朝7時半に目を覚まし外をのぞいてみると、昨日の天気予報どおりシトシト降る雨。今まで一日雨ということはなかったんですがどうやら今日は一日降り続きそうです。この日の朝食はホテルの無料サービス。無料ってことであんまり期待してはなかったんですが、種類も豊富でなかなか美味しかったです。もう少し温かい料理が出てくればなお良かったんですが…無料だから仕方ないか。
雨でも移動しないことには始まらないので、8時半ごろホテルをチェックアウト…といってもチェックイン時に清算を済ませていて、更に部屋の鍵は暗証番号式なのでフロントに寄る必要が全くありません。チェックアウトの行列ほどイライラするものはないのでこれは良いシステムです。
まずは国道39号を西へ進みます。北見・網走という2大都市を結ぶ幹線道路なだけあって片側2車線、通勤時間帯ということもありけっこうな交通量です。本当ならばサクサクと進んで層雲峡での散策の時間をたっぷり取りたかったのですが、いかんせんこの天気、きっと散策どころじゃないだろうと予想してこの日の第一目標を”道の駅スタンプ収集”に決定します(笑)。
そんなわけで少し寄り道ということで国道39号をそのまま直進、道の駅『おんねゆ温泉』に立ち寄りました。けっこう早い時間だと言うのに特産物ショップは賑わっています。”世界最大級のハト時計”とやらもあったんですが、時間は9時をちょうど回ったところでした…残念。
国道39号を少し戻った後、留辺蘂付近で左折して国道242号に入ります。こちらの国道は交通量は少なめ。金華峠という峠を越えますが勾配はゆるく、あっという間に越えてしまいます。しかし東側を走るJR石北本線の『常紋トンネル』は、戦前の凄惨なタコ部屋労働の現場となったトンネルで、今でも幽霊が出ると言われています。詳しくはこちらのページに書いてありますが幽霊話はともかくとして、たしかにこんな人家も何もない所によくトンネルを掘ったものだと感心させられました。
国道は遠軽市街への分岐を過ぎると交通量が一段と少なくなり、国道333号と名前を変えて再び線路に沿って西へ進みます。丸瀬布の市街地を抜けると道の駅『まるせっぷ』に到着。三角屋根が特徴の『木芸館』の中では多種多様なウッドクラフト製品が販売されていました。冷やかしだけでも充分見る価値ありです。
激しさを増す雨の中更に西へ。途中白滝市街の手前からは”旭川・紋別自動車道”がこの先上川の手前まで部分開通しており、しかも通行料が暫定的に無料ということでほとんどのクルマはそちらの道を通るのですが、自分はどうしても訪れたい場所がありました。
そのまま下道で市街地を抜け、通るクルマの姿が全くなくなった所で到着したのがそのどうしても訪れたかった場所・JR石北本線の『上白滝駅』です。
どうですなかなか味のある木造駅舎でしょう。しかしこの駅の凄さは駅舎の中に入って初めてわかります。何が凄いのかというと…
美しき究極ダイヤw(クリックで拡大。でもブレちゃってます…)
なんとこの駅に停まる列車は一日上下線各1本ずつ!始発電車が最終電車という究極ダイヤ…凄すぎです!列車だけを使うと仮定した場合遠軽方面へ行く時はなんとか日帰りできますが、上川方面へ行くには必ず1泊しなければなりません。こんな駅日本広しといえどもここだけです。
それにしても何でこんなダイヤでこの駅を残しておくんでしょう。普通ここまで本数が削られたなら間違いなく廃駅になるはずです。ということはこのダイヤにも関わらず利用者がいるということか…wikiには「2005年現在で定期利用者は1人」と書いてあるし。実際駅前の国道沿いには民家がありますし、駅のすぐそばの建物の中にも人影がありました。おそらく周辺の人は皆マイカーを利用するんでしょう。このダイヤじゃ普通は利用する気も起きないでしょうしね。
