合宿と夏祭り1
その日は初夏といっても、アスファルトが焼けつくような暑い日だった。
小高い所にある住宅地の坂道を登って行くと同じような路地が続き何処を歩いている事さえ分からなくなっていた。
「こっちかなあ?」
「あっちやない?」
自然に囲まれ、隣の家も離れている所に暮らしていると、住宅街は迷路だった。
しばらくするとトッキンが表で待っていてくれた。
「遠かったろう?」
「ちっと迷ったからなあ・・まっあ、結構あるな」
「足腰鍛えられるよ」
「それよりこれ」と西村が白い袋を見せた。「やばいんやない?」とトッキン「大丈夫だって」と西村が笑顔を見せる。
「まっあ、中に入れよ」
僕たちは合宿と銘打って西村とエージとタヌキとケンと僕とでトッキン家に泊まり込みで遊びに行った。
トッキンと会うのは久しぶりだった。小さい頃は毎日のように一緒に遊んでいたが、家の都合で僕たちの町から15キロぐらい離れた下関の住宅街に引っ越したのだ。
僕たちはあれから40年以上あの時と変わらず付き合いが続いているが、全員が揃う事はほとんどなく、あの合宿はみんながそろった、特別な日になったのだ。
僕たちはトッキンの部屋に入りおのおのに座り近況を話した。
「トッキン、コップないかな?」と西村が言い白い袋から「樹氷」を取りだした。
その当時、ソルティードックと言って、コップの淵にレモン汁を付けその上に塩をまぶしてウォッカとグレープフルーツを混ぜて飲むのが流行っていたのだ。
まっあ、俺たちはまだ未成年だったけどね。
「レモンをコップに付けて塩をこんに風にまぶすのよ」とエージが実践しながらウォッカとグレープフルーツを流し込む。
「オッオー」と僕たちは一斉に声を上げた。
残りは3日です。
映画のワンシーン見たいにはいかないけど、僕たちの青春が詰まった作品になったと思います。
楽しみながら読んでもらえると嬉しいです。