カマキリ  小川凛

死の有効利用を果たすまでの
ふたりの軌跡です

第49話 アンドレ・ロマノビッチ・チカチーロ

2007-09-01 | Weblog
それからの時間
僕が目にしたものは
まさに…まさに地獄そのものだった

川口は突然
椅子に緊縛されたままの少女を椅子ごと蹴り倒し
少女は椅子に繋がれたままの状態で脇腹を下にするようにして
バタン!と倒れた

それから椅子を持ち上げ
少女がうつぶせの状態になるように
クルリと回して椅子の背もたれを上にして止めた

その時、椅子が下から見えたんだけど
なんとお尻の下敷き部分が丸く
くりぬかれて大きく穴があいていた

その穴を見た時
川口がこれから何をするのかが
僕には何となく分かってしまった

川口は穴から見える少女のスカートを慣れた手付きでズルズルと引っ張り出すと
それをジョキジョキとハサミで切り始めた

すると血だらけになった裸のお尻がベロンと露になった

…その一連の動作の手際のよさ
全く躊躇する事のない感じ
そして、あらかじめ座席の下敷き部分がくりぬかれていた事等から

慣れてるな…という印象を受けた

それらは
これが初めての撮影ではない事を
物語っていた

少女のアソコに突っ込まれていたバイブは
倒れた時に抜け落ちたらしく
少女のアソコには今は何も刺さってなかった

しかし
ほんの今まであんなに太いバイブが刺さっていたせいだろうか

昨日まで処女だったハズの少女のアソコは
今はバックリと穴が開いたままになってしまっていて
内臓まで見えてしまうんじゃないか?
ってくらいに
ちつの奥の方までくっきり見えてしまっていた

それくらい大きな穴が開いてしまっていた

カメラはその穴のドアップをしばらく写すとそれから川口の醜い性器のアップに変わり
そのまま川口は左手で椅子の背を掴み
少し椅子を持ち上げるようにしながら
俗に言うバックの態勢で
そのまま少女の血だらけのアソコに醜いソレを挿入した

川口が腰を振るたびにパンパンパン

卑猥な音が聞こえてくる

そのまましばらく同じ映像が続いたから

たまらず僕は早送りをした

しばらくすると場面が切り替わり
少女は椅子にではなく
布団の上に仰向けになった状態で寝かされていた
ただし両手は万歳をするような状態で拘束されていた

ボロボロに切り裂かれたスカートも含め
洋服は着たままだった

突然ハサミのアップになり
そのハサミを使って
少女の服はドンドン切り裂かれてゆき
幼い体が露になってゆく

そこまではまだ普通だった
勿論、普通じゃないけど…でもまだ理解出来た

けれど次からは本当に吐き気がするような
おぞましい映像が映し出される事になる

まず…川口は少女のおさげを両方切り落とした

そしてその切り落としたおさげを少女の口に突っ込んだ

ウェッ、ウェッ

少女がむせる


それから


それから…


川口は
少女の乳首を
ハサミで切り落とした

この時ばかりは少女も激しい悲鳴をあげ

すぐあとに
顔を数発
ゴンッゴンッ
と鉄槌のような感じで殴られた

それから
殴られて崩れた顔のアップ

そして切り取った乳首と

乳首を切り取られた乳房のアップが
次々に映し出された

切り口からはピュッ
ピュッと血が噴き出して

それから目出し帽の男の口のアップになると

血が噴き出している
元、乳首があった場所に直接口をつけ
そこから出る血を赤子が母乳を飲むかのように
無心でチュウチュウ吸い始め
その必死な姿が
吐き気を誘った


その頃くらいから
少女の顔はもう
完全にうつろだった

目から鼻から口から
顔にあるすべての穴から
何かしらの液体がダラダラと垂れ流しになってしまっていた

この子はもう
何もかもを
諦めてしまったのかもしれない…

目が完全にとんでて
覚せい剤でハイになってバカになってしまっているような

映画とかでよく目にする
あんな顔をしていた


それから川口はまた正常位で挿入をし
またパンパンと腰を振った


僕はただ…

もう…この男が
この少女の事を殺さない事だけを

それだけを祈った

心から
心の底から…



けれどその
儚い願いは


やはり、いとも簡単に

打ち砕かれてしまった…


それからの映像は
もう本当に
完全に理解不能だった


本当に地獄だった…。





1980年代
旧ソ連のウクライナ共和国のスカスカヤ州に
“アンドレ・ロマノビッチ・チカチーロ”
という連続殺人鬼がいた

81年、チカチーロは誘拐した17才の少女の乳首を噛み千切って生で食べ
それからレイプして殺害した。

それまでも性的虐待やレイプ
9才の少女をレイプしナイフでズタズタに切り刻んだりと、残虐な事件を起こしてきたが

その時の、81年の少女の乳首を食べた時の食人を含む殺人の
あまりに強い快感が忘れられず
彼をどんどん異常な殺人鬼へとエスカレートさせていった


それからのチカチーロの犯行は凄惨極まれるものだった

ある時は
誘拐した少女の唇と鼻と指を切り取り
その後、首を絞めて殺害し
それからその子の身体を切り開いて
心臓と肺を取り出し
それらをグチャグチャに切り刻んだのちに身体の中に詰め直したりもした。

腸を引きずり出すなんてのは最早当たり前で

もっと酷い時は
幼い少女の性器をナイフを使って
えぐるように切り取ったり
腹を開いて子宮を取り出して

それらを生で食べたりしていた。


チカチーロは少女の子宮が大好物だったらしく
たびたび生で食べては

その甘い味にちなんで

少女の子宮を

「女の梨」

と呼んでいた。


逆に相手が少年の時は
性器と睾丸を切り取って
睾丸を食べていたらしい。


そのうち
殺してから食べる事に飽きてしまったチカチーロは
さらなる刺激を求め
生きたまま少年少女の身体を切り刻むようになった。


例えば…

口の両脇を耳まで切り裂いてみたり
ナイフを使い、いたいけな少女の鼻と唇を切り取って
それをその少女のアソコの中に押し込んでみたり

目玉をくり出して
お尻の穴に詰め込んだりした。

…勿論、生きたままで。


チカチーロはアソコばかりでなく
肛門も犯し
その犯した肛門から腸を引きずり出し
それをなめまわしたりもしていたらしい。


そうやって
相手が生きていようが
死んでいようが

チカチーロは構わずレイプを繰り返し続ける男だった。


チカチーロが逮捕されるまでの24年間の間に
少なくとも52人の少年少女が犠牲になったと言われている。


そして…チカチーロは小学校の教師だった…。





惨たらしい映像を見ながら…
僕は前に何かで知ったチカチーロの事を思い出していた…。


自分とは関係のない話。

僕が生まれる前
遠い異国でなら起こりえたかもしれないが

現代の日本では…
ましてや自分の周りでは
起こるハズもない
と高を括っていたチカチーロの犯行…。


けれど、それは間違いだった。


僕が今、目にしているものは
まるでチカチーロの愚行を思い起こさせるものだった…。


川口がチカチーロの事を知っているかどうかなんて僕にはわからない

けれど、今…目の前で流れている映像は
とにかく僕が知るチカチーロの犯行…そのものだった…。


かろうじて呼吸をしているだけのような状態だったが
少女はまだ生きているようだった。


けど少女の顔からは
唇と鼻が切り取られ
右の眼球がえぐり出されていた。

切り取られた唇や鼻や目玉は
少女のぺったんこの
胸の谷間に並べられ


それを眺めながら
川口はなおも腰を振り続けていた


両目をえぐらず
右目だけをえぐった事には
川口なりのこだわりがあったのだろう
腰を振りつつ川口は
10cm程の手鏡を少女の方に向け
無惨な自分の顔をわざわざ少女に見せつけていた
絶対に見たくなかったハズなのに
一瞬目に入ってしまったのだろう…
鏡を見た瞬間少女は

「ウワァァァァ…」

と、動物のような悲鳴を上げ
そして泣き始めた


その様子を見て
一層興奮したのか
その後すぐ川口は射精の時をむかえ

少女のアソコから
いびつな形の性器を抜くと
それを少女の顔の前に持っていって
右目、鼻、口、と
自分がえぐり出して出来た少女の顔の穴に

ドロドロの精液を流し込んだ

その時、射精する性器のアップになったが
亀頭が凜に噛み取られて無くなってしまっているせいか

普通ならおしっこをするように
ピュッとまっすぐ出るハズの精液が

ブッ、ビャッ、ボトッ、ドプッ…

と、まるで穴がひとつではないような感じで
汚ならしく不規則に色んな方向にボトボト飛び散った

その飛び散る光景が
本当に気持ち悪かった

僕は耐えきれず嘔吐しそうになり
まだまだ続きはあったかもしれないが
たまらずDVDを一度停止した。

最悪の気分だった。

最低の気分だった。


少女のあの状態
(出血の量)を見る限り
少女はその後
確実に死んでいる

…いや、出血多量なんて生半可な死に方じゃなく
もっと酷い殺され方をしたのかもしれない…。

それを考えると胸が苦しかった。

自分の無力さを呪った。

この愚行は今行われているワケじゃないから
そんなの土台無理な事くらいは
判っているのに
判ってはいるのに…

自分よりも弱い
幼い子供が
目の前で殺されるのを
止められなかった事が悔しかった

ただ指を咥えて見てることしか出来なかった自分が

もう…悔しくて悔しくてたまらなかった


名前も知らない少女の死がこんなに悲しいとは思わなかった

知らず知らずのうちに
少女に幼い凜の姿を重ねてしまったのだろうか?

その苦しむ姿が
とても他人事には思えなかった


そして深い悲しみは
いつしか鋭い怒りに変わっていた

今日という日の為に
様々な手を尽くし準備した数々の道具がある

凜に渡したマイオトロンもそのひとつだ


“凜が戻って来るまで手出しはしない”


はじめはそう思っていたが
最早それは無理な話だった

「あの子のソレには到底及ばないかもしれないけれど…
少しでも強い痛みと
少しでも深い恐怖を
こいつに与えてやる…。
死を救いにさえ思える程に…。」


僕はまずペンチを取り出した
古典的だが実に効果的な方法が数多く存在するペンチでの拷問
コレを使えば非力な僕にでも出来る事が沢山ある

名も知らぬ誰かの無念を
少しでも晴らす為に…

復讐とか拷問とか…

そんな甘美な響きの為じゃなく

自分に課せられた使命の様に

僕には川口に痛みと報いを与える義務がある


まるで無意味だと思っていた自分の生に
初めて強い意味のようなものを感じていた


此処はこれから地獄になる

地獄とは本来
悪い事をした罪人を裁き罰を与える為の場所のハズだ

だとしたら僕は
さしずめ…鬼かな(笑)


何でもいい

もう…ヒトには二度と戻れなかったとしても…

もう

それで…。



こんな奴を殺すのに
誰かが手を汚すべきじゃない

こんな奴を殺すのに
誰かが罪を被るべきじゃない

僕でいい

その役割は
ヒト以下の
忌々しい僕のような生き物にこそ
相応しいんだ…。


近い未来
必ず燃え尽きる事を
約束された炎が

特別な煌めきを
力を生む事がある


今の自分がそれにあたるような気がした

それくらいの恍惚感が僕にはあった

自分がまるで神に選ばれた人のような
そんな気さえしていた


見るとちょうど目の前に川口の手があった

「なんでもいいか…
はじめなんて」

静かな殺意が僕を押す

おもむろにさっきのペンチを握り締め

川口の中指の爪を挟むと
グイッと一気にそれを引き剥がした

木の幹が折れるように
メキメキッという背筋に寒い音がして

ベロンと爪は剥がれ落ちた

中からピンク色の肉が見え
時間差でジワーッと血が滲み出てきた


「ンーッッ!!!!」

激痛に目を覚ました川口が
猿轡越しに唸るような感じで
声にならない悲鳴を上げた


それはまるで
これから繰り広げられる地獄の始まりを告げるサイレンの音の様だった……








つづく。




第48話 地獄の入口

2007-08-25 | Weblog
凜が家を出てから
一時間程が経とうとしていた。
外ではまだ
シトシトと雨が降り続いていた。

「ハァ…」

手持ち無沙汰な僕は
何を期待するでもなく
何気ない気持ちで部屋の中を物色することにした。

今思うと
その何気ない行為が
“あの”悲劇を招いてしまったんだけれど…。


「きったないなぁ…」

長く住んでいるような感じはしなかったけれど
短い期間でよくもまぁこんなに散らかしたなぁ
と言いたくなるような散らかり方の部屋だった。

いかにも引っ越して来たまんま
って感じの段ボールがいくつも置いてあってそれを除けば部屋は
情けないくらいゴミ以外何もなかった

「…ったく、いつまで寝てんだか…」

あいつはあれからずっと気を失ったままで

起きる様子は全く見受けられなかった

それにしても
憎くてたまらないあいつが目の前にいるせいか
それとも凜とのケンカでナーバスになってたせいかわからないけど
言葉遣いがどうしても汚くなってしまう

「大人だろ…たためよっ…」

物色中
イラついた気持ちをぶつけるように
目の前にある脱ぎっぱなしのズボンを蹴り飛ばした

ドサッ

すると思ったよりも重い感触とポケットから何かが落ちる音がした

財布だった。


「へ~…ニートのクセに財布は重い…か
どうせ小銭が多いから逆にそうなる…とか、だろ?
それとも…パチンコ玉でも入れてたりするのか…な?(笑)」

なんて言いながら
僕はあいつの財布を拾いあげ
その中を開いた

他人の財布の中身を見る事など
当然ながら過去になかったから
実はかなりワクワクしていた


“大の大人の全財産がたったのこれっぽっちかよ(笑)”


なんて、
バカにしてやろうと思って中を見たが

実際は

全く笑えなかった。


「ハ?…え?何…なんだコレ…」

万札がゴッソリ
何十枚も入っていた

数えはしなかったが
ざっと50万近く入っていたと思う

「ヤクザ…?」

途端に恐ろしい光景が頭に浮かんだ
ヤクザを殺して
その後タダで住むとは思えない…僕の死後
凜に火の粉が降り懸かるのだけは困る…

「マズいかな…いや、だとしたら尚更
生かしてた方がヤバいよな…」

殺すしかない
もう、殺すしかない

けどマズい事になったのは確かだ…

不測の事態

僕のキャパシティーを明らかにオーバーしている

「マズいな…マズい…マズいよな…」

焦りながらも
とにかく今は少しでも多くの情報が必要だと思い

もう一度財布の中を開いてみた

色々な種類のカードの中に
免許証を見つけた


“川口誠治”


初めて
こいつの名前を知った

「川口…川口っていうのか…こいつ」


当然だが
これから自分が殺そうとしている人間にも名前があるという事を
初めて知り
人を殺すという事の
事の大きさと恐怖が僕の身を貫いた

財布の中にはもう他に
川口を知る
これといった情報はなかった

僕はそこらに転がる段ボールを開き
とにかく中をあさった

普通ではない荷物ばかりが溢れていた

生活用品は殆どなくて
あるのは大量のDVDやデジタルのビデオテープ
そして簡単な撮影機材

荷物を見る限りでは
川口がヤクザという確信は持てなかった

何かのカメラマンか
編集マン?

ただの趣味?

