「名樹散椿」
を見るのが目的で行きました。
これはやはりすごい絵でした。
鮮やかな椿の花と、何枚も何枚も丁寧に重ねて描かれた椿の葉から「華やかさの中に重厚感が同居している」という一見矛盾したような感覚を受けるました。
しかし、速水御舟の作品なので当然のことなのですが、この矛盾した感覚は決して気分の悪いものではありませんでした。
むしろその「どうしてこんな印象の絵がかけるんだろう?なんで重厚感があるのにキラキラ感もあるんだろう?」という疑問から、ますます興味を持ってその絵をじーっと見るのですが、私にはその理由は全く分かるわけもなく、ただただ圧倒され、絵の凄さみたいなものをひしひしと感じました。
今回の展覧会では、全体的に線の繊細さを感じられる作品が多かったので、その中でこれは他とは違った印象の作品で、他にはない迫力というか、むしろ威圧感すらあり、とても興味深い絵でした。
また「翠苔緑芝」も圧倒されるような存在感があり、輝いていました。
圧倒されるような存在感と言っても、これは「名樹散椿」とは違って威圧感ではなく、すっきり感があって凛としていて、上を向いた「強さ」みたいな感覚を受ける絵でした。
この絵は部分的に見るととってもすっきりしている絵なのに、全体には圧倒するような存在感のある絵で、これもまたその奥の深い感じがなんともいえない作品でした。
私は、速水御舟の中ではこの絵が一番好きかもしれないです。
ほかにも「夜桜」も、「昆虫二題」も、、、、とにかくとにかくすごい絵ばかりでした。
今まで、あまり速水御舟一人に注目したことがなかったので気づかなかったのですが、この方の描かれた絵はみな、とても繊細で他の人にはちょっとない儚さとか、切なさみたいなものを感じることができ、本当に驚かされました。
特に、植物系の静物画に感動しました。
枝や葉の描写は本当に例えようのないほど繊細で、何かこう、もどかしいような切ないような、でもなんだかよく分からないけど素晴らしい感動がありました。
特に梅や桜などを題材とした絵は、この「儚い」感じがとても似合っていて、白梅紅梅で有名な酒井抱一の屏風などとはまた違った感動のある梅の絵を見せてもらうことができて幸せでした。
いわゆる 巨匠 のお一人として、教科書に載るような作品もたくさん見たことがありましたが、この展覧会を見て、その魅力を再確認しました。
九段下から行ったので、最初は「近代美術館で今やっている『草間彌生展』もハシゴしようかな?」と思っていましたが、こっちを見たら「速水御舟と草間彌生のチャンポンはナシでしょう。どちらにも失礼だ。」と思いなおし、まっすぐ帰りました。
先週行った、菱田春草(
永青文庫)とのハシゴなら良かったかも知れません。
ちなみに、これは2004年11月24日のものです。
もう展覧会は終わっていますので、あしからず。
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山種美術館のHPの所蔵品目録のページには「名樹散椿」「翠苔緑芝」「夜桜」が、所蔵品紹介のページには「昆虫二題」が詳しく掲載されています。ご参考まで。