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悪魔と神様

2021-09-17 16:34:06 | 縄奥小説


俺は悪魔歴が数百年の一応課長職、先日仕事先のロスから日本に転勤して来たんだか
ヒョンなことから神様と出会っちまった!。この先どうなるんだか・・・・・ 

 


◆◆◆◆◆1番目

 

 おじさん! そこに居ると車が来て危ないよ… もっとこっち来ないと引かれちゃうよ!
「高校生くらいのセーラー服の女の子」

 おじさんてばあー! ホラホラ車が来て危ないってっ!
「突然の俺の服の襟首を掴んだ」

 俺は後ろに転倒して歩道へと女の子に引き摺られた……

 お前 凄い力だな!? 何かやってるのか!?
「俺を引き摺った女の子に仰向けで聞く俺」

 空手! 空手って言ってもまだ二段なんだけど……
「セーラー服に身を包み両手前側でカバンを抱える女の子」

 それより お前! 俺が見えるのか!!
「上下 靴も帽子もサングラスまで黒尽くめの俺」

 うんっ! でもどうしてそんなこと聞くの? おじさんオバケじゃないでしょ?
「俺の言葉にキョトンとして不思議そうな顔付の女の子」

 本当に俺が見えるのか?
「起き上がりながらもう一度聞く俺」

 おじさん! 大丈夫? さっき頭とか打ったんじゃないの? この先に病院あるから!
「女の子は俺にそう言うと信号が青になって急ぎ早に横断歩道を駆けて行った」

 何故だ! 何故 俺の姿が見えるんだ!?
確かに最近、仕事に追われて休む暇もなかったが… だからと言って人間ごときに見えるとは
待てよ… じゃぁ もしかしたら別の人間にも見えてるかも知れんな……
「俺は交差点の角に立ち通る人間達に体当たりを繰り返した」

 妙だな! すり抜けるってことは見えてないはずなのに……

 俺の嗅覚は人間の言葉で言えばセンサーと同程度の働きを備え同時にレベルコントロールも
彼女が残した残像を見ながら嗅覚と同時に使うことで彼女を追跡できるのだ……
だから、俺は地上界に居るときには必要以上に上を見て歩くことはなく殆ど目を閉じている
太陽の紫外線が俺を攻め立てるからだ… 例えそこに建物があろうと海だろうと
俺には通用しない すり抜けてしまうから~全く! 問題ない……
問題無かったはず… なんだが… ドスン!!
「キャアァー!!」

 あっ! こ… これは失敬! ぅん?
「今、何かにあたったが…」

 目を開けて辺りを見ると、派手なコスプレ見たいな衣装のミニスカートのお姉さんが
地面に転んで大股を開いていた!
スケスケのネグリジェのような薄い生地で出来たコスチューム、殆ど全身が見えるほど
オマケに下着までもが…… ゲッ! 陰毛まる見え!
「ヤバイ! 関わり合うのは止めとくか!」

 俺は転んだ女とは目を合わせないように知らん顔でとおり過ぎようとした……

 ちょっとおぉー! 待ちなさい!!
人にぶつかっておいて、黙って立ち去るのは良くないわ!
起すなり謝るなりしてから行きなさいよぉー!!
「えらい剣幕の怒りようの女」

 それでも俺は女とは目を合わせようとせずにスタスタ先を急いだ……
さっきの女子高校生と言い 今の気の毒な女といい 今日は随分と俺の身体が見えちまう!
とっとと 離れなきゃな!
ぅん? 何か後ろに居るなっ…… 俺の体のセンサーは人間言う軍事力並みの能力
特に熱を帯びたものが近付くだけで数万キロ後方でも俺には感じてしまう

 ちょっとぉー! 待ちなさいよおー!
「突然 後ろから俺の左腕を掴んだ女」

 なにっ! 掴めるのか! 俺を掴める奴と言えば同業者の連中と……
まさか!?…… 俺は捕まえた主を見ると匂いを嗅いだ……
「クンクンクンッ!」

 ソフトクリーム!?
「俺は後退りしてしまった」

 噂には聞いたことがあったが本当に居たなんて!
俺はプルプルと身体を震わせ 大笑いしてしまった!!
「うわーっはははははははははははは~♪」

 居たよ! 居た 居たぁー!
「うわっははははははははははは~♪ 踊る俺の心」

 へぇー♪ 神様ってのは気の毒な女だったのはなぁー♪
うわーっははははははははははははははは~♪
「心の叫びを間違えて口から出してしまっていた俺」

 ちょっとおぅー!! アンタさっきから何を一人ブツブツ喋って大笑いしてるのぉー!!
人にぶつかったら どうするんだったかしらぁ~♪
「俺の腕を掴んだままでホッペを膨らませて口を尖らす神様の女」

 そう言う人間にはねぇ~ 幸せは来ないんだからねっ!!!
「俺の腕を離すと目の前に来て説教たれる女」

 あのぉ! 俺は人間ではないんですが……
それにホラ! さっきアナタは僕の腕を掴んだじゃないですか?
ですから僕は人間では無いので……
「身長190センチの俺より遥かに小さいスケスケコスチュームの女に話す俺」

 アラッ… 確かに言われて見れば……
「下から俺をまるでアニメのキャラのような顔で不思議そうに見上げる女」

 それで…?
「見上げる女に一言いう俺」

 謝って!
「キョトンとした顔して見上げながら俺に一言」

 ふうぅ~! ハイハイ! どうもすいませんでした!
「シツコイ女に上から頬を歪めながら謝罪の弁を述べる俺」

 ハ~イ♪ おりこうさんでしたぁ~♪
アナタにも幸福が訪れますようーに♪ お祈りをして上げま~す♪
「勝手に喜んで踊り出した女」

 これ幸いと一人で踊ってる女を放置して俺は先を急いだ!
「スタスタスタテスタスタスタスタスカタスタ…」

 待ちなさい! 私が幸福の踊りを踊ってあげてるのに何故 逃げるのですか!!
無礼は許しませんよ!!
「小さいくせに声を張り上げて怒り出す女」

 無礼だとぉ! 小娘…! 下手に出てればいい気になりやがって!
お前が勝手に踊ったんだろう! 頼みもしねえのに勝手に踊りやがって!!
もう着いて来るな! 解ったか! 小娘!!
「俺は頭がブチ切れて怒鳴ってしまった」

