natuce(ナトゥース)

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永遠と呼ばれる幻想

2011-07-20 20:36:24 | Weblog
我々は物事に飽きてしまう生物です。
どれほど面白いと感じた本であっても、読み続けていればいつかは飽きてしまいます。
どれほど美味しいと感じた料理であっても、食べ続けていればいつかは飽きてしまいます。
飽きることが無ければ、人生はどれほど刺激的で楽しいものでしょう。
この「飽きる」とは一体何なのでしょうか?
今回はこの事について考えていきたいと思います。



まず、飽きる事とは本能なのでしょうか?
それとも環境に左右されるものなのでしょうか?
それを考えていきたいと思います。

人間以外の動物が飽きるかどうかを考えることによって、飽きが本能であるかどうかを測ることが出来ます。
もちろん推測の域を出ませんが、ライオンなどの捕食動物が肉を食べることに飽きたり、シマウマなどの草食動物が植物を食べることに飽きることは無いでしょう。
そう考えると、飽きる事は本能ではないという結論が導かれます。
しかし、飽きる事が全く本能と無関係という訳ではないことは、それが教育や学習によって身につく事ではないことを考えると容易に分かります。
従って、飽きる事とは本能そのものではないが、ある種の本能と結びついた本能の変種と考えられます。

上の例で言いますと、確かに野生生物が飽きているようには思えません。
しかし、人間が飼っている動物ならどうでしょうか?
ペットを飼ったことのある人なら分かるかもしれませんが、餌を過剰に与えつづけると、餌の種類によってペットの食の進み方が変わることがあります。
この事は、飽きる事に他なりません。
つまり、飽きる事とは、動物が持つ本能が環境によって変化したものと考えられるのです。

飽きる事とは、刺激に慣れる事と言い換えることが出来ます。
刺激に慣れる事は、本能である適応能力に根ざすものだと考えられます。
つまり、生物は刺激を与えられ続けると、それを刺激とは認識しなくなるのです。
これは、暗い所から明るい所へ移動した場合、最初は眩しいと感じ光に次第に慣れていくことから分かります。
我々が飽きるとき、これと同様のメカニズムが働いていると考えられます。
しかし、我々は日光に慣れる事はあっても飽きる事はありません。
従って、飽きる事には、刺激に慣れる事以外の要因が必要となるのです。
私はその要因を飢えだと考えます。

飢えに対しては、我々は負のイメージを持ってしまいがちですが、本当に飢えが悪いものかどうかは非常に難しい問題です。
確かに飢えが我々の生命を脅かすとき、飢えはあってはならないものです。
しかし、飢えがもはや生命を脅かす存在ではなくなった場合はどうでしょう。

飢える事が全く無い満たされた人生が、幸せな人生だと誰もが考えるかもしれませんが、本当にそうなのでしょうか?
飢えが人間に必要なものと考えると、飽きる事に対する一つの仮説を思い付くことが出来ます。

生物が生きていくためには目的が必要です。
生物にとって、自らの生命をつなぎ止め種(遺伝子)を保存する事がその目的となります。
飢えとは、生物がその目的に向かって活動するための精神的なエネルギーのようなもの、つまり俗っぽく言うと活力です。
元来、生物は生命の飢え、すなわち食欲によって活動しています。
飢えを感じることが無ければ食欲も無くなり、生物は生きていくことが出来ない訳です。
それでは、この日常的な飢えが希薄になってきた時、一体何が起こるのでしょうか?

空腹を感じたらすぐに食べ物を手に入れることが出来る場合、生命の飢えが希薄になるため、人間は違う飢えによって精神的なエネルギーを補うことが必要となるのです。
それこそが、物欲や自己顕示欲など、飢えの変種という訳です。
つまり、我々の生きる目的が、「生きたい」から「良い車に乗りたい」や「尊敬されたい」に変貌するのです。
しかし、この飢えの変種は、種の保存という本来の目的にとっては必要が無く、精神的な欲求である物欲や自己顕示欲には、肉体的な欲求である食欲のように満たされたと感じる一定の基準が存在しません。
従って、人間はさらに強い刺激を求め、そこで飽きる事が生じるのです。

我々人間は、高度な知性によって日常的な生命の危機からは離れることが出来るのかも知れません。
しかし、その結果、我々は刺激を追い求めて、同じ所をぐるぐると回り続ける事になるのです。
今後、人間がどれほど繁栄し飢える事から逃れたとしても、そこにあるのは満たされた幸せな人生ではなく、さらなる飢えなのでしょう。


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