ヤングライオン通信

ocnブログから引っ越してきました。

この世界の片隅に 2nd

2016-11-28 17:49:39 | 映画
二度目の鑑賞。


今回は少しネタバレを含む。


前回も同じ劇場の朝イチ上映だったが、評判が呼んでいるのか観客はグンと増えていた。

まだシルバー世代のご夫婦がほとんど。

もっと若い世代にも観て欲しいな。





あらためて観て、いろいろと不明だったことが腑に落ちた。


そして、要所要所で登場するタンポポの綿毛。

我々人間も、自分の意志とは関係なく見知らぬ環境に放り出されていく。
そこでしっかりと根を張り、自らの居場所を作って、次の世代へバトンを継承する。

人の幸せは、環境が決めるのではない。
その人がどう生きようとするかで決まるのだ。

幼馴染の水原は、久しぶりに会ったすずへ別れ際に言う。

「すずはこれからも普通であってくれ。」

普通であろうとすることが何より難しい時代に生きた人々の願いは、極めてシンプルだった。


戦死したと伝えられた兄が、実は夫周作との出会いの場でもあったバケモノになったと楽し気に想像するすず。



エンディングでは、親戚の家で出会った座敷童が、実は遊郭の街で出会ったリンになったという漫画になって出て来る。

どちらも時間のズレが生じていてそんなことはあり得ないのだが、時や場所という概念を超えて、人と人は繋がっていくのだ。
そして現代に生きる我々もその大きな輪の中にいる。


決して人々は後ろ向きに生きているのではない。

原爆が投下された後、実家に戻ったすず。
画面上にことさら被災の状況が描かれる訳ではない。

しかし、そこには明らかな「死」の匂いが漂っている。

それでも人は立ち止まることなく生きていく。


「火垂るの墓」の様に、当時を経験した者にしか理解し得ない地獄を描く作品とは別に、戦争をこうして「普通の生活との関わり」という視点でとらえた作品が存在してくれるのは、戦争というものを後世に伝えていく意味で重要なことなんだろうと想像してみたりする。

全体がほんわかと表現されている中で、兵器に関するシーンは音響と合わせて極めてリアルに恐ろしく描かれている。

他にも、遊郭でのリンとの出会いや、寄港した水原との一夜、空襲で焼夷弾が呉の家の屋根を突き破って降ってきたシーンなど、作品中で多くを説明しない分観客にいろんなことを考えさせるシーンがたくさんあって、整理しきれない。


ボロボロ泣く映画でもなければ、ゲラゲラ大笑いする映画でもない。

是非、映画館で観てどなたかと感想を共有してもらいたいと願っている。


加えて言うなら、日本がこういう映画こそ「稼ぐ」マーケットであってほしいと思うのだが。










ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅

2016-11-28 00:06:22 | 映画
今日は日曜だがお仕事。


帰って来て時間を見るとまだ遊べる時間がある。
ということで夜の映画館へ。

「この世界の片隅に」の2回目にするかで悩んだが、ついに禁断の扉を開けることを決めた。


あれ?
公開からまだ1週間経っていないはずだが、観客はまばら。

都市郊外の日曜レイトショーってこんなもんか。


最近は本編ギリギリまでスマホを開いている輩にもムカつかなくなってきたなあ。





魔法動物学者ニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)は、未知の動物たちを収集していた。
その旅の中で訪れたニューヨークで、彼はトランクに詰めた動物を逃がしてしまい、街中が大混乱に陥ってしまう。

そのニューヨークでは魔法使い達が組織を作って、魔法を一般の人間から隠しておくための条例を定めていたが、魔法使い達の存在を暴こうとするグループも現れ、それぞれの思惑にニュートも巻き込まれていく。





最初に「禁断の…」と前置きしたのは、私がハリーポッターシリーズをほとんど知らないから。

話題になっていた当初、「賢者の石」の原作本を数十ページ、劇場版をDVDで1時間ほど観たくらい。

知識として主要なキャラクターの4~5名くらいは知っているが、その性格や関係性などは全く知らない。


この「ファンタスティック・ビースト」が新シリーズで、ハリポタシリーズを知らなくても楽しめるよという声も聞いてはいるが、案の定ちょっとレビューを見ると「知っていたら、なお楽しめる」みたいな余計な一言を書くヤツが多くて、私としてはヘソを曲げていたという感じ。
(結果としてその彼の言う事は正しかった訳だが)

とは言え、最初から評判は良い様だし、これから観たい映画も多いので観るなら今しかねぇ、という事で思い立った。


観た感想。

「最後に持っていかれた!」

…これに尽きる。


作品かなり後半まで、逃がした魔法の獣たちを捕まえるためのアクションややり取りが続き、その合間に別のストーリーが進行。
最後にそれが合流してクライマックスを迎える。

