かっ飛ばせ借金 打ち勝て倒産

 
 ‐オグチ経営研究所‐

 ☆★自分でできる経営の再生と整理★☆

  

コンサルタントのぼろ儲け

2007-11-29 | 事例
Kさんはぎょっとしたような顔で私を見つめました。
私が「このままでは自宅は債権者に全て取れれますよ。」
と言ったからです。
Kさんは、「自宅は完全に保全されて居る、大丈夫。」と信じつつ、
一方では最も気になっていたことでしょう。だから私に念を求めたのです。

新幹線の止まる地方都市、その中心街にKさんの自宅は有ります。
100坪と140坪の二筆続きの土地の公示価格は1坪23万と云っています。
建物は立派な建物ですが木造で築34年経って居ます。

会社は整理するしか方法はないでしょうか。
地元の税理士の紹介で私が呼ばれました。
幸い仕入先や社員は全て綺麗になります。
金融関係は3行ですが、不動産は会社と自宅があります。
1000坪以上の会社を処分すると1行は完全に綺麗になり、
残る2行の残債も合わせて1億2000万くらいです。

自宅は市内の1等地、此れを処分すれば、残る残債も僅かになります。
先の見えない営業より、年齢も考えて、廃業を薦める予定です。
その時「自宅は此れで取られないと聞いて居ますが。」と謄本を
見せてくれました。

抵当権が二つ付いて居ます。
1番は得意先が取引をするとき、与信保全で組んだ2000万です。
2番は17年10月に同姓の人に4000万お金を借りてその担保に
なって居ます。此れがあるから自宅は大丈夫と云うのです。

「あるコンサルタントに教わってこうした手を打ちました。
此れで自宅は絶対に他人に取られることはないと教えて頂きました。」
との説明です。

「社長、此れで本当にお金は動いていたんですか。
それに今現在、残はあるのですか」

「いや動いていません。何か問題が起こったら、現金で動かしたと
云うことにしなさいと云われました。1番は仕入先で、
お金を借りたものでは有りません。残などある筈が有りません。
2番は弟ですから、証拠は有りませんが口だけならばどうにでもなります」

「社長。相手はプロですよ。残がありそうかどうか直ぐに解かります。
残が無ければ簡単に競売になりますよ。」
そこで詐害行為と云う事を説明します。

「それに社長公示価格が23万と仰いましたが、コンピューターで
路線価を調べても1㎡9万円ですよ。坪30万です。銀行はこの地ならば
坪40万以上はすると踏んでいるのではないでしょうか。仮に本物であっても
この抵当権は小さすぎます。どっちにしろ自宅は競売になると思います。」
最初、びっくりして、いろいろ聞いてきた社長も次第に駄目とわかって
元気が無くなります。

2年くらい前に会社が左前になりかけたとき、Kさんは自分の資産を
守るべくあるコンサルタントに相談しました。本も書いたりして
比較的名の通った人でした。Kさんは頭から信用しました。
その時に家を守る方法として教わった事です。弟から借りるのに、
実際にお金は動かさなくても、今までに、何回も現金で借りた其れを
集計すれば4000万になったと云う事にすれば、通ると教わったらしいです。

今回もそのコンサルタントに先ず電話しました。
しかし今は大変忙しく、急に言われても、お手伝い出来ないと
断られましたと云うのです。

聞けば、「契約金50万、それに顧問料月10万で6ヶ月間」と云う契約を
要求され、やってくれたことは自宅の守り方だけです。

そういえば以前、東京であるコンサルタントと月30万の契約を
していた債務者が居りました。銀行に対しては、コンサルタントの
云う通り、やって居れば、競売は絶対に無いと云われて居ましたが、
案に相違して競売になりました。其れと同時にそのコンサルタントとの
契約は有耶無耶になってしまって、私のところに来た人が居ります。
その時に聞いた名前と同じ人と思いました。

人間弱気になって居る時が一番人に付け込まれます。
このコンサルタントは、そうした事に上手く立ち回りの出来る人でしょう。

しかしこうした行為は本人はぼろもうけが出来るでしょうが、
真面目なコンサルタントの迷惑になって居ることには間違い有りません。

Kさんには、私が考えられるベストの事を2通りアドバイスしました。
この効果がはっきりするのは来年3月頃と思います。





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保険を掛けて居た悲劇

2007-11-27 | 事例
Sの突然の訃報は周囲を驚かしました。
急病だったとの説明です。
しかし、まるで、今日を予期してみたいに周囲に対する心遣いは
出来ておりました。ワンマン社長の亡き後を家族・社員・仕入先に
渡って細かく指示してありました。

この辺りを切っての山林持ちです。祖先からの膨大の遺産の山林を
背景に材木業を営んでありました。しかし、今は自分で数千万と
評価した立木つきの山林も、税務署の担保に差し出そうと思ったら、
30万と言われ、あいた口が塞がらない状態です。同業者間ではSの
仲間内からの金策振りを見て、会社も時間の問題と噂されて居たようです。