う~んでも国宝級のこの究極ダイヤ、いつまでも残ってほしいものです。
上白滝駅を後にし、少し進むと国道から少し離れた場所に道の駅『しらたき』がありました。ここは全国でも珍しい自動車専用道路のパーキングエリアとして機能している道の駅。一見旭川紋別道からしかアクセスできないように見えますが、下道の国道333号からも訪れることが可能です。ただしここから旭川紋別道への出入りはできません。駐車スペースもそれぞれ別の場所にありました。
案内板の温度表示は9月上旬のお昼近くにもかかわらず『14℃』。この中半袖でいる自分はかなり浮いています(笑)。
道の駅『しらたき』の案内板
再び国道に戻り北見峠を越えていきます。勾配がなかなかきつく急カーブも連続する峠らしい峠ですが、新しくできた旭川紋別道の方はこの峠を長いトンネルで一直線に貫いています。このためわざわざこちらの峠を走るクルマはほとんどいないだろうと予想はしていました。
…が、その交通量の少なさは自分の想像の遥か上をいっていました。峠越え区間15キロを走ってる間、すれ違ったクルマはわずかに1台だけ。しかも同類の「わ」ナンバーです。旭川紋別道が将来有料化されればこの峠を越えるクルマも増えるんでしょうが、無料開放されている間はずっとこんな状態が続くんでしょう。初心者が峠を走る練習をするにはもってこいの道かもしれません(笑)。
峠を越えると旭川紋別道と再び合流。国道273号と名前を変えて線路に沿って進みます。ここでお腹が減ってきたので一旦上川市街に入り、国道沿いの『ドライブインポケット』で昼食とすることにしました。
ライダーやトラックドライバーで賑わう何の変哲もないドライブインでしたが、注文した『天丼』が出てきてビックリ!ご飯が全く見えないくらい天ぷらが山盛りです~。かのやよい食堂には遠く及びませんがこれは嬉しい♪全部平らげてしまいました。お店の場所は国道273号と39号の交差点を上川方面に700mほど進んだ先、左手にホクレンのSSがある所の向かいです。お腹が空いたらぜひ!
ドライブインを出発したら今度は国道39号を南東へ進みます。そう、この道実は今朝北見~留辺蘂間で走った国道。道の駅『おんねゆ温泉』を越えてどんどん走ってくるとここに辿り着くのです。道の駅と上白滝駅に寄りたかったばかりにえらい遠回りしています。そんなわけでここは旭川~北見・網走を結ぶメインルート。交通量もなかなかの量でした。
しばらく走ると一大観光地である『層雲峡』に到着。天気が良ければここからロープウェイに乗って黒岳の5合目まで登る予定でいたのですが、この大雨では間違いなく雲の中。温泉街を素通りして近くにある滝を見に行くことにしました。
国道を2~3キロ走るとトンネルの手前に旧道への入り口があり、その奥が駐車場になっています。だだっ広い駐車場にいたクルマはわずか3台だけ…やはりこの天気じゃ誰も来ないのか。
駐車場はガラガラ。写真屋さんも暇そうでした。
そして駐車場のすぐそばに目的の『銀河の滝』と『流星の滝』がありました。滝が流れ落ちる姿だけは雨の中の方が絵になりますね。
(左)銀河の滝
(右)流星の滝(共にクリックで拡大)
結局層雲峡の滞在時間はわずか1時間弱でした。まぁこの天気じゃしょうがないですね。次来る時はぜひ紅葉の季節に来たいものです。
『銀河トンネル』という長い長いトンネルを抜け、大雪ダムに差し掛かる少し手前で国道273号へ入ります。ここから一気に交通量が少なくなりました。道は大雪ダムの縁をなぞるように進み、両側に原生林が広がる山奥へと入っていきます。走っている道以外に人工物が全く見当たらない、完全に人口ゼロの地域です。
国道は三国峠を『三国トンネル』で抜け、十勝支庁に入りました。このトンネルを抜けた所が北海道の国道の最高点(1139m)となっていて、運が良ければ眼下に雲海を眺めることができる場所として有名な所です。が、この天気ではそんな景色が望めるはずもなく…(苦笑)。