正直、途中まで別ストーリーの軸となるグレイブス(コリン・ファレル)が何をしているのかさっぱり分からないまま、ニュートの獣集めを見ているのだが、ドキドキ・ワクワクの盛り上がりはイマ一つ。
これは、そもそも私が次々出現する魔法とか得体のしれない動物たちのデザインにまったく興味が沸いていないということもあるだろう。






何だか退屈だなあと思いながらも結局最後まで引っ張られるのは、登場人物たちがすごく魅力的だから。



今回主要メンバーを大人にしたことで、ラブストーリーやセクシーなシーンなど、人物描写も大人向けの演出になっている。
(ハリポタがどうなっていたかは知らないけど。)
また、児童虐待などの社会問題やホラー・ミステリー要素も盛り込んである。


そして最後の15分。

急激に物語が収束して伏線を回収。

ラストシーンの種明かしとそれに伴うビッグサプライズで、見事にニヤリとさせられてしまった。


全体としてはもう少しシェイプできた様にも思うし、「これ、今何してるの?」「なんでこんな所にみんなあつまってるの?」みたいなシーンも多い。
手がかりもあまりない状況で、急にニュートが結論を導き出すなど、後半のあまりに乱暴な展開は気になる。

ただ、セットやCG、音楽を上手に使って世界恐慌直前の活気に溢れたアメリカをオシャレに描いたという部分は素直に見どころだと感じる。


エディ・レッドメインのはにかんだ感じや、ヒロインのキャサリン・ウォーターストン、コメディパートのダン・フォグラーとアリソン・スドルも皆可愛らしい。
コリン・ファレルの悪い感じもまた良い。



キャラクターの魅力で最後まで引っ張って、ストーリーは最後の仕掛けで畳み込む。

かなり強引な展開ではあるが、観た後の爽快感は十分。


作品全体を通して、オススメかと言われるとそうでもないが、クリスマスムービーとして家族やカップルでエンターテイメントを楽しむには良いのでは。



オススメ度:79点




















コウノトリ大作戦!

2016-11-24 17:28:33 | 映画

話題にはなっていなかったが、興味のあった作品。


レディースデーなので長い行列ができていた。

事前予約しておいて良かった。
並んでいたら上映時間に間に合わないところだった。

マシンで券を発行し、長い列をかき分けてサクサクと入場。

でもこの作品の観客は私と若い女性の2人きり。
おそらく今週は「ファンタスティック・ビースト」と「君の名は。」の2本柱なんだろう。


この映画館の欠点はなにしろ企業CМが長いこと。
とにかく待つ。


しかし本編が始まっても場内後方のライトが消えない。
しょうがない。
ここはオジサンが言いに行くしかないか。

立ち上がって外の係員に状況を伝える。

しばらく後方のライトは点いたまま、前方のライトが点いたり消えたり、非常灯が点いたり消えたり。
上手く操作できないらしい。

気が散ってしょうがない。
しばらくそんな状況が続いたが上映は止まらず。

5分程してようやくすべてのライトが消えた。

イライラしたが、まあしょうがない。
精神的なストレスは映画に集中できなくさせる。





赤ちゃんはコウノトリが運んでくるという世界のお話。

コウノトリたちは数年前のとあるトラブルから子供を届けることをやめ、事業として宅配便会社を運営していた。

しかし、手違いによって赤ちゃんが誕生。

宅配便会社で働く主人公のコウノトリ、ジュニア(声:渡部健)と人間のチューリップは、会社に内緒で赤ちゃんを届けることを思い立つ。




製作総指揮が「レゴ・ムービー」の2人だったことくらいしか事前情報はなかったが、やはりギャグ満載のコメディだった。

テンポが速く、ギャグの切れも良い。

「狼の組体操」など、声を出して笑えるような箇所もたくさんあって、楽しい作品だ。



しかし、いろいろと引っかかるところがたくさんあって、もう一つ堪能できなかった。


まず、設定の問題。

トラブルによって赤ちゃんの配達を止めている間、赤ちゃんは一切生まれなかったということか。
その割に、トラブルの際に誕生したチューリップより年下の人間が街にはたくさん登場する。

そして、日本人の感覚として避けられない違和感の問題。

赤ちゃんはどこかからコウノトリが運んでくるという寓話は、知識としては知っている。
ただ、その結果「母親がお腹をいためて産んだ」という感覚を排除して、赤ちゃんは子供の欲しい親が手紙を出すと指定の工場の中で発生し、それをコウノトリがドアの呼び鈴を押して届けに来るという、まさに「モノ扱い」。
親となる大人は玄関口でそれを受け取って「まあ可愛い私の赤ちゃん!」…て、どうにもしっくりこない。
そこに「親子の愛情」を盛り込まれてもなあ…。



