涙目筑前速報+

詰まるところは明日を知る。なだらかな日々につまずいて
向かうところはありもせず、未来の居場所だって未定―秋田ひろむ

九井諒子『ダンジョン飯』『竜の学校は山の上』を読んだ所感

2015-04-19 23:03:50 | 書籍
今日、新横浜まで散歩がてら新たに漫画を買ってきた。
九井諒子『ダンジョン飯』と『竜の学校は山の上』という漫画だ。



今2作品とも読み終えたのだが、これがまたかなり面白い。
確実にこの漫画は今年自分の中でブームな作品になると思った。

今回の日記では、この2作品の感想を書いていくことにする。

■『ダンジョン飯』の感想

まずはダンジョン飯の感想だ。
よくあるダンジョン探索型のファンタジー漫画であるのだが、それは漫画の背景部分であって、趣旨は別の所にある。
そう、この漫画の趣旨は「飯」なのだ。

「ダンジョンの中で出てくる魔物を如何に美味く調理するか」という所に主眼が置かれていて、ダンジョン探索漫画では中々描かれなかった食事情が表される。
しかも調理方法もかなり細かく書いてあるため、かなりリアリティのある内容となっている。

思えば、僕がこれまで読んできたファンタジー漫画では、飯の部分というところは主眼に置かれなかった。
やはりファンタジー漫画の主軸と言えば勇者であり、魔王であり、ドラゴンであり、魔法である。
そして、そういった魅力的なキャラクターが織りなす手に汗握る戦闘やドラマに、ワクワク感を覚えるのだ。

しかし、この漫画では戦闘も描かれはするが、そこは主軸ではなく「魔物はどんな味がするのか?」が主軸だ。
勿論ファンタジー漫画によく出てくるバジリスクや鎧騎士、マンドレイク、ドラゴンといったおなじみの魔物も出てくる。
併せて、ダンジョン探索特有のトラップもあったりするので、正統派な部分もしっかり成り立たせている。

どこか緩さもある内容ではあるのだが、ダンジョンでの食事情を説得力のある内容で描き上げるため、戦闘の臨場感とは別の満足感がある。
「ダンジョン探索漫画は新しい時代を迎えた」と感じた。


■『竜の学校は山の上』

次は九井諒子の短編集『竜の学校は山の上』についてだ。
ダンジョン飯もかなり面白かったが、この短編集もかなり素晴らしい。
個人的にはこちらの方が自分には合っている気がした。

9つの短編からなる作品なのだが、全ての作品において、メッセージ性がある。
まず、最初は「帰郷」という作品。
魔王を倒した後の勇者と、それをとりまく人類について言及した作品だ。
「魔王を倒せば人類は平和になるのか?」という問いに対し、シニカルに描いた内容となっている。

次は「魔王」という作品。
魔女の呪いで魔物に変えられた王様と、解呪のために魔王に捕えられた王女の話だ。
吟遊詩人を介して話が進んでいくのだが、その魔王と王女の関係は漫画でこそ理解できる内容となっている。
だからこそ、ラストの奥方のセリフはかなり重いものなのだ。

次の話は「魔王城問題」というタイトル。
これも魔王を倒した後の人類の話。
魔王討伐後、残った魔王の城をどうするかという話なのだが、これもまた人間の身勝手な思惑が交錯していて、読んでいて楽しい。

「支配」については、宇宙人が人類を管理する話。
ある星の人類を救うために「生き物製造機」という今の環境に必要な生物を必要なだけ作り出してくれる機械を宇宙人たちは作り出すが、ここでも人類特有の業が炸裂している。
ラストのシーンは、さながら王政を抜け出した民衆たちの姿を観ているようで、どこか滑稽だけど歴史的なものを感じた。

次の「代紺山の話」は、和風な舞台設定となる。
村の民たちが、ある若者を山の女神の夫することで加護を得て、豊かにしていこうという話。
恋愛モノに近い内容なのだが、ラストの村長のセリフは、どこかもの寂しいものがあった。

次の話は「現代神話」
ケンタウロスの馬人と、人類の猿人が共存する社会の話。
馬人は働き者で体力がある。そのため、会社は猿人よりも馬人の方が重要な存在になっていたりする。
しかし猿人は人口の7割を占めているため、また話がややこしくなってくる。
現実でもEUやTPP周りで毎回話題になる移民問題にも通ずるところがあるのではないかと思った。

次の「進学天使」は甘酸っぱい学園モノだった。
空を飛ぶにはアメリカに行かねばならないという、有翼人の悩ましい事情や、それでも日本に残りたいという女の子の想いがよく描かれている。

その次は、この漫画のタイトルでもある「竜の学校は山の上」だ。
竜+現代社会という舞台設定で、竜の需要が今の社会では全くないという状態。
そんな中で四苦八苦しながら竜の有用性を検証している内容となっている。
ラストの「世の中には2つしかない。役に立つものとこれから役に立つかもしれないものだ」というくだりは、かなり前向きで希望に満ちた終わり方になっていて、読み終わって充足感に包まれた。

ラストの話は「くず」
毎日自堕落に生活していた男が、バイトとして廃屋に数名で1ヶ月生活する話。
日が経つにつれて、一人また一人と人が減っていく。
最後に人が減っていくオチが明かされるのだが、非常にシニカルなオチだなと感じた。
明日頑張ろうと思った。


以上のような感じだ。
ダンジョン飯も短編集もかなり面白い。
調べたところ、『竜のかわいい七つの子』『ひきだしにテラリウム』という作品も出ているみたいなので、ぜひ買ってみたいと思う。

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