Sは多額の生命保険に入っておりました。
会社で掛けております。当初は会社が受取人でしたが、1年ほど前に
受取人を我が子3人姉妹の末女に変更して居ます。役員会の議事録も
違法でないように完備して居ります。S亡き後は、娘が後を継ぐという
名目ならば許されるみたいです。その他、自分が受取人の保険もあります。
尚長女は結婚して1児を儲けた後、夭折し、次女も結婚して当地には
居りません。3女は早くから両親の傍で暮らすことを明言しておりました。

Sの葬儀が済んで初7日も過ぎた頃、取引のあった銀行の次長が、
Sの家を訪ねてきています。そしてずばり切り出してきたのです。
「私どもは、会社よりSさんを信用して取引をお願いして参りました。
そのSさんがお亡くなりになったのです。担保の山林は担保価値が無く、
私共としましては、いささか処理に困って居ります。今月末、手形の
書き換えですが、ご主人の保険で1部返済をして、書き換え額を
減少願えないでしょうか。」

勿論、Sの遺書にも、半分ほど返済を指示してありました。
奥さんが其れを言うと次長はお礼とともに、
「もう少しお願いできないでしょうか。」と不満そうです。
殆ど返済をして貰いたい。ほんの僅かを残しておくというのが銀行の
本音らしいです。Sさんの遺書も此処から狂いそうです。

一旦は帰ってもらいました。
しかし此れがきっかけかの様に、急に奥さんは忙しくなりました。
銀行以外の仲間内の借金取りの攻勢です。
本当に借りているか、はっきりして居りませんが、相手はその証拠を
持っています。しかもSさんならば金策に利用した人であることは
間違い無さそうです。Sさんの遺書には、これらの人は細かくは
載って居りません。

こんな騒ぎを見ていた従業員が治まりません。
退社の希望者が続出です。退職金を要求します。
Sさんも此処まで考え無かったでしょう。
遺書のとおりにはもう出来ません。

それに何よりショックのことが起きました。
長女の婿が孫のために遺産を要求してきたのです。
其れを見て次女も「私の分」を要求してきました。

二人の相続遺産は、あの銀行から振り込みました。

会社の分は、先ず遅延している仕入れ代金、給料に向け、
さらに余ったお金を銀行返済と個人からの借金返済に向けております。
全額では有りませんでした。保険金が大分入ったということが噂に
なっていたために、期待度には満ちなかった見たいです。

此処で終わればよかったですが、この話は此処からです。
銀行は月末の書き換えに応じなかったのです。入金出来たお金は、
奥様が口で言った額には及ばず、3割一寸だけだったことも影響して
いるかも知れません。銀行は期限の利益を喪失させたのです。
と同時に4名に対して仮差押をしてきたのです。

三女はある人の忠告で会社のお金や自分名義のお金もほかに
移してありますから無事でした。母親と三女は被害0です。
長女の婿の方は自宅が半分妻の名義でした。今でも名義はそのままです。
その相続分があるはずと自宅まで持分を仮差して来たのです。
次女の方は以前からの銀行であるから、振り込んだ以上に
預金があったのです。勿論仮差の金額は大目です。

狙いは的中しました。
二人とも今回の相続分が無くなった上に、以前からの自分の資産も
取れらることになったのです。その上、未だ残才があるのです。

奥さんや三女にしても、結局は自分のところに残っていません。
方々に払った上、嫌味まで言われ居ます。
個人的に貸してあると云うマムシのような男たちから、たかられては、
何もかもなくなるのも不思議ではありません。

保険の事は人には知られたくありません。
知られるくらいならば、保険に入って居ない方が良かったでしょう。





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次男坊の反抗

2007-11-25 | 事例
駅前のよいところに敷地は小さいながら4階建てのビルがあります。
1階は洋品店、2階と3階は母親の作業場になって居ます。
80台の母親は未だ元気、年にめげず毎日張り切って仕事に精を
出して居ります。4階は長男一家の住居です。

長男は高校を出て家の手伝いをし、今では洋品店のあとを継いでおります。
地道で固いが取り柄です。それに比して次男は大学を出て大手商社に就職、
羽振りはよかったみたいです。ただ親とすれば兄弟が余り仲が良くないのが
気になります。母親は売り物の寸法を体に合わせる仕事が中心で、今では
、何人も使い、デパートなど方々にも頼まれて手直し作業をして居ます。
販売とメンテナンス、仕事ははっきり二つに分かれて居ます。

世の中、不良債権騒ぎです。大手企業もどんどん潰れ、リストラは
当たり前でした。平成14年、次男もリストラされたのです。
次男はそれでも元気でした。生まれた町で、兄貴の会社の直ぐ近くで
ブティックを始めたのです。しかし、素人の悲しさ。忽ち大赤字で
資金も続かず、倒産を待つだけとなりました。

こんな時、二人の父親が他界したのです。

次男は初七日も済まないうちに、自分のブティックを閉鎖しました。
そして母親の仕事場に乗り込んだのです。
「明日から俺が此の作業場の責任者だ。」と云うのです。
次男と母親にこんな会話があったみたいです。
「お袋も年だからそろそろ後継者を決めておかないと。
よかったら俺がやってもよいよ。」
「未だ私は働けるけれど、その時になったらお願いね。」