 ……………
「ジュワアァァァァーーーっと目に涙を溜める女」

 あっ! いやっ! そんなつもりじゃー! いやっ だから その なんだ その
「涙目になった女の前でシドロモドロになってしまった俺」

 とにかく、もういいから俺には構わないくれ!
俺にも仕事があってなぁ 仕事しないと給料も減らされちまうんだよ!
なっ! 解ってくれや! 
「俺は何故か必死に涙ぐむ神様の女に説明してた」

 仕事ってぇ~ 何してる人なのぉぅ~
「涙がホッペを伝い地面に… 下から俺を見上げて小声の女」

 すると女は急に鼻をヒクヒクさせて辺りをキョロキョロと見回したかと思うと
突然、後ろに素早く数メートルジャンプすると、それまでの可愛い顔の女の子の目は
白く光を放ち、その目は俺に向けられた!!
「戦闘態勢に入った無音なの神様」

 俺は女が俺の正体に、よーーーーやく! よーーーーーーーーやく! 気付いたと悟った
俺は身構えることもせずに その女を完全に無視して放置 そのまま女子高校生の跡を追った
辺りは神々 特有の強い光が照らし 俺はサングラスをして帽子を深く被るとマントで
身を包むようにしてその場を去った……

 因みに俺は人間界では悪魔と呼ばれ人間に宿った悪魔達を管理監督するのが仕事で
一応、大手組織の課長と言う肩書きを貰っている……
あぁ、そうそう そう言えば同僚に言われたんだが 俺は阿○寛に瓜二つだと言われた事が
確かに身長も190センチだしメモギョロ目で口も鼻もデカイ…
正確も至って温厚だと思うが同僚からはオドオドしていると言われたこともある……
数日前に出張でロスから帰国したばかりで 今度の仕事先は日本でと言うことに
だが、まさか 伝説の神様に出会るとは! さすがは大和の国だ!
しかし~ 気の毒な女が神様とは いやはや~ うわっははははははは

 

◆◆◆◆◆2番目

 

 おい! 何で俺の後を着いて来るんだ?
「後ろから着いてる気の毒な女の神様に振り返らずに話しかける俺」

 アナタが悪さをしないためよ!
「キツイ声で俺を威嚇せんとするような話し方をする神様」

 悪さ? ふあっははははは! こいつは驚いたな! 悪さと来たもんだ!
で、一日中着いてくる気なのかい! 神様さんよぅ しっかし何だなぁ~
神様って自分で自分に普通… 様はつけんだろうに~♪ ふあっはははははははは
「後ろから着いてくる神さんに爆笑してみせる俺」

 そうやってバカにしてればいいわ! 今に天罰が下るから!
「怪訝な声で後ろから話しかける神さん」

 バカ? バカになんてしてないそぁ~♪ ただ、スケスケの服着て下着まで見えてて
オマケに陰毛まで見えてるような服装の女は 例え神さんだろう笑われるのが普通だ
見てみろ! 普段から自分の姿の見えない人間しか相手にせんからだろう
そのバカっぶりの服を~♪ カッカカカカカッ~♪
「歩きながら後ろの神さんに忠告する俺」

 キャアァーー! みっ 見えてるの?? アナタ私の服の下が見えてるの?
「突然立ち止まって一人前に悲鳴を出して俺に聞く神さん」

 ふっ! 全く気の毒な女(かみ)だぜ! だーから! 俺は人間じゃねえって!!
アンタの服は天界用だろう? 人間以外のものには丸見えだし 俺がその気になりゃ
透視もできるんだが 生憎と俺はガキにゃ興味がねえんでなっ! カッカカカカカカ!
「俺は完全に気の毒な女(かみ)をバカにしていた」

 お前! 見たのか? おいっ! 私の胸を見たのか??
「慌てて俺の左側に並んだと思うと俺に食って掛かった神さん」

 あぁー! 大したいい胸でいらっしゃいますことぉー! あっははははははは~♪
今更、手で押さえたって始まらんだろう♪ 着替えて来い その方が早いぞ♪
「俺は神さんを天界に戻させようと考えていた」

 そんなこと言っても無駄だぞ お前の心は手に取るように解るでなぁ~♪
「俺の心を見抜いて強気の神さん」

 そーうかい! じゃぁ タップリと俺の心を覗くがいい!
「俺は前回で嫌らしい男女の行為を目一杯に心で思った」

 キヤァァァァーーー! なっ 何てこと考えてるのよぉー!!
アナタ! それでも人間なのぉー!
「突然、俺から数メートル後ろにジャンプしたと思うと急に羞恥心に駆られた神さん」

 だーから!! 何度も言わせんなよ!! 俺は人間じゃねえって!!!
「後ろに飛んだ神さんを怒鳴る俺」

 見ないでよぉ~… 見ないでぇ~… お願いだから見ないでぇ~…
「ポタポタと涙を零しながら左手で股間を押さえ右手で胸を押さえる神さん」

 情けねえ神様だな~ お前! 子供なのか? 年は何歳なんだ?
お母さんやお父さんは何処に居るんだ? 何なら俺が連れて行ってやろうか?
俺が神さんに近付こうとした瞬間 得意の変化が始まり強い光が辺りを覆った
神さんの目は予定通り強く光を放ち 眩しくて俺を寄せ付けようとはしなかった
だが! 俺にはサングラスがあって神さんの光は紫外線を殆どカットし
目に優しい光へと変わった… 流石は文明の力
「俺はサングラスに感心した」