とにかく普通ではない事だけは確かだった

「だとしても、まずはこの中を見てみるのが一番…だよな?」

嫌な予感はしたけれど
やはりDVDの中を見てみるのが一番だと思い
DVDを再生出来るデッキを探す
テレビがありその下に簡単な再生用のDVDデッキをみつけた

山積みのDVDの中から無造作にいくつかを選び
その中で一番最初に手に取ったやつをデッキに入れた

オープニングやタイトルメニューなんて
皆無なまま突然映像が流れ始める
なんの工夫もない安い作り故に
その素人臭さが逆に僕の中の恐怖を増長させた…


画面の中央に人が座っている

小学生?それも低学年だろうか?
10才にも満たないような子供の姿が映し出された

三つ編みにスカート…

女の子だった。

アングルからしてカメラは手持ちとかではなく
三脚などを使って固定されているみたいで全く動かない


嫌な予感がした…


「こんな子供を…?まさかね…」


横から変な
眼出し帽みたいなやつを被った男がフレームインしてくる

その男の格好を見て
嫌な予感は
殆ど確信にかわってしまった
男は裸で、黒のビキニパンツしか履いていなかった

そして手には極太の男性器型バイブレーターを持っていた。

「あぁ…なんて事を…」

凜の告白を思い出しながら
幼い凜を想いながら
映し出される映像を見た

酷い気分だった
物凄い嫌悪感だった

惨たらしい映像は尚も続いた

女の子は椅子に座らされグルグル巻きに縄で縛られているらしく
身動きがとれない
顔には目隠しと猿轡
顔を見られない為
そして大声を出されない為だろう

男は少女のスカートをめくりあげパンツを露にすると
一度画面からいなくなってしまった

数秒後、画面がガタガタッと揺れ
映像が動き少女に近付いてって顔のアップになった
据え置きから手持ちになったらしい
まるで少女とふたりっきりで対面してるようなカメラアングルになった

それは俗に言う

“ハメ撮り”

というような形だった

「他に誰もいないのか?全部ひとりでやってる?」

その事から
これが単独犯という可能性が浮かび上がった


画面は少女の顔のアップを映し出し
男は少女から目隠しを取った

「え?いいの?」

僕のそんな疑問などお構いなしで映像は続く

「あぁ…そうゆう事か…」

もうすでに泣きじゃくったであろう少女の
痛々しい顔が舐める様に映し出される
少女の表情は見た事もないような複雑なものだった
この微妙な表情のニュアンスは目隠しをしたままでは写らない


“恐怖と哀しみに歪む顔”


きっとそれが撮りたかったんだな…と思った。

覆面の男は左手のバイブを大きなハサミに持ちかえ
その先端を少女の下着の上から女性器をなぞるようにして上下に動かした

少女は声にならない悲鳴をあげ
映像でもわかるくらいガタガタと震えていた

今度はその顔の横にハサミを近付け軽く頬を撫でると
指にハサミをかけたまま
片手で器用に少女の猿轡を外した

猿轡を外されたあとも少女は声をあげなかった
自己防衛の本能だろう
もしも今大声を出してしまったら自分がどうなるか
それをわかっていたからだと思う。


男はおもむろにビキニを脱ぐと
少女の目の前に自分の性器を近付けた


「……ん?…アレ?」


違和感?疑問?驚き?
その瞬間いくつもの感情が僕の中を駆け巡った


その理由はすべて
その覆面の男の性器から生まれた

まずひとつ
アソコにモザイクが入ってなかった
という事はやはり
正規のアダルトビデオではなく
裏ルートのビデオという事だ
…とすると
この女の人はやはり、童顔で幼児体型の実は18歳以上の女性…

ではなく
正真正銘の幼い少女だろう…
という事はやはり
擬似のレイプや犯罪の真似事のアダルトビデオではなく
リアルに犯罪のビデオと言う事になる

そして僕の最大の驚きは
そのモザイクがかかっていない部分から生まれた

その男の性器はどこか…
否、確実に変なのだ

自分以外の男性の性器などマジマジと見た事ないから
多少の違いはあるのかもしれない…
けれど、その男のソレは
僕らのソレとは明らかに違いすぎた…

なんというか何かが足りないというか
てゆうか…足りないどころが根本的に造形が違うというか

僕のソレとはやはり
明らかに違う

僕はズボンを下げ
自分のアソコと画面に映るソレを見比べてみた
すると
覆面の男のアソコは
男性の性器でいう所の亀頭(カリ)の部分がゴッソリなかった

まるでアソコの先端から三分の一とか半分くらいが千切り取られてしまったみたいに欠損していた

それでも…
その異常な物体は
いびつな形で勃起していた

その形がなんともまた
おぞましかった


「!!!」


その時、僕の頭にまた
幼い頃の凜が浮かび上がった

凜が僕に涙ながらに語ってくれた告白を思い出した


「味…違うんだ」

「私…父親を食べたの…」

「口の中にあったのは、根元から千切れた
あいつの性器だった」

すべてのピースが
ハマってくように色々な事が明らかになっていった

表現のあやとして
川口を“父親”と表現した凜
「根元から」と言っていたが
それは小学生の女の子の口の中での感触から推測され出た言葉
実際は根元ではなく
半分か、それ以下しか噛み千切れてはいなかった事

そしてこの画面の中にいる覆面の男は紛れもなく

今、僕の後ろに横たわる
“川口”
である事


やはり凜だけじゃなかった
川口には余罪があった…
否、そればかりか
この男は自分のおぞましい犯罪の模様をDVDに収め
これは推測だが
多分それを販売して生活費を稼いでいる

とすると財布の中の大金はきっと
これを売って出来た金だ…

激しい怒りが自分の中に込み上げてくるのが分かった

こいつを殺すのに
罪悪感なんて全く要らない

凜の為だけじゃない

この世の中の為にも
こんなキチガイをこれ以上、生かしておくべきじゃない

自分の中に正しさと
ハッキリとした目的意識
そして正義が生まれ


さっきまであった
人を殺す事への罪悪感や恐怖心等は
一瞬ですべて消えた

殺人じゃない…
こんなキチガイを人として扱う必要なんてない

この男は寄生虫だ

否、それ以下だ。


そんな風に緊縛された川口を振り返り、しばらく考え事をしていたら

そんな中も映像はドンドン先に進んでいた

いつのまにか千切れた半分の性器を怯える少女の口の中に押し込み男は激しく腰を振っていた

少女はむせながらも
死から自分を守る為

それを受け入れる


川口はハサミでパンツを切ると露になった少女の毛も生えていないような割れ目に
さっきの極太のバイブを無理矢理ねじりこもうとする

ブィンブィンブィンと独特の機械音をあげ
グニグニと動くバイブ
愛撫も何もせず
無理矢理押し込むから
ブリュッ、ブビュッ

と音がして、アソコが裂け
中から血が噴き出し
太股や床を血がしたたった

涙をボロボロと零しながらも
それでも必死に声を殺し耐える少女

激痛が走るせいか
足がプルプル痙攣している…

目の前に映し出される蛮行…
この子の将来を考えるとズキズキと胸が痛んだ
自分は何も悪くないのに…一生消えない傷とトラウマを抱え生きてゆく少女…

あまりに腹が立ち
気付いたら手にビッショリと汗をかいていた

「…でもおかしい…ここまでして
なんでこいつ捕まらないんだ…?」


そう、明らかにおかしかった
恐怖におののく表情を見たい(撮りたい)が為
普通なら絶対に取ってはならない目隠しを取ってしまっている事を考えると
いくらレイプが済んだ後に

例えば
「誰かに言ったらお前を殺しにいくからな」とか
激しく脅したとしても
警察にいびつな性器の事などの身体の特徴を話してしまえば
顔はわからなくても
さすがに容易に捕まるんじゃないだろうか?

捕まってしまえばチクっても
少女の身は安全だし

そんな事くらいは幼くても思い付くんじゃないだろうか…

それに川口も、一度は凜の件で警察沙汰になっているワケだし…
指紋等の採取もされているだろうから
性犯罪の場合前科持ちは真っ先に疑われるから捕まりやすいハズ…

だとすると
こいつが捕まってないのはやはりおかしい…


「……まさか!!」


ある考えが浮かんだが
でもそれから先の事は考えたくなかった

いくら鬼畜とはいえ、さすがにそこまでは…

出来ればそう思いたかった。

けれど
川口は僕が想像する以上に
醜く下劣な生き物だった

なんとそれは
映像にバッチリ残っていた

これから続く映像は
まさに地獄だった。


まさに地獄絵図そのものだった…。




つづく

第47話 離れてゆく

2007-08-10 | Weblog
焦っていた。
苛立っていた。

翼に…
これから私がやらなければならない事の難しさが
まるで伝わってないんじゃないか…?

って、不安になった。

求めていた一体感なんてまるでなくて

独りで

たったひとりで
すべてをやらなければならないような
そんな気さえしていた。


例え実際に動くのは私だけでも
気持ちがひとつなら心細くない
ひとりって気はしない。


実際、ともに行動するかどうかなんて
私にとっては大した問題じゃなかった

「心がともにあるかどうか」だけが
私にとっては大切だったから…。

なのに
バラバラにはぐれた心のまま
アリバイ作りのため
まるで機械のように事務的に
私は電車に揺られ
翼に指示された場所へと移動していた


私たちが生活する駅から
電車で30分ほど南下した場所に
その場所はあった



「少年Aの自殺現場」


冗談まじりで翼は
その場所のことを
そう呼んでいた


翼から渡された道具の中に
プリントアウトされた地図が入っていて
雨の中
それを頼りに駅から15分くらい歩いたら
本当にすぐにそこについた

「行きは、なるだけ足場の悪い、ぬかるんだ場所を選んで歩いてね。だからってクネクネ歩くんじゃなくて出来るだけまっすぐの方が自然だから
そうして。

で帰りは逆に石の上とか芝生の上を歩いてね。
特徴のない靴底の靴とはいえ
出来るだけ足跡は残さない方がいい
ここでは足跡だけが重要なんだ。」

そう何度も言われていたから
言われた通りにぬかるんだ場所を選んで山道を歩いた。

周りを見渡すと
昼間だというのに確かに誰もいなかった
翼の言う通りだった。

こんなに誰もいないのは
元からなのかな?
それとも雨のせい?

…きっとその両方だろうな…と思った。

見晴らしのいい崖、ではあるけど…
観光名所とはお世辞にも呼べないような
爽やかじゃない
むしろ
おどろおどろしい景色

自殺の名所と先に聞いていたからそう見えてしまうだけだろうか?

とにかく長くは居たくない

そんな場所だった。


私は崖のギリギリまでおそるおそる近付くと
バッグの中から
かえに用意した新品の靴を取り出し
それに履き替え
今まで履いてきた翼の靴
そしてさっきの地図や携帯を含む
いくつかの翼の所持品を海に投げ入れ
そのまま
なるだけ芝生や石の上を足場にして
足跡を残さないように山を降りた。

緻密に策を練っていた割りには
拍子抜けしてしまうくらいシンプルなアリバイ工作だった


「余計な事をすべきじゃないんだ。こういう場合は逆にシンプルな方が現実味を帯びるんだから」


翼はそう言うと
「色々考えた結果
行き着いた」という
シンプルな計画を私に実行させた。

今回もそうだけど
翼は過去、実際に起きた事件等を元にして
進むべき道を示してくれる
今まではそれがすべてカチッとハマってくれていたから
今回も疑問を持つ事もなく私はそれにしたがった


けど、帰りの電車に揺られながら

次の事を考えていたら
とてもじゃないけど

もう平常心でなんかいられなかった。

これまでなんて
誰にでも出来る
言わば
無計画でも失敗する可能性の低い
比較的楽なミッションだったと思う

けど…これからは違う

ここからが本番だ…

ここからが
本当の正念場だ。


ガランとした車中の
電車に揺られながら
色々な事を考えていた

もしこうされたら
こう返そう

とか、

もしこう言われたら
こう言おう

とか。

これからやらなければならない事と
予想外の事をされた時の対処法

そして…もしも失敗してしまったとしたら
そのあと
私は一体どうなってしまうのか…?

また…地獄の日々に舞い戻る事になりやしないか?


特に最後のそれを考えると
悪寒がして身体中から嫌な汗がブァッと吹き出した…

電車に酔ったのか
精神的な問題か
もうどっちが原因なのかはわからなかったけれど
とにかく眩暈と吐き気を起こしてしまって
とてもじゃないけれど
これ以上電車に乗り続けるのは無理だと思い

「一度…休もう…」

と決め
次の停車駅で一旦電車を降りると
ホームのベンチに腰掛け
どこともなく…ボーッと周りの、のどかな風景を眺めていた

時計を見るといつの間にか二時を軽くすぎていた

「微妙だな…。翼んとこに戻ろうと思ったら多分戻れるけど…けど今戻っても気マズいだけ…だよね。」


拠り所

であるはずの翼が
今の私には
そうじゃなかった


「助けて」って思った
「逃げ出したい」って思った

「復讐なんてもうどうだっていいじゃん…黙ってればもう
先生は一生何もして来ないかもしんないじゃん…もういい…もうヤダ…止めたい…」

そんな、前向きではない感情が私の心をジワジワと支配していった

「怨みとか憎しみとかって
翼に話すまでは正直
もう忘れてたんだけどな…
それでもやんなきゃダメかな?

あぁ…もうどっちでもいいのに…もうヤダ…
ヤダよ…」


そんな本音が頭の中をグルグルと何度も何度も行き来した

「ダメだ…帰ろう」

情けないけれど
こんな気持ちでは
成功するものも成功しない

「もし計画が失敗したら…」

という最悪の事態を避ける為にも

私は先生への復讐を止める事にした

…今日は。


立ち止まるのと
諦めるのとでは
似てる様でまるで違う


私は一度、立ち止まるけど
決して諦めたワケじゃない


とにかく今日の様な状態では何もするべきじゃない…そう信じて
私は

先生の自宅から
自分の家(伯母さんの家)に
目的地をかえ

それによって精神的にも多少ラクになったから
再度電車に乗り込み
家路に着いた


3時すぎ
家に着くと
そこには誰もいなかった
私は部屋に戻ると直ぐに部屋着に着替え
布団に潜った
とにかく横になりたかった

余程疲れたのか気付いたらもう夜で

「り~ん。ごはんよ~。り~ん」

という伯母さんの
温かい声で私は目が覚めた

横を見ると携帯がピカピカ光ってて
開くと翼からのメールが数件届いていた

勿論メールとは
私が崖から捨てた
翼の旧携帯からではなく
今日の午前中に
あいつから奪った
あいつの携帯からだった。

午前中、翼は
アドレスを変更し
今まで自分が使っていた携帯から
赤外線やSDカードを使って必要なデータの一部をあいつの携帯に移すと
あいつの携帯を自分の物にし
これからは
それを使って私に連絡を取る事に二人で決めた。


けれどそのメールを
私は開きもせず
携帯はそのまま部屋に置きっぱで
家族三人で楽しく夕飯を食べた。


そしたら
その瞬間だけは
あいつの事や先生の事
そして翼の事も
全部忘れられた。


もう全部無かった事にしてしまえれば
こんなに苦しむ事もないのかもしれない…

なんて

絶対思ってはいけないのに
なのに内心思ってしまっていた。

もう何もいらない
もう伯母さんたちだけで…
今、ここにある幸せだけで十分…

そんな考えが
もう頭の中の殆どを占めてしまっていた


あいつらだけじゃなくって
翼までもが
私を地獄に引きずり込もうとする
死神の様に思えてしまって
怖くて怖くて仕方がなかった。

だから私はもう
「そっち」は見ないようにした

楽しく三人で御飯を終えると
そのままみんなでテレビを見ながら
なんでもないような事をだらだらと談笑した。

勿論その間もずっと
携帯は部屋に置きっ放しにしていた…。


その日の私は完全に
昨日までの私とは違っていた

もはや、どこにでもいる
普通の女子中学生だった。


私は平穏な夜を噛み締め
クタクタになるまで笑ったら
携帯を無視したまま
お風呂に入り
歯を磨いて
そのまま布団に入った。
携帯は相変わらずピカピカ光っていた。

それが目障りだったので私は携帯を学校のカバンの中に突っ込み
また眠りについた。

時計は11時を回っていた。

今頃翼はあいつの家であいつと供に夜を過ごしているハズだ…
今、一体どんな気分で一緒にいるのだろう?

あ、てことはきっと
今頃翼のお家は
かなりの騒動になってるに違いないな…

翼もう
青井の家にいないんだもんね…

ハァ…なんかもう
全部面倒臭いな…

もう
捨てちゃおう…
全部。

復讐も…翼も。


考えてるうちに私は疲れてまた夢の中にいた

なんかよくわかんない

まるで意味のないような不思議な夢を見た

内容はよく覚えてない

とにかくそんな感じで
私は翼に立ててもらった計画の
その半分も実行せず

だからって別に反省もせず

なんとなくその日を終えようとしていた…。


ふたりの心が…
否、私の心が
翼から明らかに離れていっているのが手に取るように分かった

これから
私たちはどうなってゆくのだろうか…

全部自分のせいとはいえ
私にはもう
何もわからなかった…

否、もう何も考えたくなかった…。


だけど、ちょうどその時、あいつのあの家で
まさかふたりの間にあんな事が起こっていただなんて

その時の私には想像さえ出来なかった…


まさか…まさかあんな事が
起こっていただなんて…。


次の日の朝
翼からのメールに添付されていた動画を開いて再生するまでは
まるで思いもしなかった……




つづく



第46話 苛立ちの理由

2007-07-27 | Weblog
これから別々に行動をする事は
元々の計画通りではあったが
喧嘩をしているのと
していないのとでは
その意味合いは若干…
否、かなり違っていたかもしれない


凛はひとり、家を出て
最初の計画、
「アリバイ作り」に出かけていった

最早何も手出し出来ない役立たずの僕は
せめて頭の中で
凜になったつもりになって
その軌跡を何度も何度も辿っては
今後起こりうるトラブルをシミュレーションする事で不測の事態に備えた(ぐらいしか出来なかった)

これからの時間
当然だけど僕に出来る事など
何一つなかった


体が小さくて目立つ

しかも風邪を引いたら即
死に繋がるような虚弱な僕が
雨の午前中に
これから出来る事などもう…

もう、何もなかった。


少し話はそれるが
凛は身長は大きかった割に
足のサイズはそうでもなかった

逆に僕は身長は大きくなかったが
足のサイズはそこそこあった


23・5

という平凡なサイズ。

それが僕と凜の共通の足のサイズだった


その一致を利用して
凛は僕が家から履いてきた
お気に入りのスニーカーに履きかえて
僕から渡されたいくつかの道具を持って
家を出て行った


アリバイ作りと
体育教師の殺害

そのふたつはすべて凛にやってもらう事になっていた

自分で計画は立てたくせに実際は
そのほとんどを凛にやってもらうことになり

致し方ないとは言え…

僕の心中はあまり穏やかではなかった

男のくせに情けないやら悔しいやらで…何ていうか

とにかく、自分に腹が立っていた

そういう気持ちもあったから

さっきは尚更ナーバスになってしまったのかもしれない


何もせず口だけ…

行動はせず考えるだけ…

それが僕だ。


凛が出かけて行ったあとの
誰もいない玄関を
ボーッと眺めながら

僕は自分の腑甲斐なさ
無力さを恨んだ

僕にはもう待つことしか出来なかった

時計はいつのまにか
12時を回っていた

僕にとっては待つだけ
の長い長い一日

凛にとっては多数のミッションをこなさなくてはならない
短すぎる一日が
こうしてゆっくりと流れて行った……。





つづく


第46話 不協和音

2007-07-18 | Weblog
あの…僕らの
長い長い一日は

まだ始まった
ばかりだった…。



こいつをただ殺すだけなら
わざわざこんな苦労をする必要もなかったと思う。
例えば、マイオトロンで神経を麻痺させ、体の自由を奪ったら、もうすぐに首を切るか胸を刺す

ただ殺すだけなら
それだけで良かった。

けれど、この男には、凛に対して犯した罪を
あの罪を十分に償ってもらわなくてはならない

そのためには、ちょっとの時間我慢してやり過ごせば解放されてしまうような
すぐに終わる簡単な死では

ナマぬるかった。


とは言え普通に考えたら
今日一日で、こいつ以外にも、もう一人やんなきゃなんないわけだし…
それに自殺のアリバイ工作もしなきゃならないから、
たらたらやってたら
時間はまるで足りない