長男は怒りました。自分が知らない間に次男が勝手にビルに入り込み、
母親しか出来ないメンテナンスの責任者と云って居るのですから。
嫁に行った姉妹も加えて話し合いがありました。
その結果、次男の主張は急ぎすぎる。
一旦次男は元に戻るべきだと云う事で話が纏まりました。
次男は非常に不満です。しかも店を畳んだ次男には戻る場所がありません。

このビルの敷地は親父のものでビルは会社の物。
兄貴はこのビルと会社を貰ったのであるから、お袋の仕事は当然俺が
貰っても良いと云う考えが、次男に強く働いていたらしいです。
子供には強く言えないお袋の性格を見ぬき、その懐に飛び込もうと
したのですが失敗しました。

次男は会社の土地に家を建てて居ます。
この土地は次男が貰うことになりました。ただ会社の土地ですから、
相続ではありません。折を見て名義変更が必要です。

次男は近くのコンビニに勤めだしました。
自分に関することは誰にも言いません。

6ヶ月ほど過ぎました。
続いて2つの銀行から長男と母親に書簡が届きました。
「次男の返済が滞っています。借入の保証を父親がしていました。
貴方はその相続をして居ります。ついては返済方法を話したい。」
と云う内容です。

何のことか訳が解かりません。
次男に聞くと「自分のことは、自分で解決するから放っておいてくれ。」
と云う返事です。内容は何も言いません。

この時にもっと突っ込んで調べればよかったのですが、長男は逆を取りました。
余り深入りして聞けば、弟の借金を背負い込むことになる。
放っておくべきだと考えたのです。気をもむ母親をないがしろにして、
何もせずに放っておいたのです。

それから暫く銀行から母親にも長男にも何も言ってきません。
やがて、次男の家が競売になった事は土地も競売と裁判所の通知で知りました。
兄は「担保だから競売になるかも知れないが、権利書は私が持っている。
此れさえあれば買った人も名義は変えれない筈だ。」と勝手に気勢を
上げて居ただけです。調書の内容は良く見ていません。解からなかったのです。
その自宅も競落しました。

土地まで取られると知った兄は再度怒りました。
しかし此れで借金が無くなり、前に来ていた
「相続だから自分にも弁済の責任がある」と言うことはなくなったと
一面安心もしました。

残債のために次男は自己破産をしました。
こうなると銀行もサービサーに債権譲渡し、サービサーは兄と母親に
請求してきます。姉妹は相続放棄をして居ます。
兄は取り合わないのが一番だと何もかも無視して居ます。

裁判所から訴状が送られてきました。
債務名義を取るためです。
兄は其れも次男の仕業と決めつけ、放っておきました。

それから暫くして急に銀行預金の差押が有ったのです、幸い妻名義か会社名義が
多かったために助かりましたが、それでも500万やられました。
騒いでも戻ってきません。

此処に来て漸く兄も今までの自分のやり方でいけなかったかと反省しました。

専門家に相談しました。全部で2000万足らずの債務です。
債務者は破産をし、保証人は、会社は赤字。自分の収入も多くありません。
もう一人の保証人は80歳を超えた老女、年金暮らしで通ります。
簡単に解決しました。

相続で仕事の失敗を補おうとした小才の効く男、それに失敗したから、
保証で起こる損失を一切教え無かった話です。

折角の遺産が逆に相続人を仲たがいさせては個人も浮かばれ無いでしょう。





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部下の裏切り

2007-11-21 | 事例
ショーを見ながら食事をするレストラン。観光バスの立ち寄り場所にも
なりました。歌舞伎座と並び、この辺りの名所に育てようと思っています。

Iがこのレストランを買い取ったのは未だ3年前です。
今の事業、野菜の産地直送販売に不安を感じたために手を伸ばしました。
自分のところの最も新鮮な野菜が充分に使える、第一、今の仕事は、
先の天候次第で決まる大きな博打で有るが、ショーは3ヶ月先の出し物まで
決めれて、計画的な仕事が出来る、此れがIの思惑でした。

Iはショーにこんなにお金が掛かるとは思っていませんでした。
千万単位で掛かる企画費に当初は決済印の手が震えたものです。
でもそのおかげをもって、評判は結構よく、観光バスの立ち寄り場所にも
なったのです。

今年は雨が多く野菜は不況でした。入るべき野菜が入らないのです。
産直業者の泣き所です。自分のルートで注文が入荷しなかった時は、
他ルートの高い商品を仕入れて納めなければなりません。
逆ザヤは絶えず発生します。此れが怖いのです。
1週間も雨が続けば、産直業者は片端から倒産です。

今年は、その中にIの会社も巻き込まれました。
お金は見る見る減っていきます。借りるべき銀行はありません。
しかも残が少なくなったと言っても、未だ大丈夫と思っていたら、
その残がありません。
そして部下の使い込みが解かったのです。2000万近いお金です。
Iが部下に背かれた最初でした。
しかし部下は言を左右にしどうしても認めません。

