持たざる者から、与える者へ
「ポケットをもたないお母さんカンガルー」という無理やりな設定なのに、
一頁目から引き込まれるのは、H.A.レイの絵の力ですね。
そう、あの「ひとまねこざる」「おさるのジョージ」の作者です。
意外にも、H.A.レイ(本名ハンス・アウグスト・ライアースバッハ)は、
ドイツ生まれのユダヤ人です。ナチスの迫害から逃れてアメリカに渡り、
妻と共に絵本作家として大成功する半生は、映画化もされました。
幼い頃から動物が大好きで、毎日のように動物園に通っていたそうです。
この絵本の中でも、動物たちは、本当に生き生きとしています。
そして、表紙の「おとこのひと」。
H.A.レイの描くヒーロー「救世主」は、いつも背高ノッポさん!?
もし、この「おとこのひと」に出会えなかったら…?
ケイティは、いつまでもいつまでも、さまよっていたのではないでしょうか?
いや、ケイティがポケットを持たずに生まれて来たのは、
この人に出会うためだったのかもしれません。
生まれながらの持たざる者から、持つ者へ。そして与える者へ。
実は、一直線の物語です。
どんなお母さんも、「私には、子育てに必要な力がない…」
「経験も知識もない…」と、持たざることを嘆き、苦しんだ経験があるはずです。
嘆くお母さんと、そんなお母さんを見上げている子ども。
両者に、自信をもって、おススメです!