なので
こいつをサクッと殺し
それから自殺のアリバイ作りをし、それが終わったら
教師の家に移動して、教師を殺害し
そのまま教師の家に居座り
僕の最期を其処でふたりで迎え入れる

ってのが一番簡単な考え方だったのかもしれない。


けれど実は、そこには
いくつかの問題(落し穴)があった。


ひとつは
次の標的が
「教師である」という事だった、
相手が仕事をしている以上。
僕らがこのまま此処を出て午前中の早い時間に
家に行ったところで
金曜日の午前中に教師が自宅にいるはずなど
まずないのだ

夜…少なくとも夕方以降にならない事には
あの教師は家に帰ってこない。


ふたつ目は、僕の残りの時間を過ごす…
すなわちしばらく潜伏する場所を
教師の自宅にするのは少々危険すぎるという事だった。

定職についていないこの男に比べ
教師には仕事もあれば職場もある
土日だけならまだしも

月曜日に教師が職場に現われなければ
誰だって不審に思うに違いない
最悪自宅に誰かが来てしまう可能性だって十分にある。

そしたらこの計画はかなりの高い確率で頓挫してしまうだろう

それらの問題点などを踏まえ、僕らは
相手の生活のリズムや場所的な事もあり
拘束する順番はこっちが先だが
二人の殺す順番は
逆にする事にした。


実はたったそれだけの事で
計画の成功率は飛躍的にアップした。


潜伏場所は絶対に、こっちの方がいい


しばらく観察を続けてきてわかった事だが
この男の生活パターンや行動を見る限り、恋人や家族や同居人等は身近な所にはいる様子はない
そして定職にもついていないと考えてまず間違いないだろう。
となると、外界との接触は殆ど皆無と言っていいハズだ。

それなら
こいつがしばらくいなくなったり連絡が取れなくなったところで
疑問に思う人間や
しつこく連絡をしてくる人間は、ほぼいないだろう。

と言う事は
この場所に僕らがずっと居座ったとしても誰にも気付かれたりしない事になる

安全面なども含め
二人で長くいる場所としたら
ここはあらゆる意味で理想的だった。


なのでまずはこいつを拘束し
身動きをとれなくしたら
そのまま放置して
今日はしばらくここにいて
頃合を見て
それから次の行動に移す。

というコトにした。


これからの僕達の計画を簡単に説明すると、
まぁそんな感じだった。

ということで
これからの僕らには
多少の時間の余裕が出来てしまった。
余裕というか…午前中の今は何も出来ないし
むしろしない方がいい。

という時間が生まれてしまった。

今から思うと
その余裕がマズかった

こういうのを「慢心」と呼ぶのだろうか?

自分は何もしていないくせに
最初の計画が思った以上に簡単に、うまく終わった事からか…
僕の心の中に多少の弛みが生まれたのは
もしかしたらこの時だったのかもしれない…

さっきまでの僕は、いい意味でも悪い意味でも緊張していた。

しかしこの時には、その緊張の糸が
だらんと弛んでしまっていたように思う。


というか、ぶっちゃけ期待外れ、というか
若干拍子抜けしていた。


「人を拘束したり拉致するなんて、絶対もっとてこずるかと思ったのに
意外と簡単に成功するもんなんだな…」

なんて…
この時の僕は
これからも含め
朝からこれまでの事をそんな風に舐めきってしまっていた。


と、その時、そんな僕の心の中を知ってか知らずか

突然凛が僕に向かい口を開いた。


「危なかったね…次はもっと上手にやらなきゃ…」

そんな、僕が感じた、把握している状況とは真逆な事をわざわざ凛が言うから
僕は完全にその言葉を冗談だと思い込んでしまって
ニヤニヤふざけながら、軽い口調で、その言葉にこう応えた


「フフフ…そうだね。
もっと気をつけなきゃダメだね(笑)
そうだ!なんなら次は
僕が行こうか?」


すると凛は真剣な顔でこっちを睨み付けながら


「何言ってんの?今回は鍵が開いてて、しかも相手が寝てたから、たまたまうまくいっただけだよ?
これって偶然っていうか…奇跡だよ?
次は鍵も閉まってて相手も当然起きてて、しかも体育の教師をやってる大人の男を相手にしなきゃなんないんだよ?
一応、策があるとは言え
このままだと次
こいつみたいになってるのは
私たちかもしんないんだよ…?
もっと真剣になってくんきゃダメだよ…
翼は何もわかってない…わかってくれてない。」

少し不機嫌そうに言う
凜のその苦言は
きっと正論だと思うし、的を射た意見だと思う。

思うけど…その時の僕には

その正論が少々鼻についた

計画を立てたのはすべて僕だというのに
そんな風に頭ごなしに叱られたんじゃ
たまったもんじゃない
凜に自尊心を傷つけられたような気がして
無性にイライラした

プライドが高い僕にとっては、たとえその相手が神様、凛とはいえ
その発言は少々疎ましかった

僕は凛の信者だし
その扱いはペットや奴隷レベルで構わないが

だが…僕は凛の生徒にも子供にもなりたくない
蔑まれても構わないが
間違いを正されたくはない

普通の人から見たらまるで理解出来ないかもしれないが
その微妙な差が

僕に棲む、いびつな形をしたプライドを傷付け
それを理由に
この時から僕らの完璧だった信頼関係に
微少ながら不協和音を奏でてしまっていた…


それからしばらく
僕らの間に会話は全く生まれなかった

シーンとした部屋の中に
掛け時計のカッチカッチ…と時間を刻む音と

窓の外から聞こえる
雨音だけがグルグル回っていた

僕は完全に謝るタイミングを逃してしまい

てゆうか謝るつもりもさらさらなかったし

もう完全に意固地になってしまっていた


それからしばらくして
僕らは喧嘩をしたまま

別々に行動を開始する事になった。

僕を部屋に残し
男装をしたまま凜は
「いってきます」
の言葉もなしに
無言のまま部屋を出ていってしまった


 PM12:50


…無言のまま玄関から出て行く後ろ姿

それがこの日
僕が凜を見た最後の瞬間になってしまうとは
この時の僕はまだ
想像さえしていなかった……。





つづく


第45話 マイオトロン

2007-02-02 | Weblog
その日は朝から雨だった。

その日は朝から体調が良かった。


天気と体調。


そのふたつが心配だったから
朝の天気と体調に、まずは一安心した。


金曜を選んだ事には色々な理由があったが

まず一番の理由は、やはり天気だった。

水曜の時点で調べた週間天気予報で

金曜日が最も降水確立が高かったってのが
僕らが計画の実行日を金曜日にした
一番の決め手だった。


僕達の計画に
雨はどうしても必要だったから…。


なので今日、もし朝の時点で雨が降ってなかったら延期する可能性すらあった
それぐらい雨は重要だった。

だがその日は降水確立70パーセントの
まさに理想的な雨だった。

ザーザーというわけでもなく
しとしとと
理想的な形で、雨は降り続いていた。

朝、目が覚めてすぐカーテンを開け
予報通りに雨が降っている事を確認し計画の決行を確信してからというもの、僕は何度も何度も自分に言い聞かせていた。

特別な事は何もしなくていい。

淡々と
普段通りに…

いつも通りにやるだけでいい

…と。


だが、自分にそう言い聞かせている時点でもう

その日の僕はきっと
普段通りではなかったのだと思う。


完全に緊張していた。
完全に浮き足立っていた。


午前9時ちょっと前
僕の両親が働きに出てから約30分後

あいつの家のすぐ近くで
僕らは待ち合わせした

下手に動き回るべきではないと考えたから
行動はなるだけシンプルにした

待ち合わせた時
傘のせいもあったと思うけど
最初、凛が何処にいるかわからなかった

凛という人は
170近くある身長で
男っぽい格好をしたら本当に女性に見えなくなる

トレードマークでもある
黒髪の長髪を巻いて結んで
ニットキャップの中に
すべて収めていたらしく
パッと見
それが女性であるとは誰も思わないような風貌だったから

男の人だと思ったその人が
凛だとわかった時には
正直ビックリした。


驚きはしたが、今はそんな事よりもやらなければならない事が山積みだったから、もうそこには敢えて触れずに


「おはよ…。あいつは?」

と僕は早速凛に訊ねた、
すると凛はその質問にこう応えた。


「おはよ。私が見る限り今日はまだ出掛けてないと思うから…きっと家の中にいると思う」と。


待ち合わせをした場所からは
あいつの住むアパートがちゃんと見れるようになっていた

ここで待ち合わせをしたのは
あいつが家にいる事を確認したかったからだった

その為に、凛には30分以上前からずっとこの辺りにいてもらって
あいつの動向を伺ってもらっていた。

その時にも雨や傘は非常に役に立った

とにかく傘等で顔や姿を隠しても自然でいれて
しかも雨の日の朝は
みんな自分の事で精一杯で周りを気にする余裕なんてないから
晴れの日よりも確実に人の事なんて見ないし気にしない

誰だって水溜まりなんか踏んで
靴の中を濡らしたくないから、周りよりも自分の足元ばかり見て
自然と目線が低くなる

その結果、人の顔など殆ど見なくなり
晴れの日に比べると格段に顔や姿を見られたり覚えられる確立が減るのだ。


その上、もしも僕が、今のあいつみたいな、だらけた生活をしていたとしたら
雨が降っている時にわざわざ、朝から外に出ようとは思わない。

そこでまたあいつが家にいる確率も格段に上がる。

とにかく、あらゆる意味で雨は、僕らにとって好都合だった。

だから僕は計画の実行日の第一条件として雨の日を選んだのだ。

その甲斐あってか
凛の話によるとあいつはちゃんと家の中にいる。

まずはそれを確認出来た事で僕はホッとし、そしてすぐに凛にこれからの
行動の指示をした。


「じゃあ…まずはドアの鍵が開いてるかどうか確認してくれる?
…凛の話通り、あいつが前と変わってないならドアの鍵を閉める習慣はないハズだ…。
でも、もしも閉まってたら、閉まってた時用の作戦にすぐチェンジしよう…よし、行こう。」


時間がないのもあったが
それ以上に、迷ったり時間をかけ過ぎたりすると
もっと緊張するような気がしたし
決心が揺らぎかねないと思ったので
僕達はそれからすぐに計画を実行に移した。


アパート?いや、コーポというのだろうか

めちゃくちゃ古くもないが新しいともいえないような二階建ての建て物の
二階部分にあいつの部屋はあった

音をたてないように気を遣いながら階段を登り
そして部屋の前まで歩いた

が、音をたてないどころか
極度の緊張で足がガクガクしてしまって
まるで力が入らなくて
躓いたり、階段の色んな場所に体をぶつけたりで
普段絶対しないような不自然な音が僕のせいで周りに響き渡ってしまった


が、そんな僕を尻目に凛は
実に堂々とした足取りで
スタスタと僕の目の前を歩いていった

その背中は
本当に頼もしく
歩き出したかと思うと一度も立ち止まる事もなく…
その姿には躊躇する様子など微塵も感じられなかった

僕だったら階段部分などの目立たない場所で
一度立ち止まってから慎重に準備をすると思うが

凛は立ち止まらず
階段を登りながら
その動きの中でバッグを開き、中からこれから使う道具を取り出し、その道具に付いている安全の為のストラップを手に通し、手首に固定すると、その黒い物体を右手で包むようにして持ち直し、流れるように準備を終え
その頃にはちょうど玄関の前に辿り着いていた。

そしてすぐ、その場にしゃがみこむと
玄関のドアにある新聞受けのようなやつを
右手のひとさし指でスッ…と押し
中の様子を軽く伺うと
すぐに逆の手を使いドアノブに手をかけ
それをクルッと回した

それから一瞬、間があってから
そのまま凛がドアを引くと

なんと玄関のドアが
本当にスッと開いた

凛が言っていた通り
やっぱり鍵は閉まっていなかった

凛はドアが開くのを確認したら
それを30センチ位開き
顔だけ中に入れ

少し中の様子を伺うと
それ以上あまり大きくはドアを開けずに
体の角度をかえつつ
スルスルッと中に入っていった

その一部始終を
見ておきながらも
僕は勇気が出ず
足がすくんでしまって

玄関からは程遠い階段を上がってすぐの場所から、それ以上一歩も近付けなかった
そうやって僕がただ呆然と立ちすくんでいると
それからしばらくしてから



   バチッ!!



という乾いた音が
部屋の中から聞こえてくるのが分かって

その音に僕がハッとして
やっと玄関まで行き
おそるおそる中を覗きこむと

プゥンと酒の臭い匂いが漂う中

靴を履いたままの凛が
部屋の真ん中に立っているのが見え
そしてその足元には

横たわる中年男性の足が見えた。


それを見て安心した僕は急いで部屋の中に入り
玄関の鍵を閉め

靴を脱ぎながら
二人分の傘をその辺に立て掛け

凛に近付きながら訊ねた


「アレ…使ったの?」


「あ…うん。最初から寝てたから、あんまり必要なかったかもしれないんだけど、一応…ね。」

そう応える凛の手には
さっきバッグから取り出し手に持っていた
僕がネットを使ってあらかじめ購入しておいた道具


  [マイオトロン]


が握られていた。

マイオトロンとは
使用された人間の随意筋を麻痺させ
神経の伝達信号を遮断し
体の自由をしばらく奪う
護身用としてはかなり強力な類の
特殊なスタンガンだった。


「効いた?」


「ん~…、よく分かんないけど…でもホラ。」


そう言いながら、凛が足元にいる男を指差したから

その指す方を見ると

男がビクビクと小さく痙攣しながら
不自然な姿勢で横たわっていた

それは起きているのか寝ているのか分からない不思議な状態だった。

ただ体の自由はきいていないようで
一応立ち上がろうとしているようにも見えたけれど
実際は震えるばかりで何も出来ていなかった。


「フッ」


鼻で笑うような声がしたから、ビックリして僕がそっちを見ると
凛が自分の足元に転がる
無様な男の姿を見下ろしながら
その様子を鼻で笑いながらニヤニヤしていた


背筋がゾッとするような
そんな笑顔だった。


でもとても綺麗だった。



その顔の美しさに、つい一瞬見惚れてしまいそうになったけれど、そんな時間はないと思い直し
殆ど自分に言い聞かせるようにして凛に


「…早速、やった方がいいよね?」


と僕は言った
その言葉に凛は
ハッと我に返ったような顔をしながら


「…あ、そうね。じゃあ、えっと…ちゃっちゃとやっちゃおっか?」


と、これから僕らは、かなりえげつない事をやるというのに
それには不相応なトーンの軽い返事を返しながら

バッグから拘束具を取り出し、あいつの足を持って
何の躊躇もなく、それを取り付け始めた

その間に僕は
男の両手を背中に回してから、その両手首に、
手錠を頑丈にしたような拘束具をつけ
それから大声を出せないように顔には
首輪付きで顔を覆う程の、かなり頑丈な猿轡(さるぐつわ)をつけた


マイオトロンや拘束具など、それらはすべてネットで手に入れた

驚くほど簡単に…しかも安価で揃えられた。
(マイオトロンだけは少々値が張ったけれど)


それからハサミで切って服を脱がし
裸にすると
二人で力を合わせて男の下半身に
大人用のオムツをはかせた

「なんでオムツ?」


と思う人もいるかもしれないが、オムツは意外と重要だった。

オムツは、男が便意を耐えられなくなったり
拷問の激痛などにより
もしも失禁や脱糞された時に、その処理がわずらわしくないようにする為と
漏らされたりして部屋が汚れ
悪臭が取れ辛くなったりする事を極力避ける為だった。

というのも悪臭の苦情から殺人や死体遺棄がバレるケースも少なくないのだ。

なのでオムツはあらかじめ、絶対に最初にはかせようと決めていた。

そうやってオムツをはかせたら今度は

大きいブルーのビニールシートを床に引き
体を転がしてその中央に男を持っていき
最終的には体をうつぶせの状態にして

スカイダイビングをするような感じに、男の両足を持ち上げ
体を逆九の字にすると
両手もその足先にくっつくように持っていって、
両足を縛る拘束具と
両手を縛る拘束具を
ひとつに繋げる鎖をつけ

両手首、両足首、四つの関節を一ヶ所にまてめて固定した

それからまた
別の頑丈な鎖で
それをガチガチに縛り
完全に、身動きのとれない状態にした。


その作業が終わるまで
約20分くらいかかった

作業が終わるまでの間
男は一度も抵抗してこなかった
途中で諦めたのか
それともマイオトロンの効力が持続していたのかは
分からなかったけれど
精神的なものも含め、その効力が絶大だった事は十分に感じ取れた。


体の自由を奪う作業は、
二人で何度も反復して練習した甲斐もあってか
色々やった割には無駄な時間は殆どなく素早く終える事が出来た

しかも、夢中で作業をしたお陰で
作業が終わった頃には、朝からつづいていた僕の緊張もいつのまにか、かなり解けていた。


一息つくように
フーッと深く息を吐きながら時計を見たら

時計は
午前9時30分くらいを指していた



あの…僕らの長い長い一日は
そうやって始まった……。






つづく

第44話 遺書

2007-01-14 | Weblog
「へぇ…精液ってほっとくと固まるんだね…。
うわっ…くっさい…。
翼の固まった精液…公衆便所みたいな…変な匂いがする」

自分の好きな人に、昼の明かりの下、あらわにされた下半身をマジマジと見られ、その上、臭いとか言われて、恥ずかしくて死にそうだった

「わっ…ごめん…なさい。…すぐ拭く…ます」

慌てふためきながら
僕が立ち上がるために
枕に手をかけたら


ズボッ!