とにかく不足額を用意するのが先決です。
こんな騒ぎでこの経理マンを徹底的に追求は出来ませんでした。
経理マンは居直っています。ただ出来たのはこの男の配置を換えただけです。
今まで、社内の天皇で通っていたIの噂が一挙に下がった事件でした。

Iには頼りになる二人の部下が居ります。KとSです。未だ30台の彼には、
部下と云うより共同経営者の感じです。

会社の資金は長くて後3ヶ月。Iはついに会社の整理を覚悟しました。
そしてその整理は自分が責任を持とう。
しかし、産直は別会社を作って二人のうちの一人のSに、レストランは
もう一人のKに任せることを決めました。当人たちの意志も確認しました。
二人とも大張り切りです。

Iはその時に是非今後の自分の生活のことも考えてくれるように依頼して居ります。

レストランはオーナーを探すことが先決です。Kは最適のオーナーを
見つけてきました。後で考えるとKは今日を見越してオーナーを
決めていた感があります。
Kを支配人として、従業員もそのまま全部そっくり引き継いで呉れます。
譲渡代はこれらの債務と相殺されてIの手取りはありません。
その上将来、Iが立ち直ってから又支配することは出来ません。
「これから利益が見込めるのにな。でも此処で資金が続かないから
仕方無いさ。引き受けてくれる人が居なければ倒産しなければならないものね。」
Iはこうして自分を慰めただけです。

ビジネスローン2行から借りた1億円、殆どこのレストランに
つぎ込んだのです。折角1人前になって、これから収益を上げると云う時、
資金が続かないために第3者に攫われたのです。
Iの利益は新会社が今後産直の野菜の納入を続けるだけです。

産直の新会社のSは、いざ自分がその責任者になると、急にIとの接触を
嫌い出しました。
万一債権者の銀行に新会社のことがばれ、詐害行為と言われる恐れがある。
Iとは完全に手を切りたいと云うのが本音です。
Iは瞬く、自分の分身のようなレストランや新会社と接触も出来なくなったのです。
しかも債務は全てIの責任です。

しかも、IにKとSとの不仲が伝わったのです。
KがSから野菜を仕入れるのを止めた。と云うのです。
宥めに入ったIに、Kは説明します。
「納期が正確でない。それに欠品の対応が上手くない。」
しかし、Sに言わせると、Sは業界の風習である「個人への心付けのバック」を
断ったらしいです。
「新会社も出来たばかりであるから一定の期間勘弁してくれ。」と頼んでから
直ぐにKの仕入れが、減ってきたと云うのです。
何れにせよ此れを理由にSはIに当分何もできないことを通告してきたのです。

Kは自分がよい地位になったとたん、そうしてくれたIも親友のSも裏切ったのです。
Sは自分の地位を守るがために、実質の創始者で、かつ自分を選んでくれたIに
そっぽを向いています。
遣いこんだ社員は、新会社で引き取らず辞めましたが、結局誰からも
何のお咎めもありませんでした。

2社のサービサー2社からIに「債権を譲り受けた。今後の返済の件でご相談したい」と呼び出しが掛かっています。
今は何より家族にため、生活を守ることです。
落ち込んでいたIに昔の闘志が湧いてきました。

そんなIを心から応援したいと思っています。







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対決の姿勢

2007-11-19 | 事例
Pは重い気持ちでした。
「はい。この月末までに所得証明と貴方の収支一覧をお持ち願いませんか。
其れを基準にして、今後の返済を決めましょう。」
言葉は丁寧ですが、嫌を許さぬ響きがあります。
出さなければ、120万の役員報酬と間近く支給される5000万以上の
退職金は差押されるでしょう。

PとこのサービサーSとの関係はもう9年くらいになります。
40台でバブルの景気に乗った彼は、会社も個人も不動産の投資に懸命でした。
あっと云う間に崩壊です。6行との銀行取引は全て不良債権でした。
不動産処分後8億5000万ほどの債務はありましたが、今では一社を除いて全て
和解が成立して居ります。

残る1社のS、此処とは、相当な争いをして来ております。
其れが1段落して2年半、もう何もないと思っていたところに今回の
呼び出しです。
現在の債務は1億4000万です。
彼はもう60才も半ばを過ぎています。

PとSとは今まで訴訟問題で2回争っております。

最初が保証人問題です。
Pは1行だけ息子を保証人にして居りました。
しかし此れはPが勝手に保証人にしたもので、署名も本人の筆跡ではありません。
当時息子は学生で親元を遥かに離れていたことも実証されます。

Pは銀行にその旨を申し込み、保証人解除を申し込みましたが銀行は
受けつかずそのままSに譲渡したのです。保証人問題が世間で騒がれる
一寸前です。

裁判は有利に進みました。
しかし、Sの申し出により、50万を払って和解しました。
息子を保証人より除く事以外にもう一つ、和解をすれば、SはPの
私文書偽造の件も水に流すというものでした。