それから、キャラクターの問題。

コウノトリのジュニアは、最初は手違いを隠ぺいする意味でこの配達を始めたものの、赤ちゃんの可愛さに負けて嫌な顔をしながらも次第にこのミッションに傾倒していく。
一方、ヒロインのチューリップ。彼女のモチベーションがよく分からない。
チューリップが生まれた時、トラブルで親元が分からなくなり、結果コウノトリたちと生活を共にするようになった彼女には自分の背負った苦しみがあるからなのか、なんとなく赤ちゃんを届けたいという気持ちがあるのは伝わるが、非常に奔放に描かれた結果、あまり「良い子」には見えない。

結局、2人とも本心で届けたいのか、成り行きでしょうがなく届けるしかないと思っているのかがはっきりしない。


ジュニア役のアンジャッシュ渡部は上手だった。
途中で気づくまでは「聞いたことない声だけど、男前の声の声優だな」と思っていた。

ただ、相方の児島はもうちょっと別の配役でも良かったのではないか。
ジュニアをライバル視するハトという役どころだが、彼の多少くぐもった様な声、鷹揚なしゃべり方ではそのずる賢い感じがまったく無かった。
後半のミュージカル調の部分も上手な声優ならもっと面白かったはず。




振り返ってみると、人の誕生・生命の喜びや家族の大切さを訴えたいという方向性の作品にしては、ギャグがかなり乱暴でシュール。
日本人のメンタルには、ちょっと食い合わせは良くない様に感じた。


オススメ度:73点

席を立つと、偉いさんらしき女性が出口で待ち受けておられ、お詫びと無料鑑賞券をくれた。

「は?多少劇場内が明るかっただけで、映像もちゃんと見えたし音声もしっかり出てたし。」
と開き直る映画館もあることを考えると、せっかくこの映画のために時間を作って足を運んだ客としては、こうやって映画館側が真摯に対応をしてくれると嬉しい。








感謝。

2016-11-20 16:04:21 | 旅行
さあ長かった旅の記録も今回で最終回を迎える。

これを書きながら旅の余韻のまま数日を過ごしてきたが、いつまでも過去の世界に浸っている訳にはいかない。

私のカメラのSDカードも、ゴンドラの上で撮った写真が最後のデータになっている。

旅は終わったのだ。
きっちりけじめをつけなくては。



帰国の日の朝。

このツアーで初めて部屋に湯沸かしポットがあった。
秘密兵器「インスタント味噌汁」がついに登場。


愛知県民はもちろん赤味噌。

抜群に旨い。
この熱々をすすることの幸せときたら。

ただし。
熱湯のまま口に運んだので、一口で口の中は大やけど。皮がベロベロだ。

…ま、いいか。


朝食に降りていく。
Tさんの奥さんには昨夜旦那さんをお借りしたことを謝ったものの、旦那が茶化して来たのでちゃんとした謝罪にはなっていない。
奥さんの表情も「構いませんよ」なのか「バカじゃないの」なのか、よく読めなかった。

…ぐぬぬ、謝意が伝わらず残念。


バスでマルコポーロ空港へ。

ここからお土産の金額や量によって出国の手続きが変わるため、成田まで乗る飛行機などは同じだが、それぞれの行動はバラバラになっていく。

添乗員さんからも「皆さん揃ってのご案内はここで最後になります。」とのご挨拶があった。


ローマはフィウミチーノ空港で乗り換えて、再び12時間の長いフライトがスタート。

しかし今回は3人席で隣がS夫妻という、私としては心的疲労の少ない席順。
お二人とも食事が終わったら速攻で就寝。道中、大半は幸せそうに仲良く眠っておられた。


成田に着いたのは正午ごろ。
イタリア時間で朝の4時なので、機内で寝られなかった私はそろそろ眠くなってきていた。

私は荷物が少なく税関での手続きもないので、すぐにスーツケースをピックアップ。
添乗員さんに挨拶をし、名古屋までの乗り換えの指示をもらう。

添乗員さんとしてはここが最終案内地。

あらためて「楽しい旅になりました。ありがとうございました。」と感謝を伝えた。


さてさて、次は自動ドアを出て、国内線乗換ロビーへ。

ANAは南ウイング。

待っている間に荷物が邪魔なので早速チェックインを…。



…違う!!

皆に挨拶をしていないじゃないか!