と、上から殴るように強く枕を押さえつけられながら

「誰が取っていいって言った?」

と、強い口調で叱られてしまった


「をめ…をめんだだい…」

顔を強く押さえられ
枕と自分の間には殆ど隙間がなく
息をするのがやっとなくらいで
その状態のまま謝ろうとしたけれど
スペースがなさすぎて言葉がうまく出せなかった。

「あ…くっさい。
臭い…。
鼻が曲がりそう。」

クンクンと精液の溜まったヘソの辺りや
アソコの匂いをかがれているのが音と気配でなんとなくわかった。


「アレ?ひどいこと言われてんのに…どうしておっきくなってんの?(笑)」


凛の言うとおりだった
僕のアソコは
今までにないくらい
固く、勃起していた

凛に蔑まれ罵られるのが屈辱的で…
だけどそれが気持ち良くて仕方なった


…僕は本当に変態だと思う。


「アッ!アァァァッ!!」

そんな自責の念に苛まれている中
激しい快感が僕の身体を駆け抜けた


その快感の理由は
僕の汚れた
ヘソと下腹部の周りを舐める
凛の舌の感触だった。

拭いてないハズだから
そこにはまだ僕の精液がこびりついているハズだ…


美しい凛の舌が
臭くて汚い僕の精液を舐めてきれいにしてくれている…。

想像するだけで興奮して
頭がどうにかなっちゃいそうな事を
今、実際にここで
凛がしてくれている…

気持ち良すぎて吐息が漏れる
気持ち良すぎて腰を浮かせてクネクネしてしまう。


「ピクピクして可愛い…気持ちいいの?」

凛がそう言ったかと思うと

今度は舌の先っぽが
ヘソの穴の中にグリグリと入ってきた


ジュル…ズズズズ…


凛が、舌を使ってヘソの奥から掻き出した僕の臭くて汚い汁を
全部吸い上げてくれているのが
その音からわかった

その姿を想像しただけで
またイッちゃいそうだった。


ピチャ…ピチャピチャ…
ジュルルル…


今度は下腹部の周り…
アソコの根元辺りに
固り張り付いた精液を唾液で溶かし
それもまた吸い上げてくれているのが音と感触で伝わってきた


「臭くて美味しい…翼の味がする…」


その言葉にまた
一段とドキドキした

もうダメだ…

アソコにはまだ一度も
触れられてもいないってのに
なのにもう…またイッちゃいそう…。

ダメ…あぁダメ
うぅ…
この感じは…もう…
アァ…ダメ……です。


「ん…美味しい…もっと食べさせて…」


「アァッ!ダメッ!アァァァッ!アーーーーッ!!」


凛の言葉に反応し
僕がたまらず叫んでしまったその瞬間


何故か僕のアソコが
急に温かくなった


ドクッ

ドクッドクッ


いつものように精液が飛び出る感覚がしたが

何故かそれは何処にも飛ばなかった

というか垂れてくる…というか
身体の上に精液がボタボタと落ちてくる感触が
いつもならするハズなのに
今回はまるでしなかった


そればかりかアソコ全体が気持ち良かった
そして吸い出されてるような
搾り取られてるような

なんかそんな
アソコが締め付けられているような感触がした


その感触の気持ち良さたるや
僕が今まで生きてきた中で
確実に、一番の気持ち良さだった

最初に大量の汁が飛び出したあと、残りの汁がドクドクとちょっとづつ出るたびに
尿道の小さな穴の中に何かやわらかいものがグリグリ入ってきて、それをキレイに掻き出してくれて
しかも穴の中まで掃除してくれてるようで
イタ気持ちよかった



見て確認しなくたって…

まだその行為を実際に
やってもらった事のない僕にだって
今自分が何をやられてるかぐらい


それくらい…分かる。



今…凛が
僕のアソコを口にくわえてくれている


俗に言うフェラチオというやつをしてくれている

僕のアソコを根元まで
喉の奥までくわえこんで
上下にピストンしたり舐めたり吸ったりしてくれている
こんなどうしようもない僕の
一番汚い場所を
あの…あの美しい凛が。



気持ち良すぎて冗談抜きで
死んでしまいそうだった


足がプルプル痙攣した


心臓が爆発しそうなくらいドクドクしていた


とにかくもう気絶しちゃいそうだった。


チュポンッ


「うぅっ」


イヤラシイ音がして
口からアソコが抜かれる感触がした


そのあとすぐ
閉じてたまぶたの奥が赤くなり、冷えた新鮮な空気が肺の中に飛び込んできた

多分僕の顔の前から枕がなくなったんだと思う。

恐る恐る目を開けたら
一瞬、そのあまりの眩しさに目が痛くなった

と思った瞬間
目の前に凛の顔が来て
再びキスをされた

けれどそのキスはさっきの玄関の時とは
まるで違っていた

凛の舌の上を伝って
唾液とは違う
何かドロッとした生臭いものが大量に
僕の口の中に入ってきたから…


状況から考えて
それはきっと
僕の精液だった…


絡み合う舌に
唾液ではない
独特な臭くて不味い味が広がる
しょっぱいというかニガイというか何か独特な生臭い味
あと何故か少し舌がビリビリした



「ろんれ…」

口づけを交わしたまま
凛がそう言った

最初は意味がわからなかったけれど
何を言われたのかは
すぐに分かった



「飲んで」だと。



凛に言われるがまま僕は
凛の唾液混じりの自分の精液を
ゴクンと飲み込んだ


飲み込む時の味はそんなにはキツくなかったけれど

少し喉の奥に引っ掛かるような…張り付くような妙な感じがした。


何か不思議な感じがした。


共食いとはこんな気持ちなんだろうか?


自分の身体から出た
何億という無数の精子
言うなれば自分の遺伝子を刻んだ
自分の子供たちを一気に飲み干すような…

簡単な事のようで
とても残酷な事をしてるような
何か、そんな気持ちになった


昔テレビで見ていて何故か激しい吐き気と嫌悪感を覚えた

白魚の踊り食い

ってやつを急に思い出した。


白魚くらいのサイズになった無数の精子が凛の口から吐き出され
大量に僕の口に入ってくる

入りきれなかった精子は噴水や湧き水のように僕の口から溢れ出し

僕の顔が見えなくなるくらい
辺りをドロドロに埋め尽くす

食道や胃や腸はすべて
白魚のような精子に埋め尽くされ
僕の身体を内側からドンドン膨張させ

水死体のようにブクブクに膨れ上がった僕の身体が
ついには破裂して部屋中を血の海に変える……


なんかそんな感じでドンドン意味不明な
グロテスクな映像が頭に浮かんでは消えていった


自分の子供を
大量に食べた


その罪悪感に
僕は吐き気を覚え


そして…異常な程
興奮していた



「自分の味はどうだった?」


そんな僕の心の中を見透かすかのような
凛の問い掛けに
僕はしばらく言葉を失ってしまった

そして、なんとか言葉を搾り出そうとする僕を遮るように

僕の頭を両手でギュウッと抱き締めながら


「今度は私が食べてあげるからね…」


と凛は僕に言ってくれた。


その言葉のぬくもりと
その身体のあたたかさに


この人のためなら
もういつ死んだってかまわない


と強く思った……。





それからの僕達は
昨日までのゆるやかな時間がまるで嘘だったのかのように
急速に
その速度を増していった


明確な目標とビジョン

そして僕の病状の悪化

それらが相乗の効果を生み

僕らを核心へと急激に導いていったのだ


「おいしいものはさいごにとっとく」

そんな人もいれば

「おいしいものからさきにいただく」

という人もいるだろう


どちらかと言うと僕は前者なので

すべての事の発端である

あいつ(凛の母親の元恋人)は、あとにとっておきたかったので

その事を凛に伝えたら
こんな言葉で一蹴された


「私も翼と同じで、一番おいしいものは最後にとっておくタイプだよ?
…けどね、あいつや先生を殺る順番なんて私にとってはどうだっていいの。
ふたりなんてただの前菜なんだから、練習がてら、ちゃっちゃと殺っちゃえばいいと思ってる。
あのね、だって…私にとってのメインはあくまで

翼なんだから。」


身震いしてしまうような強烈な言葉をサラッと口にしてしまう
凛という人間に僕は
心底惚れぼれしてしまっていた。


凛がそう望むなら

僕はその通りに動くだけだ


確かにダラダラ時間をかけて
目標を成し遂げる前に目立つような事をして
志し半ばで座礁するわけにはいかない

凛の言う通り
復讐を愉しむのではなく
出来れば一日で一気に片を付ける方が本当は望ましい。

それに、よく考えたら同時に僕の自殺工作もやらなくてはならない…


事態は急を要していた

考えなければならない事
準備しなければならない物

悠長にする暇はないのに
緻密な計画を練る必要はある


そんな加速する時間に
焦りとともに僕は
とても高揚していた


生き甲斐みたいなものを
強く感じながら僕は机に向かった


色んな可能性を考えた結果

計画の決行は金曜日にした。

ネットの通販等を使ってある程度のものは揃っていたが
まだ若干足りなかったので
凛に必要な物をすべて揃えてもらうべく
メモとお金を渡して買い物に行ってもらうタイミングで、その日は別れた。


今日が水曜だったから
明後日には僕は家を出てゆく事になる


それから先は
僕に残された時間は一気に短くなってゆくだろう


それを噛み締めるように
今日と明日は
なるだけ沢山父や母と会話をしようと思った。

食事も自分の部屋ではなくリビングで
3人でちゃんと食べた。


父と母には本当に心の底から感謝している

ちょっと臭いかもしれないけれど

生んでくれてありがとうって
本当に思っている…。


その夜、ふたりに
「おやすみ」
と言ったあと
僕は部屋で遺書を書いた。

遺書は…当初はアリバイ作りのために書くだけの予定だったハズなのに
いつのまにか本気で書いていた
遺書というより両親に対するお礼を綴ったような手紙だった。

自殺をするのは絶対に両親のせいではない事
ふたりには本当に感謝をしている事

そして最後に

「病気を治せなくてごめんなさい」

と書いて筆を置いた。


ただでさえ息子が病気になってしまって、死んでしまって、しかもそれが自殺で…と苦しませてしまうのに
それが自分達のせいだと勘違いして
これ以上苦しむような事だけはさせたくなかった

絶望の中に少しでも
救いを残しておきたかったから…

柄にもなく、つい熱くなってしまい
簡単に書くつもりが朝方までかかって手紙を完成させ

その手紙は、ポストに投函するような気持ちで机の引き出しの一番奥にしまって

そのまま両親が寝る寝室の前までいき
何をするでもなくただ部屋の前でじっとしていた

寝息が聞こえてくるわけでもなかったが
少しでも両親の事を自分の中に焼き付けようと聞き耳を立て
その命を聞いていた

事が発覚してしまったら
地獄を味わわせてしまうかもしれない…大切な両親

お別れを言う隙も与えず
一方的に別れを告げ、この場から身を引く僕

こんな親不孝な人間は他に、きっといない

そんな事を思っていたら
たまらず涙が溢れてきてしまった

だが涙が床に落ちてしまったら
何かを悟らせてしまうかもしれないから
それはいけないと思い

急いで上着を捲り上げて涙はそこに落とした

泣きすぎてつい声が出そうになり

急いで口を塞ぎ部屋に戻り

布団の中に潜って声を殺して
思い切り泣いた…。


それがもう木曜の朝で
決行は明日に迫っていた…。





つづく

第43話 報復の時

2006-12-22 | Weblog
ブーン…ブーン…ブーン…ブーン…


どういう事だろう?
こんな中途半端な時間に電話が鳴るなんて…

親かな?

それとも…凛?


色んな可能性が頭を駆け巡る

その瞬間から
自分のアソコが
急激に萎えてゆくのが
わかった


凛はもうこの家にはいない?

僕がメールの返事をせずに
寝てた事を
思った以上に根に持ってる?


それとも親からの

急用か何かで
帰って来るという
連絡のメールだろうか?


だとしたら
下半身裸のまま
玄関に鍵もかけてない
自分の部屋のドアも開けたまま、という
今のままの状態では
かなりマズイ…


どうしよう。


もしも凛からのメールなら枕をどけて携帯を取りに行っても
凛に怒られないんじゃないだろうか…

いや、わからない
それでも約束を破る事には変わりないのかもしれない

一体どうすれば…

そうやって考えている間も
時間は流れ続けた。


いつのまにかもう僕の下半身は冷えきってしまっていて
腰から下が千切れてなくなってしまったかのように
感覚がまるでなくなってしまっていた。


ブーン…ブーン…ブーン…ブーン


また携帯が鳴った


せめてバイブじゃなくて
音を出してさえいれば
相手によって着信音を変えて設定してるから
送り主が誰かだけでも断定出来たのに…


ブーン…ブーン…ブーン…ブーン


また携帯が鳴った。


普通の人ならすぐに
迷わず枕を取って携帯を見ただろうが
僕にとっての凛は神様だ

神様の言い付けを守らない信者はいない


僕もまた
その狭間で苦しんでいた…。


今の僕の苦しみ藻掻いている様を見て
何処かで凛がほくそ笑んでる?

それならまだいい

もしも凛が
外に出掛けてあいつと
鉢合わせて
拉致られていたら…?

今鳴っているメールが
もしかしたら凛からの助けを求めるメールだったとしたら?

こんなに長い間、僕の家の傍に
あいつが住んでいたというのに
凛とあいつが鉢合わせにならなかった事の方が
今思うと奇跡だったのかもしれないんだ


どうしよう…
携帯を見るべきか
言い付けを守るべきか…


事態は一刻を争うのかもしれない

いや…まるで争わないのかもしれない

わからない

何もわからない…

ただひとつわかる事は

今のままの状態では
何ひとつわからない。
という事、だけ…。



ブーン…ブーン…ブーン…ブーン



また携帯が鳴った。


もうガマンの限界だ…


ガマンの限界ではあるけれど…けど
それでも僕は言い付けを
守らなければならない


もしもそのせいで
凛を危険に晒そうとも
それでも
僕は言うことを聞かなければならないんだ


それが
僕と凛の関係だから…。



ブーン…ブーン…ブーン…ブーン



もう心が壊れそうだった


自分の正しさが
今はたして正しいのか
もうわからなかった


凛が何を求めていて
今自分が何をすべきなのか

僕が選んだ
「何もしない」という選択は
実際は、その権利と義務を放棄しているだけで
実際には何も
選択していないのでは
ないだろうか?

そんな気がしていた。


「待て」が命令なら
いくらでも待つ

けれどそれが、もしも違っていたら…?

「うぅ…ううう…」

また涙が溢れ
枕を濡らし続けた
もう枕は僕の涙やヨダレや色々で
もう吸わないくらいビチャビチャだった


ブーン…ブーン…ブーン…ブーン


もう何度目のメールだろう?

毎回必ず
四回震えて止まる
という法則性から

電話(着信)ではなく
メールだという
事は、もうわかっていた。


けれどその相手と
用件が断定出来ない…


もう何度鳴っただろうか?

せめて回数くらい数えていれば
良かった…


ブーン…ブーン…ブーン…ブーン


もうダメだ
いいかげんもう疲れた


もうダメだ…。もうやめよう…。もう十分ガマンしたじゃないか…。


同じ自問自答をもう何回繰り返しただろう?


苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて…長い。
無限地獄の様な時間が続いた…

アレから…
目隠しされてから
もう何時間経っただろうか?

もう三時間とか四時間とか
経ったような気がする

どんなに短く見積もってもさすがに二時間は経ったんじゃないだろうか…


ブーン…ブーン…ブーン…ブーン…


アレ…?

気のせいだろうか?


それが何度目かなんてもうわからなかったけれど
今回、携帯が鳴った時

しばらくして急に
マヒして感覚がないハズの下半身に何か生温かいモノが触れたような気がした


…いや

気のせいじゃない

確実に何かが触れている…

温かい…なんだろう?


