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楽しい酒 良い酒 おいしい酒

酒を飲むなら、いい酒を飲みたいものです。

おいしい酒を紹介できたら良いな!

お酒のお供Y・・・172

2015-06-16 14:21:07 | 日記


松山鏡



村中捜しても鏡というものがないひなびた松山村に、

正直正助という男が住んでいた。とても親孝行な男で、両親が

亡くなってから十八年もの間、墓参りをかかしたことがない。

その評判が領主に届き、ごほうびがもらえることになった。

「何か望みはないか」

と領主が尋ねると、正助は十八年前に死んだ父の顔を、

一目でいいからもう一度見たいという。

思案した領主は名主に、

「正助は父親に似ておるか」と尋ねた。

「瓜二つでございます」

そこで領主が取りだしたのが、国の宝にしてある鏡を入れた箱。

箱のふたをあけ、正助に中を見るようにと言った。中の鏡には、

当然、正助の顔が映る。鏡というものを知らない正助はびっくり仰天。

自分の顔を死んだ父親だと信じこみ、「会いたかった」と泣きくずれてしまった。

 領主は満足げにうなずき、他人には決して見せないようにと申しつけて、

鏡の入った箱をほうびとして与えた。

 鏡をもらった正助は言いつけどおり他人に見られぬよう、納屋の古いつづらに

鏡の箱を隠し、毎朝、毎晩、「とっつぁま、いってめえります」「ただいま

帰りました」。

 不思議に思った女房のお光が、正助の留守に納屋へいき、古いつづらの

ふたをとって鏡に映った自分の顔を見た。

 もちろんお光も鏡なんか見たことがない。てっきり正助が箱の中に女を

かこっていたと思い、鏡に向かってののしりはじめた。

「他人の亭主をとる悪い女め、タヌキみたいな顔して」

 などとわめくがいっこうに反応がない。馬鹿にされたと泣くと、相手も泣く。

それを見てまた腹が立つ。

そのうち正助が帰ってきて、夫婦ゲンカが始まった。

「つづらの女はなんだーっ」

 くんずほぐれつの大ゲンカ。ちょうど家の前を通りかかった尼さんが、

これを聞きつけて仲裁に入った。

「黙ってちゃわからねえ。話をしなせえ。うん、うん、女をつづらの中へ、うん、うん」

 父親だという正助をわけ知り顔でなだめ、

「よし、おらがその女に会う。このつづらか」

 尼さんもやっぱり鏡を見るのは初めて。

「お光よ、正さんよ、ケンカせんがええよ。中の女はきまりが悪いって坊主になった」



                        立川志の輔  古典落語100席引用

おとんでもおかんがします。さっぶぅ。くるりん



冷えたおでんにもそら・あかね

お酒のお供Y・・・171

2015-06-13 14:03:20 | 日記


紙入れ




新吉が、世話になっている旦那の女房といい仲になってしまった。

その晩も旦那の留守をいいことに家にあがりこんでいる。

小心者でビクビクしている新吉とは反対に、女房は大胆。

旦那は碁を打ちにいっているから今夜は帰ってこない、

泊まっていってもいいとしきりに粉をかける。

だんだんと新吉もその気になってきたところで、表の戸がドンドン。

意外にも早く旦那が帰ってきた。

「こっち。裏から出て」

かろうじて裏口から見つからずに逃げた新吉だったが、歩いているうちに

紙入れを忘れたことに気がついた。上等な紙入れで、買ったときに

旦那にも見てもらったから、一目で新吉の物だとわかってしまう。

おまけに中にはおかみさんからもらった恋文まで挟んである。

 このまま遠くへ逃げてしまおうかと考えた新吉、ひょっとしたらおかみさんが

先に気づいて隠してくれたかもしれないと思い直し、翌朝、確かめにいくことにした。

 夜が明けるのを待ちかねて旦那の家へ。

「おお、新吉か早いな。まああがれ」

 おかしい、旦那は機嫌がよさそうだ。しかし、そのふりをしているのかも。

 心の中であれこれ思い悩んでいるのが新吉の顔に出た。

「どうした、顔色が悪いぞ」

 新吉は女のことでまずくなったので、しばらく旅に出ようと思っていると

打ち明けた。旦那は、無理もないことだと新吉をはげまし、ただし他人の

女房だけには手を出しちゃいけないと釘をさした。

「じつは、その、それなんで」

 腹を決めた新吉は、自分とおかみさんのことを話すが、

旦那はよその家のことだと思って聞いている。

「向こうに知れたのか」

 知れたかどうかまだわからない。しかし、家に紙入れを忘れてきたので心配している。

と、ここまで聞いた旦那、あの紙入れを忘れてきたのかと納得し、奥から出てきた女房に、

「おい、おかみさんからの手紙を入れた紙入れを忘れてきたんだとさ」

 女房は平気な顔で、

「いやだよ新さん。どうせ旦那の留守に男を引きいれようというくらいの女だもの、

紙入れなんかちゃんと隠してあるさ」

 旦那もまったくそのとおりという口調で、「それに主人が紙入れを見たって、

自分の女房をとられるようなやつだ。気がつくまい」


                      立川志の輔   古典落語100席引用



この囃しは男の立場の弱さを表しているそうで、女房のほうが偉いわけで

旦那は女房のことなんかどうでもいいような感じに読んでしまったわたしって、

冷めてますか?



