今の出雲はもともとは出雲の地ではなく、
本当の出雲は別の場所にあった、という話です。
まず、出雲関連のダイジェストを見てみましょう。
地系スサノオは、出雲の国に宮を作ります。
伝説によって異なりますが、
スサノオの子か入り婿の大国主が登場します。
一応地系のようです。
スサノオは出雲にいたはずですが、
いつの間にか根の国にいることにされます。
大国主は根の国から逃げたものの、結局出雲で国づくりをします。
そのうち、大国主は出雲でスクナヒコと会います。
スクナヒコはアマテラスも認める天系です。
大国主はスクナヒコと一緒に葦原中国を作ります。
この葦原中国がどこかによって解釈が変わります。
途中でスクナヒコが去り、大国主は一人で葦原中国の
国づくりを完成するところまできます。
するとアマテラスが、葦原中国はすてきな場所!
こんな素敵な場所を地系子孫が支配するのは許せない!
ムキィイイイ!
と、天系を2人送り込みますが、
2人とも大国主に男惚れしてしまいます。
さらにいらっとしたアマテラスはタケミカヅチを送り込みます。
大国主の2人のこどもは負け、片方は諏訪に追放されます。
負けた大国主は、「じゃあ、出雲に、
天系の神殿に負けないくらいの建物作ってくれたら、
自分はそこに隠居して葦原中国は渡すよ」
と言います。
天系は受け入れて、葦原中国の統一は完了します。
では、葦原中国とはどこでしょうか。
ものによっては日本全土だと考えるむきもあるようですが、
日本全土のことではありません。
なぜなら、このあと、天系最終皇帝イハレビコと
地地英雄ニギハヤヒの戦いがはじまるので、
日本全土はまだ統一されていないとわかるからです。
とりあえず、葦原中国が何なのか、どこにあるかはおいておいて、
出雲は葦原中国の中にあるか外にあるかを考えましょう。
場所はまったく違いますが、たとえば葦原中国を北海道に見立てて
話を考えましょう。
・出雲が葦原中国の中にある場合
大国主は首都を札幌(出雲)とし、
途中まではスクナヒコ(たとえばロシア資本)の後押しを受けて、
北海道全土の開拓を行いました。
終わりそうになったところでロシア資本の親玉が出てきて、
「開発済みの北海道を全部よこせ」と言います。
大国主一派は断りますが、戦争となり、大国主一派は負けます。
北海道全土は奪われることになります。
大国主は「じゃあ、俺の隠居先として、北海道の中の
札幌に、ロシア大統領府くらいの建物を建ててくれよ」
と言います。ロシアはそれを受け入れました。
……という話が、ありうるでしょうか?
そんな建物を建てて、旧支配者をそこに残したら、
住んでる人から見たら、今までと変わらず
その人が支配者に見えるでしょう。
・出雲が葦原中国の外にある場合
大国主は青森を出雲とし、青森でスクナヒコと出会って、
それぞれ資本を出し合って北海道の開拓をすることになりました。
スクナヒコの母体はロシア資本です。
途中でロシア資本は引き上げられたものの、
大国主は自力で北海道開拓をやりとげます。
するとそこで、ロシア側が、北海道を全部よこせと言って来ます。
大国主は拒んでロシアと戦争になりますが、負けます。
北海道は全部奪われることになると、
大国主は「じゃあ、俺の隠居先として、故郷青森に
ロシア大統領府くらいの建物をロシア資本で建ててくれよ」
と言います。ロシアはそれを受け入れました。
……という話になります。
どちらが現実的でしょうか?
現実的に考えれば、隠居先の出雲は、葦原中国の外にあるべきでしょう。
敗戦国の国の中に、勝利国の統治府にも負けない建物を作るなんて、
いつ反乱軍が出てくるかわからなくて危なくてたまりません。
けれど、出雲が葦原中国の中にある場合でも、外にある場合でも、
なぜ敗戦国の長の建物を、勝利国が自費で、
自国の大統領府にも負けないほど豪華に作るのでしょうか?
勝利国からしたら、
「弱い敗者がなに生意気言ってんだ。殺されないだけありがたく思え。
もともとお前の故郷にはお前の都があるんだし、国に帰って隠居してろ」
で済むことでしょう?