普通に考えたら凛か…


家族以外は考えられない…

一体…何がどうなっているのか…僕には何も…もう何もわからな……




   「アッ…」



見る事は出来ないから

それは僕の勝手な妄想でしかないんだけど…何かが僕の一番大切な場所のその周りを…

触ってくれてる…というか
舐めてくれているような…

そん…な感触がする…

気のせい…

だろうか?


「あ…。ん…ハァ…うっ」

ムクムクと
さっきまで萎えてたアソコが
一気に大きくなってゆく


あたたかい…


き、気持ちいい…


そしてそれは徐々に
中心に…


もうアソコの寸前まできていた


否が応にも期待は高まり

凛にアソコをペロペロ舐められてるイメージ
凛にアソコをパックリ根元までくわえてもらってるイメージが
頭を埋め尽くした


下半身に感覚が戻り

期待と焦れったさで
ムズムズ…モジモジしてしまい
つい腰が浮く


アソコに到達するのはまだかまだかと
次第に息が荒くなってきた


「二時間…」

「え!?」

そんな時、突然凛の声が聞こえて驚いた。

こんな事してくれるのは凛以外いるわけがない
けれど、それでも確信はなかった
枕で視力を奪われていたから。

けど見ずとも、声が聞ければさすがに誰かわかる。

凛だ。やっぱり凛は帰らずに傍にてくれたんだ…。


「二時間…不安な気持ちで待つ気持ち…ちょっとはわかってくれた?」


その言葉を聞いた瞬間、メールの主が凛である事も同時にわかった
僕はやはり凛に試されていたんだ…


言われてみればそうだ…。
さすがの凛でも
見つかったら何をされるかわからない
異常者相手に長時間尾行をするのは
余程きつかったんだろう…

そう思うと
そんな時の唯一の頼みの綱の僕に
無視される気持ちは
僕の二時間なんかよりも
はるかに心細く、哀しかったに違いない


僕は、僕はなんて事をしてしまったんだろう

自分のバカさ
半端さに
胸が苦しくなった

そして同時に
アソコがまた
急激に萎えてゆくのがわかった


「ごめん…。ごめん…なさい。」


出すぎて
もう出ないと思っていた涙が
またドンドン溢れてきて
止まらなかった
そんな僕に凛はやさしいトーンでこう言った


「…分かってくれたら…それでいいの…ひどい事しちゃって…ごめんね。
でも私、本当に怖かったし…苦しかったし…哀しかった。
今まで…ふたりでひとつだと思っていたのに…そう信じてたのに
大事な時に翼は傍に…一緒にいてくれなくて…それが哀しくて仕方なかった…
体の話なんかじゃないよ?心の話。
だって、ふたりがちゃんとひとつになれてないと、これから私たちがやろうとしてる事なんて絶対に成功出来っこないって私は思うから…だから…。
ちゃんと翼にもその事を知っといてもらいたかったの…。
私から口で説明するんじゃなくて…実際に体験して。
そして翼はそれを乗り越えてくれた。
途中で約束を破らずに、独りぼっちの不安や孤独の中、それに打ち勝ってくれた。

メール8件分…二時間。

よく我慢してくれたね。
ごめんね…そしてありがとう。

今から私がする事は、その謝罪と、そしてお礼…。

でも恥ずかしいから
そのまま…目をつぶっといて?
絶対…見ちゃダメだからね?」


そう言うと
凛は僕のアソコの周りやヘソの辺りを指でゆっくりと
何か字でも書くように
その指先でイヤラシク…まるで焦らすように

僕の肌をさわり始めた…。





つづく

第42話 意外な最期

2006-12-18 | Weblog
全身から一気に血の気が引いた

僕が今までイメージだと思って思い描いていたものは

イメージではなく
夢だった


凛からのメールを待っている間、考え事をしてる間に
そのまま夢の中に堕ちてしまっていたらしい…

あまりの自分の情けなさ
救えなさに
普段なら
しばらく落胆しただろうが

今の状況で呑気に落ち込む暇などなかった


とにかく急いで携帯をつかみメールを開き中を読む




凜から届いた8件のメールを
時間軸通りに簡単に説明するとこんな感じだった。


僕があいつの居場所を調べてる事を…そして調べきる事が出来ず
とても困っている事を知った凛は
あれから毎朝登校時間を少し早め
あいつと最初にすれ違ったあの場所に行き、あいつを探すようになったらしい。

だから今日偶然、あいつとすれ違ったのではなく
自分からそうなるように仕向け、必然的にそうなったのだそうだ。
そしてその説明の中で、僕が危惧していた制服などの心配に対する答えも
凛はちゃんとしてくれていた。

制服については
最初から尾行をするつもりだったから
いつでも長時間尾行出来る様に
最初から、ちゃんと鞄の中に
羽織る事で制服を隠せる大きい上着とスカートの上から巻ける大きめのスカートを準備してた事、
あいつをみつけてすぐ伯母さんのフリをして学校に嘘の
欠席の電話をかけた事

それからしばらく時間があいたメールでは

あいつはとうとう伯母さんの家を断定出来ず諦めて
家に帰り出した事
(途中コンビニに寄ったらしいが)

そしてとうとう
凜はあいつの家を突き止め

そこは二階建ての小さいアパートだったらしいのだが
あいつが中に入ってく前にあいつがチラッと覗いた郵便受けの場所を覚え
あいつが奥に消えてったのを確かめてから
ゆっくり…慎重に郵便受けに近付き
その郵便受けの番号を見る事であいつの部屋の番号を断定し

それからアパートの、その場所の一番近くにある電柱に書かれた番地と部屋の号数
そしてそこまでの歩き方を事細かに説明したメールが届いていた。

書いてく中で気付き
凛も最後に「ビックリした」と書いていたが
そのアパートの場所というのが、僕の家から、もう本っ当に、
目と鼻の先だったから、僕ももう本っ当にビックリした…。

その最後のメールを送る迄の
僕のメールをもらったあとの凛は、驚く程冷静で
はやる気持ちを抑え完璧に尾行を続けていた。

その後、僕の家の下まで着たらしいが僕からのメールの返事がないから、家の中が僕ひとりかどうかわからずにインターホンを鳴らせずに

「寝てるんだ」

と思って諦めて


「会いたかったけど、今日は帰るね。」


というメールが最後に届いていた。

そこまで読んで
急いで僕が電話したら


すぐに電話はつながって
凜はまだ家ではなく
外にいた


「いってもいいの?」


と凛がいうから

「もちろん」

と僕が答えると
30秒後くらいに
もうインターホンが鳴った

早過ぎてビックリした
それがちょっと面白かった(笑)


家に入ると凛は靴を脱ぎながら


「ずっと近くにいたんだよ?お家…大丈夫?ひとり?」


と矢継ぎ早に質問を投げ掛けてきた


「うん。ちゃんと確かめてないけど…うち共働きだから…この時間なら多分。」

僕がそう答えると
その言葉を遮るように
靴を脱いだ凛が僕に抱き付いてきた

…抱き付くとは言っても僕より明らかに凛の方が体が大きかったから
僕が凛に抱き締められてるっていうか…包まれてる
って表現の方が正しいのかもしれない

「怖かった~」

そんな事を言いながら
凛は抱き締めたまま僕に全体重をかけてきて

それに僕は耐え切れずに
玄関に倒れこんでしまった

「い…痛いよ…凛」

と見上げると
凛の顔がすぐ目の前にあって
ビックリした。
そしてその目付きは
いつもとは少し違っていた…

「どうしたの?」

僕がそう言おうと思って
口を開けると

ど…

ぐらいのところで
凛に口を塞がれた

くちを…

くちで。


それは僕の初めての
キスだった。


突然の出来事で
何が何だかわけがわからなかった

凛の舌が
僕の舌や舌の裏
歯の裏や歯茎
とにかく
口の中をグリグリ…
ぴちゃぴちゃと
激しくイヤラシく動きまわる


あまりの驚きと
あまりの気持ち良さで
ボーッと気が遠くなる


まさに騎乗位といった感じで
凛は僕の上に乗ったまま
僕の硬くなったアソコに
自分の局部のあたりをグリグリと押し付けてきた

スカートとはいえ凛もパンツを履いているし
僕にいたってはパンツはおろか
その上には寝巻きのスエットも履いていたけれど

それでもこすれると
とても気持ち良かった。


「バカッ…どうして返事くれなかったの?寝てたの?私がどうなってもいいの…?バカッ!」

泣きそうな顔と声で
凛は言う
それからの凛の声はどれも弱々しくて泣きそうだった


「ごめん…昨日寝てなくて…気付いたら…ウッ…ッ…ご…めん」


「私を…独りにしないで…。たとえ傍にいなくても
いつも私のことを
ちゃんと見てて…」


「ごめん…ね。ごめ…あ…ダメ…ダメだって…ヤバいって…あっ…」


涙をいっぱいにためて
僕を見下ろす凛の目は
弱々しいとか悲しそう…というよりも
どことなく…怖かった


そしてその息遣いはドンドン激しくなり
同時に、アソコ同士をこすりつける
腰の動きもより一層激しくなってきた


そして凛は僕の両手をとり
自分の制服のその中へと導いた

プニュッとあったかくてやわらかいものが
指先にふれた

どういうワケか凛はノーブラだった


「ブ…ブラジャーは?」


と聞くと


「エレベーターの中で外した…」


と凛は言った

ワケがわからなかった

玄関で
しかも鍵も閉めてない玄関で

僕は、僕らはいったい何をしているのだろう…?


回らない頭を
無理矢理動かそうとしたが
気持ち良すぎて今は何も考えられない
さっきまで自分が何をしていたのかさえ
うまく思い出せないようになっていた

とにかくドンドン下半身が熱く…硬くなってきている事だけがわかった…


痩せてるのに
凛のおっぱいは
思った以上にやわらかく
そして大きかった


それからしばらくして
凛の体から
突然大量の汗が吹き出してきたかと思うと


「あ…うぅ…いっ…いきそ…」


と凛は溜め息混じりで
そう呟き

そして今度は
その細くて長い指で
僕の首を絞めてきた

予想外の行動にビックリした
そしてそれは

首絞めプレイ

とかじゃなくて
本気で殺そうとしているようにしか思えない程の
物凄い力だった

もしかしたらこのまま死んでしまうかもしれない…と本気で思った

絞める力はドンドン強くなり
目の前が真っ白になっていく
それが快感からか苦しみからかさえ
もう全くわからなかった

でも今、本当に死んでしまうかもしれなくても
もうそれでもよかった
僕にはあらがう気持ちなど
微塵もなかった

凛に殺されるのなら
それがいつだろうが
どこだろうが
かまいやしない…。

その後にキチンと最後まで
僕の体をひとくち残らず食べ尽くしてくれるのなら

思い残す事など何もないから…


そんな事を思いながらも薄れゆく意識の中で
咳なのかゲロなのかわからないものが
喉元から込み上げてくるのがわかった、が
きつく絞められているせいか
口から外には出ずに首までで
全部止まっていた


絞められて圧迫されたからか
自分の首やこめかみに
ボコボコと血管が浮き上がってるのが
鏡を見ずともわかった

意識はもう殆どない

だが、そんな苦しみの中を擦り抜けて
下半身からズルズルと快感が体を登ってくるのを感じた

急激に膨らんだその快感が頭のてっぺんまで
下から上に一気に体を貫いたかと思うと
僕の体全体がビクッビクッと大きく脈打ち出した

その頃にはもう
苦しみなどもうどこにもなかった
あるのは快感だけだった

多分射精しちゃったんだと思う

多分…。


自分の体が自分の体じゃないみたいで
もうそんな事さえわからなかった。

ただ体中が尋常じゃないくらい
気持ちいいのだけは
わかった

時間の感覚もまるでない

僕はもう死んだのかもしれない

気持ちよすぎて
頭や心はもう
全く機能していなかった



「あぁ…イグッ…アァ…イ…イッちゃう…」



そんな声だけが頭に鳴り響いてきた

気付いたら僕は目をつぶっていたみたいで
その真っ白な世界に
凛らしき声が
そう言ったかと思うと

ドサッと重いものが僕の体に覆いかぶさってきた

多分凛だと思う。

凛の体も
僕のようにビクッビクッと大きく脈打っていた

首から手を離された僕は
途端に咳き込み
快感を掻き分け
今度は激しい苦しみが
ぶり返してきた


「ゲホッ!ゲホッゲホッ!ウェッ!!ウェ~ッ!!」


咳と吐き気が止まらない


頭がキーンとして
真っ白だった景色から
ゆっくり…ゆっくりと
モヤがとれてゆくように
視界も元通りになっていった

そんな苦しむ僕の様子などお構いなしに
また凛は僕の口を
その口で塞いできた

ただでさえ息がうまく出来ないのに
口を塞がれて
また全く息が出来なくなった

気絶しそうな程苦しかったが…でも
気持ち良かった

しばらくして
口を離すと凛は
僕を包み込むようにギュ~~ッ
と強く抱き締めてくれた

僕の耳元に凛の鼻や口があったからそう感じたのかもしれないが
ゼーゼーとその息遣いは本当に荒く
そして背中に回した手から感じるだけでも物凄い量の汗だった


それから30分くらいかな?どれくらいの時間かは、ちょっとよくわからないけれど
僕らはそのまま玄関で
抱き合ったまましばらく休んだ

僕は目をつぶって横になっていただけだったが
もしかしたら凛は本当に寝ちゃっていたのかもしれない


しばらくすると凛が立ち上がり
立ち上がったかと思うと僕の手を取り、引っ張って起こしてくれて

手を繋いだまま凛の先導で
僕らは一緒に僕の部屋に入った

凛は僕をベッドの上に座らせると
そのまま体を後ろに押して寝かせ
まるで赤ちゃんのオムツを替えるように
僕のズボンとパンツをスルスルッと脱がせた

その時ちょっと見えたんだけど
僕のズボンの外側が白く
カピカピになっていてビックリした

アレはさすがに僕の精液ではないと思う

そう思うと…アレって凛の…汁かな?

と思い、ちょっと嬉しかった。


全部脱がされたあと

「ちょっと寒いかも…」

なんて思っていたら
凛が枕を取って僕の顔の上に乗せて

「押さえてて…私が良いって言うまで…とっちゃダメね」

と冷たく言われた。

目の前が真っ暗になって
何も見えなくなった

何をされるんだろう…?

何をしてくれるんだろう…?

と期待して
ドキドキドキドキドキドキして待っていたら…

ドアが開いて
凛が部屋の外へ出ていく音がした

ドアは開けっ放しのままだ

それから10分くらいが経っただろうか?

まだ何もしてもらえない。

ちゃんと、おとなしく
いいつけを守って
待っているのに
でも待っても待っても

何も起こらなかった

何もしてもらえなかった

それからまた10分くらいが経っただろうか?


もう気が狂いそうだった
もう頭がおかしくなりそうだった
頭の中では最低なイヤラシイ妄想が
沸き上がり駆け巡り続けているというのに

実際は何も起こらない
…何もしてもらえない

そんな状態が続いた。


それからまた10分くらいが経っただろうか?


見捨てられたようで
何だか悲しくなってきてしまって
涙が溢れて止まらなくなった

でも、それでも
その30分の間
僕のアソコは
ずっと…ビンビンに
立ったままだった。


ブーン…ブーン…ブーン…ブーン


そんな時だった
机の上に置いていた
携帯が鳴り始めたのは…。






つづく

第41話 一家惨殺

2006-11-24 | Weblog
「わかった。
とにかく気を付けてね!
絶対に無理しないでね!」

そう返事をかえすと
それからはただただ
凛からの報告を待つ事にした。

携帯を持つ手が汗でびっしょりだった
ドキドキしすぎて
気が狂いそうだった

さっきまで眠かったハズなのに
眠気は何処かへ
吹き飛んでしまったみたいで
そんなものは今はもう
微塵もない


本当は凛にすぐにでも

今の状況はどうなのか?

無事なのか?

あいつの家はわかったのか?

…と、聞きたい事は山程あったけれど

僕から凛に連絡する事で
携帯(の音)が鳴ってしまったり

マナーモードにしてたとしても
場合によっちゃ
バイブでさえ大きな音を立ててしまう事もあるから


今はただ
何もせず

ひたすら黙って待つ事にした


自分でそう決めたくせに
それでも携帯を何度も開いては
…時間を見たり

メールが届いていないか
何度も新着メールの問い合わせをした


それから、もうほとんどフルに充電出来てるハズなのに
それでも充電が気になり
もう一度充電器を携帯に差し込んだ


待つ事しか出来ない
何も出来ない自分に対する
無力さと焦りで
胸がグゥーッと苦しくなる

壁にかけた時計を見ると
時計は8時40分くらいを指していた


無限に感じる時間も
一応は進んでいるみたいで

気付いたら最初のメールからもう30分近くが経とうとしていた


それでも
凛からの連絡はいっこうにない


今まで生きてきて
こんなに長く時間を感じたのは初めてだった


いっこうに連絡がない理由は何だろう?

尾行がバレて捕まったのだろうか…?

凛は無事だろうか?

