障害者総合支援法改正法成立に対する障全協抗議声明
基本合意・骨格提言・障害者権利条約に反する見直しは許せません
2016年5月26日
障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会/障全協
昨日、参議院本会議にて、障害者総合支援法改正法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律)が成立しました。
政府・厚労省はこれまで基本合意や骨格提言を段階的・計画的に実施していくと繰り返し答弁してきました。しかし、今回の法改正は、基本合意を実行する項目はまったくなく、障害者権利条約を具体化するための骨格提言もほとんど反映しない「約束破り法」です。
私たち障全協は、同法の成立にあたって、約束をないがしろにする国に対し、強く抗議します。
同法案の審議過程で与党などの賛成派議員は「今回の見直しは不十分ではあるが障害福祉を少しでも前進させるための法案だ」と主張しました。確かに、長年障害者団体が要望してきた入院時のヘルパー派遣の解禁など、一部の限定的な改善点がないわけではありません。
しかし、法全体を見ると、障害者自立支援法を踏襲する応益負担(自立支援医療の低所得無償化の不履行や課税世帯の応益負担の温存)をはじめ、障害支援区分や支給決定、日割り単価など、法の根本問題には一切手を付けていません。それどころか、区分などによって使える支援を限定する方向をさらに強化し、支援を必要とする障害者を分断する見直しが随所に盛り込まれていることは、今後の障害者施策に大きな後退をもたらすものだと言わざるを得ません。
介護保険優先問題では、65歳を迎える一部の高齢障害者に介護保険の利用料を軽減するとしていますが、結局は、介護保険を使うことが前提となっており、これまで以上に優先原則を徹底・強化していくものに他なりません。また、今回新設される自立生活援助は入所施設やグループホームの軽度者の追い出し策になりかねず、このことは入所施設の数値目標による削減やグループホームを重度者に特化していこうとする方向性からも明らかです。
このように今回の法改正は、一歩前進、三歩後退の見直しです。なにより許せないのは、国会審議において政府・厚労省が、基本合意や骨格提言、障害者権利条約を実現しようとする意思がまったく感じられない答弁を繰り返したことです。
そもそも総合支援法の3年目の見直しにおいて私たちは何を求めてきたのか。それは基本合意で約束された「障害者の基本的人権を保障し、その行使を支援する法律の実現」です。
衆院の参考人に立った元総合福祉部会の佐藤部会長は「基本合意と権利条約を実現する道は骨格提言しかない」と断言しました。また、参院では自立支援法違憲訴訟の藤岡弁護士が「今回の小手先修正法案は評価に値せず、国際的に、基本合意・骨格提言・権利条約が履行済みであることのアリバイ作りに使われるならば、むしろ、改革の妨げになりかねないと危惧する。国は制度改革の心を取り戻し、基本合意・骨格提言・権利条約を今後とも真剣に実現、推進することを改めて誓って下さい」とする参考人意見を述べました。
同法の施行は、2年後の2018年4月であり、障害福祉をはじめ介護・医療の報酬改定、介護保険制度のあらたな見直しと時を同じくしています。このことが、さらなる社会保障改悪とつながらないよう国民的な運動を強めなければなりません。そのためにも、引き続き、「社会保障・社会福祉は国の責任で!」という声を広げていくとともに、人権保障法としての障害福祉施策の実現に向け、多くの国民と共同・連帯して運動をすすめていくことを決意します。
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