 来るな! 来るな! それ以上 近付くな!
「黄色い声で俺を威嚇する神さん」

 光に覆われ真夏のように暑くなった俺は神さんを放置して天高く舞い上がり
しばしの休憩… 空の上で横になって寝転がると ようやく神さんの得意の変化も終わり
下からフワフワとシャボン玉のように舞い上がりようやく俺の横へ来た神さんに
儀式は終ったかい? ウフッ♪ うふふふふふふ♪
「神さんをバカにする俺」

 しかし~ 何だなぁ~♪ 神さんの得意技は俺には全然効かんのだがなぁ~
一体、ありゃ何なんだい? 俺にはサッパリ解らんのだが…
「寝転がる俺の横で風に飛ばされまいとして必死に平泳ぎで居場所を確保する神さん」

 あれか! あれはな幸福光線と言って 幸せな心を齎す私たち神々の神聖な力
あれに覆われた者は全てが幸福感を得られると言う荒業なのだ!
「自慢げに平泳ぎを休まず続ける神さん」

 ふぅ~ん そっか! 俺にはただの眩しい光にしか見えんのだが……
後は何か得意技は無いのか? あるならやって見せろ! 暇つぶしに見てやろう
「宙に浮いて真横になって右肘を突いて頭を乗せる俺」

 ないっ!
「必死に平泳ぎする神さん」

 ないのか? 本当にないのか? 神様なんだろう? そんなんでいいのか?
「平泳ぎの神さんに聞く俺」

 ない物はない! 私たちは人間に幸福感を与えるのが務めだからなっ!
「当たり前のような顔をする少し疲れて来たような神さん」

 意味ねえだろう! 幸福感ってことは感じるってだけだろ
そんなもん無意味だろうが!
俺らはなぁ~ しっかりと人間達に富を与える替わりに魂を頂く!
だから人間達は皆が喜んでくれる! 前の日まで貧乏だったのに翌日には大金持ちだ♪
それに引き換え お前ら神は何だ? 幸福感? 感じるだけかい?
うわっははははははは こいつはいいや~♪ あっはははははははは~♪
「俺は鼻で神さんを笑い飛ばした」

 仕方がなかろう! こっちはタダなんだから! タダなら気分だけで十分だろう!
「疲れながらイジケ顔して辛そうな神さん」

 でたっ! 出ちゃったよぉ~ 神さんの本音っ!! 出たー 出た出たー♪
そうだよなぁ~ やっぱりタダには限度があるわなぁ~ あっはははははははは~♪
「必死に平泳ぎする神さんの目の前で手を叩いて受けまくりの俺」

 ところで? 神さん 疲れないの? さっから頑張ってるようだけど~♪
「神さんの顔は疲れからか疲労が滲んでいる様子」

……………
「無言で必死に平泳ぎする神さん」

 ホラ! 掴まれ! 俺は左手を差し出した瞬間 バシッ!
「俺の手を払いのけた神さん」

 お前! 疲れ果ててる私に何にをしようと企んでるのだ! 疲れて心が読めん! うぅ!
まさか… まさか! 無理矢理泣き叫ぶ私を! 自分で想像して恥ずかしそうに両手で顔を
覆った瞬間だった…… ピュゥーーーーーーーーーーーーーー!!
「風に流され何処かへ飛んで行ってしまった」

 仕方のねえバカ女だぜー!
「俺は心配になって探しに飛んだ」

 数分… 中国辺りまで来た時だった 下の湖からソフトクリームの甘ったるて匂い…
下の湖へ降りると湖面に仰向けになって浮いてる神さんを見つけた
バテて息するのもやっとの神さんに手を差し伸べようやく手を繋いでくれたものの
神さんは湖面の水で全身ビショビショ状態 空に飛んで行き術を使って神さんを瞬時に乾燥
手を繋いだままで宙に浮いてゴロ寝する俺と神さん……

 のぉ! お前! 悪い奴ではなさそうだなぁ~♪
「俺の右手にしっかり繋がる神さん」

 お前! 人間の身体や心の痛みは解らんだろ!
「右側に浮いてる神さんに話しかける俺」

 あんたら神さんは人間や動物たちが怪我や病気をした時に直してやれる能力があるだろ!
だが、直すことしか出来んから人間達の痛みの度合いは正直、解らんだろう
俺たち悪魔は人間や動物達に確かに災いを齎すかも知れんが人間達の痛みの度合いは知ってる
例えば 神さんたちには虫歯の痛みは解らんだろう?
だが、俺たち悪魔には本人の痛みは我が身のように解るんだよ……
直すための強力な業を持っている神さんが人間の痛みを解ってやれないってのがモドカシイな
俺たちは痛みの度合いが解るから取引も成功するんだが それがそんなに罪なことなのか? 
時々、解らなくなることが最近 多くてねぇ ふっ!…

 無言で居ると思ったら 俺と手を繋いだまま眠ってしまったらしい神さんだった
俺は手を繋いだまま地上に降り立ち何処か神さんを休ませてやれる場所を探した……
全く! これじゃ人間階のテレビとか言うやつのCMと同じじゃないか! ふんっ!
俺はハ○ムさんじゃねーぞ!

