この激しい少女漫画展開は一体なにが起こっただ。と作者が言う。
って言うか繭子さんが仔猫置いて脚本書きに三時間ほど消えたりするから、作者もキャラもどうしていいかわかんなくなったのがこの有様です。困るよねー。
とある演劇第四章 脅迫電話と増えた家族の蛇足
「と、言うわけで…繭子さんは行ってしまったわけだが…どうする、三時間ばかり…」
と、途方にくれたシロとうーさんとさりちゃんの三人が残されたうーさんの部屋である。ちなみにこの部屋は主張する大きい本棚とベッドと小さい机以外はほとんど家具がなく、飾りらしい飾りは薄い色の小花模様のカーテンと本棚の隙間にちょこちょこと収まっている細かいマスコットくらいなのであった。うーさんの部屋の割に意外と色気のない部屋である。
「俺たちはこのまま帰ってもいいわけだが…」
「仔猫達引き取りに来はるんなら、うーさんは待ってなきゃ、だよねえ」
「そうねえ…」
うーん、どうしよっかな、と言う一同。
この状況で私だけ帰るって言うのもな、と口に出さずにオーラに出すさりちゃん。って言うかうーさんの部屋で二人っきりにさせてたまるか。不健全な。
「三時間って言ってるし、ちょっと出かけるってのも手だが、何せ仔猫たって生き物だからなあ…」
そりゃご飯もトイレもいるだろうし…。
と言ったところでピーピー鳴いてる。小さい三毛と白と茶のまだらのトラが繭子行きの子で、後もう一匹黒い子が増えて、それがうーさん行きである。
「うーん、この仔達ちょっと育ってるみたいだからいきなりカリカリでもいけるかしら。」
「そりゃあ仔猫用のご飯の方がいいだろうけど…いきなりだからそれらしいもん用意してないしな。うん、だったら俺が買いに行くか」
よいしょ、っと立ち上がるシロ。
「でも、ホームレスみたいな人にいきなり仔猫貰っちゃうなんて、シロ先輩何者かしら」
と、さりちゃんに耳打ちしたうーさんの声をもれなく拾ったらしいシロはニヤリと笑った。
「…ん?そうだなー、もうちょっと内緒にしてようかと思ったけど、そろそろ言っちゃおうかな。俺は結構君が知ったら驚くような人ともすでに知り合いになってるぞ」
「え、だれ?」
「何もなかったら今日は昼に行こうと思ってた。だったら、一緒に行こうか、うーさん。割と近くだから」
「え?結局私置いてけぼりなのー?ちょっとーやーん、ぷにぷに。ちょっと待って」
と、ブツブツ言いつつも仔猫にやわやわと引き留められて、満更でもないさりちゃんであった。
「うんと、とりあえずカリカリあげていい?」
「シニアねこカリカリと仔猫用カリカリは成分にてるからとりあえずならいいと思う」
「はいはいー。。ほら待って待って」
カリカリ持って顔がほころぶさりちゃんを眺めてにこにことしつつ、ちょっと先が楽しみなようなうーさんであった。
そんなわけで、仔猫用のウニャウニャをとりあえず3頭いるからちょっと多めに買って、うーん、予期せぬ出費だ、とちょっとブツブツ言うシロであった。
は、いいが彼の歩く道、どうもどこかで見たような、と言うか割といつも通っているような。
うーん、異次元にでも迷い込んだかしら。
と、思ってると見慣れた店が当然のように目の前に現れた。
「こんにちは、牧目さん」
「おー、やっぱあんただったか!うちの娘の「先輩」ってのは」
えーと?うちのお父さんにしか見えないんですけど、この人。
「…ええっと?」
「って言うか、考えてみなようーさん。いきなり君の家にいるところ見つかったりしたらお父さん的に印象最悪になっちゃうだろ?なんでも根回しってのは大事なんだよ」
ボソボソとお父さんに聞こえないように言う。
「聞こえてるぞー。って言うか、うちの店大概おばちゃんばっかなのに若い男が一人で通ってきたら大体なんでやねんってのは当たり前だわな」
ガハハ、と笑ううーさん父。
「そりゃなんかあるわと思ってけどな、4回くらい何にも言わずに適当にそこらのお菓子とかなんとか買ってくもんだから様子見てたら5回目にやっと演劇サークルで娘に世話になってるとか言い出したもんだからこりゃ「こいつだわ」と思って」
「そ…そんなこと、二人ともひとっことも言ってなかったじゃない!!」
「「うん、だから面白いからもうちょっと黙ってようと思ってた」」と二人は異口同音に言った。
「だから、実はその、おじさん達が割としょっちゅうなじみの客と遊んではるのは知ってたんだ」
ごめんね、うーさん。とどことなく甘い声。
こうなるともはやうーさんとしては口をパクパクさせるくらいしかできることがない。
はっはっは、とさらに面白そうに笑うのはうーさん父である。
「あ、でもなにーちゃん。真面目に信じてると、実はもう4回くらい誤情報流してるからな?現場抑えてやったらおもろいかなと思って」
「げっ、マジですか!?」
