西田一紀 『狂いてさぶらふ』

ある事ない事そんな事

三十分摂取のすすめ

2018年02月06日 21時19分02秒 | 日記
以前にも述べた事があるかもしれないが、僕は食事に時間をかける事を好まない。
本当はご飯なんて食べたくないくらいなのだが、それでは飢えてしまうから、仕方無く食べているにすぎない。
最早、食べるというよりは、摂取と言った方が適当であると思われる。

コクだの食感だのと、美食家連中は騒ぎ立てるが、そんなものは舌の上を通る、ほんの数センチの距離の間の話であって、喉元を過ぎれば、結局のところ何を食べても同じであり、寧ろその後、胃袋へ落ちるまでの距離の方がうんと長い。
そんな数センチの為に時間や労力を注ぐ事は、なんとも時間の無駄であるように思えて仕方がない。

客観的に考えてみても、憐れに思われてしまう気もするが、実際そうなのだからどうしようもない。
食の豊かさは生活の豊かさ、なんて文言も、寝耳に水なのである。


そんな僕が日夜心がけている事と言えば、「三十分摂取」という事だ。
僕のように、食は摂取であると考えている人間は、それに対して極力時間を費やしたくないものなのであり、食事をする時間があるならば、本を読んだり、音楽を聴くことに時間を割くことの方が、うんと有意義に思えてしまう。
しかしながら、空腹のままでは小説も音楽も、集中して取り入れる事ができないので、最小限の時間をもってして腹を満たすわけなのだが、その為に必要な時間は三十分が妥当であると考える。
三十分というのは、食べるだけの時間の話ではない。料理を始めてから、それを胃袋に落とし込んで、さらに台所を片すまでの時間の事である。

この「三十分摂取」の要件を満たす為には、作る料理
にも制約がある。
煮物やカレーなどは言語道断であり、副菜なども拵える暇は無い。片付けの手間を考えると、揚げ物なんて到底手につけられないし、ハンバーグを捏ねている猶予も無い。

基本的に主食のみで成立する料理でしか、この要件を成し得る事はできない。
そしてその最たるものが、炒飯とスパゲティなのである。

スパゲティの場合であれば、我が家にはコンロが一口しかない為、電子レンジで麺を茹でる事ができるという便利グッズを使うのだが、おおよそ七分で麺が茹で上がる。
これが意味するところは、電子レンジの目盛りが七の数字を指した瞬間から、勝負が始まるという事だ。

電子レンジが恍惚と輝き出すと同時に、僕は鍋に火を点け油を注ぐ。
そして鳥の胸肉を細切りに、玉葱を半玉スライスにしたところで、丁度鍋から煙が立ち昇る。
すかさずそれらを鍋の中へと放り込み、塩と胡椒を振りかけて、二、三度鍋を振ってやる。
そして再びまな板に向かい、今度はその時期旬の野菜を切り、お皿に控えておく。
冷凍庫からタッパーに詰めておいた、しめじとえのきを鍋に入れ、また二、三度鍋を振る。
その間にまな板と包丁を洗ってしまい、その後皿に控えていた野菜を投入する。
その野菜が葉物であれば、茎の部分のみを入れ、麺があがる直前で葉の部分を入れる。

この辺りで五分程が経過しており、ここで電気ポットでお湯を沸かし始める。

そうしている間に満を持して電子レンジが鳴る。
素早くそこから湯を少々、鍋へ注ぎ、熱々のフライパンにこびり付いた旨味達を削ぎ落としてゆく。
そして麺を入れて、バターと醤油を投下し、後は乳化してゆくのを待つ間に、便利麺茹で器を洗い、買い溜めておいた納豆をかき混ぜる。
そして出来上がったスパゲティを皿に盛り付け、コップに先程沸かした湯を注ぐと、丁度良い白湯となっている。

そうして食卓に並んだそれらを、十分程で平らげ、休む間も無く片付けに入る。
片付けといっても、最早鍋と食器を洗うのみであり、それが終わるとコンロ周りに飛び散った油や水を綺麗に拭ってやる。

そして食後の煙草をぷかぷかし終わった頃には、丁度三十分が経過しているという寸法なのである。

炒飯の場合は先程の麺が米に変わっているくらいのもので、主食が米か麺であるか、後は野菜に何を使うのかを除けば、基本的には毎日同じ工程で、同じ味付けの同じ食べ物を作っていることになる。