 


◆◆◆◆◆3番目

 

 俺は人知れず仕事に励む… 一生懸命コツコツと
この日本と言う国にも相当数の悪魔の研修生が悪魔の国から送り込まれているが
その殆どは神と悪魔教会の話し合いによるもので、大抵最後は悪魔が滅びるか立ち去るかの
ストーリー展開を余儀なくされるが、その報酬たるや、一人の悪魔憑きに対して
そうだなぁ~ 日本円にして数億円とも言われているのが実情だ…
そのくせ人間に獲り憑くのは研修生やアルバイトの連中で日当は確か4000円くらいだ
まぁ~ その日の食い扶持(くいぶち)とタバコ銭くらいにはなるだろうが
最近は何せ最近の研修生と来たら悪魔界にもあるんだが 労働基準法が煩く
やれ残業手当だの休日出勤手当てだの権利ばかりを主張する割にはお菓子で育った所為か
頭の弱い連中がやたらと多い… 俺も管理だの監督だの言う立場だが実際には
宥め(なだめ)役のようなもんで 次から次から神の国から魔界の方へクリームが…
やれ、神父が聖水をまいたのに暴れてくれないだの、宙に浮いてくれんだの…
まぁ~ 人間共も… あぁ! こりは秘密だった… まぁ何れと言うことで
仕舞いにぁ 女に獲り憑いて女の子の身体にイタズラする変態まで現れる始末……
確かに、魔界の女と人間の女は対して違いはないからかも知れんが…
神父が悪魔祓いをするのに研修生の部屋に入ると鏡に向かってウットリしてるバカもいて
近頃の研修生は弛んでると言うか素直と言うか……

 でっ! 研修生の管理をしながら俺の地道な業務は、ズバリ! 人間共の魂を奪う!
まぁ~ 人間界のテレビや映画ではクールで背中に羽の生えた二枚目が主なんだろうが
そんな奴は何処にもいねぇ 家庭もあれば家のローンに車…
昔は確かに羽がついてて飛んでた時代もあったが あれは何のことはない
人間界で言うところのハンググライダー見たいなもんで 移動の手段があれしかなかった
飛ぶときの労力が半端じゃないし、まぁ 落ちても死なないから使うだけ
実はあれも 人間共を恐がらせるために神から魔界にイベント要請があって
客商売の魔界としては断り切れなかったと聞いている…
まぁ! 神と魔界の切っても切れん腐れ縁と言うやつだ それも知らんと付き纏いやがって
小娘(かみ)が… どうせ神の研修生か煽てられて教室から追い出された口だろうが
本人が それに気付いてねえから凄いもんだ!

 話しが反れちまったな!
よしっ! 今日の悪魔としての俺の仕事はっと!
人間共の乗る車とか言う奴にちょうい仕込みを入れて… とっ!
俺は一生懸命、車のブレーキを壊してる最中よ! どうだ! これが立派な悪魔の仕事だ!
今日の俺は既に6台もの車のブレーキに細工を施してやったからな! これで魂6人分の稼ぎ
悪魔が獲り憑いて一人ずつの魂なんか奪ってたら… ふんっ! 時間掛かる上に経費まで!
こうしてせっせと車のブレーキを壊して回るほうが効率的っつうわけだ!

 よお~し! これで今日のノルマは達成したってぇ~わけだ!!
ぅん? 今確か… ヒラヒラしたものが… ぅん?? 俺が壊した車の下に何か……

 おいっ! お前何処から沸いて来た? 何してる? おい!!
「車の下に潜ってる例のバカ女に声をかけた俺」

 直してるのよ!!! 罪も無い人間の命を易々と渡してなるもんですか!!
「車の下に潜って手を翳し神の力で修復している女」

 おいおい! お前にもそんな技があったとは驚いたが~ 無理だ!!
俺の方がお前よりはパワーは上だし 俺が壊したものは神の世界の教官でもギリギリだ
やめろ~やめろ あっははははははは~♪
「鼻で笑う俺」

 煩い!! アンタなんか何処かへ行っちゃえ!!
「車の下に仰向けに潜ってえらい剣幕で俺に怒鳴り散らす神(おんな)」

 フッ! 威勢だけは認めてやろう! だがっ!! これでどうだ!! ムッフフフフ♪
「神(おんな)に近付いた俺」

 キャアァァァァーーーー! ちょっと!! 何処触ってるのぉー!!
ヤメテー! ヤメテェェェェーーーーー!! ヤーダァァーーーーーー!!
許してぇーーーーーー!! アハハハハハハハハハーー ヒィィィィヒッヒツヒッヒッ!!
「俺は神(女)の靴を脱がせた」

 どうだー! 楽しいかぁ~♪ ムッフフフフフフフフ~♪
「大暴れする神(女)を見て嬉しい俺」

 これに懲りたら もう止めてお家に帰んな!
俺は神に言い残して 近くのラーメン屋に入った!
もちろん店主には俺の姿は見えてないだろうから通行人の人間の女の中に入っての食事タイム
ラーメンなんか食うなんて思ってなかったのに突然食いたくなったら霊か悪魔のどっちかだ
俺は出て来た醤油ラーメンを食ってる時だった…
薄いスケスケの服を着た神(おんな)が入って来て俺を物凄い目で睨んだ!
見ればスケスケドレスは油塗れになって顔も手も真っ黒 その上 俺がくすぐった時の傷が
あちこちに生々しく… 仕方ねえからチチンプイプイのプイって全部を一瞬で直してやった
「どうだ!これが魔族の力だ! 思いしったか! 俺は心の中で神(おんな)に語りかけた」

 お前らの幸福感を感じるだの 苦しみからの開放感だのとわけが違う!
俺ら魔族は痛みを消し裂けた肉を元通りにし オマケに洗濯まで一瞬で出来るんだ!
これに懲りたら 俺の前から姿を消せ! さもなくばお前の魂を消すことに…
おっと! こりゃ少し大人気なかったか……
お前… 神と魔族の地位協定って知ってるか? 知らんか? だろうなぁ~
ガキに解るわけねえもんな~ フッフフフフフフ♪
「スーツ姿のOLの中でラーメンを食う俺」