いつも私は目先の手続きに追われて大事なことを見失う。


南ウィングから急いで到着ロビーに戻る。


しかし、多くの方はそれぞれの方面へ立った後だった。

数組の方にはご挨拶ができたが、多くの方には礼を欠いたことが悔やまれてならない。




この場を借りて、旅をご一緒下さった皆様に御礼を申し上げます。

本来ならご夫婦やご友人で貴重なひと時をお過ごしいただくべきところ、独り旅の私のためにご配慮を頂いたこと、一生忘れることはないでしょう。

たくさんの失礼をお許しください。


本当に素敵な旅になりました。

心から感謝しております。


そしてそして、どうか末永くお幸せに。




追伸。


ヴェネチアあたりから思い立ち、「私の記念にお二人の写真を撮らせてください」と何組かにはお願いして快くOKを頂きました。
タイミングが無くて、全員にお願いできなかったことも心残りではありますが、撮らせて頂いた方々を感謝の気持ちを込めて、
勝手に紹介させていただきます。

※ご本人の意向を確認していないため、今後削除などさせていただく可能性があります。


東海地区にお住いのご夫婦。
最初から失礼な写真になってしまった。
後ろにピントが…。ごめんなさい(泣)



九州から来られたご夫婦。特に後半はお世話になりました。



こちらも東海地区在住。
ローカルな話題で盛り上がりました。



関東圏からご参加のご夫婦。
本当に気さくに話してくれました。



北関東から来られたご夫婦。
年上をいじる手腕はお見事。気持ちよく酒が飲めました。



こちらも関東からのご夫婦。
お二人がいてくれたおかげで、みんなの写真を撮るという自分の仮の立ち位置が決まりました。
あれが本当の旅の始まりでした。



九州からのご夫婦。
帰国してから式を挙げられるとのこと。式に私の写真を使ってくれるそう。
お役に立てば幸いです。



最初から最後までこんな場違いな私に声を掛け続けてくれたご夫婦。
最初の彼らとの出会いがなければ、この旅を楽しむにはもっともっと時間がかかったはず。
本当に本当に感謝しています。ありがとう。




あらためて皆さまありがとうございました。

またいつかどこかでお会い出来る日を楽しみにしています。


それでは。



                            了。





終焉。

2016-11-19 22:41:25 | 旅行
実質的な観光は本日が最後。

朝からバスに乗り込んだ我々は、4時間ほどかけてヴェネチアへ向かった。


幸いにも天候は回復しそう。
皆疲れているらしく、車内で静かに寝息を立てている。



私は先日AmazonMusicでダウンロードしたナタリー・コールの名盤「UNFORGETTABLE WITH LOVE」を聞きながら車窓を眺めていた。



想定通り、このアルバムは旅にピッタリ。
…と思ったら、本来アルバムラストの「UNFORGETTABLE」がプライムのダウンロード版では入ってないじゃないの。
CDダウンロードして来ればよかった。



バスはメストレに到着。
ここからボートでヴェネチアへ向かう。


乗り込んだのはこんなにカッコいいボートではないのだが、私たちのプライドにかけて、その写真をお見せすることはしない。


そしてヴェネチア。



まずはお昼ご飯。

…と思っていたら、大事な音声ガイドをバスに忘れていることに気付く。
泳いで取りに戻る訳にもいかず、ピッタリと皆についていくことにする。

何しろ、迷路のように入り組んだこの街で迷子になったら間違いなく戻れない。
私も必死だ。


レストランに到着。

私はもうどのテーブルでどのメンバーと一緒でも楽しく食事ができるというくらいの感じにはなっている。
(皆、私に気を遣ってくれているのだろうけど。)

メニューはイカ墨のパスタと舌平目のムニエル。





楽しいひと時を終え、サン・マルコ寺院へ。(写真の右奥がドゥカーレ宮)



宮廷中庭。



ちょっとしたトイレ休憩に、旦那さんを待っていた新婚の奥さん同士が楽しそうに自撮りし合う姿を見て、親戚のおじさんの様に幸せな気分になる私。

ドゥカーレ宮は、ヴェネチア共和国の総督邸兼政庁であった場所で、裁判所や尋問室から「ため息の橋」を通って牢獄まで繋がっている。


「密告の口」
いわゆる目安箱。


大評議会の間に飾られた「天国」という世界最大の油絵。



外から見た「ため息の橋」。
罪人はこの橋を渡って、投獄される。


現地のガイドはイタリア人男性のマルコ。
日本語も上手でジョークを交えて楽しくガイドをしてくれた。

音声ガイドを持っていない私はそのジョークを聞くことができないので、皆の笑い声に合わせて愛想笑いを浮かべる。
貧乏な家の子供の様な私の姿を憐れんだメンバーが、その後ポイントポイントで「ここは、○○らしいですよ」と耳打ちしてくれた。
涙が出る程ありがたい。

