに大脳生理などから、人間を全人格的にとらえようとする先進的アプローチが中心になっている。そして、社会心理学との関係を考えれば、遠くない将来に統合ないしは融合があるように思われる。このワークショップでは、特徴的な研究を例に、この研究分野の最先端について語りたい。
 まず堀毛一也(岩手大学)氏に「相互作用論の主張とその問題点」というテーマで、基本的な話題提供をお願いしたい。関連研究の紹介も含めて、「状況」要因を心理学的に取り扱うことの難しさを指摘していただく。「状況論」が強い社会心理学もけっして状況が何であるかを解明しているとは言えないのである。そして、相互作用論と社会−認知的アプローチの融合の一例としてCAPSモデルの考え方を紹介していただき、このモデルに基づくコヒアラント(行動指紋)研究の展開を、具体的な研究例(Cervone & Shoda, 1999; Shoda, Cervone & Downey, 2007)とともに解説していただく。
 次に大久保智生(香川大学)氏に、問題行動を個人の心理(動機)で理解しようとする心理主義と、状況だけで説明しようとする社会心理学を、批判的に議論していただく。循環論的な動機の考え方に固執する考え方と、状況に受け身で反応するだけの柔軟性を欠く機械的人間を想定するアプローチ。主体性と能動性こそが、心理学の中心にあるべきではないか。社会的状況と動機づけについての考え方および研究を紹介していただくとともに、主観的に行動を意味づける動機づけの側面と帰属現象との関連について考察していただき、社会という大きな文脈の中での個人のパーソナリティについて、議論をお願いしたい。
 最後に、黒沢香(東洋大学)が、パーソナリティ心理学と社会心理学の今後の課題について考察する。心理学こそが、人間を理解するための科学になるべきである。人間を全人的に理解する科学を確立するには、個人をバラバラの要素に分解して「研究する」のではなく、全人的に統合された全体に注目しなければならない。社会心理学は、状況ごとに人間を分解しているとも言える。全人的なレベルで考えるパーソナリティと、そのレベルにおける個性と多様性こそが、人間理解の科学である心理学の前提である。個人差を「誤差分散」とみなさず、そこに法則性を求める必要がある。またナラティブ・アプローチや、状況の主観的な解釈・理解と社会行動の間の関連も考えていく。さらに、適応と進化の視点も組み入れ、同時に現実社会における諸問題に目を向ける必要についても考察したい。
 指定討論は、日本パーソナリティ心理学会理事長をつとめる杉山憲司(東洋大学)氏にお願いしたい。参加者からの活発な発言を期待している。

今年の学会活動の追加

2008-07-02 18:54:55 | Weblog
今年の学会活動の予定の追加です。

9月のソーシャル・モチベーション研究会のサマーカンファレンスで発表することになりそうです。

発表はもちろん動機に関するものです。


あと、11月の日本パーソナリティ心理学会のシンポジウムで司会をすることになりそうです。






おおくぼ