 知ってるわい! そんなことも知らんで教官は務まらんわい!
「今までに見たことも無いほどに豪気を強め言葉までも乱れる神(おんな)」

 教官?? 務まる?? ふっ! わかった わかったから何処かへ消えろや!
「耳を疑いながらも面白くないジョークに苛立つ俺」

 俺は腹を満たすとOLから抜け出て玄関に立つ神(おんな)には見向きもせずに
店を出ようとした……

 ねぇ~食べたら代金を払うんでしょう♪
「すれ違いざまに不気味に微笑みながら語り掛ける神(おんな)」

 チッ! 俺を怒らすなよ!!!
「そのまま離れようとした」

 代金は払うものでしょう!!! 不気味な小娘の声
「外に出た瞬間 俺に対して言葉をかけた神の声に強い殺気を感じた」

 うるせぇなぁ~!! 小娘!!!  ビユウィーーイン!! バシッ! バシッ!
「後ろに手を向けて電撃を食らわしてやった俺」

 面倒くさいのが嫌いな俺は天高く宙を舞い地上数千メートルで止まった
ここなら小娘もついてこれまい! ふっ! ザマー見ろ!
何処の世界にラーメンの代金払う悪魔がいるかってんだ!


 何をブツブツ独り言を言ってるの~♪
代金を払うの? 払わないのぉ~♪
後ろから突然声を掛けられた俺は一瞬全身を強張らせた!
辺りを見ると 俺は空に居たはずなのに ラーメン屋の玄関先に居た!!
どう言うことだ! そんなバカなっ!!
俺は恐る恐る神の方を振り向いた! なにっ! 
ないはずの心臓が飛び出しそうになった!
「ガキだったはずの神が成人して絶世の美女に変身し辺りから凄まじいオーラが!」

 俺の身体は小刻みに震え無いはずの心臓はドッキンドッキンと鳴り響いていた
成人した女がほぼ裸同様で俺の目の前に居た……
ただでさえ極薄のコスチュームは成人したことでビニールのように透明になり
プリンプリンした胸が目に飛び込んで来た! 全身にムシャぶり付きたくなるようだ

 どうするのぉ~♪ 代金払うわよねぇ~♪ 俺を見つめる彼女
「空ろな瞳 そして立ち込める心地いいオーラ」

 俺は彼女に言ってしまった…
「ハイ… 代金をお支払いしましゅ…」

 は~い♪ 良く出来ました♪
「彼女はそう言うと元の小さな女に戻ってしまった」

 俺は暫く そのことにも気付かずにホワ~ンとした気分で立ち尽くしていた…… 


◆◆◆◆◆4番目

 

おじさん! またぁ~ こんなとこに居るぅ~ ホラッ! 早く避けないと危ないって!
ここはねぇ 車道なの! わかる? しゃ・ど・う!
「こないだの女子高校生が車道に居た俺の後ろから声を掛けてきた」

 俺には正直、車道も歩道も関係ないが、折角声を掛けてくれたってことで素直に…
振り向けばこないだの女子高校生だった…
俺はこの女子高校生を数日前から探していたんだが あのガキ(かみ)の所為で見失い
ここに居れば会えるだろうと待っていた…
女の子はどうやら俺のことを知恵遅れのオッサンかなんかと勘違いしているらしく
まぁ~ 俺としては何故、人間に俺の姿が見えるのか知りたいところもあって
暫くは女の子に合わせてみることに…
幸い、あの生意気な術を使う女(かみ)も最近は近付いてこねぇからな
俺は知恵遅れを装うと直ぐに彼女とは親しくなれたものの人間界のことを色々と教えてくれる
まぁ~ 正直、どうでもいいことなんだが…

 ところが、このオッサンである俺にも転機と言うか何か変化が現れてきた…
彼女と会うことが楽しみと言うか心待ちにしている自分に気がついちまった
いい年してなんだろうが、どうにも自分の心をコントロール出来んとこまで落ちたらしい
彼女の笑顔が見たくて ツイツイ彼女の自宅まで着ちまう始末だ…
俺がその気になりゃ、家だろうが壁だろうが素通り出きるんだが、彼女にはしたくない
おそらく、魔界に残してきた家族と彼女の笑顔がダブルのかも知れん
俺の塒(ねぐら)はもっぱら空の上だったんだが、気が付けば彼女の屋根の真上に居ることも
相当な重症に陥ったものだと我ながら自己嫌悪にもなるってもんだ
そんな折、魔界の女房から携帯電話(テレパシー)が飛んできた…
俺の心を察知して女房が最初は心配し結局、最後は浮気するなよの連発だった…
魔族は心が弱ると勝手に電波が家族や親族へ 一番強いところへ飛んで行く
だから、俺の身体が一番強い場所 マイホームへ飛んでいったということなんだが

 俺は次の日も その次も彼女と公園に行ったり遊園地にも連れて行ってもらった…
俺の姿は彼女にしか見えんから 彼女のことが可哀相で、業務用のパワーを私用で使った…
彼女の目には普通の遊園地に映ってるが、実際は周囲の人間達から一時、魂を抜いた
魂の抜かれた人間共は記憶が抜け落ち 後々個々に記憶が埋まる仕組み
まあ、たいたことはないんだが……
ただ、ヤバいところを見られちまったことがある……
俺が彼女と手を繋いで歩いてるところを神(アイツ)に見られことだ…
魔族は下等生物との親近行為は禁じられているからだ
自称神の指導員と名乗る意味不明な神(アイツ)に見られたと言うことは場合によっては…
まぁ、何れ始末するしかないだろうが…… 神(アイツ)を…… 可哀相だが……

