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バレンシアのオレンジ野郎…“Ahora vengo yo♪”

何かあったらここにやって来ます!その時は1人の人間として…タイトルは旧友でヒターノのカンテが教えてくれた唄の歌い出し♪

アルボンディガス…肉団子

2012-06-16 02:34:53 | 日記

この前の休みの昼、1人でランチを食べに地元の炭火焼きバルに入った

いつもは仕入れで通う市場の近くにあるその店は、この漁師町に初めて都会のバル文化を呼び込んだ立役者的存在で…板張りと大きなガラス張りからなる門構えは、清潔感と心地好い生活感が漂い、カウンターには足丸ごと1本の生ハムが鎮座している

ワインとタパスとパスタと炭火焼きを売りにスペインともイタリアともどちらもカバーできる柔軟なスタイルを持つワインバーであり、この街の“トレンドにうるさい20~50代”の人気を博していた

子供連れは寄せ付けない雰囲気とは裏腹に、昼間でもアルコールに縁の無い人間にも入りやすい魅力があった

毎日ランチ時に店先を通る僕が、入り口に掲げられたランチメニューの中にふと気になって入る気になったメニューがあった

“アルボンディガス(肉団子)のグラタン仕立て…\800”

『よし!行ってみよう♪』

単独行動を良いことにその店のドアを引いた

ミートボールのグラタンとは書かずに“アルボンディガス”と書かれた訳に、きっと…


『普通の喫茶店のランチにあるようなミートボールでもありません!イタリアとスペインの良いとこ取りなんかじゃなくてこれはスペイン料理なんです!』
‥とでも主張している様に思えた

だが出てきたものは、喫茶店のランチにあるようなミートボールどころかそれ以下だった

“ブシュー(ボワー)”

その音を耳にして嫌な予感がした

“グラタン仕立て”なるものは、何もホワイトソースだけでは無く、トマトソースベースでチーズがかかったものをオーブン釜ないしはサラマンダーなる上火焼き機できつね色にこんがりと仕上げることだが…

その危惧した嫌な予感は的中した

単にシャバシャバな薄い業務用のトマトソースに粉チーズとパン粉をまぶしてガスバーナーで瞬時に焦がしただけだった

“どこがグラタン仕立てだ‥”

乾燥した粉のパルメザンチーズとパン粉はただただ高温のバーナーで不快な焦げ味がするだけだった

料理の間にしたオーブンを開け閉めしる音は何だったのだろう!?

答えは3つあるつもりだった3つ目の白いものは…上手く丸めたジャガイモのピュレを形取るためにこんがりと焼いたものだったのだ

肉団子は二個と肉団子に思えたジャガイモのピュレ…

ラスクみたいに薄いパン2切れ…しかも乾燥仕切ったものをトースターで焼き直したまさに中途半端なラスクみたいなパンと、レタスのサラダは市販のドレッシングがかかっていた

紅茶を追加して\1000のランチはとても満足出来ずに…喫茶店のランチの方が安くて、実直で‥美味しかったに違いなかった(涙)

アルボンディガス…実は僕が大学のスペイン語の授業で最初に耳にしたスペイン料理の名前だった

僕が通った大学はスペインのイエズス会系のカトリックの大学で、学科長はスペインフランコの独裁政治時代の内戦で追われて日本に亡命してきた人物で、かなり重要な人物だった

ホセ・ルイス・アルバレス

彼はその授業の中で大切なことを教えてくれた

『アルボンディガス…肉団子です!“アル”で始まるスペイン語の単語はイスラム社会の影響が大きいネ‥私の名前、アルバレスもそう!アラビア語の冠詞です!アルバレス,アルボンディガス,そうですね~アルハンブラ宮殿もそう‥悲しい歴史が沢山アリマス…』

車椅子に座りながら語る老いた教授は、まだ若い僕等にそう教えた


独裁者フランコは、キリスト教、且つ民族意識を徹底して、ジプシーやイスラム教徒、イスラム系民族、左翼、共産主義を弾圧した

スペイン料理をしていた僕には、スペインには大まかに2つの文化があると思う

約800年間スペインを支配したイスラム文化と、元からあるカトリック文化…

イスラム系は羊を好んで食べ、カトリック系は豚を食べる

今はどちらもスペイン料理の顔だが、どこかで住み分けはいまだにある気がする

僕がスペインタブラオ(フラメンコライブ酒場)の店長時代、ジプシーの踊り手から教わったアルボンディガスもクミンとサフランのエッセンスを効かせたものだった


料理は時代と共に進化したり変化するのは仕方ないと思う

和食の竜田揚げも本来は海老を叩いて片栗粉をまぶして揚げたものがオリジナル

竜田川の水面に広がる紅葉の美しさを歌った俳句か短歌に因んで、海老の赤をちりばめた料理として生まれた竜田揚げも、今では醤油風味が効いた鶏肉の片栗粉唐揚げでしかない(笑)

その恩師も今は亡き人だし、我が母校も廃校寸前…

昨日今日のニュースでも、スペインの国債の格付けは暴落で、大航海時代の栄光はもうない

アルバレス,ないしは我が母校の“仔”として血を遺すためにも…

次に開ける店では再びスペイン料理に戻ったりして……(笑)


※写真は我が店で密かに造り続けているアルボンディガス(煮込み肉団子)です

さすがにブログの店は撮影する気になりませんでした(笑)

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

コメント日が  古い順  |   新しい順
アルボンディガス (缶ミカン)
2012-06-19 00:41:16
アルボンディガスを「ミートボール」と訳すと怒られました…。
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缶ミカンさんへ (バレンシアのオレンジ野郎)
2012-06-20 03:15:58
コメントありがとうございます

アルバレス先生は肉団子と言わないと確かに怒りました

あとスペイン語をイスパニア語と呼ばないと怒りましたね(笑)

スペインもミートボールも英語圏側の表現だからですね
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