中条きよしさん応援ブログ

こちらは私、浪花の勇次が中条きよしさんにお会いした時の会話や思い出を記録と中条きよしさん関連情報の発信基地です

三味線屋勇次、西へ

2007-07-24 | Weblog
こちらのブログも久々に更新する事ができました!

HPの方のお客様でこちらでも御馴染みの「都の商売人さん」より新作を頂きましたので掲載させていただきました!
前編後編合わせてお楽しみくださいませ。

【前編】三味線屋勇次、西へ

 ……ここは、江戸。おりくが旅支度をしている。
「勇さん……。あんたに、あたしの姉さんのこと、今まで話した事があったかい?」
「おっかさんの姉さん?……そんな話、今まで一度も聞いた事なかったぜ!?」
「おや、そうだったかねえ?……あたしの姉さんは『おとわ』って言って、今は明石で常磐津の師匠をしてるんだけどね。今度、久々に発表会をするって聞いたんで、ちょっと行ってこようと思うんだよ」
「だったら、俺も行くよ……。おっかさんの姉さんだったら、俺にとっちゃあ叔母さんだからな!」

 かくして、旅支度を整えた勇次は、おりくと共に、上方は明石へ……おとわの三味線の新曲発表会へ赴く事になった。その途中、勇次はおりくから「おとわは自分とよく似ていて、実は仕事人でもある事」を聞かされる。そして、おとわとおりくの久々の再会、勇次との初顔合わせで、並んだ二人の顔を交互に見て、目を丸くする勇次!
「こりゃあ……似てる、なんてモンじゃねえ!まるっきり、瓜二つだぜ!!」
「おや、そうかい?」「おや、そうかい?」
 全く同時に、ユニゾンで同じ返事をしたおとわとおりくに、思わず噴き出しそうになる勇次!やがて、おとわとおりくの合奏による常盤津の新曲-「蝶々」の発表会も無事に終わる……(「♪ 蝶々よ~蝶々~~。東南海~から~印度洋~~……」と、声を揃えて、朗々とした唄声を聞かせる、おとわとおりく)。
 ……だが、おりくの上方行には、もう一つ「隠された意図」があった。まだ幼かったおとわとおりくを連れて、瞽女(ごぜ)をしていた女三味線弾きの母・百舌蘭(もずらん/演・山田五十鈴:一人三役)は、五次郎と言う外道殺し屋の手で、無残に殺されていた……。そして今、明石の芝居小屋-「東峰座」の小屋主・大海舟と名乗る男こそ、おとわとおりくにとっての仇敵-「五次郎」だったのだ!(おとわが、東峰座で「三味線の新曲発表会」を開いたのも、おりくが突然上方へ向かったのも、全ては「母の恨み」を晴らす為だった!そして、偶然その事を知った勇次も、共に「母・おりくの悲願」を果たさんとする。
 かくして、「常磐津師匠・おとわの三味線発表会」が大入り満員となり、上機嫌の大海舟は何も知らぬまま、明石海岸に泊めた屋形船に、おとわとおりくと勇次の三人を招く。そして……(BGM:「仕事人III」~暗闘者/M8)。

「大海舟……いや、外道殺し屋の五次郎!あたしたちの母を殺した報い、今こそ晴らさせて貰うよ!」
「……これからの興行は、地獄の閻魔様の前で開くんだね!」
「畜生!……テメェら、最初っからグルだったんだなあ~~!?」
 腹の中に油を溜め込んで、口から火を噴く殺し屋だった大海舟は、髪型から着物の色まで全く同じに扮した、おとわとおりくの「二身一体攻撃」に幻惑され……更に、顔面に巻きついた勇次の糸で、得意技の「火吹き攻撃」を封じられた挙句、二本の撥で喉笛と心臓を切り裂かれ、明石の海の中へ転落・絶命した!
「……やったんだね、あたしたち!」「ああ……これで、おっかさんも成仏出来るよ!」
 海岸にべったり座り込んだまま、抱き合って涙を流すおとわとおりく!勇次も、遂に巡り会う事のなかった「祖母」の姿を想い、静かに手を合わせるのだった……。【後編に続く!】

三味線屋勇次、西へ【完全版】
【後編】勇次、浮世絵になる

 ……そして、「数十年来の悲願」を果たしたおりくと勇次は、明石から江戸へ戻る途中、ある温泉地で長逗留をする事になる。二人が滞在した「名古屋」の地では、折しも地元の有力者たちが、「平楽京」「尾張意匠博」と言う楽市楽座を行っていたのだ。そして、浮世絵と球弾き遊びを組み合わせた、新しい賭け遊戯ー「鉢公(はちこう)」が大人気となっていた!猫も杓子も「鉢公」に夢中になる中、その利権に群がる銭の亡者たちが生まれてくるのも、また世の常である……。

 そして、鉢公の背景に使われる「浮世絵」のモデルに、勇次はふとした縁から選ばれてしまい、老浮世絵師に、その姿を描かれる事となる。老浮世絵師の美しい孫娘(美女だ!)に心惹かれる勇次。だが、その老浮世絵師は、銭の亡者たちの犠牲となって殺され、娘も勇次の目の前で息絶えた……。
  平楽京の馬鹿騒ぎに批判的な文章を書き連ねていた為、何度も命を狙われた戯作者・森太郎が、実は「仕事人の元締」だったと知った勇次たちは、老浮世絵師と親しかった版画師からの「恨み晴らし」の依頼を受ける事になる。目の前に並べられた頼み料を手に取りながら、やりきれない想いで吐き捨てるようにして言う勇次!(BGM:「仕事人IV」~涙を背負って/M3)!

「……おっかさん。俺たちが知り合った人は、必ず不幸な目に遇って死んじまう……なぜだ?なぜなんだ!?」
「勇さん、それが仕事人の宿命なんだよ。恨みを抱いて死んでいった人の、哀しみの涙を背負って生きていくって事のね……」
 そして、おりくと勇次は、老浮世絵師と孫娘の恨みを晴らし、江戸へ戻る事になった……。だが、勇次は知らない。老浮世絵師が描いた浮世絵ー「色男音曲典雅之艶姿」(勇次の絵姿)が、事件後に大きな評判を呼び、いつまでも名古屋の街で刷られ続けて行った事を……。

【終わり】




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