Pはこの頃は夢中で対応したものです。
個人も会社も事実上は破綻です。
自分が頑張らないとP家は終わりです。どんな事にも、恐れずぶっつかる
心構えがありました。
こんな頃、Pは新会社を立ち上がらせ、力を入れています。
自宅は競売になり、会社が整理しなければなりません。得意先が一番あった
東京で新会社を作っていたのです。新会社のすべりだしは上々でした。

保証人問題が終わって、残債務の請求があるかと思って居ましたが、
その後は静かでした。請求が再燃したのは2年後でした。
しかし、この当時はPには未だ弁済力はありません。
が、会社はすこぶる順調でした。Sは給料(報酬)の差押をしてきたのです。

Pはこのことも有ると予想した居た為に、給料は0にしていました。
しかしSは此れを認めません。詐害行為の訴訟に成ったのです。
結局此れは勝訴になりました。
裁判では、以前から給料0を通している。生活費は別のところから
借りているなどPの読みが全て当たったのです。
Sは高裁まで上告しましたが、第1回の裁判で棄却となりました。

Pは此れでほっとしたのです。
此処までやって何も取れないからSは諦めると踏んだのです。
新会社は本当に順調に伸びています。
もう給料を貰っても大丈夫、預金も自分の名前で自宅の近くに無ければ
不便でしかたありません。今までの相談相手も此処で打ち切りました。
Pも還暦は過ぎていました。

事実それで終わったかのごとく、回収に係わる話は一切無く、時が過ぎました。
ところが、17年の1月、何の話合いも無くて急に預金差押がありました。
3行です。
中に大丈夫といわれた外国銀行も入っておりました。
全部で2400万です。個人のお金ばかりでなく、1時預かった仕事上のお金も
ありました。
其れを個人の名義で預けたことにも問題はありましたがどうしようも有りません。

不思議な事に、差押えられた後には昔のように敵愾心は湧きません。
「やられた。」
と云う気持ちだけです。

其れとともに何故かほっとした気持ちもあります。
此処で2400万払ったのだからもう終わりだろう。此れでSも何もして
来ないだろう。
こんな気持ちが頭を駆け巡っていました。

それから3年近く、其処にSからの呼び出しがあったのです。
Pの思惑とは逆にSは時間さえおけばPから回収出来ると呼んでいたのです。
新会社は会社年鑑の中でも光るようになっていました。
ただ5ヶ月前の6月、息子を社長にして二人代表制を取っていたのが
逃げる口実になるかも知れません。

弁護士も税理士も全てを正直に言おう。そして返済金を負けて貰おうと
言って居ます。
多くても1割の1400万だろうと勝手な推測です。

かって相談した人は徹底的に争うことを薦めています。
「悪くても給料の1ヶ月だけの差押だ。後の給料や退職金が差押になっても
平気ではないか。訴訟にならないとも限らないから、勿論新会社にも協力は
絶対必要だ。Sが全てを知ると、多額のお金が余るが解かるではないか。
其れを見逃すようなことはSは絶対にしないよ。」

Pは自分が矢面に立って争う気力がありません。
さりとて全部取られることは尚困ります。
だけどPにはかっての銀行に立ち向かった時の覇気は見えません。
新会社は上手く行って、生活は安定し、P家の地位は不動に
なったからでしょうか。

Pが退職金を取られないことを祈っています。





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中小零細企業の経営者の皆さま

2007-11-17 | 事例
 


勉強会は11月27日(火)午後6時30分より行います。

勉強会:午後6時30分より    

場所:神田定例会場にて

参加費:5,000円

懇親会:午後8時半より*親睦会会費:2500円程度

※詳細はホームページでご確認下さい。

  http://www4.ocn.ne.jp/~aoymfcq/





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若者の就職意欲を邪魔するもの

2007-11-16 | 事例
あの何時も明るいJの顔色が何時に無く冴えて居ません。
Jは就職面接に行って来ました。
「親父とお袋、此れを見てや。俺、何時までも何処にも就職なんか出来ないよ。」
見せたのは、今度Jが入ろうとしている会社の誓約書です。
「破産宣告あるいは後見・保佐または補助開始の審判は受けた事実は
ございません。」
そう書いた1項目が入って居ります。
Jは自己破産をして、保証債務を綺麗にして、就職を考えて居たのです。

仕出し屋。此れも無くなっていく職種の一つでしょう。

Jの家は仕出し屋に材料を卸して居ます。仕入れ商品もありますが、
自家製品が主力です。6名ぐらいの従業員は一人欠け、又一人辞めて
今では老夫婦と独身の倅の3名です。

夫婦とすれば先の無い職種に倅を縛りつけておきたくない。早く他の
仕事を探しなさいと云って居りますが、そうなれば自家商品は
もう作れず、商いの価値無く、廃業せざるを得ません。
「辞めなければならない。」と言いながら今の仕事に愛着をもって居る親の
姿を見ているとJには其れを振り切って他の職を探す気にはなりません。

老夫婦は同じ年齢、来年から二人して年金を貰えます。
来年の5月までやって店を閉じようと決めました。
5月まで繁忙期が2回あります。其処までやった方が少しは残るだろうと
云うのが二人の胸算用です。
「最後まできちんとするよ」と云う倅を説き伏せて其れまでには職を
探すように発破をかけます。