三国峠より。この時はまさに”豪雨”でした
ちょうど横に茶屋のような売店があったのですが、中では雨でずぶ濡れになったライダーたちがストーブに当たってました。半袖で店内に入ってきた自分にそのうちの一人が一言、「同じ所を走ってきたとは思えないなぁ~」。たしかにそうかも…(笑)。
相変わらずほとんど通るクルマのない道をを進みます。糠平湖のほとりに『タウシュベツ川橋梁』という北海道遺産があったので行ってみたかったのですが、この大雨の中林道を進むのは気が進まないのでそのまま素通り。代わりに湖の南岸にある『上士幌鉄道資料館』を見学してきました。
ここも他の廃線跡同様、1987年に廃線となった国鉄士幌線『糠平駅』の跡地に建てられた資料館。中には士幌線の歴史が写真入りのパネルで見やすく紹介されており、その他にも実際に使われていた制服・保線用具・看板などが沢山展示されています。鉄道ファンのための施設だろうとタカをくくって入ったのですがとんでもない!この士幌線、他の廃線にはない興味深い歴史がいっぱいありました。
まず全線開通時にはなんとさっき走ってきた三国峠の麓にある”三股”という所まで列車が走っていたんだとか。3日目の朱鞠内湖でも「こんな所に鉄道があったのか!」と驚きましたが、ここは更に驚きです。なにしろ国道沿いに人家というものが全く見当たりませんでしたから…。しかしそんな状況なので廃止になるかなり前からここ糠平~三股の間は、鉄道を”休止”という扱いにしてバスによる代行輸送を行っていたそうです。しかしバスでも採算が取れないほど乗客数が少なかったため、日によってはジャンボハイヤーや普通のタクシーが”代行バス”として走っていたんだとか。
資料館のおばちゃんの話によれば鉄道の廃止後も三股までは1日1本の代行バス(というかタクシー)が細々と走り続けていたのですが、ついに2003年をもって代行バスは廃止(その時の利用者数は年間のべわずか40人!)。ただ三股には現在も2軒の民家が残っていて、うち1軒は『三股山荘』という喫茶店として営業しているそうです。
他の廃線にはない、複雑な歴史を持つ士幌線。話を聞いていてとても興味深かったです(こちらのページに詳しい歴史が載っています)。前もってこの歴史を知っていれば国道ももっと注意深く走ったのに~。
糠平を後にすると国道の交通量も若干増えました。もうこの日は宿泊地である帯広に向かうだけなので、ここからは怒涛の道の駅めぐりをスタートさせます(笑)。
まずは道道468号~国道241号と進み、道の駅『足寄湖』へ。足寄湖を望む小高い丘の上にある道の駅。建物がチーズ工場に併設されていて、チーズの製造工程を見学できるほかチーズ製品の売店も充実しています。しかしサクサク進むためにスタンプだけ押して退散…。
道の駅から望む足寄湖。大雨で濁ってます…
足寄湖を後にしたらそのまま国道241号を進み、わずか15分ほどで足寄町の中心部にある道の駅『あしょろ銀河ホール21』に到着です。
ここは今年の4月に廃止されたばかりのふるさと銀河線『足寄駅』だった場所。実は去年の旅行の時もここを訪れていて、1年ぶりの再訪です。去年訪れた時ははまだ”道の駅”としてではなく、普通の”駅”として機能していたこの場所。たった1年間のうちに鉄道が廃止になり、主を失った駅舎はなんだか寂しげでした。街が変わらず活気があったのがせめてもの救いかなぁ…。
今度は今来た道を逆戻り。国道241号でさっき訪れた足寄湖を通過し、しばらく道なりに走ります。小さな街が点在していることもあって交通量はけっこう多め。とはいってももう既に十勝平野に入っているので坂道で遅いクルマに引っかかることもなく、とても快適なドライブが楽しめます。そしてついに雲間から太陽の光が!