用心深い凛の事だ
大丈夫に違いない

そう信じてはいるが

それにしても連絡がなさすぎる

何か別の事をして待っていようかとも思うけれど
気が散ってしょうがなくて
何も手に付かない

事前にプリントアウトしていたこの辺り一体の地図を机の上に広げる

凛があいつと擦れ違ったという交差点を中心にして、その半径2キロくらいをプリントしたものだ。


手には勉強用の黄色とピンクの蛍光ペンと鉛筆を持ち

ノートパソコンも立ち上げた

こんな事になるなら凛の携帯をGPS(現在、携帯がある場所を通知する機能)登録しとけば良かった
と後悔した。

何が起きたって変じゃなかった

凛が街で、先にあいつに気付かれて捕まって拉致される可能性すらあったんだ…

完全に僕の落ち度だ…。


もしも今すでに尾行がバレて拉致されてたら…
その時点で凛の足取りは全く掴めなくなってしまう。

良くないイメージばかりが先行し頭を埋め尽くす



そんな時、ようやく携帯が鳴った

この音はメールだ

恐る恐る携帯を開く

メールが届くという事は無事ということだ

いや、待てよ…

拉致られて携帯を取り上げられて
中を見られ自分が尾行されていた事実を知り
無理矢理打たされていたら…

安心と不安のカオスの中

〈新着通知ありEメール1件〉

という通知画面を押した

〈凛〉と書かれたフォルダの色が反転してかわっている

ドキドキしながら
またそこをクリックする…開いていない便箋のイラストが光っている…
汗ばみ震える親指でそこをクリックして中を見る…



「連絡遅くなってごめん。まだ尾行中。今私の家の近くをグルグル回ってる。あいつがどこまで知ってるか分かんないけどあいつきっと私の伯母さん家を探してるんだと思う。あいつきっと家に忍び込んでわたしたち家族を皆殺しにするつもりなんだ。そんな事させない。絶対に許せない。伯母さんたちに何かあってからじゃ遅いの!今すぐ後ろからメチャクチャに刺してブッ殺してやりたい。あれから護身用に果物ナイフ持ち歩いてたの。ダメ?ねぇダメ?」


メールを読みながらあまりの急展開に鼓動が速くなりすぎて息がうまく出来なくなる


そして凛もきっと今そんな状態なんだと思う

いつもなら絵文字がたくさん入った、にぎやかなメールを打ってくれるのに
状況が状況だとはいえ
絵文字はおろか改行さえされてない
ギュウギュウ詰めの書き殴った文章に、凛の焦りと緊張と、そして激しい怒りが伝わってくる

このままでは凛が犯罪者になってしまう

いや、それどころか
反撃にあって命を落とす可能性だって低くない


まずい…


事態は静観できる様な状況じゃない


まずは凛を落ち着かせなくては…


素早くも的確に考えを練る

時間の流れを遅く感じていたさっきとは打って変わって
時間は急激に速度を増す


考えて文字を打ったのでは間に合わない

打ちながら考えなければ!


「今すぐ手を出しては絶対ダメだよ。
一瞬で殺してしまっては、それでは苦しみを十分に味わわせることが出来ないから。
大丈夫。あいつが今すぐ凛たちを殺すつもりなら、この時間は選ばないよ。
やるならきっと家族が揃う時間…夕方か夜だ。
それに近くをウロウロしてるって事は、詳しい住所までは解ってないって証拠だよ。
凛のお母さんと伯母さんは今は名字も違ってるハズだし探すのは困難なハズだ、大丈夫。
仮に今、家をみつけられても凶器を持ってない状態で今すぐに中に入ったりする事は殆どないと思う。
あいつには前科もあるし、もしもそんなモノ持ってたら銃刀法も犯すし、家も断定出来てない状態で、さすがに不用意に凶器は持ち歩かないハズだから

大丈夫。
全然大丈夫だから落ち着いていいよ。

とにかく今はそのまま
何もせずに尾行だけを続けてね

あと…こちらから沢山連絡しても支障がないように、着信音はオフでバイブも出来れば切ってサイレントモードの方がいいな。
それと出来れば制服はすぐに着替えた方がいい
今はよくても、時間が遅くなれば学生服を着てる人の数が減って目立つし、その時間、学生が街を歩いてること自体、不自然だからさ…
あ、着替えは持ってる?
あいつを見失わないようにしながら、着替える事なんて可能?」



携帯に来たメールだったが時間がなかったため
パソコンから返した。

キーボードを打つのは慣れていたから
携帯で返すより何倍も時間を短縮出来たと思う。
思い付くかぎりを詰め込んで書けたと思ったが
送信後
これで良かったか送信済みメールを何度か読み返した。


メールでは「全然大丈夫」なんて書いたが、勿論全然大丈夫なワケなんかなかった。
どちらかというと
状況は良くないと思う。

手ぶらで家に押し入り
伯母さんだけを先に撲殺し、死体になった伯母さんと家に潜み、凛や旦那さんの帰りを待ち、襲う可能性だって十分考えられた。
凶器なんてどこの家庭にも、キッチンにさえ行けばいくらでも手に入る。

けれど僕は、逆にあいつの異常さに賭けてみる事にした。

相手は完全なる変態で異常者だ。

だったらなるだけ自分の事を満足させられる、興奮出来る環境で皆殺しにするハズだ。

例えば、あえて家族みんなが揃う夕飯時にでも家に押し入り
一番最初に近くにいた人間を凶器で脅し
その人間を人質にして他の人間を掌握し

他の人間が見ている
その目の前で

愚行に興じるハズだから
…。

家でひとりで何度も何度もきっと頭の中で
マスターベーションでもしながら犯行を事細かにシミュレーションしているハズだ…

僕は目をつぶり
あいつの行動や心理を先読みするために
あいつになったつもりでイメージしてみた

そんな事ぐらいしか今の
無力な僕には出来なかったから…



最近の空き巣がそうするように
逆に目立つ私服ではなく背広を着て
伯母さんの家のチャイムを押す
時間は夕飯時がいい、家族がバラバラな時間や、一緒にいたとしても特別何もしていない時よりも
食事をしていたり
幸せな時間、家族の団欒の時間などを壊す方が何倍も興奮出来るから

凛の話では、伯母さんの家は古いマンションでオートロックではないらしいからドアの前までは容易に行ける。
でも、もしも下がオートロックになってたとしても
オートロックを回避して部屋のドアの前まで行く手立てなどはいくらでもある
そんなのは問題ではない

ドアの前に立ったらバッグの中から
凶器の刃物とドアチェーンを付けたままドアを開けられた時用に、それを切断出来るだけの強力なペンチを取り出す

来客が来て表に出るのは男性ではなく、大概女性である凛か伯母さんだ。
力の弱い女性に刃物でも押しつけ家の中に入れば
力が同等かそれ以上の男性がいたとしても人質を盾にいいなりに出来る

残りの二人のうち力の弱い方…すなわち女性に、用意した頑丈なロープなどで男を縛らせ、それから口の中にティッシュ等を詰め込みガムテなどで上から塞ぐ

そうやって、声と体の自由を奪う

それから今度は残った女性を、
凶器を当てた人質の女性に、さっきと同じようにして口と体の自由を奪わせる。

それからはゆっくりと
楽しみながら、今度は自分の手で最初の人質の体を縛り、口を塞ぎ
身動きがとれなくなったら

仮にロープが解けてもいいように、ふたりの目の前で旦那の手足を切り
切断は出来なかったとしても
活発には動けないようにし、死なない程度に腹でも裂くだろう

人間(生き物)は腸が少し外に出たぐらいではすぐに死ねない

色々な生き物を生きながらに解剖し、殺し続けてきたあいつなら
それを知っているだろうし
内蔵や腸を傷つけないよう
腹の皮と肉だけ裂いて腸を外に引きずり出す事くらい手慣れたものだろう

今すぐには死ねないが
極近いうちに必ず死ぬ状況に先ずは旦那を追い込み

それを見て発狂するだろう奥さんをその旦那の目の前で
手を伸ばせば届きそうな近い距離で、犯す

それを楽しみながら
痛みと怒りで泣き叫ぶ旦那の目の前で奥さんを
犯しながら凶器で切り刻んで殺すハズだ

例えば正常位で犯しながら腹を裂きハラワタを引きずり出しながら、それを自分の体に巻き付けたり食べたりしながら胸か首、または顔か頭に凶器を刺し
トドメを刺す
死んだ状態でもしばらくは犯し続け
死後硬直の影響でドンドンきつくなる膣の圧迫で射精をし
凌辱し終わった使用済みの膣の中にナイフを奥まで入れ
そこから縦にヘソ、そして胸からノドと
骨を避けながら顎のしたまで左右に真っぷたつにする。

あいつがもしもバックが好きならば
バックで犯しながら四つんばいの奥さんの腹を手探りで一気に裂いて
アンコウをさばく時のように
ハラワタが床にドチャッと落ちる瞬間と音を楽しむかもしれない

そのまま性器はアソコに挿したまま
膣に貫通しないように肛門に刃物を射し込み
一気に背中まで裂くのもいい
あ、だが背骨の事を考えたら
桃を割るようにお尻だけをバカッと割って楽しむに、とどまる可能性もあるな


とにかく最初に伯母さんを楽しみながら殺し
その後は旦那にはあえてトドメを刺さずに生き地獄を味わわせ

その一部始終を見ていた
メインの…自分の性器を噛みちぎった仇の
もっとも憎いであろう凛を
ジワジワジワジワと
犯し、じっくり時間をかけ、なぶりながら殺すハズだ


「お前のせいで、伯母さんと伯母さんの旦那さんは死ぬんだよ…お前さえいなければ二人は死なずに済んだんだ…全部お前のせいだ…お前が悪いんだ…」


とでも耳元で囁きながら…
自責の念を味わわせながら…犯し…殺す…


「あれ!?…でも、性器って途中で噛みちぎられてても勃起は出来るのかな…?」


不意に出た疑問に我に返り
顔を上げ、それから自分の下半身を見ると
アソコが今にも破裂しそうな程に勃起してて

そんな自分に心底嫌気がさした

自分の愛する人が絶望し、殺されゆく様を思い描きながら興奮する自分が
情けなくて、どうしても許せなかった

とてつもなく深い罪悪感に包まれ涙が溢れそうになる


そんな気持ちに潰されながら、ふと机の上に開きっぱなしにしていた携帯を見ると、そこには…



〈新着通知ありEメール8件〉



という字とともに
デジタル時計は、もう既に8時台ではなく



   10:29



をさしていた…。









つづく。

第40話 神様からの手紙

2006-11-08 | Weblog
「あの日…
教室で私が翼にアレをかけちゃった
あの日の朝…
登校中に私
私…すれ違ったの…



…あいつに。」



その後の凛の説明によると

まだ数年しかたっていないとはいえ、小学生から中学生になるという
成長期を経たせいか


すれ違ったという
その事実に
凛だけが
気付いたらしい


それともみつけられなかったのか、
否、やはり見ても
それが凛だとわからなかったのか
とにかくあいつはその事に気付かずに
そのまま人混みの中へと消えていったのだそうだ…。



あいつとは…そう勿論



凛の母親の元恋人で


凛の処女を奪った…



あいつだ。




「…その時、私は怖くて怖くて足がすくんで、その場から一歩も動く事が出来なかった…。
…逃げなきゃ。って思ったよ?
このままじゃみつかっちゃうって…。
けど体がまるでいうこときかなくて動けなかった…。

そしたらあいつは私に気付かずにそのままどっかに消えてったの。
あいつが見えなくなってからも私は
ずっとそこから動けなかった。
しばらくして、なんとか動けるようになってからも、全然うまく歩けなくて
後ろをつけられてないかキョロキョロ何度も振り返りながら学校に向かった…
背中や額や…とにかく体中にジトーッて変な汗かいてて
急いでるハズなのに時間もいつもより全然長くかかっちゃって…
学校についてからもまだずっと
いつまでもずっと
ドキドキしてて
もうなんかわけわかんなくて…ふわふわしてて自分が自分じゃないみたいだった。
だからきっと…授業中に、あんな事になっちゃったんだと思う…。」


その話を聞き
それまで凛に対し
若干、腑に落ちなかった点が
すべて解消されてゆく気がした。


気分がすぐれなくなって
戻してしまうという事に慣れていたハズの凛が
どうしてあの日に限って
余裕を持ってトイレに行って、そうせずに

授業中に突然あんな事になってしまったのか…?


その、今までずっと疑問だった理由が、
初めてちゃんと理解出来たような気がした。

それまではどうしても
凛という人間の
性格からして

行動と言動が矛盾してる事が何か似合わなかったし
聞いててどうも、しっくりこなかった

けれど今日の電話の内容を聞くうちに
その疑問も晴れ


しかも、そればかりか
一度は破綻しかけた
僕の計画を
一気に前進させてくれた


あいつは刑務所には入っていない
しかも極めて近くにいる

近くにいるその理由が何か
分からない事は
多少不気味ではあるが

けど何よりも
まずはその好材料だけを前向きに受け止めようと思った。


「ありがとう…話してくれて」



その後、あいつについての具体的な質問をいくつかし、それについて凛に話してもらうと、その日はもう遅かったし、僕は電話を切った。


――あいつが僕たちの近くにいる――


それが吉と出るか凶と出るかはまだわからない。

わからないが

だが可能性が生まれた事だけは事実だった。


それからまた僕はパソコンに向かい、思い当たるすべてのキーワードを使って
少しでも多くの情報を集める事にした。

僕が欲しい情報。
僕がどうしても知りたい事…それは、

あいつが今何処にいて、何をしているか?だった。

あいつが刑務所の中にいない。
という事が分かったのは大きな前進だ。だが、それだけではまだ足りない。

あいつを捕まえ、そして復讐を遂げる為には
あいつの現在、それを深く、詳しく知る必要がある。

特にあいつが今、何処で暮らしているか…
もっと言うとあいつの現在の自宅を突き止める事が出来れば、計画は
殆ど成功すると言ってしまっても過言じゃない。

だが、その情報を知るのは至難の業だった
名前さえ分からない人間の詳しい個人情報や住居を突き止めるなんて…


しかし、やるしかなかった。

情報という砂浜で
同じような形をした無数に在る砂の中から

ある、ひと握りの砂の粒を探すような行為

前進しては後退し
出口が存在するのかさえも不確かな道程


だがその苦悩も、
目的なく生きていた
これまでの人生に比べると何倍にも輝いて思えた。


「病は気から」


とはよく耳にするけれど

それって本当かもしれない。

例えそれがプラシーボ(偽薬)でも構わない

最近はなんだか
本当に調子がいいんだ。


食欲も前よりも増した。

もしかしたら病気になる前よりも
増したかもしれない(笑)


生に執着のなかった僕が、なんたって


「少しでも長く生きていたい」


などと思ってしまっているのだから(笑)


そんな緊張と興奮が
僕を適度に高揚させ
そして背中を押してくれた。

僕はまるで何かの映画の主人公にでも
なったかのような気で
舞い上がっていた

役柄は探偵?それとも刑事だろうか?(笑)
頭をフル回転させ犯人を捜し出し、追い詰める。


それにもしもみつけられたら
その後の計画の為に、生け捕りにし、そして管理をしなければならない

捜すと同時に
みつけたあとに張る
その罠にも

思いをめぐらせていた。


まさに僕は刑事であり

…そして犯人だった。



映画のセブンの中に出てくる
ケビン・スペンシーが扮する犯人や
マンガのデスノートの
キラ(夜神月)じゃないけれど…

人間が定めた法では裁ききれないような罪人が
野放しにされているという
事実は

確かに僕も許せない。


街の中に平然と潜む
人の形をしたバケモノ

街の中にライオンや熊が居たら誰だって悲鳴をあげるだろうが
奴等は人の形をしている


殺人を犯さなければ死刑に出来ない?
そればかりか殺人を犯したって死刑にならないじゃないか


そんなのは間違っている。

レイプなどの性犯罪、
特に自分より力の弱い者に対して行われる性的虐待は

例え肉体は無事でも
人の心を殺す行為だ。


子供を作るという
何よりも美しく
尊いはずの行為を

恐ろしく汚らしいと
思わせてしまい
それを愛せなくさせてしまうような
そんな犯罪が
二年やそこらで許される事など

あってはならないんだ。


しかも被害者は
それが周りにバレたら
まるで
加害者の様に
噂の対象になったり
白い目で見られる事になる

被害者なのに、だ。


そんな事が
許されていいワケがない。


法や国が許しても
僕は絶対に許せない。


間違った正義でもいい

正しくなくていい。


今、世の中に存在する正しさや正義に
どれ程の力があると言うんだ?