トイレ休憩の間、マルコが「写真撮って欲しい人は言ってください」と声をかけてくれる。
Sさんご夫婦も彼に撮ってもらった様だが、「マルコの写真、メチャいい加減。」と苦笑いしていた。

これがイタリア人基準というところか。



次はゴンドラ。



狭い水路を30分程遊覧する。



現在ゴンドラの一般の漕ぎ手は近所迷惑ということで、名物だったはずの歌を禁じられた結果、黙っていられない彼らは仕事中も周りの漕ぎ手仲間とベラベラとしゃべり続けているという始末。

ホントに「プロ意識」というものに欠ける国民性だとは思うが、正直羨ましいとも思ったりする。


そこから夕食まで2時間ほどの自由時間。

しばらくはウロウロしていたが、疲れたので教会で休憩した。

イタリアに来て、教会という静かな休憩所を自由に使う術を手に入れた私。
今回もこの教会で1時間半ほどを過ごす。

神父さんも、長い間静かに祈りを捧げ続ける私を見て「なんと敬虔な信者だろうか」と微笑みかけてくれる。
私はただひたすらミュージックプレイヤーで「BABY METAL」を聞いているのだが。

不遜。




ただ、夜になってずいぶん寒くなって来た。
このままジッとしていたらホントに天に召されるぞ、パトラッシュ。


もう少しウロウロしてみよう。

なんとなく人の流れに合わせて移動。

そして気付く。



…ここはドコだろう。


この橋はさっきも通ったような、でも違うような。
目印になるはずの寺院の大鐘楼は、この細い路地の中ではまったく遠くが見渡せない。
集合時間は迫っている。

いつも添乗員さんから配られた市内の地図が今回は配られていない。

どっと吹き出る脂汗。

自然と小走りになっていく。
人波をかき分けて見覚えのある場所を探すが、どこも同じに見える。



ああ、みんな。
もう会えないんだね。

気を付けて帰ってください。
ボクはこの街でくらしていきます。




しかし思い出す。

GoogleMap様。


「イモトのWi-Fi」はこのためにあったのだ。

ネット社会万歳。
 
点滅する私の居場所。
広場へ走れ。


むしろ、早い時間に集合場所へ戻ることができた。

時間まで添乗員さんと雑談。

このプログラムはやはり新婚カップルが利用することが多いそうだが、2人きりの世界に浸っているご夫婦も多く、こんなにみんなが和気あいあいと交流しているツアーは珍しい、とのこと。

まさにそのおかげで私は独りぼっちにならないで済んでいる。
添乗員さんと「ホント、みんな良い子たちですよねーー!」と声を揃えた。

ま、添乗員さんとしてもこれだけご夫婦ばかりが参加している中で、私の様に男性が独りで参加しているのはテーブルの対応など手を焼くと思っていただろうし、その辺りの負担があまりなかったのは、メンバーの良い子ぶりが役に立っているはず。

ただその分、後半の私への対応がゾンザイになっていったことは念のため忘れないでおこう。

…なんつって。



迷子も出ず、皆時間通りに集合。
すごいな、みんな。

これがネット社会か。
君たちはやはりネット社会の申し子なのか。



そして食事。

ボンゴレビアンコのパスタとイカのフリット。

総じて味は普通だが、皆で食べる夕食はこれが最後。


特に今日は朝から3食とも同じご夫婦Tさんと同席となり、旦那さんとも仲良くなった。

ワインをたっぷり飲んで上機嫌。

我々のいたフロアは、ちょっとしたサークルの飲み会だ。

現地のお客さんが不思議そうに見守るほど賑やかだった。
(お店の人は多分嫌がっていただろうけど。)


ご友人同士のペアで参加されているご婦人も完全に酔っぱらっておられたが、それもまたご愛嬌。
皆が微笑ましく見守っていた。


ボートに乗って、バスへ。

そしてホテルに着く。


最後のホテルはちょっと現代風のデザイナーズホテルという感じ。

ラウンジもあったので、Tさんの旦那に声を掛けて再び夜に集合。


2人で酒を飲みながら、本当にくだらない話で時を過ごして部屋に戻った。

その後あらためて「彼は新婚旅行で来ているんだ」ということを思い出し、明日は朝イチで奥さんに謝らねばと自己嫌悪で頭を抱えながら眠りについた。





次回「感謝」

これで本当に最後。

乞うご期待。