冷めてても旨い焼酎そら・あかね

お酒のお供Y・・・170

2015-06-10 13:25:48 | 日記


樟脳玉




昔、火をつけて燃やしても熱くない樟脳玉が「長太郎」という名で

縁日などで売られていたころの話。

 とても女房思いの男・捻兵衛がたいせつな女房に死なれ、ふぬけのように

なって毎日、仏壇の前で念仏ばかり唱えている。

 この様子を見た八五郎が女房の幽霊になって出て、着物と金を

まきあげようという悪だくみを思いついた。

 兄貴分に相談すると、「女房恋しさのあまり捻兵衛が幽霊にかじりついて

きたらまずい。それよりも、夜中に樟脳玉に火をつけて人魂が出たと

思わせたほうがいい」というアドバイス。翌日、悔みにいけば、

捻兵衛はきっと人魂の話をする。そしたら、それは女房の気がこの世に

まだ残っているから、供養のために金と着物を寺へ納めてきてやると

もちかければ、必ず出すからそいつを山分けしようと話がまとまった。

 夜中、捻兵衛の家の屋根にこっそりあがった二人、樟脳玉に火をつけて

振り回した。これを見た捻兵衛は、もくろみどおり女房の人魂だと思いこみ、

仏壇の前に座って必死になって念仏を唱えはじめた。

 さて翌日、悔やみにかこつけて八五郎が家を訪ねると、目を真っ赤にした

捻兵衛が早速、人魂の話。内心ほくそえんだ八五郎が供養のことをもちだすと

一も二もない。

 箪笥の中にだいじにしまっておいた着物を出してきた捻兵衛、「夫婦に

なったばかりのころによく着ていたのがこれ。色白にこの柄がよく似合って」

などと、一枚一枚、思い出話をしながら涙を流す。八五郎もついつい聞きいって

しまい、うっかり金を出させるのを忘れてしまった。

 着物を手に八五郎が帰ると、兄貴分が怒るのなんの。しょうがないので

もう一度、樟脳玉でおどすことにした。

 そのまた翌日、捻兵衛の家へいき、着物だけではだめらしいので金を寺へ

納めたほうがいい、とすすめた。

 ところが、捻兵衛はじつは金はないが、かわりに女房が大切にしていた

雛人形ではどうだろうかと言いだした。かなりの名作だとのこと。とにかく

一度見てみようということになり、雛人形の入った箱を取りだしふたをあけた

とたん、捻兵衛の顔がパッと明るくなった。

「わかりました。家内が気にしているのはこの雛人形に違いありません」

びっくりした八五郎が、「どうしてそんなことが」と尋ねると、

「ええ、ふたをあけたら魂の匂いがしました」



                   立川志の輔   古典落語100席引用


ミレンとは未練と書くのか美恋と描くのかわからなくなっちゃいますな。

恋をしたなら、焼酎そら・あかねで乾杯。


お酒のお供Y・・・169

2015-06-09 15:01:59 | 日記


御神酒徳利



江戸の大きな旅籠で年に一度の大掃除が始まった。騒ぎにまぎれ、

旅籠に先祖代々伝わった将軍家より拝領の御神酒徳利が、コロコロと

転がった。この家宝の徳利を見つけたのが通い番頭の善六。バタバタしているので、

とりあえず徳利を台所の水がめの中に入れたまではよかった。

ひと通り、かたづいたと思ったら、今度は徳利が見当たらないので、

宿中、大騒ぎ。だが慣れないハードワークをしたせいか、当の善六は

記憶の糸が切れていて、自分が徳利を緊急避難させたことも忘れていた。

家に帰って晩酌をしながら、ひょいと水がめを見た瞬間、善六は「あっ」と

徳利のことを思いだした。だが、旦那に尋ねられたとき「存じません」と

言ってしまった。困った善六が、女房に相談すると「占いでわかったことにすれば」

と名案が出た。占い道具はそろばんがいいというアドバイス。

店にとって返した善六、早速、そろばんをパチパチ鳴らして、「台所の水と土に

関係ある場所」と占った。もちろん、徳利は出てきたから旦那は大喜び。

芸者を呼んでの大宴会となった。

この話を聞きつけたのが泊まり客の大坂の豪商・鴻池屋の大番頭。

じつは鴻池屋の娘が病気で長い間、苦しんでいる。

ぜひ、大坂にきて占ってほしい、と善六に頼みこんだ。

また困った善六が女房に相談すると、「いってらっしゃいな」という答え。

