あれこれと買いたいと、胸を弾ませ白糸酒蔵の売店の扉を開けた私。
「ごめんくださーい。」
「いらっしゃいませー。」
「あ、これだ、これだ。これ下さい。」
買いたい酒の一つは速攻で購入。
しかし、お目当てのもう一つの酒が見当たらない。
「あれれ?えーっと、たなかー・・・・」
「田中65でしょうか?あれは当酒蔵ではお求めになれんとですよ。」
酒蔵開きの時以外は、代理店でしか買えないとの事。
ほとんど、ニンジンをどこかに隠された馬の心境と言っていい。
よし分かった。
こうなったら、その代理店とやらに行くしかあるまい。
延々1時間半。
大渋滞をものともせず、教えて貰った販売店の一つの住吉酒販へ。
血走った眼で陳列棚を探し回り、
「あった!こ、これ下さい!!!」
鬼の形相で店員に告げる私であった。
一転、
その日の夕食のテーブルに着く私は、気持ちの悪い笑みがこぼれ続ける事になる。
田中65。
所謂純米酒である。
田中とは白糸酒蔵当主の名であるとともに、『田の中の酒蔵で醸された』という意味合いでもあるそうな。
この田中65と言い、白糸シリーズと言い、酒に冠されているのは精米歩合を表す数字だけ。
無機的とも言えるネーミングは、実に単純明快でわかりやすい。
今夜の晩酌は当然ながら、鬼の形相で購った田中65である。
器はお気に入りの薩摩切子。
酒の肴は、
「魚屋に、近海物の鰹が出とったぞ。」(家内)
「それと、酢牡蠣も。」
イエーイ!! ヾ(o´∀`o)ノワァーィ♪
ポン酢と辛味大根で、
あーーーん。
そして追いかけるように、
グビ
なるほど!
咀嚼する酒というキャッチフレーズの通り、とろりとした質感である。
それでいて、キリっとした切れ味、、、
えーい、早い話が
馬鹿みたいに美味い!!
この酒には鰹もピッタリだ。
ウヒ、ウヒ、ウヒヒヒ
またもや食卓で、気色悪く笑いながら、だらしなく口の端から酒をこぼす私であった。