上士幌でさっきまで走っていた国道273号と合流し、道の駅『ピア21しほろ』に到着。すっかり雨は上がって、傾きかけた夕日が辺りを照らしています。「でも今さら晴れても遅いよ…」とか思いながらスタンプを押して建物を出ると、そこに現れたのは…
おぉぉぉ!(クリックで拡大)
虹です!しかもきれいな半円形!ここまで美しく見れたのは本当に久しぶり。道の駅の店内にいた人も皆外に出て眺めていました。雨にたたられた一日だったけど最後にこういう景色が見えると嬉しいですね。
すぐに消えてしまうかと思ったら消えるどころか更に外側に虹が浮き出てきて、珍しい”二重虹”に!十勝平野にかかる2本の虹の姿…いやぁ最高です♪
うっすらと外側にも虹が(クリックで拡大)
虹は15~20分くらいで消えてしまいました…日も暮れかかってきたので道の駅巡りもラストスパート。ナビの案内通りに碁盤の目のように走る道を走ります。ここの辺りの道も畑や牧場の中を貫く一直線の道で快適そのもの。特に十勝平野の地平線に夕日が沈んでいく時の美しさといったら…クルマを停めて眺めたかったんですがけっこう交通量が多いので運転しながら眺めました。
その後国道274号沿いの道の駅『しかおい』から、再び国道241号に戻って閉館時間ギリギリの道の駅『おとふけ』を訪問してこの日の道の駅巡りは終了。すっかり日も暮れて辺りは真っ暗です。
さすがに運転し疲れたのでこのままホテルに直行したいのですが、今夜はこの旅最後の夜、コンビニ弁当で済ますわけにはいきません。帯広といえば豚丼!ということで、ホテルの近くにあった『十勝豚丼 いっぴん』に入りました。店内のレイアウトは何となく”すき家”風。「マズい失敗したか!」と思いましたが、運ばれてきた豚丼を口にした瞬間そんな思いは消え失せました。
今まで”松○”や”吉○家”で食べてきた豚丼は何だったんでしょう…タレの味といい、豚肉の旨みといい全てが最高。これが本物の”豚丼”なんですね…。正直いつも食べてるのよりもちょっと旨いくらいかなと思っていたので、まさかここまで美味しいとは。一度食べるともう二度と”松○”とかには戻れません。てか全くの別物です(笑)。
帯広の豚丼屋はのれんがかかっててなかなか入りづらいところも多い中、ここは女性の一人客でも気軽に入れますし、だからといって味が落ちてるということもありません。現地でも人気が高いお店の一つのようですよ♪
さぁ後は寝るのみ。この旅最後の宿は西帯広駅の近くにある『ホテルグランディ2』です。じゃらんで見つけたこのホテル、驚くべきはそのお値段でなんとシングル3500円!これでいてバス・トイレ付の冷暖房完備です。到着して玄関を入ってみると”ホテル”というよりは”寮”という雰囲気。管理人室のような小窓からおばちゃんが笑顔で迎えてくれました。
少し不安があった部屋もなかなかのモノ。普通のビジネスホテルと比べても全く遜色ありません。廊下を通る人の足音などはよく聞こえてしまいますが、少なくとも部屋の設備などは網走の『北海ホテル』よりは充実してます(笑)。
シングルルームの室内
いよいよ最後の夜になってしまいました…明日帰ると思うとやっぱり寂しいような残念なような気持ちになります。最終日は再びシーサイド・ドライブ、この旅最後の北海道の景色を目に焼き付けたいと思います。
それにしても今日は無理して道の駅回りすぎたかも…(笑)