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≪化学が苦手な君へ≫ 質量を物質量に変換せよ!

2014年02月22日 17時35分11秒 | 化学B
 教員が<Q1>のような試験問題を考えたとします。

〈Q1〉132 g のプロパンを物質量で表すといくらか?

このとき、この教員が弱気だと、<Q2>のように書き変えてしまいます。

〈Q2〉132 g のプロパンを物質量で表すと何mol か?

さらに、めんどうだと、

〈Q3〉132 g のプロパンは何mol か?

そして、やけ気味になると、ついには、<Q4>のような最終形にしてしまいます。

〈Q4〉132 g のプロパン(C3H8)は何mol か?

これ以上、容易にすることはできません。
あなたは、Q1~Q4 のどの段階で解けましたか??



「物質量」という聞きなれない言葉は大丈夫でしょうか? 正直言って、これは現場ではあまり使われません。言いにくいし。
ふつう、「モル数」とか言っちゃいますが、モル数は俗称ですので、試験等の正式な場では「物質量」とよそ行きの用語を使います。
なので、「物質量が mol のことだって分かるかな?」という不安があると、<Q2>にしてしまうのです。
さらに、「物質量」なんて余計な用語を出したばかりに、不合格者が増えたら面倒だ学生を混乱させてしまうかもしれないと思うと、〈Q3〉の易しい形になります。

「物質量」とか「mol」はふつう化学の世界でしか出てこないので耳慣れないかもしれませんが、実は、広辞苑にも載っています。広辞苑によれば、

国際単位系で選ばれた七つの基本的物理量の一つ。その物質を構成する単位粒子(原子・分子・イオンなど)の数に比例するように定義され、その単位はモル。1モルを構成する粒子数は約6.02×1023である。

だそうです。基本物理量とは、長さ(m)、質量(kg)、時間(s)、電流(A)、温度(K)、物質量(mol)、光度(cd)を指します。つまり、マイナーに思われている物質量も、実は、長さや質量と互角なのです。

では、冒頭の問題の考え方に戻ります。

〈Q1〉132 gのプロパンを物質量で表すといくらか? を解くには、次の3ステップが必要です。

[1] プロパンを化学式で表す。
[2] プロパンの分子量を求める。
[3] プロパン 132 g を物質量に変換する。

では、順番に考えましょう。

[1] プロパンを化学式で表して下さい。
これが出来ないと、先に進めません。なので、そのリスクを回避したい場合、教員は〈Q4〉のように化学式を与えてしまいます。

ちなみに、プロパンはCとHのみから成る炭化水素で、単結合からなる直鎖状アルカンの1つです。分子です。炭素が1個~10個のアルカンは覚えなくてはなりません。 暗記です! (私の高校の化学の授業は時間がなく、有機化学はここまでだったけど、「これだけは覚えろ」と先生に言われました。役立っています。20年以上も昔のことだけど。)

つまり、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)、ブタン(C4H10)、ペンタン(C5H12)、ヘキサン(C6H14)、ヘプタン(C7H16)、オクタン(C8H18)、ノナン(C9H20)、デカン(C10H22)。

C原子が1つ増えるごとに、H原子が2つ増えます。分子式はCnH2n+2 になります。
構造式(↓)を書けばすぐわかると思います。
   ・・・

プロパンは3つ目、炭素原子3個、水素原子8個の C3H8
ちなみに、プロパンは分子なので、C3H8 は分子式と言います。プロパンが分子だか何だかわからない場合は、化学式と言っておけばOKです。

[2] プロパンの分子量を求める。
これは簡単。 化学式(分子式)に登場する元素記号の分だけ、原子量を足し合わせましょう。
C 3 H 8 =(Cの原子量)×3+(Hの原子量)×8 = 12×3+1.0×8 = 36+8.0 = 44

[3] プロパン 132 g を物質量に変換する。
ここがメイン! つまり、132 g は何モルか? ということ。

でも、同じ132 g でも、プロパンの物質量とエタンの物質量は異なります。
なぜならば、プロパンとエタンでは、含まれるC原子やH原子の数が違います。つまり、1分子の質量が違うのです。
1個の質量が異なれば、多数集まった時の質量も違うはずです。
つまり、プロパンとエタンでは、6.02×1023 個集まった時の質量が違うのです。
つまり、プロパンとエタンでは、1 mol 分の質量が違うのです。

注1)1 molとは、6.02×1023 個(アボガドロ数)のこと。
  1 molと言っても、6.02×1023 個と言っても、アボガドロ数個と言っても全部同じ意味です。

では、 プロパン分子が1 mol 集まると何g になるのでしょうか?
その答えは、分子量 にあります。


分子量には単位がないのですが、分子量の数値に g/mol という単位を付けたものをモル質量といい、1mol当たりの質量(g) を表します。
つまり、プロパンの分子量は 44 だから、プロパンのモル質量は 44 g/mol
つまり、プロパン分子が 1 mol(=6.02×1023個)集まると、44 g になるのです。

ということは、プロパン分子が 2 mol あると、44 g/mol × 2 mol = 88 g になるのです。
ということは、プロパン分子が 10 mol あると、44 g/mol × 10 mol = 440 g なのです。
ということは、プロパン分子が 4352 mol あると、44 g/mol × 4352 mol = 191488 g なのです。
ということは、プロパン分子が 0.01 mol あると、44 g/mol × 0.01 mol = 0.44 g なのです。
ということは、プロパン分子が 0.00584 mol あると、44 g/mol × 0.00584 mol = 0.25696 g なのです。

では、プロパン分子が何 mol あれば、132 g になるのですか?





比を使えば解けますね。よね? つまり、
 1 mol : 44 g = x mol : 132 g
よって、内項の積=外項の積だから、
44 g × x mol = 132 g × 1 mol …(※)

または、上の「ということは、」シリーズを真似て、44 g/mol × x mol = 132 g …(※)

と言う具合に、どう考えても、同じ式(※)にたどり着きます。
この式を解けば、答え x は求まります。しかし、比とか使っていると、小学生みたいですね。

なので、高校生以上であれば、以下のように、分数で解きましょう! というか、分数で解け!
    …(※※)

注2) 数値は数値、単位は単位で計算します。
 つまり、数値部分は、132/44=3 (小学生風に書くと 132÷44=3)で、単位部分は、 g/(g/mol)=g×(mol/g)=mol 

注3) "/ " の前が分子で、後が分母です。つまり、
    
 本来はこのように分数で書くのですが、パソコンでは分数を書くのが面倒なので、"/ "で表されることも多いです。
 ただし、単位に関しては、常に"/ (スラッシュ)"で書かれます。 g/mol とか。
 発音は「g パー mol」みたいに、/ をパーと読むことが多いです。
(「100メートル毎分」とかの毎のことだから、「毎」と読んでもOK)

上記の(※)式で解いても、結局、x = の式に直せば、この分数の式(※※)になります。 全く同じなのです。
だから、いきなりこの分数の式(※※)を書けるようにしましょうということです。これが大人の解き方になります。最終形です。これを目指して下さい。

よって、答えは 3 mol となります。


注4) 話をシンプルにするために、ここでは有効数字の概念は省いています。

受講生は講義資料のpp.41-42も参考にして下さい。