仕入先に迷惑を掛けないことが背一杯です。
不動産は銀行に全部取られるのは覚悟です。

しかし、最も気になって居ることは、Jがただ一つ、1口だけ、保証協会を
保証して居ます。この残はもう500万を切っては居ますが、此れだけは
返したいと両親は気を揉んで居ますがとても返せる金額ではありません。
両親もJも今の仕事を辞めると直ちにJのところにも取立てが来て、
Jが新しい職にもつけないと悲観的です。

紹介されて相談した人は楽観的でした。
「自宅まで取られる事を覚悟すれば怖いものはありません。任売がよいか
競売が良いかは検討するとして、今銀行にして居る返済を全部ストップ
しましょう。銀行が直ぐに対応を始めても自宅の取られるのは来年の
5月過ぎです。ご希望期 間は充分に仕事が出来ます。倅さんのことですが、
就職して平気です。返せるだけで話は付きます。話が付かない時は、倅さん
だけ破産をしなさいよ。同時破産と云って幾らも費用はかかりませんですよ。
此れをしておくと完全に債務からは逃れます。」
Jは自己破産をして置くつもりでした。

せめて昨年の8割方は行くだろうと読んでいた本業ですが、完全に外れました。
年末商売も例年は10月から予想が付きます。今年は10月と云うのに引き合い
すらありません。

少し廃業の時期を早めて、来年1月には完全に仕事から手を引くことにしました。
幸い倅がある会社に入れそうです。
自己破産は入社までには出来ませんが、少しくらい遅れても仕方無いと腹を
括りました。

面接に行ってその場採用が決まったのですが、渡された誓約書と身元保証書は
一家にとって厳しい文面でした。

「平気です。」
前に相談した人です。
「御両親は廃業をするのであって、倒産するわけではありません。
不渡りも出しま せんし、法的整理もしません。仕入先には迷惑を
掛けませんから、世間的な騒ぎは起こりません。銀行だけですから、
当事者だけの話合いで済みます。サービサーに譲渡されても同じです。
話し合いのことなど貴方が言うはずはないでしょう。銀行からは絶対に
漏れません。倅さんは自己破産をするのを少しのばしましょう。
会社が従業員の破産について どんな調べ方をして居るか解かってから
対応しましょう。その間の対応はこうすればよいでしょう。」

細かく保証協会との対応も教えてくれました。
此方で誠意を持って当たれば、保証協会も生活を脅かすようなことまでは
しませんと云うのが主旨です。

Jの明るさが戻ったみたいです。
新しい会社は12月より勤めます。

Jの笑顔と張りのある挨拶が新しい職場で人気になるのも遠くは無いでしょう。





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狙われる女

2007-11-14 | 事例
「サービサーがマンションに抵当権を付けさせてくれと云っています。
 どうしたらよいのでしょうか。」
どう見ても20台の後半か30台に見えます。
大学生を筆頭に3児の男の子の母親とは見えません。

マンションをどうして手に入れたのか、どうやって子供たちを女で一つで
育ててきたのか解かりません。聞きもしないし、彼女も喋りません。
しかし、つい最近まで彼女には男が居ました。
10歳くらい若い30台の男です。
マンションには子供が居るために、会う瀬は他の場所でした。

ぶらぶらしている彼から「1000万、銀行から借りてくれると云う人が居る。
1000万あれば其れを元にして頑張れる。保証人になってくれ。」と
頼まれ深くも考えずに保証人になったのです。
彼は15%を仲介の人に払い、手取り800万くらいを掴みましたが、
結局は何もやらず、1年一寸の間に、お金は泡となって消えました。
味を染めて、又借りることばかり考えて居る彼に、ついに彼女も別れ話を
持ちかけたのです。

「あのお金は俺が返さないと直ちに君に請求が来るよ。よりを戻さないと
 俺は払わないよ。」
「貴方、ただの1回でも貴方があのお金を私の為に使った事がありますか。
 自分で借りて自分だけが使った事には、自分で責任を取ってください。」
「なんと言われても。よりが戻らない限り、君に払って貰うから。」

彼は今までの住居を払い、近郊の親の家に戻ったのです。
そして運送の仕事に勤めたらしいです。
親は自宅など持ち、それなりきの資産もあります。

彼はそのまま返済をストップした様子です。
半年くらい経って、サービサーから彼女に呼び出しが来ました。
「彼は払っていない。このままでは貴方に払っていただくより無い。
今日は警告だけですが何とか彼に返済をする様に薦めてください。」
彼の親の住所を教えて帰りました。

心配になった彼女は比較的こうした知識のある知人に相談しました。
「先ず貴方の収入ですが。」
子供3人をそれなりきに育てるには、今の勤めでは駄目だ、
と覚悟した彼女です。直ちに今の仕事に飛び込みました。
当初の申告は非常に大きかったですが、昨年から自分で有限会社として
独立しました。給料は20万にして居ります。
収入からは、返済を責められても怖く有りません。

