ちょっと特別でお気に入りな革製品

素敵な革製品をご紹介したり、まつわる情報など、独自の感覚で広く浅く、くだけた感じで。

革の染色、実況中継 その5 染色・加脂②

2014-02-24 08:07:56 | 日記
革の染色、実況中継 その5 染色・加脂②

30分くらいで染料や加脂剤の浸透はほぼ完了します。今日はお昼休みの間、1時間ほど回していたので充分です。
そこで回転を一旦止め蓋を開けて、革をちょこっとカットして乾かして、浸透具合や色目などをチェックします。(午後の仕事はここから!)
乾かすのには家庭用のヘアドライヤーを使うんです、ターボ機能全開で。



そして色をさらに見本に近づけるため、染料を追加投入します。先ほどの白い紙に塗った通りの色にはならないし、より見本に近い色にしておきたいので。

さらに20~30分回転さ染料が馴染んだら、次に染料と加脂剤を革とくっつける(結合させる)ため、ギ酸を投入します、pHを3.5くらいまで下げてあげるんです。
結合させるには30~40分くらい回します。

革はイオン結合によって染料や加脂剤などと結合します。
繊維のように共有結合=高温熱処理することが出来れば良いのですが、熱処理したらお煎餅みたいになっちゃいます。イオン結合では染料等の結合力が劣るので、染料を使った分だけ色落ちのリスクが高くなります。
だからギ酸を入れてもくっつききれなかった余分な染料は、よーくよーく洗い流してあげないといけません。

実際にはこんな蓋に変えて、温水を入れては回し流し、また入れては回し流し、、、



排水がきれいになったら次の工程に進みます。

革の染色、実況中継 その5 染色・加脂①

2014-02-21 08:16:38 | 日記
革の染色、実況中継 その5 染色・加脂①

さて、いよいよ革に浸透させる染料を配合し、タイコの中に投入します。
まずは中和の終わった浴を排水し、湯洗いして新たに50℃くらいの湯をタイコに注入します。このとき、タイコの中で革がバタバタと音を立てるよう40リットルくらいにします。
なぜならばこのアクションが、革の芯に染料が浸透するのを助けてくれるからです。

染料の配合は、データ、経験、勘を駆使します。なんせ(かつて)生き物相手ですから、毎度ぴったりデータ通りにも行きませんし、勘に頼って配合しても全然違って染まってしまったりします。
この工程の頃はもうお昼近く、午前のメインイベントって感じで気合いを入れるところです。

今日染め上げるご注文の色はブラウン系、黄味のブラウンHHやら赤味のブラウンHE、ダークブラウンDSなんて染料を3%+2%+1%てな具合に、データや勘に基づいて事前に量って、熱いお湯に溶いておきます。この時白い紙にその液を塗って色目を確認することも大切です。見本と見比べることを怠ると、色を大幅に修正することになりかねません、特に濃くなってしまった色を淡く直すのは、「ふりだしに戻る」ようなもので、大変です。

それからこの工程では、一緒に加脂剤も投入します。加脂剤は革を柔らかくするのはもちろんですが、タッチを変えたり、染料を発色させたり、革を充填させたり、革に匂いを付けたりもします。今日はスエードですから、しっとりタッチだけどマイルドな加脂剤を投入します。
(画像は各種加脂剤達)



ここでお昼休み!ご飯の時間です。

革の染色、実況中継 その4 中和

2014-02-20 08:21:34 | 日記
革の染色、実況中継 その4 中和

レタンが終わった革はpHが3~4と低く酸を含んでいます。このままでは染料や加脂剤を芯まで通す事が出来ません、みんな表面に染着してしまいます。
そこで革のpHを5あたり、またはそれ以上まで上げてやる事を「中和」といいます、そうすることで染料や加脂剤達は芯までしっかり入ってくれるのです。
一般には中性に近づける事を中和と言いますが、製革工程の場合はこのように酸性から中性に近づけることを指します。

実際にはレタン剤が入り1時間ほど回転した後に、ギ酸ソーダ(のような比較的温和なアルカリ塩)を追加投入して、30分以上回転させます。
中和が上手くいくと、繊維が開いて革が膨張しているのが、目や感触でわかりますよ。
pH試験紙や液、pHメーターなどを用いて、目標のpHを得られているかどうかを調べることも必要です、でも毎日毎回計ることはしないです。薬品を量り間違えさえしなければ、前日と同じクラストなら、同じように言うことを聞いてくれますから。



革の使用目的(衣料用/靴用とか柔らかく/しっかりなど)に応じて中和の目標pHは変えるんですが、今回は靴の甲革用なので、なるべく伸びないよう、繊維が開きすぎないようpHは5あたりに設定します。


革の染色、実況中継 その3 レタン

2014-02-19 08:48:09 | 日記
革の染色、実況中継 その3 レタン

さてここからは、若干「企業秘密」事項も含まれるようになってきますが、できるだけオープンに実況させて頂きます。

クラストは、乾燥させてしまうが故に、染料の結合力が(ウェットブルーと比較して)落ちてしまうと言われています。なので、染める時には染着性を高めることが重要になってきますね。
また、ふっくらさせたり、伸びを止めたりするために、あるいは、スエード面の毛をより細かく見せるために、「レタン」をします。要はキャラクターを追加する工程と言えます。
レタンというのは「Re-Tanning」の略称で、日本語では「再鞣し」です。

良く湯洗いして余分な活性剤等を除いた後、今度はじっくり反応させたいので、タイコ内の湯温を30℃くらいまで下げてあげてから、今日はクロム系レタン剤を投入します。
また1時間ほど回転させます。



ちなみに、タイコが30分とか1時間とか回っている間に、前日に染め上げた革を次の工程に進めるための準備や、次の工程の準備(これを自分では作戦と思っています)、薬品の補充や発注など、なんだかんだと忙しいです。

革の染色、実況中継 その2 水戻し

2014-02-18 08:22:09 | 日記
革の染色、実況中継 その2 水戻し

クラストと呼ばれる状態の革は、未染色で、すでに加脂工程が済んで乾燥しています。
クラストの中には、すぐに水分を吸収するもの(吸水性が良いもの)があると思うと、その逆になかなか吸収しないものもあります。
水分を充分吸収しなかったクラストは、染料が芯まで通らなかったり、もっと柔らかくしたいのに、そのための加脂剤等が吸収されなかったりするので、しっかり吸収してもらうために「水戻し」という工程を経ます。
たとえば乾燥椎茸、2~3日かけてきちんと戻さないと美味しくいただけませんよね、似ています。

具体的には、重曹などのアルカリ性化学物質と界面活性剤、またはあらかじめ皮革用薬品メーカーが販売している「水戻し剤」的なものをタイコに投入します。タイコには横に穴が空いていて(軸部分)そこに20リットル容量ほどの大きなロートがセットされています。そこから薬品を投入するのです。30分から1時間ほど回してあげます。

時間通り回ったら、水に戻ったかをチェックしながら排水します。ですがその時タイコの中には活性剤の泡が充満していることがあるので、「泡消し剤」を事前に投入しておきます。蓋を開けたとたんに、蓋ごと吹っ飛ばされるほど勢いよく泡が噴き出してくる事があるので、要注意です。
水戻しが完全だと革がトローっと柔らかい感じで沈んでいます。排水し、次の工程に進みます。