一見憐れな食卓であるように思われるが、これによって浮いた時間がどれだけ有用に扱われたかという事を思えば、その効果は計り知れない。


しかしここで、疑問を持たれた方もいらっしゃかもしれない。
そんな事ならば、できあいのものを買ってくれば、もっと時間を短縮する事ができるのではないか、と。
その事は僕自身、重々承知している。

勿論、その方が現在よりも圧倒的に時間を短縮する事ができるという事は明白なのであるが、こんな僕も一応は健康というものを意識しており、できあいのものは身体に悪影響を及ぼしそうな気がして、どうにも気後れしてしまう。
とはいえ健康的な料理を拵えているわけでもないのだが、自分で作ったものはなんとなく、身体に良い様な気がするという、根拠の無い安心感を調味料としている節がある。
ハンドメイドが持て囃される時代なのだから、自分の胃袋に入れるものくらいは、自分で拵えておいて損はない、そんな事を思う。


ざっと思いついた事を文章にしてみたが、ここまで読み返してみると、なんともくだらない話だ。
くだらないが書いてしまったのだから、人目につくところへ載せておかないと、文章が報われない。
ここまで読んでくれた人がいるのならば、すまない気がする。
乱文とまではいかないかもしれないが、美文には程遠い。
そりゃあ目的もなく文章をぴこぴこ打ち始めたのだから、とどのつまりはそんなものなのかもしれない。


それにしても、なんでこんなくだらない事を書いたのかって、それは間違いなく夕食の後に時間を持て余したからなのである。


9 コメント

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私も摂取派です。 (もにょっち)
2018-02-06 21:29:02
西田さん、こんにちは。
私も食事は摂取派なので、こちらの記事は、読んでいてなんとも小気味良い気分を味わいました。

ありがとうございます♪
Unknown (まな)
2018-02-06 21:36:33
ニシカズさんこんばんは!
30分摂取によって時間が余ってしまったんですね、ゆっくり過ごす時間は幸せですよね😊

私は今晩はハンバーグをこねました。
でも基本的には手抜き料理が大好きなので、パパっと出来るものしか作りません😊
なんせ主婦なので、毎日頑張っていたら、この先おばあちゃんになるまで続きませんからね😅

簡単なものでも料理できる男性は素敵ですね🤗
Unknown (よなが)
2018-02-06 21:44:39
パスタ・炒飯に合わせて、サラダはいかがでしょうか。野菜をささっと洗って盛り付けるだけ、ものの1,2分で栄養を摂取できます。体調を崩しやすい時季ですので、どうぞご自愛ください。
Unknown (まみ)
2018-02-06 22:17:59
ご飯に時間は取りたくないけど、旬の野菜はちゃんと取ってるんですね。可愛らしいです。
Unknown (えだまめ)
2018-02-06 22:38:25
私は大学生、現在春休み真っ只中なので朝起きればすでに家に誰もおらず、テーブルの上に箸置きと箸が綺麗に並んでいるのみです。なので朝、昼は基本的に自分で賄わなくてはならず時々主婦に混ざって平日の昼間からスーパーに出向いたりしている日々です。にしかずさんと同様、自分で作れば身体によさそうと思い、パスタやらなんやら作ります。でも、食べながら映画やテレビを見てだらだらし、さらに洗い物や片付けが後回しになってしまいます。私もにしかずさんのように効率よくやって時間を持て余したいものです。
Unknown (しおり)
2018-02-06 22:56:11
私も基本的に食べてるものが同じで、今は炒飯か1人鍋かの二択で生活してます。
今度ニシカズさんレシピのスパゲティ作ってみます!
Unknown (のんほま)
2018-02-06 22:57:21
「以前にも述べた」と書いてあったので、ブログを読み返してみたら2013年のブログでした。人間の3大欲求の一つなのに昔から一貫してて天晴れです。
主婦でも30分で全てはハードル高いです。効率的なのはバイト時代の賜物でしょうか。
Unknown (はるか)
2018-02-07 04:40:21
1人での食事だとメイン1品で済ましたい・洗い物を少なくしたいという気持ちが湧きますよね。
きのこ類を冷凍しているのをニシカズさんもやっている事を知り、嬉しく感じました。日頃ニシカズさんが自炊している姿が想像できてほっこりする文章でした。
Unknown (まゆた)
2018-02-27 05:13:07
クスっと笑ってしまいました。
不思議な料理ですが、開始から終了までの段取りもよく手際よくこなれたもんですね。

自分で作った料理は確かに体に良いと思います。添加物なども入っていないしね。ただ、電子レンジの多用はたんぱく質などの結合を変化させるらしくあまりよくないようですよ。

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