なにも新しく立派な建物を建てるいわれはありません。
でもわざわざそれを書き、勝者が敗者にご立派な建物を
作ったからには、作る理由があったわけです。
これは、大国主側の心情を考えると理解できます。
大国主は、スクナヒコナというロシア資本の支えを
途中まで受けましたが、ロシア資本が引き上げた後も、
自分の資本だけで、北海道開拓を最後までやりとげました。
そこを狙ってロシア資本が戦いをしかけ、
その結果、すべてを奪われました。
大国主としては、「自分は最初から最後まで苦労してやり遂げたのに、
途中までであきらめて手を引いたやつが、
アガリだけかっさらっていくのかよ。
許せねえ……! 七代末まで祟ってやる!」
という気分です。
それに対し、ロシア側は、
「うらまないで。本国に負けないくらいご立派な建物を建てて
祀ってあげるから!」
と言って行動したと考えると、合理的な行動になります。
日本は平安にいたってまで、理不尽に虐げられた者の魂が鬼となり、
祟ってきたから首都を変えよう、などとやっていた国です。
平安以前の神話の世界なら、祟りよけに大神殿を建てても
まったくおかしくありません。
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では、出雲の話に戻ります。
葦原中国の開発を、大国主は最初スクナヒコと
手を組んで始めたわけですが、その資本はどこからでたのでしょうか。
もし今わたしが、「どこかの国の開発に一枚かんでほしい」
なんて、たとえば公文書を使って正式に国から求められても、
わたしは即座に断ります。
なぜなら、お金がないからです。
でも、大国主とスクナヒコは、協力して、やろうとしました。
それができると確信したのは、二部族とも財があったからだと推測できます。
スクナヒコの資本源は、どこだかわかりませんが、天系グループです。
オオクニヌシら地系グループの資本源は、
スサノオがいたという出雲、根の国と、自分がいた出雲です。
すると地側の、資本の元は出雲しかないことになります。
逆に言えば、広大な地域の開発をできる財を生み出せるほど、
出雲は豊か過ぎる土地だったということになるわけです。
天系は地系と一緒に葦原中国の開発をはじめたのち、
途中でうまいこと手を引きます。
その後、地系に葦原中国の開発を最後までさせて、
その成果を武力ですべて奪いとりますが――
……それで、終わりでいいのでしょうか?
武力衝突して、じゃまな地側を叩きのめして、ものすごい領土を奪って。
それで捕虜にもした地系のトップを
本拠地の出雲に戻しただけで終わったら、
そのうち強大な資本の力でまた勢力を取り戻し、
天系に反撃してくることなんて誰の目にも明らかでしょう。
なにせ、出雲一国で大規模開発ができる財を生むのですから。
そもそも天系は、どこかの一国が欲しかったわけではありません。
最終的に全土統一を狙っています。
なら、この機会に出雲も奪い取っておかなくてはいけません。
ここで登場するのが二律背反です。
・天系は地系を追い出し、地系の本拠地の出雲も欲しい。
・地系は「出雲に天系にも勝る大神殿を立ててくれたら、
呪いもしないし全部あきらめておとなしくしてやる」と言っている。
さて、この二つを同時に満たす方法はあるでしょうか?
と言えば、もちろん、あります。
・天系の望みは、出雲の場所
・地系の望みは、出雲に神殿を建てること
なのですから、『出雲』という名前の土地を別の場所に作り、
そこに神殿を立て、地系大国主を入れれば、
天系は欲しい土地も、出雲の土地も手に入り、旧支配者も追い出せ、
約束を守ったことにより呪われずに済む、という一石三鳥です。
そこから導くと、
・出雲は葦原中国の一部だった、もしくは近くにあった。
・天系が奪った葦原中国には、出雲も含まれる。
・旧出雲の場所は現在とは違う。
という考えが引き出されます。
記紀から考えても、出雲が同じ場所にあり続けたとするのは
合理的ではない気がします。
そもそも、神社やその他で大国主の伝説などを調べれば、
大国主が本来祭られた場所の名前はわかるはずです。
もちろん、出雲なんかではありません。
日本書紀や古事記だけしか読まない人には
わからないのかもしれませんが、
日本書紀にだって、『後勘校者知之也』、『後勘者知之』
と書いてあります。
すなわち、
『真実を知りたいなら、日本書紀の内容を日本書紀だけで
完結させてはいけない。他の資料と見比べてくれ』
『後の世の者なら、考えれば真実はわかってくれるだろう?』
と書いてあります。
いちいち現地にいかなければ神社の縁起などを見られなかった
かつてとは違い、今はネットで結構見ることができるようになっています。
なのに、どうして縁起や伝説などの大部分が
省みられないのかが疑問であり、不満です。