 時は流れて俺は彼女の家にも遊びに行けるほどに接近していた…
もちろん 彼女の家族が留守の時だけなんだが……
相変わらず俺の周りを注視する神(アイツ)の目は俺が彼女を狙っていると見ているようだ
だが、何もしない俺には流石の神も手は出せない… それが掟だ
アイツはしつこく 俺が彼女の部屋でトランプをしていても宙に浮いて二階の窓から見て
公園に行けば行ったで姿を消しては後を着けてくる… まるでストーカーだ
魔界銀行で円とボンベ(魔界の銭の単位)の両替にも神であることを忘れて着いてくる始末
挙句に銀行の警備員に捕まって今頃は奉行所で質問責めにあってるころだろう
「イッヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ~♪」

 そんな俺だったがまるで青春小僧のようにドンドン彼女と親しくなって行く…
反面、俺が知恵遅れでないことは理解してくれたものの何処に住んでいるのかとか
仕事は何をしているのと次から次へと質問責めに合い 都度、彼女に嘘を着いてしまう…
彼女に嘘はつきたくないと思いながらも悪魔である俺は彼女に嘘をつき続ける
嘘をつくことがこんなにも苦しく切ないものだと数百年も生きてきて初めて知った…
一つ嘘を言えば それを隠すためにまた嘘を言い それを繰り返す罪の意識 魔族なのに…
彼女の純粋な瞳の前では魔族の俺ですら無力になってしまう……
危うく本当のこと言いそうになる始末だ
彼女とダラダラした電車とか言う乗り物に乗ってやって来た海岸でさえ 俺には新鮮で
波打際で手を繋いで砂浜を走り駆けっこと言うのをやったが 実に楽しかった♪
彼女が作ってくれたお弁当を食べ 海を見ながら彼女の夢に聞き入る…
俺の心はドンドン彼女の方へ引き込まれて行く気がした
最早、後ろの宙に浮いてる神(アイツ)の存在など俺にはどうでもいいことだった…
俺は彼女を守りたい… 本気でそう思うようになっていた
「どうかしている… 何度も自分に言い聞かせたが 彼女を失いたくない」

 彼女の帽子のリボンが海からの風に揺れる… 彼女はスカートの裾を押さえるように
足組をして 心地良い風に身を任せる 空でカモメが俺たちを羨ましそうに見つめる…
俺は知らず知らずに左に座る彼女の左肩にそっと腕を伸ばす…
一瞬、ハッとした彼女の表情は直ぐに優しい笑顔に戻り 俺の方へ顔を埋めた…
瞬間、彼女の帽子が宙に舞った… 帽子を追い駆けようとした俺を彼女はしがみ付いて止めた
「彼女の帽子は宙に舞う神(アイツ)がつかまえていてくれた」

 好きなの? 俺の心に問いかける神(アイツ)……

 暫く… 暫く二人きりにしてくれないか… 俺は神の心に話しかけた

 スッと消えた神(アイツ)……

 
 私… 私ねっ! もうじき死ぬの!
病気なんだ! 身体が少しずつ少しずつ病魔に侵されて行ってるの♪
学校も卒業… 出来ないかも知れないんだ♪ うふふふふ~♪
モルヒネって言うのかなぁ~痛み止めを一日に何度も注射しないと痛みで叫びそう……
「彼女は俺が思ってもいないことを口にし俺の胸の中で涙を零した… 雫を吸い込む砂…」

 俺は心で神(アイツ)に話しかけた……
直してやれよ!
「神の心に語る俺」

 無理! 彼女は既に死神から洗礼を受けているわ!
私たち神族でも、それを覆すことは……
「俺に語る神」

 解った! 俺が何とかしてやるか~
お前ら神に頼んだ俺がバカだった…
「神に話しかける俺」

 自分の言ってる事 解ってるの!?
死神と言えど神族なのよ! いくら魔族とは言え越権は許されないわ!
「俺に語り掛ける神」

 散々、人間の命も魂もとってきた俺だぜ! お前だって俺の力は知ってるはずだ
第一、お前(かみ)は何だ! 散々、俺から人間の命を守っておいて!
今度は俺が人間の命を、奪うんじゃねぇ! 守るって言えば無理だの何だのと!
立場が逆なんじゃねえのか~ 神さんよぉ~!!
「俺は神に真剣に噛み付いた…」

 でも… それは法律に反する行為よ!
いくら神でも法律を曲げてまでは救えないわ!
第一、その子を救えば、アナタだってタダではすまないわ!
悪魔なのよ!! アナタにはアナタのすべきことがあるでしょう!
越権は認められないわ!
「法律を持ち出す神」

 失せろ!! 能無し野朗!!
俺は神に腹の底から怒りを覚えた!!

 大丈夫だよ♪ 俺が必ず助けてやるから♪ 俺に任せておけばいい♪
「俺の胸の中で涙を流す彼女に言った」

 えっ?
「俺の言葉に彼女は涙で頬を濡らし顔を上げて俺を見た」


 いでよ!! 我が守護神!! 今こそ我が魔族の力を宇宙に示す時!!
集まれ物共!! 我が元へ長い眠りから目を覚まし集うのだ!!
「俺は彼女の元から数十メートル牛へ瞬時に飛び魔族を召集した」

 ヤメテ!! 神と魔族の戦争になってしまう!!
そんなことをしたらアナタが罪人になってしまう!!
「消していた姿を現した神は俺の前に降り立った」

 俺の姿を見てそして、姿を現した羽衣姿の神に脅えて両手で顔を覆った彼女…
「俺は魔族の真の姿を彼女の前に晒していた… フルパワーにするために…」
「キャアァーーーーー!! 彼女の悲鳴」

 背中から生えたトゲの付いた羽 身体は数十倍に大きくなり顔は獣に変化し
手足からは鋭い爪が海からの風を切る……
「俺は彼女にだけは見られたくない真の魔族の姿を晒していた」