無力すぎる

抑止力にさえなっていないじゃないか

無力な正義に頼るのは
性に合わない。

それに僕はもう
この世界から消える。

凛のいる世界では
存在出来なくなる。

自分のいない世界に
愛する人を危険な状態のまま残す事など僕には出来ない。


人殺しにまで発展した性犯罪者や変質者は
殆どが過去に性犯罪を起こし
服役していた過去を持っていたり
捕まらなくても
同じような前科持ちだというじゃないか


性癖や狂った価値観なんて
一度や二度、軽い罰を受けたところで治るようなものじゃないんだ…。

逆に

「なんだ、こんなもんで許されるんだ。」

と思わせてしまう危険すらある。



差別ではない
これは
区別だ。


そして駆除なんだ。



武者震いとでも言うのだろうか?
あまりの高揚と怒りに
マウスを持つ手が震えていた。


気付いたら
外はもう完全に朝の顔をしていた
時計を見たら朝の七時を回っていた

パソコンの電源を一度切り
ベッドに入る。
眠いワケではないが
この時間に元気いっぱいに机に向かっていると
間違って学校に行かされるような気がしたから…

当然、僕に学校に行くつもりなどなかった。


学校が学ぶ為の場所ならば
もう先のない僕が学ぶべき事柄は
其処にはもう何もない。


僕が欲する学びは

パソコンが繋ぐその先や

僕の頭の中にある。



………。




寝るつもりなど全くなかったのに
気が付いたら僕は寝ていたらしい

のどが渇いた事で目が覚め時計を見て驚いた

1時を過ぎ2時になろうとしていた…


頭や心は元気なつもりでも
体は休息を求めていたのかもしれない…


ゆっくりと体を起こすと
軽い頭痛がした


渇いたのどを潤す為に台所に行き
冷蔵庫を開ける

色々な飲み物の中から
寝起きで、ちょっと胃が気持ち悪かったので
小さいサイズのヨーグルトドリンクを手に取った。


キャップを開けようとしたが力の強くない僕は
悪戦苦闘してしまった。


こんな事さえ簡単に出来ない自分に腹が立つ

キャップにタオルを巻いて、手がすべらないようにして再度チャレンジしたら

今度はなんとか開ける事が出来た
ちょっとの量だったので
一気に飲み干した。


…疲れた。


もともとなかった体力が
最近もっとなくなってきたような気がする。


薬の副作用か

それとも病状が悪化したのか…


冴え渡る頭脳とは対照的に
肉体はもう朽ち果てようとしているのか…

いずれにせよ
僕のタイムリミットが
刻一刻と近付いている事を痛感してしまった…。


なのに、
それからの数日間は
何の進展もないまま無駄に過ぎていった


焦ってヒントを探すが
何もみつからない。
万策尽きたような気さえしてきた


凛を狙うバケモノを街に野放しにしたまま

僕は死んでしまうのか…


そう思うと悔しくて悔しくて仕方なかった


志し半ばで
死ぬなんて
まるで、自分の人生や命そのものを
否定されているような気さえする。


「神様は、そんなに僕の事が嫌いなのかな…?」


諦めにも似た笑いが
込み上げてきた。


アレから毎晩、パソコンに向かい続け
朝まで情報を集めている。

やっぱり外に出て
凛があいつと擦れ違ったとう場所に
張り込んだ方が確立はずっと高いのかもしれない…


そんな事はわかっている。
けれど、それは僕には出来ない。


体がもたないってのもあるし
小さな体で街に出ると目立つというのもある、
それに外出したのが家族にバレてしまっては
それもまた大変な事になってしまう…


どうすればいいんだ…。


己の無力さに嫌気がさし
悔しすぎて
もう涙が出そうだった。


僕が元気なのはネット世界の中でだけなのか…


もはや意地になって
パソコンに向かい続けた。

今日もまた気付いたら朝だった。


諦めたのか
家族ももう、あまり僕に干渉しなくなってきたから
朝の七時になっても八時になっても僕は
寝たフリなどはもうせずに
黙々とパソコンに向かい続けていた。


八時をすぎ…眠気が軽く僕を包む頃



突然、机がブルブルと震え

バイブにしてた携帯に
メールが届いた事に気が付いた。

開かずとも相手が誰かは分かっていた

僕の携帯を知っている人なんて家族以外
ひとりしかいない。


凛だ。



「こんな時間にメールなんて…何かあったのかな?」

そんな事を思いながら
何気なく携帯を開き
メールを読んだ瞬間、体中に鳥肌が立ち



脳裏に



――捨てる神あれば
拾う神あり――


という言葉が浮かんだ。




確かに僕は神様に捨てられた


世に存在する
ありとあらゆる神に裏切られたかもしれない


けれど大切な事を忘れていた。


僕にとっての神様は
一人だ。と言う事を。


僕にとっての神様は
小川凛
たった一人だ。



鳥肌のせいか体中からブルブルと震えが止まらなかった


震えから携帯を落としそうになる


僕の神様は
僕を見捨てなかった。


僕をそう思わせてくれるような
凛からの
そのメールには


こんな事が
書かれていた……。






   あいつを
   見つけました、
   このまま跡を
   つけます。









つづく。

第39話 信者

2006-10-10 | Weblog
明日からの事を考えるだけでドキドキして
それだけでイッちゃいそうだった。



アソコはもうガッチガチに
ずっと勃起したままで


一秒でも早く爆発させたくてたまらない身体を

理性と…
そして悪意で押さえ込んだ。
だって今出してしまうと
絶対勿体ないし
今出してしまうときっと…
素晴らしいアイデアが浮かばなくなってしまう気がしたから

素晴らしい拷問の、

素晴らしい復讐の…
アイデアが。



お腹が空いてる時の方が
人ってやつは冴えてるような気がする
食べたい食べ物がみつけやすく
調理の方法も工夫が出来そうな気がする。

逆に満腹だと何もアイデアが浮かばないんじゃないかな?


満腹でスーパーやコンビニに行っても何を買ったらいいのかわからない
って体験は誰にだってあるハズだ。

特に僕みたいなタイプ…食欲が極端に弱いタイプの人間はそうだと思う。


僕は常々思っていた。
夢や欲や望みを叶えてしまうと
人は多少バカになったり
腑抜けになってしまう、と。

だから僕は簡単には射精も、そして初めてのセックスも…したくない。


欲望を押さえ込むことで生まれる超人的な力をみすみす手放すなんて低能な奴のやる事だ。

僕に残された時間は長くない。
でも、だからこそ最大限に自分の力を引き出して、残りの時間を有効に使いたい。


そして、
どうせ行き着く場所が同じなら

出来るだけそのプロセスを楽しみたいんだ。


凛のトラウマが
チープな紙クズに思えるくらいに
あいつらにはそれくらいの
残酷な裁きを下したい。



そしてそのすべてを終えた時、
僕はきっと笑顔で死を迎え入れる事が出来るだろう


例え短くても

悔いのない人生は形成れる


僕は自分の人生で
それを証明してみせる。



僕の望むハッピーエンドには
三人の死が必要だ。



その三人の死を順序よく完遂出来た時

僕の人生はきっと
初めて肯定されるだろう。



僕の死が…


否、短い生が


その時初めて正しくなり
そして意味を持つだろう…。









その日、


凛が帰ると
僕はインターネットを駆使して様々な情報を集めた。

多少面倒だが家族で使うデスクトップのパソコンだったので、中学生が見るには不適切なサイトを見た後は毎回足跡(履歴)をクリアにして、それからログアウトした。



両親には感謝している。

だから迷惑はかけたくないし
出来るだけ嫌な想いも
悲しい想いもさせたくなかった。


けれど僕の死後、両親に待っているのは、もしかしたら生き地獄かもしれない


バケモノを子に持ってしまった親の苦しみと悲しみ。


あんなにやさしい両親を僕は
まず自分の死で哀しませ

その上、死後まで苦しめようとしている事に


多少…胸がチクチクと痛くなった。


だが、今感傷的になってしまっては
ようやく動きだした足が
止まってしまう。


だから僕は痛みに鈍感なフリをして、
今はただ先を急いだ。



必要な道具、あいつらの現在。

万能だと思われているネットでも
さすがに限界はあったが
初日にしては収穫は少なくなかった。


それに新しい情報を手にするたびに、また新しいアイデアが沸き上がってくれた。


加えて、凛の話を思い返しながら、
実際に手を下す現場は
何処がいいだろう?


と思案した。


あいつ(義父)は今、何処で、何人で暮らしているのだろうか?


先生はまだ、同じ場所に
一人暮らしを続けているのだろうか?


場所(部屋)は絶対に必要だ。
けれど中学生の僕らに
それを借りる能力はない。

無理して借りようとして下手に年令詐称等の偽装なんかしてバレては、その後に必ず影響が出てしまう。


しかし作業には
どうしても密室が必要なんだ。

だとしたらやはり
作業場はそのどちらかの家しか考えられない。


いや、待てよ。
義父がまだ
刑務所に入っている可能性もある
凛の話を聴く限りでは、
その後、服役したかまではわからなかった
証拠が不十分であれば
刑務所に入る事もなかったかもしれないが
もしもその時、刑務所に入ってしまっていたとしたら

その場合、出所が長引いて
僕のタイムリミットに間に合わない
という事も考えられる。

その時は
もうその時点で計画が完全に達成出来ない事が決定してしまう…。

その時はもう
そこに関しては諦めるしかない…。


歩み始めてはみたものの、やはり不安は拭えなかったが、ただウダウダと考えていても埒があかない
僕は今出来る事を
とにかくやる事にした。



拉致、監禁、拷問、

そして殺人。


聖戦(ジハード)に臨むイスラム教徒の気分で
僕はパソコンに向かい続けた。


ただ僕にとっての神は
アラーではなく

ひとりの日本人の少女だったけれど…。


このプログラムに
僕の死なしに成功はありえない。


そう思うと何か
誇らしい気持ちでいっぱいになった。


日本人故に
今までは宗教という言葉を馬鹿にして
クリスマスなどをお手ごろに祝うように
宗教の便利な所だけを
利用させてもらって
生きてきたけれど

最近は宗教を信じる人。
信者と呼ばれる人たちの気持ちがわからなくもなかった


深い忠誠心は
死の恐怖さえ拭い去る


たったひとつ
心から信じる事が出来るものがあれば

軸はブレないし
恐怖や迷いという
負の感情は穏やかになる


それがきっと
宗教だったり
信じるということだったり
するのだろう…。




そんな事を考えていた時、
それを知っていたかのように
僕の神様から電話が鳴った。

僕はパソコンに向かいながらその電話を取った。


電話をとるとすぐに神…
凛は
今日の告白に対する謝罪をしてきた。


よかれと思ってそうしたとはいえ
やはり多少は
重すぎる話を聴かせた事を後悔をしていたみたいだった


「そんな必要はないよ」と


僕が伝えると

そのあと凛は
ある事を教えてくれた。

電話で、何気なく伝えられたけれど
実はそれは
僕らにとってとても重要な事だった。


あの日…
僕が凛に恋をした日の真相…
其処に至る迄の過程


電話口でそれを聴きながら僕は
僕達を取り巻く恐ろしい程の必然に
感動すら覚えていた


その真相とは
僕達のすべての発端である

凛が教室で嘔吐してしまった日の
その、きっかけにあたるものだった……。







つづく。

第38話 生きる理由、死ぬ意味

2006-09-15 | Weblog
僕の凛を


僕だけの凛を


好き勝手にもてあそび


壊れ物にしてしまった大人たちふたりに


沸き上がる…
激しい憎悪と
静かな殺意…。


そして


正直、羨ましさを覚えていた。


凛がこんなにも傷ついているというのに



出来れば隠し続けたかったであろう
消し去りたい過去を吐露するその
凛の崩れた顔が美しすぎて


僕は同調して悲しんだりせずに、
ただただうっとりと


その美しさに
見惚れていた。



…勃起したまま。



そうやって…凛の告白は終わった。


勿論これがすべてではないだろうが
長い長いその告白は
一応、終わった。




僕達に子供は望めない。

僕達にはもう

ふたりの愛の結晶を
この世に残すという
シンプルでいて最善な
選択肢は
存在しない。



あるのは…僕の死、

それだけだ。




凛は神様を「残酷だ」と言ったけれど

けど僕は
そうは思わない。



ほのかな望みさえも
断ち切られた僕らだからこそ
出来る事がきっとある。



どうせ僕は死ぬ。

だったら生ぬるい希望なんてまっぴらだ


愚直に我儘に僕は死を受け入れたい


それに
ただ死ぬだけじゃない

罪深く腐った大人たちを
道連れに死んでやる



勿論ただ殺すだけじゃない

死を救いに感じるくらいにまで
苦しめて苦しめて
苦しめ尽くしてから

それから…
殺すんだ。



だっておかしいじゃないか。

僕は死ぬのに、
そいつらは罪も償わずに
のうのうと生き長らえるなんて


そんな事が許されて良いハズがないんだ。



それに凛の感触を…
味を知る人間なんかを
生かしといて
いいワケがない…。




そう思うと…僕の人生ってやつも

悪く…ないかもな。

って思えた。



明確な目標があり
僅かなタイムリミットだけが残された人生…。


うん。

悪くない。



むしろ僕は幸せ者かもしれない。


長生きだけを生き甲斐に
いつか死ぬために生きる人生。

ヨボヨボになって
醜態を晒しながらも
騙し騙し生きる余生


そんなもの、ハナッから僕は求めてない。


腐って死ぬか
新鮮に死ぬかなら


僕は間違いなく後者を撰ぶ。



嗚呼…それに僕はひとりじゃない。
僕には凛がいる。


これまでの
無駄に生きてた過去なんて
僕にとっては全くの無価値だ。


これからは


凛の為に生き、

凛の為に死のう。


あぁ…。


あぁ…なんて僕は幸せなんだろう




  死ぬ理由が
  生きる意味を生み


  残された僕の時間を
  輝かせる…。





泣き崩れる凛の身体を
非力ながらも力一杯抱き締めながら



僕はもうすでに


心の中では
明日からの計画を練り始めていた……。



禁忌に満ちた
血塗られた道を

思い描いていた……。





つづく

第37話 告白の最後

2006-08-31 | Weblog
「わかった…すぐになんとかする…」

「3日…それ以上は待たないから」

「…わかった。それが終わったらビデオはちゃんと…」

「返してあげる。そのかわりそっちにあるテープも全部用意してね」

「…はい。」

「あ、カメラは返してあげる。けどテープは目の前で全部壊すから…いいよね?」

「え…あ、はい。」


いくつかのやりとりのあと、しばらく沈黙が続いた
言いなりすぎて、
歯応えがなさすぎてつまんなかった。

この人ってほんとは
臆病で…弱い人間だったのかもしれない。


話はトントン拍子で進んだ。

むしろ向こうから

「ちゃんとした病院で、妊娠の治療をさせるから、ビデオテープを返してくれ」

と申し出てきた。


その顔は残念なくらいに弱々しかった。


いたぶっていたぶって
復讐し尽くしてから
その交渉をしようと思ってたのに
順番が逆さになってしまい

なんだかその気も失せてしまった。


復讐は出来なかったけれど
まぁ、治療が早く出来るに越した事はないから、いいかな。
って、その時はすぐに納得した。



「失礼しましたー。」


教官室から出る時だけは、一応普通の小学生っぽく挨拶をして、お辞儀をしてから
それから教官室を出た。




ビデオを盗んだ次の日の
放課後の出来事だった。


すっかり肩透かしをくらってしまい
なんだか残念な気分だった。

一時は先生の事を

「殺しちゃおっかな?」

ってちょっぴり思ってたのに
相手が全くの無抵抗だと
こっちのやる気もなくなってしまう…


「あ~あ~…」


なんて言いながら鼻歌まじりで
給食のエプロンが入った白い袋をブンブンと
振り回しながら下校した。


それが金曜日で
手術をしたのはそれから2日後の事だった。


嘘かな?
またダマされてんのかな?

って思うくらいに簡単に
トントン拍子に話は進んだ


手術の前日にまず
先生に車に乗せられて、知人がやっているという産婦人科に連れていかれた。

裏口みたいな所から中に入って、お医者さんに会った

先生もお医者さんも
親の同意なしに小学生に治療や手術をしたという証拠を残したくなかったのかな?