問題はマンションです。120㎡の築5年目、時価は5000万です。
頭金があったためにローン残は3800万。
しかしローンの払いの方が賃貸より安いために此処を動くことは出来ません。
担保価値があるためにサービサーが狙ってくることは1目瞭然です。

「親からお金を出して貰ったと云う事にして、抵当権の根抵当とか、
 譲渡担保に出来ないかな。」
「親には心配をかけたくありません。絶対に親にこんな事は言えません。」
「彼との事は言う必要ないよ。違う理由でも考えて。」
「其れも出来ません。」
田舎の親に事情を話すことは嫌がります。言えない事情もあるでしょう。

「まあ今から登記を弄っても詐害行為になる確率が大きいから、
 今のまま放っておくか。サービサーだって本人から攻めるさ。
 普通は女手一つで子供が3人も居れば事情を聞いただけで請求などして
 来ないですよ。この際、サービサーの人情に賭けてみよう。」
知人は自信は無いみたいです。自分に言い聞かせるように彼女に
言ったものです。

半年後彼女はサービサーに呼ばれました。
彼の現住所は解かりましたが、何回連絡しても返事もありません。
彼の住所は個人情報に抵触しますから教えることは出来ない。
貴方が保証人として毎月僅かを払うと言っても、事情を聞いて見ると、
毎月1万円でも大変ではないか。其れより自宅を担保提供してくれ。
との話です。彼女が幾ら毎月払うと言っても、何十年も掛かるからと
云って相手にしません。

其れより自宅を担保に差し出せと迫ります。
払えないものならば、売れと云うならばともかく、何で担保と云うのか
一寸解かりません。
「あのマンションは名義は私のものになって居ますが、事実上は父のものです。
 父に聞いてみます。」
と答えて帰るのが背一杯でした。

サービサーは何で先ず借りた彼に請求しないのか。連絡して何も
連絡しないと諦めるのでしょうか。取り易い女から取るのでしょうか。
呼ばれて真面目に伺う私って馬鹿かしら。
言いたいことは一杯有ります。しかし其れに時間を取られると、
毎月の収入に即響きます。

取り易い女から攻めること。此れがサービサーの本音でしょうか。
それに対して私はどうして闘えばよいのでしょうか。





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欲張りの報い

2007-11-12 | 事例
彼は、欲しいと思った事を全部取り入れたと言う、超豪華な自宅を持っています。
町から外れた一寸交通が不便な所ですが、辺りでは際立って見えます。
又車好きで、県下に2-3台しか無いスーパーカーも持って居ます。
更に年取った両親が町の高級住宅地に住んで居るために、此処にも
立派な住宅があります。本当にリッチな生活です。

彼の工場はもっと不便な山際にあります。そこで建材を作って居ます。
此れが安くて質もよかったですから、この不景気にも乗り越えてきました。

しかし自宅の建設費と、車の購入代金は銀行から借りたまま未だに
払っておりません。ただし車の購入代は会社の運転資金と云う事で
借りています。

仕事が急激に落ち込んできた現在、彼は借金を返すのが本当に
嫌になりました。今の状態ならば、まともにやっては返せないのも
理由の一つです。リスケを申し込む彼に、銀行は、自宅と車の売却を
くどく薦める様になってきて居ます。

彼は知人の紹介で診断士に会社診断を依頼して居ります。
診断士は彼に進言して居ます。
「今のままでは、たとい景気が戻っても借金は返しきれません。
その時は自宅とお父様のご自宅とは担保になって居ますから、
残念ながら取られます。車も無事とは行かないでしょう。既に目を
付けられています。幸い工場は担保ではありません。此処で第2会社を
作って工場だけでも守りましょう。クレームが入っても何とかなります。
自宅やお父様の家や車は残念ながら処分するようりほか無いでしょう。」

「こんな返事を聞くためにわざわざ相談したのではない。どうしたら
不動産も車も守れるか其れを聞きたかったんだ。」
彼はまともな相談者ならば、これ以上の返事が無い事を察しました。
弁護士だったら自己破産まで言うかも知れない、と思ったのです。

車は思ったより上手く処理できました。
知人のところに預かって貰いました。そして銀行には売却したと言ったのです。
「車代金が未だ全部は払ってなかった。其れを綺麗にして、後、今の
運転資金などにどうしても必要なお金を回したら此れしか余らなかった。」
彼は売却処理と見せかけて、実は自分の持っていたお金を僅かに銀行に
戻しただけです。車は担保でもなく、未だ不良債権にはして居りませんで
したから、銀行も強くは言えなかったらしいです。

彼は自分の才覚で車は上手く処理したと思いました。
此れに味を占めた彼は自宅を守ることに懸命です。
こんな田舎にこんな立派な家、買う人など居ないだろう。彼の読みは
当たって居ます。銀行も躍起になって不動産屋を紹介しますが「当たり」
すらありません。両親の自宅は諦めては居ましたが、それでも競売に備えて、
件外物件として車庫を造ったりして居りました。もう彼は銀行に対して、
返済は金利すら完全に打ち切っています。