 込上げてくる神族への疑心そして叫びは止むことなく 天を暗黒に染め
辺りから次々にやってくる魔族に声を張り上げ彼女の命を救うべく神族への宣戦布告を叫んだ
人間一人の命をも救えない神族を滅ぼすときが来たのだー!!
俺は叫んだ! 天高く叫んだ!!
「それは彼女を救うための口実だった」

 何千、何万と言う眠りについていた魔族が蘇り俺の周りに集い鋭い雄叫びを発する

 アナタ何を血迷ってるの?! ヤメテ! 止めないと!!
「神は俺の前で俺同様に巨大化し目を白く光らせた」

 神を取巻く魔族たち… 自分達を眠りに付かせた神族への復讐の念がビリビリと伝わる
「神の身体は焼けるような強い光を放ち神の国に信号を送っていた」

 次の瞬間、空から死神達が何万と出現し魔族である俺たちを威嚇してきた
鋭い音を立てて振り上げる大カマは宙を切り裂き 目の前の女の神を守るように構えた
俺は横で起用筆蹲る彼女をそっと両手で掬い上げると声をかけた…
「必ず! お前の命を救ってやるから心配するな 例え神族と刺し違えても助けてやる」

 ゴメンよ! オジサンはこんなにも醜い悪魔なんだよ…
騙してて、ゴメンよ! 君と過ごした日々を忘れないからねっ♪
散々、生き物の命を奪ってきた魔族の俺が最後に出きるのは生き物の命の尊さを知ること
そして、たった一つの小さな命を数十万… 数百万の魔族の命と引き換えにしても守ること
「俺は彼女に告げると魔力を使い彼女を家へと移動させた」

 役にたたない神族をこれ以上 野放しには出来んからな!
魔界組織 戦闘隊長の名において同士に命じる!! 神の国を滅ぼすのだ!
物共! 我に着いてくるがよい!!
「ウオォォォォォォォォォーーーーーーー!!! けたたましい魔族の雄叫び」

 天空で待ち構える死神 更にその上に数万の大群を率いる神族…
周囲を固める魔族の同士たち… 次々に出現する魔族…
「神族を滅ぼす意外に彼女を救う道はない… 俺の心」

 待って!!
「戦闘態勢に入った魔族・死神・神族に叫んだバカ女の神」

 一斉に女の神を見る全体…
「サッ!」「ザッ!」

 

◆◆◆◆◆5番目・完了

 

女の神の一声に神族、死神、魔族は一斉に動きを止めた! その瞬間だった

 アンター! アンタ! 止めておくれー! 俺の頭上から叫びながら近付く…
「女房が姿を変え俺の真上から俺目掛けて凄い速さで近付いた」

 地上に降り立った女房…
「普段の人間の姿でも俺より数倍は大きい女房 変化(へんげ)して尚も俺の数倍の女房」

 止めるな! 止めんでくれぇぇー!
「俺は女房に叫んだ!」

 バシンッ!
「俺より数倍大きい女房が俺を平手打ちした!」

 俺は弾き飛ばされ月まで一つ飛び…… 戻って来た時には女の神に女房が謝っていた……

 俺たち魔族は元々、男よりも女の方が数倍身体も大きく、力も魔力も全てで上を行く
過去の神との戦いでは殆ど、男の魔族は飯炊きと本部で事務関係が主な仕事だった
即ち! 神と戦ったのは女の魔族であり、俺たち男達は決起盛んになる割には掃除や洗濯
因みに、俺の女房は加減を知らんから、今の一撃で俺の頬骨は骨折した気がする
どのくらいの違いかと言えば、俺が人間だとすると女房は像か白熊あたりだろうか
女房が暴れれば男の魔族は数千から一万は全滅するだろう……

 女房が女の神と話し合っている間、決起盛んだった魔族は次々に俺とは目を合わさずに
ショゲかえり肩の力を抜いてはその場を離れて行った…
ある者は背を向けながら手を振り ある者は俺をチラッと見て苦笑いして去って行った…
「情け無い魔族たち」

 アンタ! こっちに来なさい!! ホラッ! 謝るのよ!!
「女房の後ろにいる俺は右耳を引っ張られ神の目の前に…」

 痛てぇー!! イテテテテテー!
「俺たち男の魔族は女達に仕付けされるためなのか耳だけは大きく出来ている」

 目の前の女の神一人くらいなら俺たち男の魔族で十分なんだが…
チキショウ!! 女房が俺の後頭部をグイグイと下へ押して謝らせる……
まるで母親に叱られるガキ大将だ…
「見て笑う死神共に神族」

 数万いた神族も死神も魔族もドンドン場を離れ辺りには女の神と女房と俺の三人だけに…
しかし… 頭の気の毒な女の神がまさか本当に指導員だったなんて…
神族の指導員と言えば間族で言えば部長クラス…
俺は女房に頭を捕まえられ下に向けさせられ 目の前には女の神が立っている
振り放とうにも女房の力は強く その気になれば俺の頭など一瞬にして木っ端みじんだ
「俺は下手に動けない」

 だが… こんなとろでいつまでも油を売ってるわけにもいかん…
俺は彼女に言った… 必ず助けると! 彼女を救えなければ俺は… 俺は… 本当の嘘つきに
それだけは俺の心が許さない なにか打つ手はないものか……
「俺は考えた! 俺の頭を掴む女房の凄い力に耐えながら」

 神族の法律に触れず、且つ死神の業務も妨害せずに悪魔の法律の枠で…
俺は考えている… 女房が神と話す間に何度も頭を下げさせられながら

 そうだっ!! その手があった!!  うわっはははははははははははは~♪
俺は忘れていた 俺たち魔族の本分 しかも任務の遂行を妨げる物は…
魔族法745条 魔族は魔族の業務を妨げる者に対しては如何なる手段を講じても罪に問わず
俺は大声で笑った! この方法があった!
「うわっははははははははははははははははははははは~♪」