だからかはわかんないけど…
あの…なんだっけ?
カルテ?って言うんだっけ?
アレとかも書かずに
あんまり詳しい検査とかせずに
着いてすぐ
下半身を裸にされて
変な台の上に
足を広げられて座らされた。

今思うと多分アレが
分娩台ってやつだったと思う。


「明日の手術の為に…」


て言われてアソコを広げられて、その中に

子宮口を拡げる薬

ってやつを入れられた。

数分で終わったけど、それがちょっと…
ううん。
かなり…痛かった。


それで

「夜の九時以降からは食事を抜くように」

って先生に注意をされて、その日は帰った。

言われなくても、明日が手術だと思ったら食欲なんてまるで湧かなかった。


そう思うと、なんだかんだ言って
やっぱりまだ私、小学生だったんだよね…


夕方に軽く御飯を食べた後、自分の部屋に帰ってからは
ずっと子供みたいに布団に包まってガタガタ震えて怯えてた…。


その日の夜は、ずっとそんな感じで
人生初の手術を
明日に控えて

「痛いかな?大丈夫かな?」

って不安で不安で
朝まで全然眠れなかった。


次の日の朝、家の近くまで先生に迎えにきてもらって
また先生の車で病院に行った

その時の車の中が超気まずかった

お互いずっと無言で…。



病院に着くとまた裏口から中に入れられて

今度はパジャマみたいなやつに着替えさせられた
あ、もちろん下着はつけてない。
日曜日の病院て誰もいなくて、シーンとしてて昼間なのに、なんかちょっと恐かった。
そうやってビクビクしながら、やっと着替え終わると

すぐにベッドの上に
横にされて
何本か注射を打たれた


お尻と腕に。


その後、診察室に行って、また変な台に乗せられた。

分娩台ね。



それで点滴を打たれたんだけど、お医者さんは確か

「麻酔だよ」

って言ってた


手術室って聞いたからどんな場所に連れてかれるんだろう?って
超不安だったけど

なんかそんなに大それた感じじゃなくて
なんか普通の民家に手術台だけが急にポツンとあるような

そんな感じだった…。


そんな事を考えながら、落ち着かなくてキョロキョロしてたら
お医者さんに

「ゆっくりと1から順に数字を数えてね」

って言われて

「あ、ハイ…。いーちぃ、にーいぃ、さーんー、しーいぃー…」って

数えてたんだけど


普通ならここでもう数えながら
スー…って寝ちゃうらしいのに、
緊張してたのも、もちろんあるとは思うんだけど

私はもともと麻酔があんまり効かない体質だったみたいで

いつまでたっても全然眠くならなかった。


なんか普通なら3とか4くらいで眠くなるんだって…


私があんまり寝ないもんだから、お医者さんがもう一本
腕にまた注射をしてくれた。

点滴よりも強い麻酔だって言ってた


針が腕に入る時、チクッとして

「イタッ」て思ったら


もう
そしたらもう
いつのまにかベッドに寝てて…

気付いたらもう
全部…

手術とかもう全部が終わった後だった。



それからは、
それまでずっとあった
つわりみたいな気分の悪さとか違和感とかも、もうなくなってて

かわりにアソコから生理みたいな血が出てた。


「1週間から10日はセックスはしちゃダメだよ…。て、するわけないか…。」


ってお医者さんに
言われた。

お医者さんが先生に
私についてどんな説明を受けてたのかはわからないけれど…

きっと自分の事は何も言わずに、
自分に都合のいいような適当な説明をしたんだろうな。
って思った。


で…しばらくそのままベッドの上で休まされて
夕方くらいにはもう車に乗って、お家に帰ってた。


体は超だるかったけど、
妊娠という一番の心配事が解消されて

気持ち的には最高だった。


「これからは平穏な日々に…普通の小学生に戻れるんだ」

って感動に
胸が踊ってた。


だから、その時って、なんか今まで色々あったけど
これで全部良かったんじゃないかな?みたいな気にさえなっちゃってたんだよね。


あ、先生に告白してから
後の事ね?


だって告白してなかったら
手術も出来なかったわけだし…そりゃもちろん嫌な思いも…沢山したけれど

けど結果、お腹の子供は堕ろせたワケだし…。


うん。


よかった。って思ってた。


…その時は。



その時はまだ…
まだ何も知らなかったの…。



その…色々のせいで
自分の身体がどうなっちゃってたのかなんて…

思いもしなかったから…



妊娠や
遅すぎた中絶のせいで
自分の身体に…


まさかそんな後遺症が残るなんて…

まったく…

まったく
思いもしてなかったから。



あのね…


えっとね…私ね…



…私。




もう…




もう……




産めないんだ…




出来ないの…妊娠も、出産も…




赤ちゃん…



もう赤ちゃん…産めないの……




たまに
そういうことがあるんだって…




中絶の治療や
流産とかが理由で
子供が出来ない身体になっちゃうって事が……



だからもうダメなの…



私…不良品なの…



なんか壊れちゃったみたいなんだよね…私の身体。






治療からしばらくたった頃に
約束の、ビデオの引き渡しとテープを壊した
その時にね


ビデオを先生に渡して
私が先生の目の前でテープをグチャグチャに壊してしまったあとに


急に先生が泣きながら
私の前に土下座して



私、なぜか謝られちゃって


最初はね何の事か全然わからなかった。


何を謝ってるんだろう?って思ってた。



私をおもちゃにしてた事を償いたいのかな?って
勘違いなんかしちゃってた。


けど、違ったんだよね…


もっと、ずっと、悪い事だったんだよね…



土下座したまま
その時に言われたんだ…




「すまない。きみはもう赤ちゃんが産めない身体なんだ…本当にすまない。」



ってさ…



笑っちゃうでしょ?



私その時まだ小学生だよ?


ひどいよね?(笑)

ひどすぎるよね?(笑)



もしも神様が本当にいるのなら


そしたら…


神様って結構いじわるだと思わない?


残酷だよね?(笑)





でも…


でもさ


だからもしも翼が

翼がセックスしたくなったら


その時は、生で出来るから


だから
いつでも言って?



こんな…不良品でよかったら


こんな汚れた身体で良かったら


好きに使って?



私頑張るから…



翼に喜んでもらえるなら


私何でもするから…


ほら…だってゴムなんか付けなくっていいんだし



中にじゃんじゃん出しちゃっていいよ?



だってどうせ…

どうせ、出来ないんだし…




おもちゃにして?




あ、ごめん…


私のクセに
おもちゃなんておこがましいよね…



人が遊んだおもちゃなんて
汚くてやだよね…




便器でいいよ



トイレでいい…



翼のゴミ箱に
なってあげる…




あ、でも、アレからずっと使ってないから



もう穴がふさがっちゃってるかもしれないから

最初だけは
ちょっと使い辛いかもしんないけど…



けどすぐに慣れると思うから



大丈夫だから…さ。






真っ赤な目で


震える唇で


頬を涙でびちゃびちゃに濡らした


ボロボロの顔で



長い長い告白の最後を


締め括る凛の姿は
とても…




とても美しかった。






凛の内面に潜んだ
サディスティックな一面が
生まれるまでの経緯


そして、ちょっとした弾みで崩れ落ちてしまいそうな
はかない美しさの由縁が



凛のその悲惨すぎるトラウマの告白により


僕にも初めて理解出来た。




最初は聞きたくなさすぎて

恐くて恐くて泣き喚いていた僕も



話が核心に迫って行くにつれ、いつのまにか話に夢中になって聞き入ってしまう事で
逆に落ち着きを取り戻し


過酷を極める
その告白に


それからはもう泣く事もなく、気付いたら、なぜか正座で


母親に絵本を読み聞かせしてもらう幼子のように

ただのその物語のファンのひとり
みたいな感覚で続きが早く知りたくて知りたくて
待ちきれない想いで

悲しむどころかむしろ
ワクワクしながら話を聞いていた。



目の前にいる大切な人が語る
出来る事なら消し去りたい過去の吐露だというのに

ひとつも同情する事なく
もちろん涙する事もなく



ただただ…



勃起していた。





ちょっと触れただけで
もう破裂してしまいそうな程に…




ただただ…

勃起していた。








つづく

第36話 あとすこしのところで

2006-08-19 | Weblog
腹を決め、最初の一歩を歩み出した瞬間
先生にもてあそばれて裂けたお尻の穴に
ズキッと激痛が走った

音を立てたらまずいのに
思わず「ヒッ」と、悲鳴が出そうになり
そのままペタンとその場に座り込みそうになった

けどなんとか我慢して踏み留まり

そのまま無理矢理前進した

お尻の穴が痛くて痛くて

歩き方が変になる

ひょこ…ひょこっ
と、情けなく、まるでフザケてるような歩き方でしか歩けず
そのせいか急いでるつもりが全然スピードが出なかった

それでも痛みをこらえて歩いていたら

足をつくタイミングでお尻からオナラみたいに
プスッ…プスーッ

空気の漏れる
情けない音がした


オナラがどうとか女の子なのにとか
そんな恥ずかしさなんかはもう
もちろん微塵もなくて

今はそんな事よりも
とにかく、
小さくてもその音のせいで
先生に私がここにいる事を気付かれるのだけが心配だった


なのでしばらく歩くのをやめ
静かにして
様子を伺い…
先生に変わった動きがない事を確認してから

それからまた歩き始めた


一歩一歩足を踏み出すたび
極度の緊張と恐怖で
怖くて怖くてたまらなくて
ボロボロと涙が溢れて止まらなかった…

顔も心もボロボロな、そんな
悲惨な状況で、ようやく玄関までは到着したけれど
今度は靴がうまく履けない。
いつもは手も使わずに
スッ、スッと
足を入れてハイ終了の、出来て当たり前の簡単な事なのに
緊張からか何度やってもうまく出来ない。

こうなったら手を使おうと思って両手を見たら
右手にランドセル、左手にビデオカメラを持っていて
両手が塞がっていて使えなかった。

ランドセルを背負うか
カメラをランドセルにしまうか
荷物を一度下に置いて靴を履いてから
もう一度持つか…等
そのどれかひとつでいいから実行さえすれば
いいだけだってのに

焦りすぎて冷静じゃなさすぎて
どうしてもそれに気付けない。


「どうしよう…
うぅ…どうしよう」


鈍臭い自分に嫌気がさす
その場に立ち尽くしたまま
ただ焦るばかりで
私はいつまで経っても靴が履けなかった


怖くて悔しくて情けなくて…
涙がボロボロと零れ続ける


それでも意地で体を動かし
なんとか靴に足を入れるとスリッパみたいな状態のまま、ちゃんとはまだ履けてなかったけど、とにかくもうそれでいいから
とにかく玄関から外に出ようと思った


けど手はさっきのまま
塞がったままだから
もう外は目の前なのに
今度はドアがどうしても
開けられなかった


もうどうしたらいいのか
まったくわからない


ガチャッ…


そんな時、とうとう後の方から風呂場の扉の開く音がした。

その音に尚更焦って
手がブルブル震えて
もっと気が狂いそうになる

けどやっと、手に持たずに肩にかければいいと気付き
ランドセルを肩にかけ

それにより自由になった右手でゆっくりと音を立てないようにしてドアの鍵を回そうとした

…だけど静かに開けようとしたせいか手が震えてしまって
うまく鍵が回らない

二度三度とトライして
やっと鍵が回る

カチャッ

小さいけど音を立ててしまい、聞こえてないか?と冷やっとした

早く逃げ出したい!

はやる気持ちを抑えて
冷静に冷静に次はドアノブを回す


ガチャッ


開いた!
その瞬間ランドセルが肩からズルッと
肘の所までズリ落ちてランドセルの中の筆箱とかが中で動いて
ガタッ
と大きく音を出してしまった

一瞬背筋がゾッとしたけれど、とにかくもう
外にさえ出ればいいから
そのままドアに突進する様にして私は
玄関にぶつかり
玄関を開け
外に飛び出した



エレベーターまで走って

↓を押し

エレベーターが来るのを待つ

エレベーターが到着するまでの数秒間は
私が今まで生きてきた中で
一番長く感じた数秒間だったかもしれない

それくらい
とても長く感じた


無事にエレベーターが来てからも
今度は一階について扉が開く時

その開いた先に階段か何かを使った先生が先回りして立っていないか超不安だった。

お願いですから
立っていませんように…

そう心から祈った。





……大丈夫だった。


誰もいなかった。


それからも先生の家を出てから大通りに出るまでは、ずっとドキドキしていた


信号待ちなどで強制的に足止めをくらう時などに、
ランドセルを背負ったり、ビデオをランドセルに入れたりするチャンスは何度でもあったのに
「早く早く」と急いで帰るのに夢中で

他にまったく気が回らず
両手にそれらを持ったまま
そのままで歩いた


それからどのくらい走ったかわからない


キョロキョロと何度も振り返りながら家へ急いだ


やっと、家まであと少しと迫った…交差点


最後の信号待ちで
信号が青に変わるのを
今か今かと待っていた時…

トントン…と
嫌な振動を肩に感じた


最後の最後、私は誰かに呼び止められてしまった

それが誰か?なんて決まってる
顔なんか見なくてもわかりきってる


「終わった…」



そう思った。


どうして気付かなかったんだろう?相手は大人なんだ
先生が車で先回りして
家の前で張っている可能性は十分有り得る

人の数もまばらなここで捕まったら

もう終わりに決まってる。

急ぐあまり
大事な事を忘れていた。

相手は大人なんだ…。


そんな事を思いつつ
私は観念して振り返った…


!?


すると、なんと
見ず知らずの小さいお婆ちゃんが立っていた

でも急に呼び止められる理由がない


するとお婆ちゃんは小さい声で


「お嬢ちゃん大丈夫かい?下着が見えちゃってるよ?ちゃんと上まで上げようね…」


と言ってくれた


下を見ると私はパンツを太ももの途中までズリ下ろしたままだった

ビックリした
こんな状態のままずっと外を歩いていたなんてまったく気付かなかった。
思いもしなかった。

慌てて上げようとしたら手が塞がっていて上げられない

するとお婆ちゃんが見兼ねてパンツをやさしく上まで上げてくれた

そして背伸びをして
私の髪を指でといてくれながら

「グシャグシャね…どうしたんだい?」

と言ってくれた

それから小さい手拭いを、きんちゃく袋から取り出すと、私の頬や目の周り、そして口の周りを、それで拭いてくれた

「泣いてたのかい?大丈夫かい?」

涙のあとやゲロのあとが顔に残ってたのかな?
私はぬぐってもらいながら、顔を横に振った

「どうもしてません…あり…ありがとうございます」

その様子から見て、どうもしてないワケなんて絶対ないのは明らかだったけど、私がそう言うと
お婆ちゃんはそれ以上深い事は何も聞かずに
ただ頷いて

「よっぽど急いでいたんだねぇ…。貸してごらん」

と言うと私の手からビデオとランドセルを取り
ビデオをランドセルの中に入れて
そしてランドセルを背中に背負わせてくれた


「はい。出来た。」


優しくそう言うと
お婆ちゃんは私に

「じゃあね。気を付けて帰るんだよ?」

と手を振ると
振り返って
歩き出そうとした。

「あ、待ってください」

私はそんなお婆ちゃんを急いで呼び止めると、厚かましいとは知りつつも、
何か適当な事を言って家まで送ってもらうお願いをした。

さっき一瞬考えたみたいに、先回りされて家の前で先生に張られていたら

やっとここまで来たのが水の泡になる

それに、あと数十メートルとはいえ、このあと家の前までの道はドンドン人目につかない道になってしまう、ひとりだと本当に心細いから
だから少しでも誰かと一緒にいたかった。

私のお願いをお婆ちゃんは快く引き受けてくれて
一緒に歩いてくれた。

そして歩き出す時

「ほい。」

と手を出されたから、本当はちょっと照れ臭かったけど手を繋いで歩いた

お婆ちゃんはうちのマンションの中まで入って来てくれて
玄関の前まで送ってくれた

「本当にありがとうございました」

と言うと


「いいんだよ。私も孫が出来たみたいで楽しかったから…」


とニコニコしながら言ってくれた。


嬉しくて涙が出そうだった。

でもこれ以上泣いたらもっと心配かけると思って、泣くのはグッとこらえた


玄関の中に入り手を振って別れた


鍵を閉め部屋へと歩く。


疲れた。

色々ありすぎた。


ベッドの上にランドセルを投げその横に仰向けに体を投げ出した


腕をおでこの上に乗せて
一息つくと、安堵からか
また涙が溢れてきた

グッ…ウゥ…

うぅぅ…

ドンドン涙が溢れた

今日の私、泣きすぎだし…。
そうは思っても涙が止まらなかった。


…怖かった。


本当に怖かったからこそ


さっきのお婆ちゃんのやさしさが余計に嬉しすぎた。

そんな風に今日を振り返っていたら、気付いたらそのまま寝てしまっていた。



…リビングから伯母さんの声がして夕飯に呼ばれて
その声に起こされ


そのままご飯に行こうとして、ハッとして振り返り、ご飯に行く前にビデオを隠しておこうとランドセルを開けた

すると中からさっきのお婆ちゃんの手拭いが出てきた

全然気付かなかった。
さっき入れてくれたのかな?

鼻におしあてて匂いを嗅いだら
おばあちゃんのやさしい薫りがした。

その薫りがなくなってしまうのは勿体ないけれど
そのままだと汚いから、今度洗って返そうと思った。

家も名前も聞いてないけれど
きっとまた逢える。

なぜかそんな気がした。


ビデオと手拭いを学習机の一番下の鍵の付いた引き出しに入れ


リビングへ行き
夕飯のテーブルについた


明日からは勝負だ。
私には時間がない。
一気に攻めなきゃ


そう思うと不思議と食欲が湧いてきた。


そうやって
久しぶりに沢山食べたら、伯母さん夫婦が
それをとっても喜んでくれた


食事の後、その元気のままふたりと軽くおしゃべりをした

とても幸せだった

この幸せを壊さないためにも
明日から頑張らなくては…


私の中に責任感のようなものが芽生え、強くなれたような気がした


寝る前にお風呂に入った時、体を洗う時にお尻が超痛かったけれどガマン出来た。
お腹に赤黒い大きな殴られたあとがあって触るとかなり痛かったけれどガマン出来た。
殴られたらちゃんと拳の形にアザが出来るんだ…知らなかった。
あの人、先生のくせに子供相手に思いっきりグーでお腹を殴ったんだ…

フフフ…


仕返ししてやる。
何倍にして返してやろう。

そして一日でも早く体をなんとかして完全に自由にならなければ…と決心した。


お風呂から上がると
引き出しからビデオを取り出して
ちゃんと映像が映ってるかのチェックと使い方を覚えるために色々試してみた。

バッチリだった。


今日の変態行為の一部始終が残っていた。

使い方もすべて画面に説明が出るので機械にあまり強くない私にも簡単に使いこなせた

これで準備は整った。



これからは私の番だ。

これからは私の時間だ。



ビデオをしまいベッドに入った。


疲れてたのか
一瞬で眠れた。




そして次の日から
始まった。


私の復讐の日々が…
始まった。







つづく