「そそそ、あんまし調子乗ると怖いぞー。まあ、もう大学生だからな。多少のことは見逃してやるけどな。…いきなり妊娠させただけはマジ勘弁してくれよ頼むから」
「百%とは言えませんけど、まあその辺は、ごにょごにょ」
「………も、もうっ…先輩ってば!で、お母さんは知ってるの?」
「母さんか?母さんああ見えて鈍いからなー、知ってるんだか知ってないんだかさっぱりわからん」
「あー、それ演技じゃないですか、おじさん。女の人が本当に鈍いなんてそんなことは」
「いや?あいつは鈍そうに見えてほんっとうに鈍いんだ。女って鋭いもんかと思って身構えてたらかなりのすっこんぶりだぞ」
「ああ、もう…」うーさんは頭を抱えた。
「あ、で今日はニュースがですね。娘さんとこ、仔猫もう一頭増えましたんでよろしく。いまは三頭いますけどあと二頭は別の人のところに行きますので」
「ええ?また猫増やしたのかよ。しょうがねえな…んじゃ、なんかじゃこかなんかやるから持ってけよ」
「こらっ、お父さん!人間の食べ物はそうそうねこにあげるもんじゃありません」
「いいだろ、ちょっとくらいよ」
「お父さんがそう言って甘やかすからむーさんもふーさんもこの頃人間の食べ物に興味津々じゃないの!もう、やめてよね。家でご飯たべれなくなる!」
もう、仔猫待ってるし帰りましょう、先輩、とうーさんはシロの腕を軽く引っ張った。
「帰りましょうって、お前言ってたら早速しけこんでるのかよ」
流石にうーさん父もちょっと顔が怖くなっている。
「ああ!もう違うって、もう一人女の子の友達来てるから!!今日はそう言うんじゃないの!」
「あ、うん、まあ今日はそう言うことなんで。またよろしく、おじさん」
「おー、ほどほどにしとけよ。誤情報にひっかかりやがったら腹抱えて笑ってやっから。ほい、じゃこ」
ケラケラと笑ううーさん父を置いて、店を後にした二人であった。
「この娘にしてあの親ありだよね、本当」
「………先輩。嬉しそうですね」
「そりゃだってきみんとこのお父さん面白いもん。…なにふくれてんの」
「別に…」
「残念ながらお母さんの方にはまだ遭遇してないんだよなー忙しいんだな、お母さん」
ちょっと気持ちがついていけなくてふくれてるまにゆるい坂道を登って家に到着した。見慣れた景色、見慣れた家。
「あ、おかえりー」
再び色気のないうーさんの部屋でさりちゃんがねこ達と出迎えてくれた。
「あれっ、むーさんもふーさんも出てきてるじゃないの!」
「うんもう普通に仔猫なめったりしてるよー。可愛い、あ、ほらほら」
「ただいま、むーさん」
キジシロのお目目がアーモンド型のちょっと洋風な顔立ちの方の猫がウニャウニャとうーさんのスカートに手をかける。いそいそとうーさんが座ると、ちょこん、と膝の上に座ってくつろぎモード。
同じキジシロのお目目ぱっちり丸々の方のふーさんもうーさんの手元にやってきて撫でてモードである。
「うーん、でもこれ、まだ三十分も経ってないよね…どうする、後の二時間半」
と、さりちゃんが言って、再び三人は顔を見合わせてうーん、と唸った。
「まあ、俺はとりあえず今日の目的果たしたし、帰るかな」
「えっ、帰るんですか?先輩」と、意外そうな声をあげたのはさりちゃんの方である。「もう少し粘ると思ってたのに」
「うんまあ。今日は猫達と女の子達で仲良くやってて。このモードじゃ男は邪魔だろ?」
「あらまあ随分物分かりのいい先輩ですねっ」
わかりやすくキラキラを飛ばすさりちゃんである。まあちょっとさりちゃんと二人きりにするのは安心できないもののとりあえず軽くいなしておく。
「さりちゃん、またおいたすんなよー、んじゃな、うーさん」
「先輩…」
「また明日な」
あれ?この人ら、仔猫のご飯買いに行っただけなのに、なんかいつもと雰囲気違うわ?気のせいかしら。まあいいわ、これ以上邪魔してもどうにもならんし、野郎は帰るし。いいことにしよう!
「あ、それじゃ、もう一頭の名前、くーさんにしよv」
と唐突に言って、にゃこにゃこしてるくーさんのちっちゃいおててをちょっとつまんで、軽く腕を降らせるうーさんであった。
「それじゃあね、先輩、バイバーイ」
おー、また会おう。バイバーイ。と機嫌よく彼はさっていって、後二時間半の彼女達はどうしたかと言うと、猫を適当に構いつつ本を読んでダラダラと過ごしたのであった。そして予定の三時間を二十分ほどオーバーして繭子がとうとうみぃくんとまーちゃんを迎えにきたのでありました。
そんな感じの充実の猫生活。
「ねえ、またねこさんたちかまいにうーさんのうちきていいー?」
と、すっかり猫にメロメロにされたさりちゃんも甘い声を出すのであった。ちゃんちゃん。
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