彼は自宅がどうしても売れない状態を見て、工場も売れないと判断しました。
前に第2会社を作ってそちらに移すことを言われましたが、第2会社など
作るつもりは全然ありません。

両親の自宅を含めて2年間、任売では動かず、何も無かったために彼は
大丈夫かの様な錯覚に陥って居たのです。彼と銀行の争いを知って、
彼をそそのかす人も居り、一層彼をその気にさせて居たのです。

今度の担当者は強気です。そして事務的です。
「このままでは銀行としてもどうしようも無いから、法的回収に移ります。」
宣言して、自宅と父親の家を競売にかけたのです。
びっくりするような安値が出て、簡単に競落しました。
「何競売でも売れないよ。4回競売で売れなければ、裁判所が競売を
取り下げるよ。」
そんなことを言う人も居ましたが、権利関係で揉めているわけでなく、
今までの価格が高かっただけです。

ところが、競売が済むと、工場を仮差押をしたのです。債務名義を取って
此れも競売です。それどころか、預けてある車に仮処分をかけたのです。
車は預けてあっても名義など変えてありません。此れもオークションに
かけられたらのです。銀行で車検証など確認したことがない事、
新しい持ち主が全然乗っても居ないことを突き止め、その持ち主の
取引銀行が同じ銀行の支店であったことなどから調べたらしいです。

折角、工場と車は守れそうになったのです。
これだけで上出来と諦めが付いたならば、恐らく守れたでしょう。

自宅も守れると思って、ちょろちょろと細工をした人の結末は哀れでした。





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猜疑心

2007-11-10 | 事例
「遠いところ、折角おいでになって頂いたのですが、実は当方でも
未だ協議中の事 が多く、今の段階では何も申し上げることは出来ません。
専務が早とちりをして お呼びして誠に申し訳ありません。今日はこのまま
お引取り願うか、ごく、一般的のことを少しお話頂ければ結構です。」
勿論、姓を名乗っただけで、会社名も名乗らず、名刺も出しません。

昨日、息子の専務と云う人から電話がありました。
「自分も母から昨日聞きました。会社がピンチで母は至急に弁護士と
相談しなければならないと申しております。そうなれば私財も何も
スッテンテンなってしまいます。その前に何かやって置かなければ
ならない事があるか至急に教えて頂きたい。会社名とか内容はお目に
かかった時に詳しくご説明いたします。」

何か急を要することだと感じ、仕事を調整して次の日に、
駅で待ち合わせて、自宅にお邪魔しました。

息子の年より推定すれば50台の中ごろの方でしょうが、30台と言っても
通るような若造りの社長でした。
「と云う訳で依頼された書類を今日お見せする事は出来ません。」
私が昨日の電話で、「至近の決算書・試算表などを見せてください。」
と言ったのが気に障ったみたいです。

昨日息子は簡単な質問には答えてくれました。
業種は建築業です。全て民需です。主な銀行取引は2行で未だ
リスケなどやった事がありません。その銀行に私も母も個人的な預金を
して居ります。保証人はこの二人です。不動産は母と私の自宅それに
会社、そのほかに別荘とマンションを持っています。此の二つは担保では
ありません。

折角2時間半をかけてきたのですから、一般的な資産の保全だけでも
説明して置こうと思いました。
さすがに息子は聞こうと努めていますが、質問を仕掛けると母が
セーブします。のみならず、私が「若し、那須に別荘をお持ちとすれば。」
と例に取ると顔色を変えて「何故知っているの。」と息子を睨んでいます。

「会社を整理しても、その後の個人の生活は守らなければなりません。
何の手も打たずに法的整理をすれば、結局は管財人に全て没収されます。
守る手段だけは打ってください。」
30分くらいで切り上げ、帰宅の途に着きました。

駅まで10分。息子に送ってもらう車の中で一言言いました。
「社長が、こんなこと他人に知られたくない。初めて会った人などに
何も喋りたないと言う気持ちは解かります。しかし、今日の社長は
少し異常過ぎます。資産の保全を喋りましたが、もうその段階では
ない気もします。気分的に相当参っていますから、よく見守って
いてください。又、出来るだけの事はしましょう。何か必要なときは
電話下さい。」
と分かれました。

帰宅後、かかっていたカレンダーにあった会社名を思い出し、
ホームページを探しました。
案の上あります。3年前に夫の先代の社長が他界して、奥様が後を
次いでいます。ただ最近、大きく引っ掛かっています。その前にも
相当額をやられて居るらしいです。其れがために、自分も行かれそうに
なって居ます。ノイローゼにもなるでしょう。

恐らく業界でも噂となって居るでしょう。ですから余計に人に
知られたくなかったのです。こんな状態ですから、一人に御相談して
全てを決めるでしょうが、その相談者がよい人でない限り、資産を
全部失う恐れが大きいです。

人の心を許さないのはよいですが、いたずらに猜疑心をもって見ることは、
自分に来たチャンスを壊しているかも知れません。

この様な人に何回もお目にかかって居ます。何れも結末は
余りよくありません。今日あった母子が上手くいくように
心から祈っています。





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