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明日劔に

『人生を左右する陰陽の法則』(あたま出版)
お勧めです。

『了凡四訓』との出会い

2010年12月04日 09時08分01秒 | ありのまま感じたこと
安岡正篤さんの著作の中に「立命の書『陰隲録』を読む」というものがあります。安岡正篤さんの数多い著作の中でもし1冊だけを選ぶとしたら、私はこの1冊を選びます。『陰隲録』とは『了凡四訓』とも言われている、大変有名な儒学の啓発本です。

袁了凡 (えんりょうぼん)は中国の 明の儒学者であり、官僚でもある人です。この方がわが息子に書いた人生訓が『了凡四訓』、あるいは『陰隲録』とも言われています。現在、安岡正篤さんの解釈本で読むか、または明徳出版社の『東洋庶民道徳』で読むことができます。

この本を読んで初めて運命と立命と宿命の違いを知り、以来占いというものに対する考え方が根本から変わりました。この本はある意味では占いをどのように捉えて人生を切り開くかというテーマが入っています。占いと言えば、どうしても当たる、当たらないものと判断してしまいます。その占いでいいことを言われれば気分がよくなる。悪いことを言われると気持ちが落ち込む。だからどうせなら知らないほうが却って、自らの人生を楽しく生きることが出来る。このように考えて占いを全く信じない人も多いでしょう。そんな人も、或いは占いを何でも信じてしまう人も、この1冊を読むことをお勧めします。なぜならば最終的にはこの了凡の生き方が最もすばらしい生き方であると私は思うからです。

了凡は幼少の頃、ある占い師に道端で出会います。その占い師が泊まるところがないため自宅の庵に一晩泊まっていただくことになります。そのお礼に彼の今後の人生を占ってもらったわけです。その占いはその後数十年ことごとく正確に当たっていきます。それを見ながら、了凡は人生とは始めから何でも決まっているんだと思い、無駄な努力はしないようになります。これが所謂宿命観にとらわれた姿です。ある意味で人生は設計図どおりで
自ら変更できる部分はほとんどないと思ってしまうわけです。

そんなある日思い通りの人生を歩む了凡が、雲谷禅師という著名な禅宗のお坊さんに出会います。その寺で数日座禅を組んでいるとき、その悟ったような落ち着きを見て、お坊さんが「君はいかにもよく修行を積んでいるようだ、いったい何を勉強したんだね?」と尋ねます。了凡は答えます。私はある占い師に自分の人生を占ってもらい、そのことがことごとく当たるのを見て、人生はほとんど意のままにならず初めから起こることが決まっているんだと悟ったのです、と。

この言葉を聞いた雲谷禅師は、かっかと了凡を笑い飛ばします。あきれた顔で「なんだ、さも落ち着いた姿でいるから、君が修行を積んでいたのかと思ったら、それでは単なる凡夫ではないか!」と。

そして了凡は雲谷禅師に自分が凡夫である理由を尋ねます。雲谷禅師はそういう人生観のことを宿命にとらわれた人生観というのだ、と教えます。本当の人生はその宿命を努力と修行で変化させていくことが肝心なことなのだ。そのためにはまず「積善」がすべての原点となる。善行を積みなさい、そうすればあなたが言われた占いはことごとく変化していくはずだよ、と教えます。これが「立命」です。

この立命という考え方を知った了凡の人生は、これ以降言われたとおりに善行を積んで行きます。そして雲谷禅師の言ったとおり、占われたことがことごとく変わっていきます。子供が生まれないと言われたことも、何歳の寿命だと言われたことも。それは雲谷禅師から授けられた課題を実現したからです。その課題とは善行を千個積むこと。悪いことをしたら逆に数を減らしていき、善行が千個に達したときには、希望が必ず叶っていくはずだと。

そしてその通りになって行った人生を自ら振り返り、わが息子に立命の大切さを説いた書が『了凡四訓』であり、『陰隲録』です。立命という言葉を知るきっかけになった安岡正篤さんの本との出会いは、私にとっては大きなターニングポイントとなりました。先に起き得る可能性のあることを心配するよりも、それを事前に知って変えていくことの大切さを教えてくれた本です。