 バシンッ! バシバシバシッン!!! 痛てえぇぇーーーーーーーー!!!
「女房に数回殴られた俺」

 
 アンタ! もう帰るけど! 人間の子供になんか現(うつつ)ぬかしてないで
ちゃんと働きなさい! 部長さんには私が謝っておくから!!
解ったっ?? 解ったのっ!! 返事しなさい!!
「女房と神の話し合いは終ったようだ」

 俺は女房に返事をした! 俺は神の前でハラワタが煮えくり返るようだったが……
「ハイ!! 解りました!!」

 
 女房が帰ったあと、俺は散々 女の神にバカにされ付き纏われた…
流石の俺も頭に来て目一杯の電撃を喰らわせたやった!
女の神の羽衣はズタボロに燃え尽き陰毛までがチリヂリに…
「ウッヒョヒョヒョヒョ♪」

 裸で胸と下を隠しながら 俺の後を着いてくる女神……
咄嗟に振り向くと羞恥心からか立ち止まってモジモジしてやがるし 空に舞えば丸見えに
「ウッヒョヒョヒョヒョヒョ♪」

 女神が神の国に服を取りに戻ってる間に 俺は彼女を尋ねた…
待ってろよ! 今、何とかしてやるから!

 彼女は病気の所為かさっきの出来事を記憶していないようだった…
悪いと思いながらも彼女の心に進入した俺だった
俺が一つ目としてやった行動… それは彼女の魂を奪う! 即ち命を貰う申請を本部に提出
すんなり、受理された後で一旦、彼女の命を頂く… 管理職決済だ
これは課長級以上に認められた特権!
彼女は死神の洗礼は受けているが、まだ生きていて死神の管轄外… 即ち俺たち魔族の担当
自然に病気になって死へと導くことを本文とする死神に対して 俺たち魔族は
必要に応じて命を奪う… 魂を頂くために!
命を奪うことには代わりは無いが趣旨がまるで違う… 即ち魔族法が適用する範囲だ
もっとも、早業だから彼女本人にも気付かれる心配は無い…
いつでも、彼女の命を頂ける状態だ…
ただ、一瞬とは言え死ぬから、関与した魔族の俺の記憶は彼女から永遠に失われる
職務上 当たり前のことなんだがな… 少し 相当 かなり寂しいな…

 さてと、仕事に取り掛かるか!
彼女の部屋… 時折見え隠れする死神の手下 彼女を見張っているようだが 今は俺の管轄
ベットで寝入る彼女に真横から両手を広げ彼女から命を吸い取る……
「さよならだな♪ 楽しかったよ♪ 彼女に心で語る俺」

 俺の行動を見て慌てふためく死神の手下……

 吸い取った命は一旦、俺の身体に仕舞い込み魂を分離して別々にする
そして、本部に申請をする… さぁー! 申請が通ることを祈る俺…
「この魂は不純物多く集積所への移送を断念 課長決裁」

 さぁー! 来い! 来い! 受理票!!
「俺は心で祈っていた…」

 ピンッ! 髪の毛が立った…
「キターーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 統括管理職の決済を受理するものとし、魂及び命の差し戻しを許可する 魔界大王

 俺は許可を確認するとそっと身体の中にある彼女の命と魂を静かに彼女に戻した…
スーッと元に戻ると同時に死神の手下は消え 彼女の身体からは全ての病魔は消えた

 中々、やるじゃない!! 見直したわ! 
これぞ毒を持って毒を制するってことかしらねぇ~♪ うっふふふふふふふふふ~♪
「彼女の身体に命と魂が戻った瞬間 後ろから声を掻ける女神」

 ふっ! なめんじゃねえぞ 俺は魔族!
お前らと違って俺たちは現場屋なんだよ! ふっあっははははははは♪
「俺は寂しさを吹き飛ばすかのように笑って見せた」

 大したものだわ♪ プラスアルファもつけたんでしょ~♪
そこまで優しいのにどうして魔族なんだろう… 不思議だわ♪
「真横に並んで彼女を見つめる女神」

 気が着いたのか? 魔族しか使えない技の一つなのにな
それに気付くとはアンタも大したもんだよ♪
「女神に語り掛ける俺」

 
 俺が彼女にしたこと…
魔族しか出来ず しかも一度使うとその決済は俺が生きてる間は確実に継続される
「予約」

 予約は魔族がその魂が熟すまで待つと言う意味で
それは神でも死神でも一切の手出しは出来ない そして俺は100年間解除の予定は無い
これで、彼女はその生涯を全うすることが出きるばかりか 全ての病気や事故から
魔族が守ると言う保証を貰ったのと同じことに……

 さてと・・・ 俺の業務は本日終了ってわけで
おい! 女神! ラーメンでも食いにいかんか? 腹減ったぜ!
大丈夫だよ 今度はちゃんと払うからよ!

 エッ! 誘ってくれるのぉー キャー 嬉しい♪ 私たち神族は人間界での飲食は禁止
でもっ! 悪魔さんから接待なら法律には反しないわね♪
「飛んで跳ねて大喜びの女神」

 へぇ? おごるなんて言ってねえぜぇー!!
お前! 厚かましい奴だなぁ~! こっちのラーメン一杯の正規な値段ったら
魔界じゃ~… まっ! いっか! どうせ経費で落すからなっ!

 えぇー ヤーダー! ちゃんとアナタのお金でおごってよぉ~♪…(女神)

 なに言ってんだ! 俺の小遣いなくなっちまうだろう!…(俺)

 
 あれから数日……

 オジサン! オジサン! 危ないって! そこは車道だよー♪
こっに来ないと車に引かれちゃうよぉ~ ホラッ こっちこっち!

 完了