アレルギーが、出てしまっている。
ジュニアくんをみたマウソックは、暗い気持ちになりました。
ステロイド薬と抗生剤を飲ませ続けて1カ月間。
休薬開始から2週間目、するどい爪で自分の脇腹を掻き立てるジュニアくんに、マウソックは、静かに言いました。
ジュニアくん、掻いたらだめよ
その声を聞いたジュニアくん、掻き立てるのを不意にやめました。
そして、確かに聞こえた声の方向を向きました。
だめよ
ジュニアくんは、じっとこちらを見ています。
「(おやつの声がしましたね!)」
だめよ、ね、ジュニアくん、掻かないのよ
マウソックは、念を押すようにゆっくり、うなずきました。
ジュニアくんも、こくり、うなずきました。
「(くれるの?おやつ?)」
いい子ですね
マウソックは、にこやかにまた、うなずきました。
ジュニアくんも、うなずきました。
そして、体を武者震いのように震わせながら、まっすぐマウソックを見つめました。
「(わくわくします。早くください。)」
マウソックは、ジュニア君に向かって手をヒラヒラとふりました。
ジュニアくんは、後ろ足で立ち上がると、片手でそばのおもちゃをつかみながら、片手をおもむろに上げました。
そして、さかさかマウソックの前までよってくると、立ち上がり、鼻をヒクヒク、口をぱくぱく動かしました。
おやつ。
ついさっきまで痒そうにしょぼしょぼしていたジュニアくんの目は、きらきら、見るものを深く吸い込むように輝いています。
飼い主は 引き込まれる前に立ち去らん 瞳の輝くに