易者の父から本を借りてあげる、それでなんとかなるからと言う。

大坂への道中の宿で、武士の財布が盗まれる事件が起き、宿の者に疑いがかかった。

占いを頼まれた善六は、またもや大困惑。夜逃げをしようかと思いつめた。

だが、その夜、女中が善六に「親の病気を治そうと思い、つい・・・・・」と、

涙ながらに打ち明ける。そこでそろばん占いの卦が出たことにして、財布を発見。

礼金の一部を女中に渡して、無事にピンチを切り抜け大坂へ。

さて、大坂。どうにも方法がない善六は、やけになって水行を始めた。

ひたすら水をかぶりまくって二十一日目、不思議なことに稲荷明神が夢枕に立ち、

「柱の下を掘ると観音像が出る。その像をあがめればよい」というお告げ。

そろばんの卦が出たような顔で善六が教えると、お告げどおり娘は全快した。

喜んだ鴻池屋は善六に立派な旅籠をプレゼント。女房と力を合わせた旅籠は

大繁盛して、善六は大金持ちに。なにせ、そろばんで成功したから暮らしぶりは桁違い。

               

                       立川志の輔   古典落語100席引用


一息つける笑いは健康への近道。笑顔と真心で全快な暮らしを。perform umeken‘s duty

お酒のお供Y・・・168

2015-06-08 14:47:31 | 日記


火焔太鼓




市で古い太鼓を仕入れてきた道具屋の甚兵衛。これで大儲けをすると

息まいている。脇の女房はあきれ顔。なにせ怪しげな物ばかり仕入れて

きては損してばかりいる亭主。見るからにほこりだらけの汚い太鼓なんかで

儲かるわけがないと思っているのだ。

甚兵衛は小僧に表で太鼓のほこりを払うよう言いつけた。小僧は力まかせに

叩くものだから、ドンドンドンドンとうるさいのなんの。女房がよけいにいきりたつ。

そんなところへ一人の侍が入ってきた。殿様が通りがかりに太鼓の音を

聞いたと言う。てっきりうるさいと叱られると思った甚兵衛が、小僧のせいにして

あやまるが、どうもそうではないらしい。殿様が太鼓の音を気にいって買うつもり

だから、屋敷へ持ってこいという口上だ。

疑り深い女房は、音が気にいったとしても太鼓を見たら、あまりの汚さに殿様は

怒りだすに違いない。へたをすると帰してもらえないかもしれないと甚兵衛をおどした。

おっかなびっくり屋敷へ出向いた甚兵衛に先刻の侍が応対に出た。太鼓を持って奥に入り、

戻ってくると太鼓は火焔太鼓という名品、殿がいたく気にいられたので買うと言う。

安心した甚兵衛と侍の間で値段の交渉が始まった。侍が好きな値をつけろというので、

とりあえず甚兵衛の差し値は十万両。驚く侍に、そのかわりいくらでもまけますからと

言いわけをするおかしな商売。もともと無事に帰れればいいと思っているから、

値段のことなんか深く考えていない。

結局、侍が三百金の値をつけた。その意味が甚兵衛にはピンとこない。小判で

三百両のことだと説明され、「ひえーっ」と腰を抜かした。

感激のあまり、泣きべそをかきながら五十両ずつの包みで三百両を受けとって、

屋敷をあとにする。・・・・・夢心地で家に帰ってきた甚兵衛を見て、女房は

屋敷から逃げてきたのだと思い、

「追っかけられてきたんだろう。天井裏へ隠れておしまい」

しかし、甚兵衛は大いばりでことの次第を説明する。三百両で売れたと言ったとたん、

女房も腰を抜かして座りこんでしまった。・・懐から五十両ずつ出した小判を

積みあげるたびに、後ろへひっくり返ったり、気を失いそうになったり。

「ああ、ああ、お前さん商売が上手だよ」

「てやんでえ、ほら三百両」

「これからはもう音のする物にかぎるねえ」

「今度は半鐘を買ってきて・・・・・」

「半鐘はいけないよ。おじゃんになる」

                      立川志の輔   古典落語100席引用

難しいオチですね。じゃんと言ったらわたしは調味料を思い浮かべっちゃいました。

しかし、名品の価値って文化遺産級じゃないと意味なさそうだな。見るだけですもんだもんな。



How about the sky?